Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもお久しぶりです、約4か月ぶりの投稿となった作者です。
前回の投稿から今日までブラックどころかダークネスな仕事を辞めるために奔走したり、身内の入院転院に付き添ったりでバタバタしてたらこんなに時間が開いてしまいました。

さて、今回も引き続きバトルロイヤル戦です。
なかなか筆が乗らなかったこともあってちょっと書いては止まってを繰り返したためキャラが不安定に感じるかもしれませんが、ご容赦ください。

それでは本編第75話、どうぞご覧ください。


第75話「大乱闘!スマッシュフロニャルド! その③」

 並の兵が迷い込めば即座に"けものだま"となってリタイアするのが目に見えるほど苛烈な戦場へと変貌した中央バトルフィールド。そことはまた違う場所でも、普通の兵士が手を出せない戦いが繰り広げられていた。

 一方は雷の爪を展開し、もう一方は素手のみで打ち合っている。激しい打撃音から並ではない威力であるのが想像できるが、二人の勢いは留まることを知らない。

 

 

「おまえ、強い! 強いやつ、エイラすき!」

 

「はははっ! そりゃオレのセリフだ! ミコトにゃ悪いが、アンタの方がずっとつええ!」

 

 

 ガレット獅子団領の王子にしてレオの実弟であるガウルが、輝力武装の獅子王双牙を展開して生身のエイラと激突する。

 彼に同行していたゴドウィンも主であるガウルの命で下がっているものの、その目まぐるしい攻防に手を出そうなどとは思わなかった。何よりガウルがシンクと戦っているときのように実に楽しそうなのだ。これを邪魔するなど家臣としても武人としてもできることではない。

 

 

「いくぜぇ! 『獅子王爪牙 爆雷斬り』!」

 

 

 両手に纏わせた獅子王双牙に輝力を流し込み帯電を大きくしたガウルがエイラに切りかかる。それに対してエイラは――

 

 

「がうっ!」

 

「なに!? ――ぐふぉ!」

 

 

 電気を纏っているその手をがっしりと受け止め、そのままガウルの腹に蹴りを叩き込む!

 実はエイラ、クロノとの連携技で雷を受けることが多かったため、生身でありながら雷や電気に対して体質ができていたのだ。そのためガウルの雷撃は少し痺れるが耐えられないほどではない結果となった。

 それを知らないガウルはまさか攻撃を真っ向から受けるとは思っても見なかったためまともに攻撃を受けてしまい、後方へと吹っ飛ばされる。

 主君に打ち込まれた一撃を見て周りの兵からどよめきが、映像を見ていた客からは大技を押し返したことに大きな歓声が上がる。

 

 

「いってて…マジでつええな、燃えてきた!」

 

「こい! エイラ、負けない!」

 

「そりゃオレのセリフだ! うおおおおお!!」

 

 

 やられても笑みを浮かべ、闘志を滾らせるガウルは獅子王双牙の具合を確かめて再度突撃し、エイラもそれを正面から迎え撃つ。重い打撃音が響き、戦いはますますヒートアップしていく。

 

 

「いやぁ、殿下が楽しそうで何よりだな」

 

「将軍、我々はいかがしましょう?」

 

「決まっておろう――殿下の戦いに水を差そうとする連中を抑えるだけのことよ」

 

 

 問いかけた騎士にそう返しながらゴドウィンは斧と鉄球を構え、別方向から進攻してくるビスコッティ、パスティヤージュの部隊へ突撃をかけた。

 そして水上エリアでは、勇者二人が空を舞うエッシェンバッハ騎士団指揮隊長を墜とさんと、壮絶な空中戦を繰り広げていた。

 滑空ボードトルネイダーを操るシンクが勢いよく空を舞いつつ、輝力の遠距離攻撃でブランシールを駆るキャラウェイを追い込む。その行き先からスケート靴の様な輝力武装で水上を自在に駆け抜ける七海が挟み込み、エクスマキナを振るう。迎撃が間に合わないと悟るや否や、キャラウェイは片手でブランシールの手綱をしっかりと握りつつ剣を握る手で突き出されるエクスマキナを受け流す。

