Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもこんにちわ、作者です。

ついに新章、『GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』編が始まります。
ここでは原作、漫画、アニメの設定全てを作者の都合で取り込んで展開していきます。
キャラデザインはアニメ準拠で描写していきますが、お好みで脳内保管してください。
また、作者は現時点で外伝は未購入につきノータッチのため展開する予定はありませんが、どうにか導入できるよう頑張ります。

それでは新章、どうぞご覧ください。



※この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。


GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり編
第54話「自衛隊との遭遇」


「……ここはどこだ?」

 

 

 魔王の発したその一言が、この場にいる全員の心境を代弁していた。

 ラヴォスの最終形態を仕留めた後に発生したゲートに呑まれ、抜けた先は焼き払われて間もない村と思しき場所だった。

 しかも所々で人だった何かが目に留まり、マールやサラは口に手を当てて込みあがる吐き気を堪えている。

 

 

「……ロボ、何かわかるか?」

 

「地質、地形データに一致するモノはアリマセン。恐らく、別ノ世界へ転移したト思われマス」

 

 

 別の世界と言われ、質問した尊の脳裏に一瞬フロニャルドが映った。しかしあちらの空は紫がかっていたのに対して、ここの空は――雲の隙間からではあるが――普通に青空が見える。

 

 ――少なくともあの世界とは違う、ということか。ホッとするべき……ではないな。

 

 目についた人だったものを見ながら頭を切り替え、今どうするべきなのかを決める。

 

 ――サテライトエッジのエネルギーはラヴォスにトドメを刺すのに使ったから、サテライトゲートを開いてクロノ世界に戻ることはできない。となると、否応にもしばらくはこの世界に留まることになるわけか。

 

 

「……一先ず、情報を集めよう。こんな場所で期待していいかわからないが、生存者を探しつつこの世界についての手掛かりを探そう。可能なら遺体も丁重に埋葬したいがところだが、自分たちの身の安全が保障できない間は下手に手出ししないでおこう」

 

「それしかないな。 しかし、この村で一体何があったんだ? 周囲の焼け具合から元は森だったようだが、ことごとく焼き払われている」

 

 

 カエルのつぶやきでエイラとクロノ、ロボは原始に存在したラルバ村のことを思い出した。

 あの村もここほどではないにしろ恐竜人の手で森ごと家屋が焼き払われてしまい、多くの人が命を落としたのだ。

 その時の状況に酷似していると思いながらもクロノは先に進み、エイラも高いところに上って何かないか探し出す。しかし立ち上る煙で視界がはっきりせず、匂いを頼ろうにも異臭に阻まれて思うような情報は得られなかった。

 やがて広場だったと思しき開けた場所に抜けると、井戸を見つけたマールが思い出したようにつぶやく。

 

 

「ここのお水って、飲めるのかな?」

 

 

 それを聞いてクロノや尊も喉が渇いてきたことに気づき、無性に水が欲しくなってきた。激戦を無事潜り抜けたとはいえ、体にかかった疲労も相当なものだ。

 戦いの最中は忘れられていた渇きや空腹がここにきて主張を訴え始め、呑めるかもしれない水を前にして喉が鳴る。

 しかし周囲の具合から無警戒に水が飲めるとは思えず、尊は何かないかと井戸の周りを探る。するとロープがついた無事な桶が見つかり、少なくともこれで井戸の中の水がどうなっているか探れるくらいはできそうだった。

 

 

「ロボ。引き上げた水が飲めるか調べることはできるか?」

 

「おまかせクダサイ、可能でアレバ、飲料水にする方法も提示させてイタダキマス」

 

「そりゃ頼もしい」

 

 

 ハハッと笑いながら、尊は無造作に桶を井戸に放り込んだ。

 

コォーン!

 

 

「ん?」

 

 

 突然響く、どこか心地いい音。

 その直後にバシャっと水音が上がり、一同は顔を見合わせた。

 水以外の何かがこの中にある。

 全員の考えはそれで一致し、同時にここの水は飲めないかもしれないという絶望感が漂い始める。

 

 

「……調べてみましょう」

 

 

 ルッカが自分の亜空間倉庫から自作の懐中電灯を取り出し、覗き込みながら井戸の中を照らす。

 全員がそれに倣って覗き込むと、光の先にはおでこを赤くした金髪の少女が気を失った状態で水に浮いていた。

 

 

 

 

 

 

 井戸の底から女の子を引き上げると、その子が普通と違うことにすぐ気が付いた。

 

 

「この子……もしかして、エルフか?」

 

 

 普通の人と違う笹穂状の長い耳を見て真っ先に浮かんだのがそれだった。

 ファンタジー小説やRPGの代表的な種族のひとつで、人間よりはるかに長い寿命を持ち、森で静かに暮らす弓使いの人々というのが俺の知ってる大まかなエルフだ。

 もしかしたらこの村は元々エルフの村で、何か異常が起きた際にこの子だけ井戸の中に押し込まれて難を逃れたのかもしれない。

 ただ、気を失っている原因が自分の放り込んだ桶が原因かもしれないと思うと非常に申し訳なく思えてくる。

 

