Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもこんばんわ、前回の投稿で日刊ランキング2位にランクインしたことに驚きを隠せなかった作者です。

さて、今回は予告した通りコミック版よりハチ熊の話を持ち込んでみました。
ご存知の方はお察しの通り、後半は肌色成分が多くなっております。(文章だから意味ない
最後まで書き切ってしまおうか悩みましたが、コミックと同じ場面で区切ることにしました。
仕事の合間に書いていたので内容がおかしいかもしれませんが、楽しんでいただけたら幸いです。

それでは本編第30話、どうぞご覧ください。


第30話「ハチミツを求めて」

「そういえば……聞いたぞミコト。お主、サラ殿と只ならぬ関係になったそうじゃな?」

 

「ぶほっ!?」

 

 

 突然のレオの言葉に紅茶を口に含んだ尊は驚きとともにむせ、レオの言い方にサラは顔を赤らめる。

 グラナ盆地にて行われたミルヒのライブが大成功に終わり、夜明けとともに両国の兵士たちは自分たちの国へと帰還した。

 それは昨晩、フロニャルドならではの紋章術をふんだんに使ったライブの演出に度肝を抜かれていた尊とサラも同様で、二人はレオやガウルと同じタイミングでヴァンネット城へと戻った。

 住民たちからの熱烈な声援に驚いたりもしたが、何事もなく入城すると尊とサラはシンクの送還に関して進展があったことをテラスにいたレオに報告。また、尊はシンクの送還を見届け次第クロノ世界へと移動し、ラヴォス討伐の計画を立てようと考えていた。

 ちなみにプチラヴォスの情報はビスコッティとガレットの騎士全員に通達されており、出現したら撤退か頭部のみを集中攻撃するようにとの対策が下されている。

 もっとも、そちらよりもう一体の魔物、キリサキゴホウの方がサイズ的にもインパクトが大きかったため多くの者は「そんなのいたか?」と疑問を浮かべていたが。

 そんな報告と確認を終えメイドが用意してくれたお茶とお菓子で一服しようとしたところで、事態は冒頭へと戻る。

 

 

「か、閣下。どこでそれを……」

 

「ジェノワーズからじゃ。昨日共に食事をしたときに様子が変わっていると教えられてな。ついに王女と護衛騎士が禁断の恋仲に進展したのでは、という推測も出ておるぞ」

 

「あいつら……」

 

 

 頭が痛いとばかりに頭を押さえ、観念したように尊は昨夜あったことを打ち明ける。

 

 

「サラがそうしてくれと頼んできたんです。彼女の国はもう存在していないから自分は王女ではないし……ほかにも事情がありましたから」

 

「そ、そうです。なのでレオ様も、私のことは気軽に呼んでください」

 

「ふむ……それはまた考えさせていただくとして、ミコト。すまぬが席を外してくれぬか?」

 

「え? はぁ……」

 

 

 疑問符を浮かべながら尊はテラスを後にし、彼の姿が見えなくなったのを確認するとレオは顔を寄せて楽しそうに問う。

 

 

「それで、サラ殿はミコトのことをどう思っておるのだ?」

 

 

 その質問にドキッとなり、サラは平静を繕って聞き返す。

 

 

「ど、どうというのは?」

 

「とぼけるでない。ワシが只ならぬ関係といったとき、お主は恥ずかしそうにしながらもどこかそれを望むような顔をしておったぞ? これはワシの勝手な推測だが、ミコトが相手ならばそれもいいと考えておらぬか?」

 

 

 お見通しとばかりに笑みを浮かべるレオには敵わないと判断したのか、誰かに助けを求めようと視線のみを動かす。

 しかしその場にいた誰もがレオと同じような笑みを浮かべており、サラはこの追及を逃れる術がないのだと静かに悟るとこの告白の公開処刑のような状況の中、レオにしか聞こえないくらいの小さな声で答えた。

 

 

「……わ、私は――――」

 

 

 

 

 

 

 ヴァンネット城に帰還した翌日、俺とサラはガウルやジェノワーズのみんなと一緒にフィリアンノ城へと向かっていた。

 何故ここにいるのかと言えば、シンクとの決着がまだついていないことを思い出したガウルがそれを清算するために来たのだ。そのお供としてジェノワーズが。野次馬兼リコッタに用事の俺たちがついていくという形で進んでいた。

 ちなみに明日にはレオ閣下も合流するそうで、どうもこの数ヵ月、ミルヒオーレ姫とできなかったことを思いっきりするそうだ。

 

