さて、今回は新章が始まるまでの空白期にあったことを書いてみました。
気持ち的にはコミックの末尾にある4コマのノリで書いていますので、飛ばして読んでも構いません。
それでは、どうぞ。
◇「お土産」
「さて、お待ちかねのお土産タイムだ」
目の前にいる面々、クロノたちに向けて尊は日本で買ってきたお土産の開帳を始める。
それを待ちわびていたクロノやマールは瞳を爛々と輝かせ、今か今かと待ちわびていた。
「まず全員に向けたお土産だ。立ち寄った店で物産展をやっていたから、お菓子や名産の食べ物なんかを買い込んだ。好きに食べてくれ。 で、個別のお土産はマールにはサラが選んだアクセサリーセット。ルッカには俺からノートパソコンだ。レレイが買ったものと同じようなものだから、使い方は相談しあってみてくれ」
「ありがとうございます! サラさん、ミコトさん!」
「大切に使わせてもらいます!」
二人が嬉しそうに品物を受け取るのを見送り、続いてエイラとカエル、魔王に向き直る。
「エイラには上等な肉を、カエルと魔王には酒とそれに合いそうなつまみを買ってきた」
「肉! 助かる!」
「お前の世界の酒か。ありがたく飲ませてもらおう」
「……悪くはないな」
三者三様の、しかしおおよそ予想していた反応に満足して今度はロボと三人集へのお土産を取り出す。
「ロボには正直どういったものがいいか悩んだんだが、悩み抜いた結果、装甲を磨くためのワックスを選んだ。三人にはカエルたちと同じく、酒とつまみだ。それぞれに用意しているから、じっくり飲んでくれ」
「わざわざドウモ」
「ありがたく頂戴いたします」
「ガイナー、オルティー。今晩にもどうだ?」
「うむ、早速いただこう」
それぞれが喜んでお土産を受け取り、尊は最後の一人に向き直る。
「待たせたな、クロノ」
「よかった、俺だけないのかって心配しましたよ」
「心配しなくても大丈夫ですよ。クロノにピッタリのお土産を選んできましたから」
サラの口から自分にピッタリのお土産と聞き、クロノの期待は否応にも高まった。
そして尊が亜空間倉庫からそれを取り出し、クロノに差し出す。
「こ、これは……!」
「これが、サラが選んだお前のお土産だ」
わなわなと声を震わせてクロノが受け取ったのは細長い茶色の――
――木刀だった。
「刀を使うクロノにピッタリだと思ったので。 大切にしてくださいね」
「……アリガトウゴザイマス」
屈託のない笑顔から純粋に喜んでもらえると思い選ばれたのだろうと感じ、クロノは複雑な心境でそれを受け取った。
その夜、難民キャンプの広場でどこか悲しげな表情で木刀を振るうツンツン頭の少年の姿が目撃されたと言う。
◇「混ぜるな危険」
「イタミ殿より面白いからと勧められたのだが、これはどう見ればよいのだ?」
預かったDVDを手に頭を捻っているのは尊に忠誠を誓うクロノ世界の魔物、デナドロ三人集である。
伊丹が異世界の人間たちにアニメや漫画を布教させようと行動を起こし、その波が彼らにも届いたのだ。
しかしながらDVDだけを手渡されても彼らにはどうすればいいのかわからず、こうしてパッケージを眺めているだけにとどまっていた。
「――オヤ、どうシマシタカ?」
そこへ通りがかったロボが声をかけると、三人はおお、と声を上げる。
「ロボ殿。実はイタミ殿よりこれを見てみるといいとお借りしたのだが、どのように見るのかわからない有様でして」
「光学ディスクデスカ。これでしタラ、組合事務所にあるプレイヤーで再生が可能デス。今は誰も使用シテイないハズなので、よろしければ再生方法を教えマスヨ?」
「かたじけない」
ロボの協力と組合事務所で仕事をしていた人に許可をもらい、三人はさっそく視聴を始めた。
…………。
…………………。
――ヒケン...ツバメガエシ!
