Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもこんにちわ、質が落ちたという評価を受けて展開をどうするか悩んでいる作者です。

さて、今回はアニメ8話の参考人招致回となります。
長くなったので二回に分けましたが、おおよその長れは原作と変わりません。

それでは本編第64話、どうぞご覧ください。


第64話「参考人招致 前編」

 見慣れたビルに見慣れた道路、そして至る所に目につく文字には懐かしさすら感じられる。

 三つの世界を渡った経験からこの世界の空気はやはり汚いと実感できるが、それすらもどこか心地いい。

 寒さとはまた別の感覚でふるふると体を震わせ、こらえきれないとばかりに彼は叫ぶ。

 

 

「――日本よ、私は帰ってきた!」

 

 

 世界の境たる門を潜り抜けて数分。両腕を広げた尊は感動のあまり某少佐のようなセリフを放ち、大きくガッツポーズをとった。

 突然のリアクションに特地の三人娘は何事かと目を張り、彼を慕うサラは別の場所とはいえ自分の国に帰ってこれた嬉しさの表れなのだろうと思いながらその光景を見つめていた。

 彼らがいるのは日本の銀座。数ヶ月前、この場所で帝国の侵略によって端を発する銀座事件が起こった。

 逃げ惑う無力な人々に容赦なく刃を向け、死体の山に侵略の証として旗を立てた帝国。だがその場に居合わせた伊丹の咄嗟の機転で皇居に人々が避難し、鎮圧のために行動を起こした自衛隊と警察隊によって戦場の拡大が防がれることとなった。

 あれからおよそ4ヶ月の月日が流れ、銀座はまだ一部立ち入り禁止区域があるもののかつての賑わいを取り戻しつつある。

 そんな中、尊を除いた他の6名は改めて辺りの建物に目を向ける。

 何階にも分けて建てられたビルが軒を連ね、さながら摩天楼の集合体ではないかとピニャは思う。

 近くのビルは自衛隊が間借りしているのか、外から覗くガラスの向こうでは談笑する人の姿も見て取れる。

 

 

「これが……ミコトさんのいた世界」

 

【狭い土地を有効的に使っているのね】

 

【イタミの国って、それだけ狭いってことぉ?】

 

【もしくは人口がとても多いのかもしれない】

 

 

 そんな会話が耳に届いたのか、尊はにやりと笑って彼女らの疑問に答える。

 

 

「日本は全国的に山が多く平坦な土地が少ないから、テュカが言ったように狭い土地を有効的に使うようになってきたんだ。ちなみに国の面積が世界的に見てもそこまで大きくなくのに対し、逆に総人口は多くおよそ一億二千万人。この東京だけで約1300万人は存在している」

 

「そ、そんなにいるんですか!?」

 

 

 まさに桁違い。教えられた4人はあまりの数字に言葉を失い、日本語がわからないピニャとボーゼスは目に見える日本から帝国との技術差に圧倒され、絶望的な未来が頭を占めていた。

 やがて伊丹から声がかかり、7人は受付の前まで移動する。そこへ、フェンスの向こうから狡猾そうな笑みを浮かべた男が現れ伊丹に歩み寄る。

 

 

「伊丹二尉ですね? 情報本部から参りました、駒門です。今回は皆さんのエスコートを申し付かっております」

 

「……おたく、公安の人?」

 

 

 その問いに駒門と名乗った男は笑みを浮かべ、くつくつと笑う。

 

 

「わかりますか? 流石は英雄殿だ」

 

「たまたまだよ」

 

「ほう、あれほどの経歴を持ちながらたまたまと言うかい」

 

 

 懐から手帳を取り出し、駒門はそこに記した調査内容をどこか面白そうに読み上げる。

 

 

「一般幹部候補生課程の成績は、同期から怪我人が出たためブービー。任官後の評価は不可にならない程度に可。業を煮やした上官に幹部レンジャーに放り込まれなんとか修了。その後は何故か習志野に異動し、素行に難ありとして三尉に留め置かれていた。が、例の事件で二尉に昇任した…と」

 

「……よく調べてるねぇ」

 

「クククッ。月給泥棒、オタク、隊内ではコテンパンだねぇ」

 

 

