比企谷八幡がイチャイチャするのはまちがっている。   作:暁英琉

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八幡、私の唇見すぎ

 コンビニとは最高の販売店である。

 

 

 まず、二十四時間営業というのが大きい。学校に遅刻しそうな時や小腹がすいたときにパンなんかをいつでも買いに行けるのは非常に便利だ。あんなに狭い店舗なのに大抵の物は置いてあり、目的の商品にすぐたどり着けるのも魅力である。

 さらに、弁当やホットフードが美味い。特に数字だけの名称の赤いコンビニの食べ物は、もうそれだけで十分商売として成り立つのではないかというくらいのクオリティの高さだ。まあ、あそこの食べ物は昼食で重役の人たちが一つ一つチェックしてるらしいもんな。エビマヨおにぎりにエビが入っていなかった青いコンビニは許されない。

 なぜそんな話をしているのかというと――

 

「いらっしゃいませー」

 

 実際にコンビニに来ているからなわけだ。当然来たのは赤い店舗。日曜の昼時に起きてみたら、小町が塾に行っていた上に食材もまともになかったので、渋々休日外出という禁忌を犯すことになってしまった。いや、たかが休日に外出ただけで大げさだろ。俺だって休日に外に出ることくらい……ほとんどないですね、はい。

 最近はコンビニに入ると、まず芳しいコーヒーの香りが鼻をつく。コーヒーはマックスコーヒーを至高としている俺だが、このほろ苦さを漂わせる匂いも嫌いではない。人生が苦々しいからほとんど飲まないけどな!

 まあ、昼食を買いに来たわけだから弁当のコーナーに直行するのが普通なのだが、ここがコンビニの恐ろしいところで、狭い範囲に様々な種類の商品が密集している関係上、ついつい目的外の物に目移りしてしまう。なんだよ“ペヤングニンニクMAXやきそば”って興味湧いて買っちゃいそうになるだろ! 臭そう。

 そんなこんなで多少のお菓子とか飲み物とかをカゴに入れつつ目的の弁当コーナーに着くと――

 

「あ、八幡」

 

 珍しい知り合いと出くわした。

 いや、知り合いというほど知り合っているわけでもないのだが、俺の中ではそこそこ知っている部類に入るやつだ。

 

「あー……、ルミルミか。久しぶりだな」

 

「ん、久しぶり。あと、ルミルミ言うな」

 

 こいついつも「ルミルミ」に対して律儀に反応するよな。そんなに嫌だろうか。俺の中では抜群なネーミングセンスだと思うのだが。なんか呼びやすいし。

 夏休みの千葉村、そしてクリスマスイベントで多少交流を行った小学生、鶴見留美はいつかのピンクを基調とした服装に落ちついた色合いのダウンコートを羽織っていた。その手には空の買い物カゴがあって、つい周囲を見渡す。

 

「……一人か?」

 

「……まあ、うん」

 

 歯切れの悪い返しをしてくる彼女に、それ以上首を突っ込むことは躊躇われた。そうか、と口にして弁当の物色に入る。たまにはがっつり食べたい気分だったのでミックスグリルプレートとラーメンサラダを手に取った。新商品とかはよく目が行って衝動買いすることはあるけれど、最終的にはいつものメニューに落ちつくよな。店員から裏で「ラーメンサラダの人」とか呼ばれてないか心配。あ、それよりも「目の腐った人」って呼ばれてそうだわ。何それ悲しい!