 

「まだ脈があるわ。けど、相当長い時間水に浸かっていたみたいで体がとても冷たいわ」

 

「暖める必要があるが、服が濡れたままってのもよくないな。サラ、マール、ルッカ、シェルターを出すから中で着替えとか頼む」

 

「わかりました。レイズやアテナの水はどうしますか?」

 

「そうだな……」

 

 

 やろうと思えばすぐにできるが、ここが別世界である以上シェルターやアテナの水は補給が効かない。

 本音を言えばシェルターも使いたくないが、他に隠して着替えさせる場所がない以上は――

 

 

「ミコトサン、センサーに反応がありマス。排気音と駆動音からディーゼル車のようデス」

 

「ディーゼル車?」

 

 

 なんだろう、なんか懐かしい気が………………んん゛!?

 

 

「まて! ディーゼル車だとぉ!?」 

 

 

 ロボの報告に度肝を抜かれていると、唯一残った道からやってきたそれに俺は驚きを隠せなかった。

 見慣れたナンバープレートをつけた三台の車。ニュースなどでしか見たことはないが、それがどこの物なのかすぐにわかった。

 

 

「――なんでエルフがいるファンタジー世界に陸上自衛隊がいるんだ!?」

 

 

 

 

 

 

「エルフにロボット、鳥人間にカエル人間……どういうことだよ」

 

 

 日本陸上自衛隊第3偵察隊隊長の伊丹耀司二等陸尉は、目の前にいる面々を見て思わずそうつぶやいた。

 コダ村の村長の紹介でからコアンの森に住むという村人たちに会うべく行動をしていたが、進行方向から上がる煙を見てドラゴンを目の当たりにし急ぎ駆けつけてみればそこにいたのは数人の人間ととがった耳が特徴的なエルフ(?)の男、そしてあからさまなロボットに鳥のような頭をした人とカエル人間がいたのだ。

 

 

「隊長、どうします?」

 

「どうもこうも、話を聞くしかないでしょ」

 

 

 運転席の倉田にそう答え、降車する。伊丹を見て一番に反応したのは黒髪の男――月崎 尊だった。

 

 

「あ、あの! なんで自衛隊がこんな所にいるんですか!?」

 

「……日本語!? 日本人!?」

 

 

 特地語と呼称されたこの世界独特のものではない馴染み深い言語に今度は伊丹が驚愕し、高機動車からその様子を見ていた桑原が通信を送る。

 

 

<<隊長、どうしましたか?>>

 

「あっ――おやっさん! 日本人がいる! 銀座事件の行方不明者かもしれない!」

 

<<なんですって!?>>

 

 

 伊丹の報告に桑原陸曹長も驚き、同じく報告を聞いていた第3偵察隊の面々も装備を確認して次々と降車する。

 突然現れた武装集団にクロノたちも思わず警戒するが、尊は先ほど伊丹の口から出た言葉に眉をひそめた。

 

 ――銀座事件……俺の世界じゃそんなものは聞いたことがないな。

 

 この時点で尊は今までの経験から一つの仮説を立て、それがほぼ間違いなく当たっていると予感していた。

 

 

「すいません、ひとつ確認したいんですけど、いいですか?」

 

「ん? 答えられる範囲でよければ」

 

「難しいことじゃありませんよ。 ――今は西暦何年ですか?」

 

 

 尊が世界を渡ったのは2014年の9月だ。あのころから大雑把に計算して、今は11月ごろと推測していた。

 もしこれから大きくズレた時間を告げられれば、彼らは自分の世界とは違う世界の自衛隊だと判断できる。

 

 

「今は2011年の11月だよ」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 かくして、尊の予想は的中した。

 この自衛隊が異なる世界の部隊だと断定し、ならば自分にかかっている誤解を解くべきだとして自己紹介を始めた。

 

 

「先にお伝えしますが、俺はその銀座事件とやらの行方不明者じゃありません。もっと言えば、皆さんとは違う世界の日本人です」

 

「違う世界の、日本人?」

 

「話せば少し長くなるんですけど、その前に彼女の処置をお願いしてもいいですか?」

 

 

 そう言って示した先には、井戸にいたエルフを介抱しているルッカたちがいた。

 

 

 

 

 

 

「――話をまとめると、月崎君は俺たちとは違う世界の日本人で、こっちのクロノ君たちがいた世界に流れ着いた先でさらにこの世界に来てあのエルフの女の子を見つけた……ってことでいいのかな?」

 

「概ねその通りです。なので俺は先ほど教えてもらった銀座事件とは何ら関係がありませんし、クロノたちもこの特地の住人ではありません」

 

 

 伊丹耀司と名乗った自衛官に俺の経緯を話しながら、クロノたちがこことは違う世界から来たことを説明し終えると、要約した彼は面倒くさそうに頭を掻いた。

 さっきの話でこちらが得られたのは伊丹さんの世界で計算して数ヵ月前に銀座とこの特別地域――通称、特地が『門』と呼称されたものでつながり、帝国と呼ばれる国からの宣戦布告を受けて多くの死傷者と行方不明者を出したそうだ。