 ギャリッと耳障りな音と共に七海の軌道を逸らすことに成功し、ブランシールは一気に彼女の脇を抜ける。攻撃を外された七海は続いて迫ってきたシンクのトルネイダーに着地し、改めて追撃する。

 

 

「キャラウェイさん、強いというよりうまいね」

 

「うん。さっき受け流されたのも最初は行けると思ったんだけどね」

 

 

 指揮隊長の肩書は伊達ではないということを実感していると、シンクの視界にこちらへ接近するものが見えた。

 パスティヤージュの増援かと思い目を凝らすが、迫ってくるのは早期奪還を優先しなければならない現状ではあまりにも厄介な存在だった。

 

 

「Ya――――――Ha――――――ッ!!」

 

「ミコトさん…吹っ切れてるなぁ……」

 

 

 異常なテンションでベースジャバーから跳躍した尊が弾丸の如くシンクたちへ強襲を仕掛ける。彼に同行していたクロノもそのハイテンションに若干引きつつベースジャバーから跳躍し、先ほどシンクたちが仕留め損ねたキャラウェイに向けて牽制のかまいたちを放つ。三人集の放つ弧を描くようなものではない線の斬撃がブランシールを襲うが、キャラウェイは冷静に回避して尊とシンクたち両方を相手とれる場所で滞空する。

 一方、シンクたちに突っ込んだ尊はサテライトエッジのブラスターでトルネイダーを狙いエネルギーを開放。このままでは迫る光弾を避けきれないと判断したシンクは七海とともにトルネイダーを捨ててすぐ下の足場に飛び降りた。それも織り込み済みだった尊はサテライトエッジをボウに変形させると同時に輝力を発動し、春の魔物騒動以来の技となる『ブレイクショット』を下に逃げたばかりのシンクたちへ放つ。

 

 

「ディフェンダー!」

 

 

 一本から無数に分裂し、雨のように降り注ぐ輝力の矢に対してシンクも巨大な盾を輝力で召喚すると傘のように掲げる。ガガガガッと耳障りな音が響くも数秒ほどで収まり、二人は離れた足場に降り立った尊へと向き直る。

 

 

「そうだ、そうじゃないと面白くない! いくぞシンク! エクレールはいないが春の戦いの決着、ここでつけさせてもらう!」

 

「望むところです! うおおおおッ!」

 

 

 同時に足場を蹴った瞬間、フィールド上でサテライトエッジとパラディオンが激しく打ち付けられる。一瞬だけ拮抗すると尊は体格差を利用して押し崩そうとするが、春の戦いで得た教訓からシンクは真っ向から受けようとせず、パラディオンに込めた力を意図的に緩めることでサテライトエッジの攻撃を受け流す。

 相手の体勢を若干崩せたのを見るなり、シンクは受け流した勢いを利用してそのまま側頭部を狙う。一方受け流された時点でそこへの攻撃の可能性に至ったのか、尊もすぐに腕を掲げて攻撃を防ぐ。パラディオンの柄を受け止めたことでびりびりと衝撃が伝わるが、彼の口元には楽しそうな笑みが浮かんだ。

 パラディオンごとシンクを蹴り飛ばして足場に着地し、サテライトエッジをハルバードからツインソードに切り替え再度突っ込む。

 

 

「オラァ!」

 

「なんのぉ!」

 

 

 飛ばされたシンクもまた着地するなりパラディオンを分割し、ロッドから双短槍に変形させると真っ向から迎え撃つ。

 

 

「魔法は使わないんですか、尊さん!」

 

「せっかくの一騎打ちだ! 同じ条件で戦ったほうが面白いだろ!」

 

「じゃあ思わず使わせてしまうまで追い詰めさせてもらいます!」

 

「言ったなこいつ!」

 

 

 二人は自分たちの戦いに没頭し、足場の悪いフィールドを互いに輝力武装などで補いながら縦横無尽に駆け巡る。

 そんな彼らとはまた別に、同じフィールドにいた三人もそれぞれ戦いを始めていた。

 

