さて、なんだかんだで連日投稿に成功した今回は炎龍との初戦になります。
原作と比べて本作の炎龍はスペックアップがされております。
具体的な内容はあとがきにて。
それでは本編第56話、どうぞご覧ください
【え、炎龍だあああぁぁぁぁぁ!!】
避難民から悲鳴が上がると同時に炎龍は大きな翼を羽ばたかせ、村人の列に向かって飛翔すると凶悪な口から火炎を吐き出す。
広範囲に渡って灼熱の炎が猛威を振るい、命拾いした人がいれば一瞬にして消し炭になってしまった人もいた。
「戦闘用意!」
「オオオオオオ!」
先頭の車両で伊丹が叫び、別の場所では足をもつれさせて倒れた親子を守るようにロボが体を滑り込ませ、炎龍に向かってロケットパンチを放つ。
しかし大したダメージは見受けられず、炎龍は軽く身震いすると逃げ惑う人々に向かって再び炎を吐く。
「なんだこいつのデカさは!? ティラン城で戦ったブラックティラノなんざ目じゃないぞ!」
「逆に考えるのよ! 図体が大きいということは攻撃を当てやすいはずだから!」
パニックで怪我をした女性を抱えながらカエルが愚痴り、ルッカは即座にミラクルショットを構え炎龍に向かって三連射。
だが炎龍はその巨体に似合わない機動力で全弾回避し、大口を開けて近くの村人を食いつぶそうとする。
そこへチーターの如き速さで四つの影が駆け抜け、炎龍に飛び掛かる。
「やらせはせんぞ!」
「我らの自慢の一撃!」
「受けてみるがいい!」
「ラアアアアァァァァァァ!」
ガイナー、マシュー、オルティー、エイラがその頭部に攻撃を加え、炎龍の意識を自分たちに向けさせる。
速さを生かした斬撃の乱舞を繰り出す三人集と自慢の拳を叩き込むエイラだが、その鱗の強度は彼らの予想をはるかに超えていた。
「コイツ、すごく硬い!」
「ならば腹はどうだ!?」
オルティーが比較的肉質が柔らかそうな腹部に向けてかまいたちを放つが、目立った効果は表れなかった。
「な、なんという鱗だ! ルインゴーレムをも切り裂く一撃がまるで効かんとは!」
「一度退くぞ! 我らがいては御館様たちが魔法を放てぬ!」
ガイナーの合図で逃げそびれた人たちを抱えながら4人は一気に離脱する。
そこへ自衛隊からの射撃が入り、炎龍の眼が高機動車や装甲車を捉える。
「怪獣と戦うのは自衛隊の伝統だけどよ! なにもこのタイミングでドンパチやるこたないだろ! 倉田ぁ! 走れ走れぇ!」
「
桑原の叱咤が轟き、伊丹の命令で各々が手持ちの武器で攻撃を続ける。
しかし豆鉄砲でも受けているかのように炎龍は平然としており、大きく息を吸い込みタメを作る。
「マズッ! ブレス来るぞ!」
その動作が何なのか直ぐに理解できた伊丹は声を張り上げ、回避の指示を飛ばす。
各車両が射線から離れるように進路を取ると、ほぼ同時に先ほどまで自衛隊がいた場所を炎が通過した。
「クロノ! 魔王! 頼むぞ!」
「はい!」
「しくじるなよ、貴様ら!」
輝力武装のベースジャバーを展開し低高度を移動させる尊が同乗者の二人に合図をし、三人は同時に右手に雷を宿らせる。
『『『サンダガ!!』』』
真昼の空に雷鳴が響く。
連携技の『エレクトリッガー』が炸裂するが、これさえも炎龍は少し怯んだ程度のダメージしか受けなかった。
「嘘だろ!? 物理だけじゃなく魔法にもここまで強いのか!?」
「まったく効いていないわけではない! ボヤく前に魔法を撃て! 『ダークミスト』!」
動揺するクロノに魔王が叫ぶ。
尊もそれに倣って魔法を放とうと思ったが、炎龍の狙いが自分たちに向いたのを感じて直ぐに離脱を図る。
「ミコト! 何故離れる!?」
「あまり近すぎると伊丹さんたちが迂闊に銃を使えない! それにベースジャバーは一撃でももらったら消滅する! 火炎ならともかく味方の流れ弾を喰らって地面に落ちるなんてのはご免だぞ!」
端的に答えながらサテライトエッジをブラスターで取り出し、炎龍の顔に向かってトリガーを引く。
その一撃を炎龍は自身の翼で受け止めるが、思った以上にダメージが効いたのか動きを少し鈍らせ低い声で唸る。
今まで打ち込んだ攻撃で最も効果が得られたのを見てこのまま連射したい気持ちに駆られるが、ブラスターは一定時間チャージしなければ次弾を撃てないことに尊は舌打ちをした。