 

「そういや姉上から聞いたんだがよ、ミコトとサラ様は勇者が送還されたら行っちまうんだってな?」

 

「俺たちにもやることがあるからな。それが片付き次第、またこっちに戻ってくる予定だ」

 

「じゃあその頃にミコ兄とサラ様の仲が進展してるにおやつ三日分!」

 

「私はお兄さんが婚約を決めるに四日」

 

「ここは大穴でご夫婦になられているにおやつ一週間分!」

 

「お前らは何の賭けをしてんだよ」

 

 

 ガウルが呆れ気味に言う。確かに進展するはずもないことにかけて何が楽しいんだか。

 

 …………。

 

 ちらっと、隣のセルクルに乗っているサラに目を向ける。先ほどの内容を気にしているのか、彼女は少し顔を赤くして俯き気味になっていた。

 というかそんな顔をされるとこっちも変に意識して――

 

 

「「――あっ」」

 

 

 サラと視線がぶつかり、互いに気まずくなって顔を反らす。

 なんだこれ、我ながらどこの中学生だよ……。

 

 

「見てみ、あれ絶対くっつくで」

 

「これで何もなかったらお兄さんの精神を疑う」

 

「レオ様にも報告しなきゃね~」

 

 

 大阪のおばちゃんみたいにひそひそと会話する娘っ子たちだが、内容は丸聞こえだった。

 だけど、俺とサラが恋人か……。

 確かに彼女のことは嫌いではないし、正直俺なんかにはもったいないくらいだろう。

 しかし俺は彼女に自分の幸せを迎えてほしいと言った。確かにそれは俺の願いではあるが、俺自身ががその幸せの一端になるかはまた別だ。

 

 

「……まあ、それはないだろうな」

 

 

 サラと出会ってまだ半月ほどだ。たったそれだけで恋人になりたいと思われるなんてどこのラノベだよ。

 

 

 

――などと尊が思っている一方では――

 

 

 

 ――ミコトさんが……私の、旦那様……。

 

 

「……そうだと、嬉しいですね」

 

 

 尊の予想より先の未来を想像し、まんざらでもなさそうに微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 大きなトラブルもなくビスコッティにやってきた翌日。

 シンクがハチミツを取りに行こうと言い出したのをきっかけに俺とサラ、ガウルとジェノワーズにユキカゼのメンバーは、エクレールを呼びに行ったシンクより先にビスコッティの南部にあるハチェスタ森林地帯に来ていた。

 ただし、何故か荷台いっぱいに食料を積んだ上にこれから戦でも始めるのかと思うような完全武装でだ。

 

 

「それにしてもハチミツか。長いこと食ってないな」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。一人暮らしでハチミツなんて使い道がなさすぎるし、何より結構な値段がするからまず買わない」

 

 

 実家なら母さんや悠がお菓子を作るのに買っているのを何度か見たが、自立してからは全く見てない。家にあってもホットケーキかトーストに使うくらいしか用途が思いつかないし。

 確かホットミルクに混ぜたりケーキのスポンジに混ぜたりすると美味しくなるんだっけ? まあ前者はともかく、後者は作る機会なんてないだろうな。

 それから間もなく、エクレールを連れてシンクが現れた。これで面子が揃ったか。

 

 

「よぅし! さっそく行こうぜ! 野郎共、武器や食料の準備は万全か!?」

 

「「「「おー!」」」」

 

 

 ガウルの掛け声にノリノリで答えるジェノワーズとユキカゼだが、やはり武器と食料の意味が分からない。

 

 

「武器はいざという時の自衛と考えればまだわかりますが、食料は何に使うんでしょうね?」

 

「うーん……とりあえず、ここは現地人に従って動くとしよう」

 

 

 もしかしたら養蜂をしている人たちに代金の代わりに支払うのかもしれないしな。

 しかもこの面子だ、危険が迫ってもそうそうやられることはないだろう。

 ま、ピクニックとでも思って気楽にいくか。

 

 

 

 

 

 ――などと思っていた時期が俺にもありました。

 

 

 

 

 

「――なんやワレェ。なんか用か?」

 

 

 今、俺たちの目の前には身の丈が2メートルを優に超え黒毛に所々白が混じった体毛をもつ巨大な熊がいた。しかも左目の傷が歴戦の猛者を彷彿させるメンドくさそうなの。

 

 

「あ、あの……エクレ、ユッキー。この熊はいったい……?」

 