 

「はあっ!」

 

「ふっ! セイッ!」

 

 

 七海の繰り出すエクスマキナの突きを回避し、愛刀『虹』で反撃をするクロノ。

 その瞬間を隙と見たのか、上空からブランシールを操りながらキャラウェイが紋章術を放つ。横やりを察知して二人同時にその場から離脱し、お返しとばかりに紋章砲や魔法をお見舞いする。紋章砲は回避できたがサンダーがブランシールの翼に直撃したことで飛行困難となり墜落。キャラウェイは落下中にどうにか足場に退避できたが、アドバンテージであった制空権を喪失する結果となった。

 

 

「流石ガレットの勇者様に異世界の戦士殿ですね。まさか、自慢の空中戦から引き釣り降ろされるとは思いもしませんでした」

 

「悪いね。元いた世界じゃ空飛ぶ魔物がいっぱいいたから、上から攻撃されるのは慣れっこなんだ」

 

「なるほど…ですが、私にもエッシェンバッハ騎士団指揮隊長の意地があります。地上に落とされたからと言って、簡単にやられるつもりはありませんよ」

 

「ふふん、そうこなくっちゃ。けど、最後に勝つのはあたしです!」

 

「いや、俺だね!」

 

 

 七海の宣言に負けじと主張するクロノ。三人のにらみ合いが発生するが、膠着状態はそう長くは続かなかった。

 

 

『――はーっはっはっは! 残念じゃったな勇者たち! タイムアウトじゃ!』

 

 

 戦場に響いた力強い放送により――一部を除いて――各所で戦いの手が止まる。

 見上げた空中ディスプレイには先ほどの放送の主、クーベルの姿が映し出された。

 

 

『我がパスティヤージュの秘密兵器が、今ここに爆誕じゃー!』

 

 

 大げさなクーベルの動きに合わせてカメラが動き、緊張した面持ちのレベッカが映し出される。

 その映像を見てミルヒやサラはまさかと期待に満ちたまなざしを送り、映像を見守る兵士たちも彼女がどうなるのかと固唾を飲んで見守る。

 やがてカメラの向こうで何かやり取りがあったのか、レベッカは小さくうなづくと右手の人差し指に嵌めた指輪を眼前に突き出し、そのまま頭上へと掲げた。

 

 

『――装着!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...カァーッ…カァーッ……

 

 

 ……しかし彼女の宣言とは裏腹に何も起こらず、上空のカラスの鳴き声だけが虚しく響く。

 

 

『……あ、あれ?』

 

 

 レベッカも不発かと思い指輪を目の前に持ってくると、突然指輪から強い光が迸った。

 光はレベッカの右手を包み込むように広がり、やがて体まで包み込むと彼女を体ごと上空へと持ち上げた。

 やがてひと際強い光が弾け、中から黄色と白を基調にした服を纏ったレベッカが宙に浮く箒に乗って現れた。

 

 

『だーっはっはっは! みさらせ! これがウチの――パスティヤージュの飛翔系勇者、レベッカじゃ!』

 

 

 クーベルの宣言とともに、バトルロイヤルは中盤戦へと推移する。




本編75話、いかがでしたでしょうか?

アニメでも話題になったベッキーの変身シーンですが、改めて見直しても少々文に起こしにくかったためカットしました。
また、どこかの回でも宣言したかもしれませんが本作はラストのプロットまで完成しているので、時間をかけて完結を目指すことは確定しています。
しかし依然と比べ時間に余裕ができたとはいえ、執筆速度は相変わらず不安定なものになると予想されますが、どうかご容赦を。
さて、次回はまたほかの戦域でどうなっていくのかを書いていきます。予定ではあと4話ほどでバトルロイヤルが終了し、ちょっと休憩回を挟んでオリジナル展開に進む予定となっています。
しかしそこにたどり着くのはいつ頃になるのだろうか……。

それはさておき、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。

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