テレビの中で着物の男があり得ない長さの刀を振るい、青い騎士に襲い掛かる。
三方向から全く同時の斬撃を放つその姿に、三人集は心を震わせていた。
「なんと……これほどの剣技を扱う者が居ようとは……」
「是非とも体得したいものだな。しかし戯れで燕を落とそうとしたところから始まったというが、果たして我らにもできるかどうか……」
「弱気になってどうする。この者ですらその極地に至れたのだ。我らとて努力すれば、きっと届くはずだ」
「……そうだな。試してもいないのに諦めるなど、我ららしくもない」
「ならば目指そうぞ! 一文字かまいたちを体得できた我らだ、出来ぬはずはない!」
その日から彼らは暇を見てはテレビの向こうで繰り広げられた剣技を思い出し、毎日毎日剣を振るう。
アニメに影響されて始めたと聞いて自衛隊は笑って済ませたが、これが後に新たな伝説を打ち立てるきっかけになろうとは、この時点では誰も思わなかった。
◇「輝力で遊ぼう!」
参考人招致から戻って間もないある日の昼下がり。
食後の運動としてクロノやカエルと模擬戦をこなした尊はステータスを眺めながらふと思った。
「――ゴールドピアスを回してもらったってことは、輝力武装もちょっとは無茶できるってことだよな」
以前からフロニャルド以外で輝力を発動した際に消費されるMPの量を気にしていたのだが、マールにゴールドピアスを使わせてほしいと頼んだところ、シルバーピアスと交換の条件で譲ってもらったのだ。
これにより計算上は以前の倍は魔法と精神コマンドを使用でき、単純計算でベースジャバーの飛行距離も倍となった。
そして最もMPの消費が激しかった輝力武装の展開も今までの半分で展開できるようになり、かなり巨大なものも作り出せるようになったわけだ。
その事実を認識したところで、尊は思いついたように立ち上がると誰の邪魔も入らない広い場所に出る。
「荒野って土地のシチュエーションを考えたら……これなんか面白そうだ」
頭の中で固めたイメージを輝力で展開させる。青白い光が巨大な形を形成し、全高18メートルを超えるそれを作り出す。
重厚なボディーに黒と紫のカラーリングが施され、左胸の砲門がキラリと光る。頭部のモノアイは特地風に言うならサイクロプスを彷彿させ、見る者に多大な畏怖を与える。
そして自衛隊の心には、とてつもない衝撃と子供心を刺激した。
◇
「た、隊長! 伊丹隊長!」
いつものように木陰でのんびり同人誌を鑑賞しているところへ部下の騒々しい声が聞こえ、伊丹は体を起こす。
「どうした、倉田。そんなに慌てて。炎龍でも出たか?」
ささやかなひと時を邪魔されて少し投げやり気味に尋ねるが、返ってきたのはあまりにも予想外の物だった。
「ドムです! 難民キャンプの近くでドムが出ました!」
「……ドムって、ガンダムの? 黒い三連星の?」
「そうです! 踏み台にされたり3分で12機やられたりしたあれっス! 一機だけですけど、間違いないっス!」
そんな馬鹿な、と思った伊丹だが、直後に基地が慌ただしくなり複数のヘリが飛び立つのが見えた。
流石にこれはただ事じゃないと思い、事実確認のために走り出す。塀の上に出て双眼鏡を構えると、確かにいた。
「おおおお!! マジだ! なんだあれ!?」
「でしょお!」
二人して騒いでいると、伊丹がそれを見つけた。
ドムの肩に乗り、様子を見に来たヘリの隊員に説明をしている尊の姿を。
「……まさか」
思い立つなり倉田を連れて車の元まで走り、現場に急行する。既にかなりの人が集まっており、その中心でドムはポージングの基本ともいえるS字立ちを維持していた。
車から降りるなり伊丹は声を張り上げ、今回の騒ぎの張本人であろう人物に問いかける。
「みぃことくーん! このドムどぉーしたぁー!?」
その声が聞こえたのか、ドムの肩にいた尊は飛び降りるとうまい具合に着地して伊丹の元にやってくる。
「すいません、騒がせてしまって」
「いや、それよりこのドム本当にどうしたの? 今朝にはなかったっしょ?」
「ベースジャバーと同じですよ。ある都合で輝力武装が今まで以上に使えるようになったので、そのテストに作ってみました」
「なるほど……でもなんでドム?」
「ガンダムかザクにしようか悩んだんですけど、周りの土地が主に荒野ってことを考えたらコイツが先に出てきまして」
伊丹と倉田、そして周りで会話を聞いていた話の分かる自衛官たちも納得した。
ドムの特徴は足に備わったホバーによる図体に似合わない機動性だ。その真価を見せつけたのは0083とUCのトリントン基地襲撃や、ガンダム本編でのジェットストリームアタックのシーンなどだ。特に広々とした荒野の土地をホバーで駆け抜ける姿は実にマッチしている。(※なお、作者はUCのホバーしながらマシンガンをぶっ放すドム・トローペンがお気に入り)
「ただ再現できたのは外装だけで、中身はスッカスカの張りぼてです。それと他の輝力武装の例にもれず、ちょっとした衝撃で消滅します」
「ガンダム立像と同じようなもんか」
「今は無理ですけど、魔力が回復したら鍔迫り合いを利用して1号機と2号機の戦いも再現できると思います」
「おーい! 写真撮らせてもらっていいか!?」
別の方からそんな声が上がり、その場はしばらく自衛隊によるドムとの撮影会場となった。
後日、その時の写真がネットに流れ様々な反応が世間を賑わすこととなるが、それはまた別の話。
空白期の閑話一発目、いかがでしたでしょうか?
次回は少しシリアスを含めた閑話を一話投稿しようと思います。
それが終わればいよいよ新章となります。
早めに投稿できるよう努力しますので、今しばらくお待ちください。
それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。