 自分で無駄に傷口を作っていると、視線を感じたので目線を落とす。その先ではおにぎりとブリトーを手に持った留美がぼーっとこちらを見つめていた。

 

「……なんだよ」

 

「いや……別に。……ちょっと羨ましいなって」

 

 何がだよと思ったが、自分のカゴと今の留美の手持ちを見て納得した。おそらく留美の財布の中身はそんなに芳しくないのだろう。まあ、高校生と小学生なのだし、最近は小学生でもいろいろとお小遣いの利用用途も多いのかもしれない。

 まあ、財布事情の格差がどうしたという話だが、少ないお小遣いに苦心している小学生の目の前で「八幡、豪遊!」みたいなことをするのも気が引けるわけで、しかしこのメニューは外せないわけで……。

 少し逡巡して彼女の前で人差し指を立てた。

 

「さて、鶴見留美さんに質問です」

 

「……いきなりなに。キモいよ?」

 

 ぐはっ! 心臓を一突きされたようだった。小学生の「キモい」がここまで破壊力のあるものだとは……ルミルミ、恐ろしい子! そういえばクリスマスイベントの時も言われてたわ。

 なんとか平静を装って、ゴホンと咳払いをして仕切り直す。

 

「まあ、聞けよ。鶴見留美さんが今一番食べたい物はなんでしょうか?」

 

「ぇ……?」

 

 俺の質問が意外だったのか留美は小首をかしげる。そこから顎に軽く手を添えて考える動作をすると、ゆっくりと「これ」とミートソーススパゲッティを指差した。ふむ、なかなか子供らしいチョイスだ。

 

「よし、わかった」

 

「あ……」

 

 彼女の選んだスパゲッティを手早くカゴに入れてレジに向かい、温めを頼むといつもの癖でホットフードのケースを見る。最近のコンビニのホットフードはメンチカツとか焼き鳥とかフライドポテトとか、いろいろあってやけに充実している。その中でもやはり個人的にはチキン系を推したいわけだ、特に揚げ鶏。他のコンビニのチキン系とは一線を画したこのホットフードの魅力は、コンビニに寄るとついつい買ってしまうほど。他店のチキンがスナックなのに対して揚げ鶏は完全におかずと呼ぶべき代物だ。なにあれジューシーすぎるでしょ。

 

「あ、あと揚げ鶏を……」

 

 いつもの調子で頼もうとして、一瞬止まる。そのまま、立てていた指を一本増やした。

 

「二つで」

 

 

 

「ほら、行くぞ」

 

「ま、待ってよ八幡っ」

 

 コンビニを出ると留美が呼びとめてきた。とりあえず、こっちも聞きたいことがあったので足を止める。

 

「お前、どこで昼飯食うんだ?」

 

「え? 近くの公園かなって……」

 

「アホか!」

 

「いたっ!」

 

 チョップした。もう手加減とかなしにチョップをかました。結構痛かったのか留美はちょっと涙目になっている。こいつ今何月だと思っているのだろうか、二月だぞ二月。こんな寒い中外で食べるアホがどこにいると言うのだろうか。え? お前も昼休みは外で食ってるだろうって? よそはよそ、うちはうちって名台詞を知らないのかよ!

 

「はあ……ほら、行くぞ」

 

 袋を自転車のカゴに入れて、乗らずに押して歩き出すと留美も慌てた様子でついてきた。

 

「「…………」」

 

 しばらく互いに無言で歩く。小学生の小さな歩幅に合わせるから、自然とペースは遅くなる。昼の日差しの中でも衰えを知らない冷たい風に多少身をすくめるが、こういうのも嫌いではなかった。

 

「……ありがとね」

 

 しばらしくして、ぽそりと留美が口を開く。そこに弁当を奢ったこと以上の意味が含まれているように感じて、けれどそれを決して表には出さずに短く「おう」と返すだけにとどめた。

 

「さっきね、友達と喧嘩しちゃって……」

 

 きっかけは些細なものだったらしい。所謂コイバナ。頑なにはぐらかす留美に友達が怒り、それに彼女も応戦してしまい、ついには飛び出してきてしまったらしい。達観している気のあるこの少女が、コイバナでそんな感情的になるとは……まあ、女の子にもいろいろあるんだろうな。男の、しかもコイバナ=黒歴史な俺が余計なことを言うべきではないだろう。

 

「むぅ……、こういうときは優しく慰めるところでしょ」

 

 そう考えて短い返事で返していたわけだが、どうやら隣の姫君は御不満だったようで、小さく頬を膨らませながら抗議してきた。いや、というかここで俺が優しく慰めたりしたら最高に気持ち悪いことこの上ない。うん、実際キモいとか言われそうだから言わないけど。