一方、伊丹たちは鈍くなった炎龍をこのまま釘付けにしようとひたすらに連射をするが、尊のブラスター以上の効果は得られないでいた。
「全然効いてないッスよ! どうするんスか隊長!」
「今は撃ち続けろ! ブレスだけは絶対にもらうな!」
指示を飛ばして新しい
「おわ!? なんだ!?」
【目を狙って!】
肩を掴んだのは気を失っていたはずのエルフで、彼女は言葉が通じないながらも自分の意図を伝えようと必死に叫ぶ。
【目よ! 目を狙うの!】
「……そうか! 目だ! 目を狙え!」
強調される同じような言葉と目を指す動作から伊丹は気づき、改めて指示を出す。
よく見れば、炎龍の左目には矢が刺さっており既に誰かが片目を奪っていることを示していた。
突破口が見つかり攻撃が右目に向かって集中する。これには流石の炎龍も堪らないのか、姿勢を低くして頭を守ろうとする。
「動きが止まった! 勝本、パンツァーファウスト!」
「了解!」
ここで伊丹が現状出せる中で最大の火力を誇る武器を使わせる。
担当を任された勝本三等陸曹はスコープを覗いて照準を合わせようとし、大事なことを思い出す。
「おっと、――後方の安全確認!」
「遅い! さっさと撃て!」
武器の使用上大事な手順ではあるのだが、一秒でも惜しい現状では非常にまどろっこしい工程だった。
今度こそと武器を構えるが、車両のスピードと路面がもたらす振動で照準がまともに定まらない。
どうにか合わせようとする勝本だが、一際大きな振動で手元が狂い照準が定まらないまま弾頭があらぬ方向に発射された。
「ヤバ! ガク引きした! 外れちまう!」
「外れるんなら当てさせるんだよおおぉぉぉぉ!!」
機会をうかがっていた尊がベースジャバーを全速で飛ばして弾頭に追いつき、向きを無理やり炎龍に合わせ離脱する。
迫る攻撃に気づいた炎龍が、弾頭を迎撃しようと大きく息を吸い込む。
【せぇーの!】
それをさせまいと伊丹の車両にいたゴスロリ少女が軽い身のこなしで屋根の上に上ると、自身の武器であるハルバードを大きく振りかぶって炎龍の足元に向けて投擲。
超高速で飛来したハルバードは炎龍の足元に突き刺さると広範囲に渡って大地を割り、炎龍の動きを中断させた。
何物にも阻まれることなく弾頭は突き進み、炎龍に着弾する。
ズドォォォォォン!
「GRUAAAAAAAAAAA!?」
今までの攻撃の比では無い一撃に炎龍が悲鳴を上げる。
弾頭が直撃した場所が良かったのか、炎龍の左腕は付け根から丸ごとなくなっており、傷口からはボタボタと血を垂れ流していた。
ここまで負傷するとは思っても見なかった炎龍は翼を大きく広げると、すぐさま空の彼方へと飛び去って行く。
「……終わったのか?」
だんだんと小さくなっていく炎龍を見ながら誰かがポツリとつぶやき、危機が去ったことに大きく息を吐くのだった。
◇
炎龍との遭遇から数時間。
日が傾いて世界がオレンジ色に染まる中、被害に遭って亡くなった人たちを埋葬し終えた尊たちは手を合わせて黙祷を捧げていた。
600人はいた村人の1割近くが亡くなり、そのうちの半分近くは腕や足だけだったり、酷い人は骨すら残らなかった。
――確かにドラゴンは強かったが、俺はその気になればもっと大きなダメージを与えられたにもかかわらず、ペース配分を重視して強力な精神コマンドの使用をケチってしまった。
最初から『勇気』や『覚醒』を使っていればどれだけの人が救えたかと思うと、燃費重視の戦い方をした数時間前の自分を心底殴り飛ばしたい衝動に駆られる。
「あまり自分を責めない方がいい。むしろあの状況で被害がこれだけで済んだんだ。月崎君たちがいなかったら、最悪俺たちは全滅していた」
伊丹の言うように、開けた場所で無防備な村人が襲われたにもかかわらず犠牲者が百人を超えなかったのはコダ村の村長も奇跡だと言っていたが、尊にとって重要なのはそこではない。
「……俺はもっと被害を出さずにドラゴンを撃退できるはずの力があったのに、それを使わなかった……使えなかったんじゃない、使わなかったんですよ」
「けど月崎君は戦況を考えて、それを使うのが最善かどうかを判断していたんじゃないのか? 少なくとも、俺はその判断は間違ってなかったって思うよ」