 おおよそ今の人物像と変わらないその情報に部下である富田、栗林を含め尊たちは苦笑を漏らす。

 しかし、直後に放たれた駒門の一言が全てをひっくり返した。

 

 

「――そんなあんたがなんで『S』なんぞに?」

 

「……え、ええ、えええええ゛え゛え゛え゛え゛!?」

 

「く、栗林さん!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

 『S』という単語に発狂したように叫ぶ栗林へ尊とサラが声をかけるが、彼女は頭を抱えたまま固まっていた。

 今の彼女はどうにもならないと見切りをつけ、同じく単語の意味を知っているであろう富田に質問を振る。

 

 

「と、富田さん。『S』ってなんですか?」

 

「特殊作戦群……特戦群とも呼ばれる部隊なんですが、グリーンベレーやデルタフォースのようなものと言えばわかりますか?」

 

「ぶっ!?」

 

 

 人目も憚らず尊は噴き出す。グリーンベレーやデルタフォースという単語はゲームや漫画で馴染み深く、どういう組織なのかもその手の知識で得たのでよく知っている。

 しかし、しかしだ。普段の素行を知る者たちにとって目の前の男(伊丹)がそんな特殊部隊の出身だと言われて、驚くなという方が無理である。

 現に一名、驚きのあまりヒスを起こしているものがいるのだから。

 

 

「うう嘘よぉー! 嘘だと言ってぇぇぇ! こんな人がレンジャーな上に特戦群とかありえないぃぃぃぃぃ!!」

 

「シノさん落ち着いてください!」

 

 

 涙目になって現実を否定している栗林をサラが必死に落ち着けようとしているが、まったく意味を成していない。

 そんな光景を駒門は腹を抱えて笑い、働き者の中で怠け者を演じる伊丹を尊敬するとして敬礼を送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 伊丹さんの衝撃の経歴を聞かされて直ぐに用意されたバスへ乗り込む。終始、栗林さんがこれは夢なんだと繰り返して現実逃避をしていたが、やがて受け入れたのか忘れるかしたのかおとなしくなった。

 バスの窓から見える景色はありふれた日本の景色のはずなのに懐かしく感じ、後ろの席ではサラとレレイたちが街頭に設置されたクリスマスツリーについて何かのおまじないかと考察している。

 答えてやってもいいんだが、一度解説したらあれもこれもとなりそうだな。

 

 

「――ところで、このバスって国会に直行してるんですか?」

 

「いや、まず服を整える。そのあと飯食って、国会に向かう」

 

「テュカさんがジーンズですからね。国会にあの服で行けば、叩かれるのが目に見えますよ」

 

 

 なるほど。今回の招致で日本の服を着ているのはテュカだけだ。レレイやロゥリィはあっちでもよく来ている服装だし、俺とサラもクロノ世界やフロニャルドで入手した服ばかり着ている。

 ……そういえばこっちに来る前に通訳の報酬とかで日本円をもらってたな。それも結構な額で。時間があれば服とか買いに行きたいところだ。

 などと思っているうちにバスは大手のスーツ販売店で止まり、そこでテュカのスーツを一式購入。はっきり言って耳が人間と同じなら就職活動をしている学生に見えなくもない。

 ロゥリィとレレイもどうかと勧められたが、レレイは簡潔に不要と、ロゥリィはゴスロリ服が神官の正装だからいらないと答えた。ゴスロリが正装ってなんだよ、エムロイ教……。 

 

 

「月崎君とサラちゃんもいらないの?」

 

「私も自分のがありますから」

 

「俺は一応、旅の戦士ってことになってますからね。それらしい装備で行った方が説得力あるでしょ?」

 

 

 レレイやロゥリィが許されて俺がダメなんてこともないだろう。サラは別の場所でピニャ殿下たちの通訳として向かうから、国会には行かないのでスーツは不要だ。

 一先ずスーツの問題を解決し次に食事をということで再びバスに乗り込んだのだが、銀座で飯なんて食ったことないし、何より高級店しかないイメージが強いので何処で食べるのか皆目見当もつかない。

 

 

「――で、これっすか」

 

「前に言ってたでしょ? 牛丼とかハンバーガーが恋しいって」

 

「いや、確かに言いましたけど……まあ、いいや」

 