 “友達”とは至極面倒くさいものだ。空気を読まなくてはいけないし、内輪ノリにも対応しなくてはいけない。隠し事は許されないし、内輪揉めで簡単に壊れかねない。いや、本当に面倒くせえな。

 ただ――。

 

「っ……八幡……?」

 

 ポンと空いた手を彼女の頭に乗せると、嫌がるでもなく、不思議そうに顔を上げてきた。

 

「まあ、あれだ。面と向かって喧嘩できる相手ってのも悪くはないだろ」

 

 夏の千葉村、あの時は喧嘩ですらなかった。一方的な優劣の押しつけ、差別、蹴落とし。そこに対話は存在せず、嘲笑とハブりだけが彼女たちの間にはあった。冬のクリスマス、あの時は対話すらなかった。相互不干渉による歪な関係は、どこか去年の俺と外との関係に重なって見えて、俺の行動が招いた結果だと自覚すると、ひどく不快で、何度も自分を殴りたくなる衝動に駆られたものだ。

 それに比べれば、きっと今の留美達の関係はとても面倒くさくて、それ以上に大切なことに違いなかった。あのとき切り捨てなかったこいつだからこそ、俺とは違ってその関係を得ることができたのだから。

 

「八幡…………ちょっとキモい」

 

「お前な……」

 

 マジで泣いてやろうか……。いやまあ、自分でもちょっとかっこつけたかなとか思わなくもないけれど、そうだね……キモかったよね……。けど、それを面と向かって言いますかねルミルミさん。

 

「でも、そっか……悪くない、かもね」

 

 口の端を引くつかせている俺に小さく笑った留美は、「ちょっと待ってて」と携帯を取り出した。少し緊張した様子で耳に当て、こきゅっと息を飲んだ。

 やがて繋がったのか、つっかえながらも言葉を紡ぐ。申し訳なさそうに謝った彼女の表情は、会話が進んでいくと徐々に和らいでいく。どうやらさしたる遺恨もなく仲直りできたようで、俺もほっと息をつく。というか、最近の小学生すごいな。子供用の携帯じゃなくて普通の携帯を持っているなんて、マモリーノ涙目だな。……ん? 電話を切る直前に留美の顔が赤くなったが、どうかしたのだろうか。

 

「どうかしたのか?」

 

「っ! ~~~~なんでもない! 八幡のバカ!」

 

 なんか怒られてしまった。

 

 

     ***

 

 

「お、おじゃましまーす……」

 

「おう」

 

 自宅に戻った俺に続いて留美も恐る恐る入ってきた。怖いことをするわけでもないのだから、別にそんなに緊張する必要はないのだが。いや、傍から見たら小学生を自宅に連れて行く高校生とか完全に事案物なのだが、今回は緊急事態だ。知り合いが風邪を引かないようにという正当な理由があるのだから、近所の奥様方は警察に電話することは控えていただきたい、まじで。

 リビングに案内して袋から弁当を取り出す。留美の席の前にスパゲッティと揚げ鶏を置くと、彼女はその小さな紙袋興味深げに持ち上げた。

 

「……これ、なに?」

 

「まさかお前……揚げ鶏をご存じない!?」

 

 なんということだ。この次世代を担うであろうジャンクフードを知らないとは! 大げさな態度を取った俺はじとっと睨まれてしまった。そういう表情ほんと雪ノ下に似てるよな。ガチで親戚を疑うレベル。

 

「だってあんまりコンビニって行かないし……」

 

「なるほど」

 

 まあ、確かに小学生がコンビニに行くことは少ないかもしれない。母親と買い物に行くならスーパーの方が多いだろうし、一人で買い物することも多くはないだろう。

 しかし、だからと言ってこれの美味さを知らないのはもったいない。ここは全力で布教するとしようじゃないか!

 

「ま、試しに食ってみろよ。美味いから」

 

 話しながら俺も小袋を手にとって、ミシン目からピリッと破く。顔を覗かせた黄金色の鶏肉に大口を開けて齧りついた。柔らかい肉を噛み切ると同時に、濃厚な肉汁が口の中に広がる。買ってから少し経っているとはいえ、まだ熱々なそれをハフハフ言いながら食べるのが醍醐味だ。うん、やっぱり美味い。

 そんな俺を見て、留美も見よう見まねに袋を開けて、はむっと口に含む。ゆっくりと咀嚼をしてこくりと飲み込むと、続けて二口、三口と食を進めた。

 

「……おいしい」

 

「だろ?」

 

 勧めたものを気に入ってもらえるのはやはりうれしいもので、ついこちらのテンションも高くなって少し距離を近づける。留美も小さく笑いながら振り返って――

 

 

 ――ドクン。

 

 

 心臓が大きく鳴る。揚げ鶏というものは肉汁が多い。そして、今ちょうど彼女はそれは食べているわけで、その唇はまるでグロスを塗ったようにテラテラと艶を帯びていた。そのせいだろうか、やけに色っぽく見え――

 

「八幡……?」

 

「っ……なんでもないっ」

 

 何を考えているんだ俺は。相手は小学生だと言うのにこんな感情を抱くだなんて。慌てて自分の食事に戻ろうとするが、どうしても視線が隣の少女に、その小さな唇に吸い寄せられてしまう。目の前の弁当よりも、その二枚の花弁の方が、何倍も、何十倍もおいしそうに見えてしまった。

 心臓は痛いほど強く鼓動を鳴り響かせる。箸は全く進まなくて、視線を離すことができなかった。

 落ちつけ比企谷八幡。お前は今、知り合いのちょっと違う一面に冷静さを欠いているだけだ。いや、そもそも冷静に考えるなら、俺の今日の行動こそいつもと違うことではないだろうか。なぜ俺は数回しか会ったことのない知り合いを家に招き入れたのだろう。風邪を引かれては寝覚めが悪いからだ。いや本当にそうだろうか、それだけだろうか。

 

「八幡」

 

 名前を呼ばれて思考の底から引き戻されると、目の前に留美の顔が合った。肉食なグロスを乗せた唇がすぐ近くにあって、ごくりと生唾を飲んでしまう。

 

「ど、どうした……?」

 

 決して平常とは言えない情けない声を上げると、留美はじとっと三白眼で見つめてくる。責めるような視線に思わず視線を逸らしそうになるのをグッとこらえた。

 

「さっきから私、ううん……私の口見すぎ」

 

 …………ばれてた。しかもピンポイントで唇を見ていたことまでばっちり。どうして女の子はそういう視線に敏感なんですかね。ぼっちの俺だってそこまで敏感じゃないのに。

 

「でも、八幡なら見られても、いい」

 

「ぇ……それって……お、おいっ」

 

 気がつくと距離はさらに近づいて、甘い吐息が鼻腔をつく。身体はガチガチに硬直して、首に回された細い腕から逃れることはできなかった。

 

「私、八幡のこと……好きだから」

 

 ぁ…………。

 声が出たかすら、自認することはできなかった。唇から伝わる、柔らかいぷるんとした感触。口のわずかな隙間から入り込んでくる空気は、かすかに揚げ鶏の風味を漂わせながらも、びっくりするほど甘かった。いくらでも味わっていたいと思うほど、初めてのキスは甘美なものだった。

 

「……八幡のせいだよ」

 

「え……?」

 

 そっと唇が離されると、ぽしょりと留美が呟いた。

 

「八幡があんなに見つめてくるから、我慢できなくなって……。それに、八幡のせいで友達とも喧嘩しちゃって……」

 

 ……ああ、ようやく合点がいった。留美が頑なにコイバナをしなかった理由。数回しか会ったことのない高校生が好きだなんて、特殊すぎて引かれないか怖かったのだ。怖くて言えなくて、けれど普段の自分からはありえないほど怒ってしまうくらい、どうしようもなく好きで好きで仕方がなくて。