「イタミの言う通りだ。それに今更そんな後悔をしても結果は変わらない。60人近い村人が犠牲になり、500人以上の村人を救った。その結果を受け入れろ」
二人の話を聞いていたカエルがそう助言する。
彼の言う通りなのだが、それでもやはり思ってしまう。もっとうまく立ち回れていれば、と。
「今のおまえはガルディア軍にいたころに見た新兵と同じだ。終わったことに対してああしていればと仮定を繰り返し、次の戦場ではあれこれ考えすぎて命を落としていくようなな。――割り切れ、でなければ次はお前が死ぬぞ」
それだけ言い残すとカエルはクロノたちの元に向かい、伊丹が付け足す。
「これだけは覚えておいてほしい。確かに犠牲者は出たが、それでも君たちに感謝している人もいるってことをさ」
もういうことはないとして、伊丹もその場から離れて報告を受けるために隊員のところに向かう。
残された尊は空を仰ぎ、カエルの言葉を反芻する。
「……割り切らなければ俺が死ぬ、か」
呟き、視線をある一点に向ける。
そこには怪我をした村人の治療を終え、先ほどの戦いで親を失った子供の相手をしているサラがいた。
――……そうだ。サラのためにも、俺はここで死ぬわけにはいかない。
割り切るにはまだ少し気持ちの整理がいるが、尊はそれだけはと心に刻み付けて彼女の元へと向かった。
その頃、尊との話を終えた伊丹は黒川と通訳を買って出たロボからの報告に頭を悩ませていた。
「村人のほとんどは身内のところか街や村に避難するとして、問題は身寄りのなくなった子供とお年寄り、それ以外の理由で残った人か。月崎君たちのことも含めると、俺たちについてくるのはざっと40人ってところか」
「村長サンは神に委ねると言っていマス。救ってイタダイタことニ感謝はしているそうデスガ、あちらも自分たちのことで精一杯だソウデ」
「……そっか。じゃあ、仕方ないか」
村長たちはそのまま別の町に向かって移動を再開する。
それを自衛隊の面々は手を振って見送り、頑張れとエールを送る。
やがて村人たちが見えなくなり、伊丹は改めて残った面々に目を向けた。
コダ村の住民23名にエルフ1名、ゴスロリ少女1名に異世界の人間12名の総計37人が自分を見つめていた。
――ここで檜垣三佐にそのまま報告したら間違いなく咎められるよな……かといって、放っておくわけにもいかないし。
「……まあ、いっか」
やりようはいくらでもあるとひとりごち、伊丹は親指を立てながら笑顔を見せる。
「だーいじょうぶだ。俺に任せてよ」
言葉は通じないが受け入れられたとコダ村住民は本能的に理解し、歓声を上げた。
「全員乗車! これより、アルヌスに帰投する!」
乗せれるだけの人数を乗せた車両が発進し、一団は自衛隊が駐屯しているアルヌスの丘へと向かうのだった。
手土産に吹き飛ばした炎龍の腕を携えて。
本編第56話、いかがでしたでしょうか?
自分が最初から参加した戦いで始めて人が死ぬのを経験した尊の描写を書いてみましたが、何とも難しい物でした。
また、前書きで原作より炎龍がヤバいと書きましたが、本作の炎龍は原作の設定に加えて『魔法防御がクソ高い』という項目が追加されています。
どれくらい高いかというと虹の眼鏡かけたクロノのシャイニングをラヴォスに叩き込んだにもかかわらずダメージが500超えないくらい。
尊の場合は『勇気』と『覚醒』でワンチャンありますが、MPが死ぬので連発できません。
こんな設定にして炎龍編どうするんだよ、俺……
とりあえず、今回はこのあたりで。
次回は有名は『鉄の逸物』の話とアルヌスでの出来事を書いていくつもりです。
今度こそ投稿が未定となりますが、できるだけ年内に投稿できるよう頑張ります。
それでは、また次回の投稿でお会いしましょう。
余談
前書きで書いたGガンダム in スパロボZが実現すればこんな展開になりそうです。
・世界三大恥ずかしい告白シーン揃い踏み
・GガンからOOまでのアナザーガンダムシリーズ大集合
・生身の戦力鬼強化
・愛を叫ぶので乙女座も大満足
正直、上二つだけでも公式でやる価値はあったと思うのですよ。
テーマである進化もDG細胞がありますし。(要素としては弱いかもしれませんが
あとは師匠生存ルートがあれば……