 

 目の前に鎮座するのは「早い、安い、うまい」でおなじみの庶民の味方、牛丼である。

 伊丹さんによれば参考人招致に出ている間は出張費扱いで、食事代は一食500円しか出ないらしい。まあこのあたりでその価格内に収められるものを考えたら至極納得なのだが、何とも世知辛い。

 それはともかく、本気で久しぶりの牛丼だ。(ツユ)だくで頼んだ一杯に生卵を投下して米と肉に十分絡ませ、そこへ紅ショウガと七味をトッピング。

 いただきますと宣言し、さっそく口の中へ運ぶ。肉の味と卵、そしてご飯がよく絡み合い七味と紅ショウガがピリッと舌を打つ。うむ、牛丼はこうでなくては。

 ちらっと隣を見てみればサラたちが実に美味そうに牛丼を食べており、後ろのテーブル席に目をやると未知の味が気に入ったのか一心不乱に牛丼を食べるピニャ殿下たちがいた。

 その反応が昔テレビで見た初めて牛丼を食べる外国人とよく似ているが、牛丼でこれならカツ丼を食べさせたらどんな反応をするのかちょっと気になるところだ。

 そんな考えもあった食事タイムが終了し、バスはついに国会議事堂へと辿り着く。ここでサラとは一度別れるのだが、こればかりは仕方ないな。

 

 

「じゃあサラ、そっちは頼んだ」

 

「わかりました。ミコトさんも頑張ってくださいね」

 

 

 笑顔で見送られ、俺も軽く手を上げてバスを降りる。本当ならハグのひとつでもしたかったが、場所が場所だ。また今度にしよう。

 

 

「それじゃ、行こうか」

 

 

 伊丹さんが先導し、俺たちもそれに続く。さあ、どんな質問が飛び出してくるのやら。

 

 

 

 

 

 

 日本では国会内でのやり取りをテレビで中継しているが、普段からその様子を興味深そうに視聴している人などそう多くはない。

 しかし、今回の国会中継は違った。誰もがテレビやスマホのチャンネルを国会中継に合わせ、各都市の街頭テレビも同じように放送をしている。しかも日本国内のみならず、ネット中継を利用して様々な国の人が一国家の中継に注目していた。

 何故か。その理由はテレビのアナウンサーの言葉に全て込められていた。

 

 

『――銀座事件からおよそ4ヶ月。今回初めて現地の自衛隊員のほか、保護された特地の住人を参考人として招いての質疑応答が行われます』

 

 

 今まで誰もが門の向こうがどうなっているのか知りたかった。今回はついにその一端がわかるということで、世界の目が国会中継に注がれていた。

 アナウンサーが国会の様子を中継する中、議会でのざわめきが一際大きくなる。

 自衛隊特有の緑色の制服を纏った伊丹を筆頭に、杖を持った青い髪の少女。スーツを着た金髪に長い耳の少女。布で覆われた何かを手に黒地に赤いフリルが付いたゴスロリ服を纏い顔をベールで隠した少女。そして黒いマントに白金のベストを着けた仮面の男が入場し、一斉にシャッター音が鳴り響く。

 

 

「これより、参考人に対する質疑に入ります」

 

 

 それぞれが席に着いたのを合図に、ついに質疑応答が始まる。

 質問者の代表として幸原みずき議員がマイクの前に立ち、民間人犠牲者60人と書かれたフリップを取り出して口を開く。

 

 

「単刀直入にお尋ねします。特地害獣、通称ドラゴンによって自衛隊保護下にあった現地の住民60名が犠牲となったのはなぜでしょうか?」

 

「伊丹参考人」

 

 

 名前を呼ばれて伊丹が席を立ち、対面のマイクに立ち説明をする。

 

 

「えー、それは単にドラゴンが強かったからですかね」

 

「なっ、何を他人事のように! 尊い命が失われたことに責任は感じないのですか!?」

 

 

 あまりにもあっけらかんとした発言に幸原は虚を突かれ、ふざけるなとばかりにフリップを叩く。

 しかし伊丹は気にしないとばかりに、当時の状況を思い出しながら淡々と続ける。

 

 

「大勢の人が亡くなったことについては、残念に思います。あと、こちらの力不足を感じましたね」

 