 最も帝国の技術レベルが魔法や竜などを除けば、剣や弓を中心にしたクロノ世界の中世と同じくらいしかなかったため、自衛隊や警察の機動隊の尽力もあって戦火が銀座より広がることはなかったらしい。

 そして現在、特地の調査として自衛隊が派遣され伊丹さんたちは現地の人の紹介でこの森に住んでいるはずだった人に会いに来たのだが、巨大なドラゴンが森を焼き払っているのを目撃。脅威が去ったのを確認してここにやってきて、俺たちを見つけたとのことだ。

 ちなみにさっきの会話で俺とサラがもう一つの世界――フロニャルド――を知っていることは説明していない。あの世界にクロノたちは関係ないし、余計な混乱を招きかねないからだ。

 

 

「で、月崎君は俺たちの世界とは違い銀座事件がなかった数年先の日本から来た……っと。 こっちの世界もそのまま行ってくれれば、同人誌即売会に参加できたのになぁ……」

 

 

 最後の方は聞き取れなかったが、ひどく落ち込んだ様子から少し羨ましがっているのはなんとなく分かった。もしかしたら銀座事件なんて面倒なことがなかったのが羨ましいのか?

 

 

「隊長、よろしいですか?」

 

 

 こちらの話に区切りがつくのを待っていたのか、長身の女性がサラたちを連れてやってきた。

 サラたちには同じ女性ということで女の子の処置を手伝ってもらっていたが、表情を見る限り峠は越えたようだ。

 

 

「どうだった、黒川?」

 

「保護した女の子なのですが、命の危険は脱しました。しばらくすれば、目が覚めると思います。ですが、これからどうしますか?」

 

「うーん……集落は全滅しちゃってるし、このままにしておくわけにもいかないでしょ。それに、月崎君たちのこともある。 女の子は保護ってことで一度連れ帰るけど、そっちはどうする?」

 

「そうですね……」

 

 

 伊丹さんの問いかけに俺は他のメンバーの意見を求めて顔を向ける。

 

 

「俺たちはミコトさんに任せますよ。幸い、ミコトさんはこの人たちがどういう組織なのかよく知ってるみたいですし」

 

 

 クロノの言葉に誰も異を唱えなかったのを見て、俺はこの機会を受け入れることにした。

 

 

「行く当てなんて当然ありませんからね。こっちとしても保護していただけるんなら、願ったり叶ったりです」

 

「わかった。上の方にはどうにか話をつけてみるよ」

 

「あ、でしたら俺が別の世界の日本人だというのは伏せてもらえますか? ただでさえ別の世界の連中がここにいたことが問題になりそうなのに、そのうえ別の世界の日本人がいたなんて間違いなく厄介ごとになりそうなんで」

 

「……だねぇ」

 

 

 面倒ごとはノーサンキューなのだろう、伊丹さんは苦笑いで同意した。

 

 

「ですが隊長、連れて行くにしてもこれだけの人数は流石に……」

 

 

 黒川さんの言い分は最もだ。

 何せさっき保護した女の子を含めれば、こっちは実に13人。ベースジャバーで無理やり運ぶにしても、フロニャルドじゃないから輝力にMPを使う以上必ず魔力切れ(ガス欠)が伴う。となると……

 

 

「ガイナー、マシュー、オルティー、エイラ。持久力に自信はあるか?」

 

「距離にもよりますが、半日は持続して駆け抜ける自信があります」

 

「エイラ、一日中走れる!」

 

「そうか――伊丹さん、この4人をそっちの車に乗せてやれますか? 残りはこっちで何とかしますから」

 

「なんとかって、どうするの?」

 

 

 クロノ、マール、ルッカ、ロボを示しながら説明すると伊丹さんから疑問の声が上がり、その回答をするために俺は輝力武装を展開する。

 突然出現したベースジャバーに自衛隊の皆さんは、信じられないものを見た風に声を失っていた。

 

 

「これで空を飛んで追いかけます。4人までならギリギリ乗れるんで。あとの面子には走ってもらいます」

 

「そ、それで本当に大丈夫なの?」

 

「大丈夫ですよ」

 

「……なら、いいけど」

 

 

 半信半疑ではあるが伊丹さんは納得し、黒川さんもそれ以上言及しないで引き下がった。

 

 

「よし! 全員乗車! これよりコダ村経由で、アルヌス駐屯地に帰還する!」

 

 

 よく通る声で伊丹さんの命令が響き、クロノたちは黒川さんに連れられてジープ――こういう時は高機動車だったか?――に乗り込み、俺のベースジャバーにサラとカエル、魔王が乗り込んだ。

 さて、この世界はどんなところなんだか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで月崎君。これって、もしかしてガンダムのアレ?」

 

「あ、わかりますか?」

 

 

 どうやら伊丹さんはそっちの知識も豊富のようだった。




原作では年号が20XX年となっていましたが、ここでは2011年とさせていただきます。
また、11月というのは参考人招致の時期から逆算して避難民が保護されたのはこのくらいだろうと作者が勝手に設定したものです。

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