「これが『ハチェスター黒熊』にござるよー」

 

「摂取した蜜花や果物を体内の蜜袋に溜めて熟成させ、そこから取り出すことで得られるのが『ハチ(・・)ェスター黒熊の()』。通称『ハチ蜜(・・・)』だ。お前の言っているのはこれではないのか?」

 

「ちなみに、ガレットの方やと『ハチくま蜜』の方が通りがええでー」

 

「思てたんとちゃう!?」

 

 

 想像していたものとのあまりのギャップに思わず某漫才師のコメントが飛び出す。と言うか蜂かと思わせて熊とかなんだそれ!? ○ーさんの親戚か!? ――あ、あっちはハチミツが好きなだけか。

 

 

「おう、ハチくまぁ! ちょいとばかしハチ蜜を分けてくれねーか? 対価はあの荷台にある食糧全部だ。いいモン揃えてんぜ?」

 

 

 こっちが驚いているうちにガウルがさっそくとばかりに交渉を始める。どうやら荷台の食料はこのための物だったようだ。

 さらにユキカゼが人間の男ならクラッとしそうなポーズでおねだりするが、ハチくまはそっぽ向くと帰れとばかりに手をシッシッと動かす。

 

 

「が、ガン無視かよこいつ……」

 

「あははー……。そういう時もあるでござるよ」

 

「ですがもらえないとすると、次はどうするんですか?」

 

 

 サラの問いも最もだ。こいつがダメならほかの個体を探して交渉をするのか?

 

 

「仕方ねえ! こうなりゃ決闘だ! 俺らが勝ったらタダでハチミツもらうぜ!」

 

 

 まさかの強盗まがいの決闘申し込み。確かにシンプルではあるが、装備もこれを想定してのことだったのか。

 一方、決闘を申し込まれたハチくまは不敵な笑みを浮かべ右手を掲げる。

 すると辺りの茂みからがざがさと音が上がり、四方八方から20体近いハチくまが姿を現した!

 

 

「う、うおおお!? 囲まれてたぁ!?」

 

「ハチくまは仲良し兄弟で有名でござるからなぁー」

 

「普通は2~3匹くらいだけど、今回は類を見ない大家族みたい」

 

「いやいや待てノワール、俺やシンクからすれば熊が群れで現れた時点で死を覚悟するレベルだからな! 冷静に解説してる場合じゃないぞ!?」

 

「ミコ兄なにゆーてんの? この前の魔物と比べたらこんなん可愛いもんやん」

 

「比較対象がおかしいよジョーヌ!? 魔物より熊の方が身近な分余計に怖いよ!」 

 

「――やっちまいなァ!」

 

 

 俺とシンクのツッコミが止まない中、ハチくまは問答無用で一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 うわー、これ日本どころか元の世界でもありえない光景だー(棒

 

 

「襲ってきたー!?」

 

「大丈夫、ここも守護力が効いている地帯だから大きなケガはしない」

 

「いつもの戦と同じでござるよー」

 

「そういうこった! ――輝力解放!」

 

 

 手足に輝力で出来た爪を纏わせ、ガウルが先陣切って手近なハチくまに攻撃を仕掛ける。

 強力な一撃をもらったハチくまは"けものだま"となって戦闘不能。なるほど、これなら多少大技を使っても大丈夫ということか。

 

 

「サラ、魔法は使わず紋章術で対応しよう。流石にガ系の魔法はオーバーキルだ」

 

「わかりました」

 

 

 そういうことで俺たちも輝力を解放し、迫るハチくまに容赦なく攻撃を放つ。

 だが思っていた以上に動きが機敏で、何体か撃ち漏らした個体が軽やかな体捌きでこちらに迫る。

 

 

「いっただきぃ!」

 

 

 仕留め損ねた個体を横からジョーヌが掻っ攫い、さらに援護でベールの矢が離れた場所にいた個体を狙い撃つ。

 

 

「悪い、助かった」

 

「気にせんでええよ。それよりハチくまは並の騎士より素早い上に、連携もかなりのもんやから要注意やで」

 

「だからこっちも連携して、華麗にどっかーん! です!」

 

 

 なるほど。普段アホなことばかりしているから軽視しがちだったけど、腐ってもガウルの親衛隊。連携はお手の物ってことか。

 いつの間にか最後の個体をシンクとエクレールが撃破し、襲ってきたハチくまは全滅したようだ。

 

 

「ようし! いっちょあが――ん?」

 

 

ドