比企谷八幡がイチャイチャするのはまちがっている。 作:暁英琉
世の中には時間が経っても変わらないものがある。俺がいつまで経ってもリア充とはほど遠いプロぼっちなのもそういう世界の不変部分を再現しているからだと言える。なにそれ泣きそう。
しかし、変わらないものがあれば当然変わるものもある。たとえばベストプレイスに吹く風。冬の間は身を切るような冷たさだったそれは、春になり、新しい学年になって少し経った今はふんわりと身体を包み込むような心地の良いものになっていた。
気温もだいぶ上がってきていて暑すぎない陽光がじんわりと身体に沁み込んでくる。ポカポカ陽気とはこういうことを言うのだろうか。自然と瞼が下へ下へと降りて行きそうになる。こんな陽気の中で昼寝をするのはさぞ幸福な気持ちになるだろう。
というか、本当に眠い。次の授業は数学でどの道寝てしまうのだし、一回くらいサボっても大丈夫なんじゃないだろうか。教室は戸部とかがうるさいし、ここで寝た方がいいかもしれない。
「ふあ……」
一つ大きなあくびをして、校舎の壁にもたれかかる。一応昼休みが終わる時間にスマホのアラームをバイブに設定して、ゆっくりと意識を手放した。
***
久しぶりに由比ヶ浜さんが「罰ゲームじゃんけんしようよ!」なんて言ってきたから乗ってみたら負けてしまったわ。敗北なんて雪ノ下雪乃一生の不覚。今度挽回しなければいけないわね。
「あら……?」
自販機に飲み物を買いに行くついでにいつも彼が昼食を取っている場所を覗いてみると、壁に背を預けて腕を組んだ状態で眠っていた。こんなところで寝てしまって、風邪でも引きたいのかしら。
そう思ったけれどなるほど、温かな日差しと風が肌を撫ぜる感触がなかなか気持ちよくて、寝てしまいたくなる気持ちも分からなくもないのだけれど、午後の授業を控えた昼休みに寝るのはどうなのかしら……。
「それにしても、本当によく眠っているようね」
目の前まで近づいても起きる様子はない。試しに軽く肩を叩いてみても、返ってくるのは規則正しい寝息だけだった。こうして目を閉じて黙っているとそこそこ整った顔立ちなのよね。自然とそう考えている自分につい苦笑が漏れてしまう。これを素直に口に出せれば彼との関係も変化が起こるかもしれないが、今の関係も悪くないのが悩ましいところなのよね。
「それだけ好き、ということよね。彼女のことも、あなたのことも」
奉仕部という空間はそれだけ私にとって大事なものなのだ。それに、一色さんや小町さんとの関係も楽しい。皆が集まってにぎやかになるのも、三人でまったり過ごすのも心地がいい。
「今はもう少し、こういう関係でも許されるわよね……?」
誰に言うでもなく、強いて言うなら寝ている彼に向けた言葉はゆったりと吹いた風に流されて消える。
おもむろに彼の右隣に腰を下ろす。普段は隣に人がいると無意識に警戒してしまうのだが、今はむしろ隣に彼がいるという事実が嬉しく、心が落ち着く。そっと彼の肩に頭を乗せてみると、男性にしてはほっそりとした見た目に反して大きなそれに、不意に彼の男らしさを感じた。
中途半端な、ぬるま湯のようなゆるやかな関係。いつまでも続くものだとは思わないけれど、せめて少しでも長く、この穏やかな時間を過ごしていたい――そう、思えた。
「あ、せんぱ~い!」
「ああ! お兄ちゃんと雪乃さんがイチャイチャしてる! あれ、してる?」
「…………」
短かったわね、私の穏やかな時間……。声の方を見ると、一色さんと小町さんが駆け寄ってきた。二人一緒の所を見ると生徒会の仕事を一緒にしていたのかしら。無事に総武高校へ入学した小町さんは比企谷君の勧めで生徒会の手伝いをしている。まあ、部員が私たち三人しかいないのだから、奉仕部に入るよりはずっと有意義になるでしょう。
「お兄ちゃん寝てるんですか? ……ああ、お兄ちゃんの寝込みを襲ってたんですね」
「え~! 雪乃先輩ずるいです!」
「ちょっと待って!」
私は寝ている比企谷君の隣に座っていただけで、いえ確かにちょっと肩に頭を乗せたりはしていたけれど……い、イチャイチャしていたわけでもあまつさえ寝込みを襲っていたわけでもないのよ? そもそも一色さんの「ずるい」の意味もわからないのだけれど……。
混乱している私をよそに、二人はとてとてと比企谷君に近づく。私の反対側、左隣に二人して腰を下ろすと、頬を擦り合わせながら彼の顔を覗きこんでいた。まだお互い直接会ってから一月も経っていないのにずいぶんと仲良くなったものね。比企谷君が二人はあざといところが似ているから正直会わせたくないなんてぼやいていたけれど、確かにこの二人は波長が合うらしい。
「それにしても……本当によく寝てるね、せんぱい」
一色さんが比企谷君の頬をぷにぷにとプッシュして――
「お兄ちゃんって寝付きはかなりいいんで、一度寝ちゃうとなかなか起きないんですよ」
小町さんが彼の鼻をふにふにと触る。なにそれ、私もやりたいのだけれど……。さすがに寝ている比企谷君にそんなことをしたら悪いと思って自重した私の努力って何だったのかしら。
ぷにぷにふにふにと比企谷君の顔を触る二人。小町さんはともかく、一色さんもこんなに積極的なスキンシップを取っていたのね。先を越されたみたいでちょっと複雑だわ。
「あれ? けどせんぱいって、教室でもいつも寝てるんじゃなかったっけ? こんなにぐっすり寝てたら授業前に起きなさそうだけど……」
ぷにぷにしていた指を止めて一色さんがはて、と首をかしげる。そういえば、由比ヶ浜さんが「ヒッキーって休み時間ずっと寝てるよね。全然声掛けられないじゃん!」と言っていたわね。確かに、なかなか起きないのなら授業を寝過して平塚先生からの鉄拳制裁をいつも受けていそうなものだけれど、特にそういう話は聞かないわね。
一色さんの疑問に、同じく指を止めた小町ちゃんが渇いた笑いを浮かべた。
「実は、お兄ちゃん教室だと寝たふりしてるだけらしいんですよね」
「「え?」」
思わず漏らした声が一色さんと被ってしまった。なぜわざわざいつも寝たふりをしているのかしら。彼は読者家なのだし、教室でも本を読んでいそうなものだけれど……。
「前に結衣さんに『本読んでる時に笑うヒッキーキモいよ』って言われたのが割と堪えたみたいで、それ以来教室で本は絶対読まない! って言ってました」
「ああ……」
「結衣先輩……」
彼女の一言って、たまにグサリとクるのよね。無邪気故の毒というか、時々私よりも残酷だと思うこともあるもの。ひょっとしたら、比企谷君にとっては、私に何か言われるよりも由比ヶ浜さんに何か言われる方が辛いのかもしれないわね。
「じゃあ、こんなに無防備なせんぱいはそうそう見られないってことですね! あ、この隙にキスしちゃってもいいかな?」
「どうぞどうぞ!」
「いやどうぞじゃないでしょう!?」
な、なぜ私がツッコミなんて……。いつもは比企谷君がツッコミ役をしているけれど、こんなに大変なのね。むしろ当の本人が寝ているせいか、数割増しでやっかいな気がするわ。そもそも、いたずらにしてもキスはその、うらや……いささか度が過ぎるのではないのかしら?
頭を抑える私に、「え~でも」と一色さんが声を上げる。
「私って、せんぱいのこと好きじゃないですか~」
「え、ええ。そうね」
ドキリとする。彼女自身の口から今まで明言されたことはなかったけれど、一色さんが比企谷君をそういう対象として見ているということには薄々気づいてはいた。それを面と向かって宣言されるのは――
「でも、せんぱいって結構攻略難易度高いですし、いっそのことキスしちゃえば勘違いもなにもないと思うんですよね~」
まるで、宣戦布告をされているようだった。
「せんぱいを狙ってる人とか、他にはいなさそうですし~。しちゃっても構わないですよね?」
「それは……」
にっこりと笑う一色さんに喉が詰まる。いつもなら間をおくことなく切り捨てる話。だけど今の彼女の表情を見ると、そんなことはできなくて……。
「それは……だめ、よ……」
ようやく絞り出した声は自分でも驚くほど小さかったけれど、しっかりと聞こえたらしく、笑みがより深くなる。
「よかったです。ここではぐらかされてたら、本当に奪っちゃおうと思ってたんで」
…………。
この後輩は本当に……誘導がうまくて、狡猾で、それなのに決して自分の幸せだけを求めない。彼のことも、私たちのことも考えてくれている。そんな彼女だから、私たちもあの空間へ自然と招き入れるのだろう。
「私も、いつまでも逃げているわけにはいかないわね」
「そうですよ~」
どちらからともなく笑いあう。きっとこのライバルとは、どんな結果になろうとお互い納得できて、関係が壊れることなんてないだろう。
「くぅ……」
「あら?」
二人の笑い声にかすかに混じってきたかわいらしい声の方を向くと、いつのまにか小町さんが静かに寝息を立てていた。しかも、彼の左腕にしがみついた状態で。
「あ! 小町ちゃんずるい!」
どうやら自分が彼の腕に抱きつきたかったらしい一色さんは、ぷくっと頬を膨らませる。というかそれ、男の子の前以外でもやるのね。ああ、一応比企谷君の前ではあるわね。
ひとしきり頬を膨らませて形だけの憤慨を見せた彼女は、一度冷静になると今度は「どうしよう」とにわかに動揺し始める。奪われた腕の先、彼の胴体に何度も手が伸ばされようとしては止まり、弱々しく下ろされる。
「抱きつけばいいんじゃないのかしら?」
「そうしたいのは山々なんですけど……いざやろうと思うと結構勇気がいると言いますか……」
その目には怯えというか恐怖すら見えていて、さっきまで私を翻弄していた彼女とは思えない、かわいい後輩の女の子になっていた。抱きつくだけでこんなになっていたら、きっとキスも無理だったに違いないとつい笑みが漏れてしまう。比企谷君が一色さんに甘くなってしまうのもしかたないわね。私ですらこんな彼女のことをかわいいと思うのだから。
「今は……これくらいで……」
悩みに悩んだあげく、一色さんは緩く比企谷君のシャツを摘まむと、そっと寄りかかった。その顔は見間違えようのないほどに真っ赤でガチガチに緊張しているのが見てとれたけれど、ぴと、ぴと、と遠慮気味に彼の胸元に頬を触れ合わせては表情を緩めている。なにそれ、かわいいわねあなた。
「へへぇ、せんぱいあったか~い」
「……やっぱり、そういうところは羨ましいわね」
私はそんなに彼に密着することはできそうにないもの。まあ、一色さんも起きている比企谷君にこんなことはできないでしょうけど……できないわよね?
「ふふふ~……ひあっ!?」
にこにこというよりもにやにやとしていた一色さんが突然変な声を上げる。よくよく様子を注視してみると、彼女の影で比企谷君の腕ごと小町さんが抱きついていた。さらにすりすりと頭を擦りつけていて、その度に一色さんがくすぐったそうに声を漏らす。これ本当に起きてないのかしら……。
「ふぁっ、小町ちゃ……くすぐったいよぉ……ひんっ」
「っ…………」
落ちつきなさい、雪ノ下雪乃。女の子同士が多少スキンシップを取っているだけで、特に何かおかしな感情を持つことなんてありえないものよ。ただでさえ、最近由比ヶ浜さんの影響で比企谷君からゆるゆりなんて呼ばれてしまっているのだから、自分までゆるゆりとやらの自覚を持ってしまってはいけないのよ! あら……この時点で自覚があるのでは……。
「……えへ……お義姉ちゃん、いっぱぃ……小町も、鼻高々だよ……お兄ちゃん……」
「「……………………」」
こ、この子はなにを言っているのかしら。さっきお互いをライバルと認識してしまった手前、どうしても気まずい空気が流れてしまう。そもそも、“お義姉ちゃん候補”ではなく“お義姉ちゃん”がいっぱいとはどういうことかしら。ハーレム、ハーレムなの? 比企谷君の分際でハーレムなんて……むしろ今の状況がハーレムなのではないのかしら?
「……なにやってるの?」
小町さんの隠し持っていたアブない思想に恐れ戦いていると、どこか呆れたような声が聞こえてきた。さっきとは違い、あまり聞き覚えのない声に思わず身体が強張ってしまう。まずいわ、一色さんや小町さんならまだしも、他の生徒にこんなところを見られては比企谷君にとって不利な噂を流されてしまうのは必至。下手をしたら比企谷君が私達から離れようとしてしてしまうかも……いえ待って、さっきの声、高校生にしてはやけに幼くなかったかしら?
「あら? あなたは千葉村の……」
「あっ、クリスマスの時に主役やってくれた子!」
「ん、久しぶり」
視線の先には千葉村でいじめにあっていた小学生、鶴見留美さんが立っていた。最後に会ったのはクリスマスイベントの時だったけれど、数ヶ月見ないうちに少しだけ成長したように見えた。
それにしても、なぜ留美さんがここに。今年中学に上がったであろう彼女が私服で総武高校に来る理由などないと思うのだけれど。
そう思っていたが、どうやら風邪気味で学校を休んだので母親の勤めているここの保健室で休ませてもらっていたらしい。……そういえば、家庭科の先生の名字が鶴見だったわね。
「それで、保健室で休んでいるはずのあなたがどうして外を出歩いているのかしら? 他の生徒に見つかると騒がしくなってしまうのだけれど」
「保健室退屈だし、午前中寝てたらだいぶよくなったから外の空気吸いたくなったの。それで八幡が昼休みはここにいるってこと思い出して……」
「ちょ、ちょっと待って!」
いやその「説明してる最中に遮るとか、なに?」みたいな目で私を見ないで。
「どうしてあなたが比企谷君がいつも昼食を取っている場所を知っているのかしら?」
そう、同じ学校の生徒ならまだしも、この少女がここの存在を知っているのはおかしいのではないかしら。小町さんとも親しいわけではないでしょうし、ベストプレイスの情報が彼女に漏れることなんて――
「どうしてって、八幡から聞いたから。この間LINEで」
「LINE!?」
あの比企谷君がLINE!? 比企谷君なら「LINEなんてリア充御用達ツール、俺には必要ねえだろ」とか言いそうなのに。
「クリスマスの時に交換した。相談とか乗ってもらってる」
「あ~、せんぱいってメールよりもLINEの方が返信早いからな~。相変わらずそっけない内容だけど」
え、ちょっと待って。まさか一色さんも比企谷君とLINEをしているというの。比企谷君全くぼっちじゃないじゃない! いやそれよりもなによりも――
ひょっとして、連絡先を知らないのって……私だけ?
いけない、いけないわ。連絡先の交換程度、さしたる問題ではないと思っていたけれど、由比ヶ浜さんのみならず一色さんまで交換して、しかもそれを使って交流しているということは、連絡先交換とは大きなアドバンテージになるということではないかしら? ここにきて友達がほとんどいなかったツケがきてしまうなんて……。これは早急になんとかしなくてはいけないわね。
「ところでなにしてるの?」
「せんぱいが寝てるから、皆で添い寝してるんだよ~」
「……ふーん」
私が決意を新たにしていると、留美さんがとととっと駆けよってきて、比企谷君の正面で立ち止まる。比企谷君、私、一色さん、小町さんを順に見て、少し考える仕草を取った彼女は「うん」と小さく呟いて――彼の股座に腰を下ろした。
股座に、腰を下ろしたのだ!
「ん? どうしたの?」
完全に固まってしまった私と一色さんに留美さんが首をかしげる。一色さんですら座れなかった彼の股座に堂々と座ったのに、どうしたのなんて聞かないでほしい。これが、歳下故の無邪気さだとでもいうのかしら。
そう思っていたけれど。
「……ここが空いてたから座っただけだよ。背もたれも付いてて極楽」
そんなことを言う留美さんの顔が朱を帯びていて、小さく震えているのを見て、つい「あぁ……」とため息をついてしまった。
同じ想いを抱いているからなのか分かってしまった。彼女も比企谷君のことが好きなのだと。幼いなりに精いっぱいアピールをしているのだと。まったく、こんなにかわいい女の子たちに慕われているなんて、比企谷君はきっと総武高校で一番のリア充に違いないわ。
それにしても、本当にいい天気だわ。臨海部から吹いていた風が元いた場所に帰るように風向きを変える。その変化も温かな日差しも心地よくて、ついうとうとしてしまう。隣に彼もいるし、たまにはちょっとイケないことをしてもいいかもしれないわね。
「あー! ゆきのんこんなところに……ってなんで皆ヒッキーと一緒に寝てるの!?」
意識が落ちる直前、由比ヶ浜さんの声が聞こえた気がした。
***
「ん…………?」
なにか大きな声が聞こえて意識が浮上した。薄目を開けると由比ヶ浜がなにやらわめき散らしている。どうやら怒っているようなのだが、寝ていたことがそんなに悪いのだろうか。悪くないよな、うん。
それにしても、なにやら身体のいたるところから太陽光とは別の熱を感じる。由比ヶ浜に起きていることがばれるのもあれだったので薄目のまま周りを確認してみると、右肩に雪ノ下が頭を預けて寝ていて、左腕はぐーすか眠っている小町に取られていた。さらに左胸部に頭を乗せる形で一色がくっつき、膝にはルミルミが乗っていて、満員電車かよと突っ込みたくなるくらいの密着具合だ。ん? ていうか、なんでルミルミがいんの?
なにこれ、と珍百景を見るような眼をするよりも先に俺の脳が即座に答えを導き出す。
あ、これ夢だわ。
この一年でそこそこ人と関わったせいで、ぼっちとしての人間強度が下がっているんだな。だからこんなうれし……恥ずかしい夢を見てしまっているんだ。今一度自分のあり方を見直すべきかもしれない。いや、そんなことしたら皆から怒られそうだからやらないけど。
夢だと分かればもう少し寝るとしよう。夢のはずなのに皆がくっついている部分が温かいし柔らかいし、ふわりといい匂いするしで、夢だけどこのまま起きていたらよからぬことをしてしまって、起きてから罪悪感に苛まれそうだ。
ゆっくりと目を閉じて、もう一度意識を手放す準備をする。ドキドキしてもう眠れないかと思ったが、この温かさが心地よくて、思いの外すぐに意識はぼやけ始めた。
「皆ずるい! あたしもヒッキーと一緒に寝る!」
「ごめんね、おっぱいピンクさん。この八幡は四人用なの」
……ルミルミ、お前本当に容赦ねえな。
その後、放課後になって平塚先生に起こされ、めちゃくちゃ怒られた。まさか熟睡しすぎて六時間目の現国の授業まですっぽかしてしまうとは……。
凝り固まった身体を伸ばしながら部室に行くと、部屋の隅で体育座りしている由比ヶ浜を雪ノ下と一色が宥めているというよくわからん光景に遭遇した上に、一色から「せんぱいのせいですよ!」なんて怒られた。わけがわからないよ。理由を聞いても答えてくれないし、ほんと理不尽。
さらに、帰りに雪ノ下からアドレス交換をせがまれた時にはもう思いっきり警戒してしまった。一年連絡先交換しなかったのだから、どうして今更と思うのが普通だろう。しかもそのこと言ったら、いじけた顔するからまるで俺が悪者みたいな錯覚に陥るし。いじけた表情とかちょっとドキッとするからやめていただきたい。
「いやあ、お兄ちゃんモテモテですなあ」
「は? 意味分からん」
反射的に返したら小町にドン引きされた。なんだろうか、今日は厄日かなんかだったんですかね……。
R-18の間の息抜き短編
まあ、ガハマさんがオチ要因なのは私のSSの様式美ということで
最初は三人くらいの予定だったし、コメディ色強いSSになる予定だったけれど、気がついたら一人増えて微妙に中盤シリアスになりまみた
おかしい・・・
次の更新は久々に妹シリーズの予定です