「! それは、自衛隊の対応に非があったことを認めるということですね!?」

 

「いえ、不足していたのは銃の威力です」

 

 

 ここぞとばかりに問うた幸原の言葉を伊丹はバッサリと否定する。

 

 

「7.62㎜なんて、まるで豆鉄砲でしたよ。もっと威力のある武器があればと、心底思いました。荷電粒子砲とか重力子爆弾とかはともかく、実用の目処が立ちつつあるレールガンでもあれば状況は変わったんじゃないかと」

 

「それをどうにかするのがあなたたちの役目ではないのですか!?」

 

「あー、委員長、よろしいでしょうか?」

 

 

 一方的に考えを押し付けようとした幸原の発言を見かねたのか、一人の議員が補足をするためにマイクの前に立つ。

 

 

「自衛隊が持ち帰ったサンプルを解析した結果、ドラゴンの鱗はタングステン並みの硬さを持ちながら重量はその7分の1しかなく、それに加え高温の火炎を広い範囲にわたって吐き出す空飛ぶ戦車並みであることが分かりました。このような生物を相手にして犠牲者をゼロに留めろと言うのは、いささか酷な話ではありませんか?」

 

「……いいでしょう。先ほどの発言を訂正します」

 

 

 ドラゴンのスペックがいかに凶悪であるか理解したのか、幸原はバツが悪そうに答えると次の人物を指名する。

 

 

「では、レレイ・ラ・レレーナ参考人にお尋ねします。 日本語は分かりますか?」

 

 

 指名を受けたレレイがマイクの前に立ち、「わかる」と日本語で答える。

 それだけなのに議員たちはざわめき、伊丹は大げさなとため息をついた。

 

 

「結構。今は難民キャンプで生活しているそうですが不自由はありませんか?」

 

「不自由の定義が理解不能。自由でないという意味ならヒトは生まれながらにして自由ではないはず」

 

 

 予想していたものとは違う哲学的な返答に出鼻を挫かれ、幸原は聞き方が悪かったのかと改めて問う。

 

 

「言い方を変えましょう。生活する上で不足しているものはありませんか?」

 

「衣、食、住、職、霊のすべてにおいて必要は満たされている。質を求めるときりがない」

 

「では60名もの死者が出た原因として、自衛隊の対応に問題はありませんでしたか?」

 

「ない」

 

 

 きっぱりと返答をされてはこれ以上望む答えは来ないと判断したのか、質問を終了して次の人物へと移る。

 続いてマイクの前に立ったのは、テュカだった。

 

 

「私はエルフ。ロドの森の部族、ホドリュー・レイの娘。テュカ・ルナ・マルソー」

 

 

 自らエルフと名乗ったことでテレビの向こうではまさかという声が上がり、幸原ももしやと思い確認するように尋ねる。

 

 

「失礼を承知でお尋ねしますが、その耳は本物ですか?」

 

【その耳は本物かどうか聞いている】

 

 

 聞き取れなかった部分をレレイが補足し、テュカは納得したように髪をずらして耳の根元を見せる。

 

 

「ええ、自前ですよ。触ってみますか?」

 

 

 ぴょこぴょこと動かして見せた瞬間、ネットを含めて世界は騒然となった。

 某呟きサイトや大手掲示板ではこぞって『エルフキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!』だの『なん、だと……!?』だのとコメントが溢れ、場内では議員たちがマナーもクソもなく手持ちの携帯電話で写真を撮りまくる始末だ。

 委員長が必死に「静粛に!」と声を張り上げるが、手にした携帯電話にはちゃっかりとテュカの姿が撮影されていたりする。

 どうにか騒ぎが収まったのを見計らい、幸原が改めて質問を飛ばす。

 

 

「ドラゴンに襲われたとき、自衛隊の対応に問題はありませんでしたか?」

 

「……よく覚えてない。その時、気を失っていたから」

 

「……結構です」

 

 

 腹の中では忌々しそうに思いながらも表面上は仕方ないといった風に話を打ち切り、次の人物へと視線を向ける。

 

 

「ロゥリィ・マーキュリー参考人」

 

 

 委員長の名指しで三人目の少女、ロゥリィが席を立ったのをみて幸原はほくそ笑む。

 

 ――黒服にベール……きっと喪服ね、都合がいいわ。

 

 今度こそ自衛隊の非を突き付ける材料になるだろうと内心で喜び、気持ちを切り替えるように咳ばらいを一つして質疑を始める。

 

 

「難民キャンプではどのような生活をしていますか?」

 

「単純よぉ。朝目を覚ましたら生きる、祈る、そして命を頂き祈り、夜になったら眠る。大体こんなところかしらねぇ」

 

「い、命をいただく?」

 

「食べること、殺すこと、エムロイへの供儀、色々よ」

 

「……なるほど」

 

 

 エムロイへの供儀というのは理解できなかったが、前半の二つから日本でいうところの魚や肉に対する「いただきます」かと納得し、本命の話を切り出す。

 

 

「次の質問です。見た所あなたは大切な人を失ったようですが、そうなった原因が自衛隊にあるとは思いませんか?」

 

「? 【ねえ、レレイ。この人はなにをいってるのぉ?】」

 

【大切な人がいなくなった原因はジエイタイにあるのではないかと聞いている】

 

【意味が分からないわぁ】

 

 

 呆れたようなロゥリィの言葉を受け、レレイは幸原が亜神について知らないと思い通訳をしながら補足をしようと試みる。

 しかし、その言葉も説明しようとした人物に阻まれてしまい伝えることが叶わなくなった。

 

 

「資料によれば、ドラゴンの襲撃を受けた際に避難民の10分の1を犠牲にしておきながら、自衛隊員には死者どころか重傷を負った者すらいません。身を挺して戦うべきだった人間が自身の安全を第一に考えたその結果、民間人を危険に晒したのではないでしょうか!?」

 

 

 捲し立てるように自分の考えを強く推すその姿にロゥリィはまた呆れるが、それを幸原は自衛隊の非を引き出せると確信したのか大げさに手を広げて叫ぶ。

 

 

「さあ、話してください! 貴女が見た、自衛隊の本当の姿を!!」

 

 

 勝利を信じて疑わない彼女はロゥリィの口から語られる話を元に、一気に自衛隊を糾弾し悪に仕立て上げるつもりでいた。

 そしてロゥリィは大きく息を吸い、マイクに向かって思いっきり叫んだ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

『あなたおバカぁぁぁ!?』

 

 

 

キィィィィィィィィィィィィィィン!!

 

 特大のハウリングが場内を支配し、その場にいた全員の耳を襲う。

 まだある程度の耐性がある議員たちは顔をしかめて耳を抑える程度にとどまったが、初めて味わったテュカとレレイは耳を抑えたまま何事かと辺りをきょろきょろ見渡した。

 一方、予想外の展開に見舞われた幸原はロゥリィの発言に耳を疑い、恐る恐る尋ねる。

 

 

「い、今なんと……?」

 

「あなたはおバカさんですかぁ? と尋ねたのよ。 お嬢ちゃん?」

 

 

 独特の口調で語りかけながらベールを上げ、ロゥリィはその妖艶な笑みを晒すのだった。




本編第64話、いかがでしたでしょうか?

後編を投下した次の話あたりで箱根山中夜戦になると思います。
ほんの少しですが何気に書きたかった展開がここにあるので、楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。




◇没シーン◇
 やがて伊丹から声がかかり、7人は受付の前まで移動する。そこへ、フェンスの向こうから狡猾そうな笑みを浮かべた男とトレンチコートの男が現れ伊丹に歩み寄る。


「伊丹二尉ですね? 情報本部から参りました、駒門です」

「同じく鎧衣です。今回は皆さんのエスコートを申し付かっております。どうぞよろしく」

「……おたくら、公安の人?」

「クククッ、分かりますか? 流石英雄殿だ」

「たまたまだよ」

「ほう、レンジャー持ちにして特戦群出身という並のエリートではない経歴を持ちながらたまたまとおっしゃいますか。ならば私は並のエリートから外れたあなたをSES……スーパーエリートソルジャーとでも呼びましょうか?」

「なんかダサいネーミングだ」



書いている最中に突如として沸いてきました鎧衣課長。
MLOWも続きを書かないといけないんですが、時間とかネタとかがががががが

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