 確かに……それは俺のせいに違いなかった。

 でも、と留美は続ける。

 

「八幡のおかげで仲直りできた」

 

「いや、俺はなにも……」

 

「ううん、八幡の一言がなかったら、きっと謝ることなんてできなかった。ひょっとしたら、また見捨てちゃってたかもしれない。だから八幡のおかげで、だからやっぱり私は八幡のことが――好き」

 

 その目から伝わる想いは、勘違いと切り捨てさせることは決してできないものだった。そんな目で見つめられたから、自分の想いすら自覚する。なぜ今日この少女のことを心配したのか。いやもっと言えば、なぜクリスマスイベントで再会した時にあんなにも気にかけたのか。きっと俺にとって留美は、俺とどこか似ていて、それでいて別の道を選んだ彼女は、この上なく眩しくて、時間すら無視してしまうほど魅力的だったのだ。

 自覚してしまったら、もう抑えることはできなかった。

 

「ん…………っ」

 

 小さな背中にそっと手を添えて、今度は俺の方からその唇を奪う。まだ残っている食用グロスを味わように唇同士を触れ合わせると、彼女もそれを受け入れるように腕により力を込めてきた。

 

「はぷっ……ちゅっ………ちゅむっ……」

 

 唇同士が離れそうになる度に、再び吸い寄せられる。頭の奥がじりじりと痺れて、その痺れが際限なく相手を求め続けた。

 やがて、どちらからともなく唇が離れる。ほとんど酸素を吸えていなかったのか、それともキスの熱に当てられたのか、留美は荒い息をしていた。

 

「お弁当……冷めちゃったね……」

 

 そういえば、昼食の途中だったことを思い出す。自分でも驚いてしまうほどムードのないタイミングだったと苦笑しつつ、温め直すかと席を立つ。

 ぬるくなった弁当を持って台所に向かおうとして、同じく立ち上がった少女にそっと手を差し出す。

 

「ぁ……へへっ」

 

 スパゲッティを片手に持った彼女は少し考えた後、うれしそうに空いた手を俺のそれに乗せた。

 

 

     ***

 

 

「じゃあね、八幡」

 

「おう……」

 

 夕方になる頃、さすがに日が暮れるのも早いので留美の家の近くまで送ることにした。幸いなことに、職質も通報もされずに済んだ。最近は変な言いがかりで通報する奴も多いらしいから本当に怖い。

 

「「…………」」

 

 別れの挨拶をしたが、どちらも動かない。いや、動けない。正直、もう一時も離れたくはなかった。ずっと一緒にいたかった。

 しかし、現実的にそういうわけにはいかない。踵を返して、行きでは押していた自転車に跨る。

 

「八幡っ! ……また、遊ぼうね」

 

 後ろを振り返ると、今にも泣きそうなのを必死に堪えている留美が、絞り出すように声を漏らした。そんな表情もするのだという驚きと、自転車から飛び降りて抱きしめたい衝動を必死に抑えて、俺はにっと口角を釣り上げた。

 

「当たり前だろ!」

 

「そっか……うん、そうだねっ」

 

 納得したように踵を返して歩き出した彼女を確認して、自転車のペダルを力いっぱい踏み込んだ。寒い空気に晒されているはずなのに、心の奥は春のように温かくて、ぐっと力を入れていないと、引き結んだ唇はすぐに緩んでしまいそうだ。

 けれど、温かい感情にはすぐに寂しさが混じってしまう。こんなに自分が脆い人間だとは思わなかった。とりあえず、帰ったら久しく使っていなかったメールでも打ってみよう。件数の少ないアドレス帳に新たに登録されたそれを思い出しながら、ペダルにかける力を一層大きくした。




揚げ鶏って肉汁すごいよね 超ジューシーだし、食べると口元テカるんだよなぁ
あれ? つまり揚げ鶏食べた後の女の子の唇ってエロくね?

というアホな思考から生み出されたもの


ついでに八留単品にも挑戦してみました

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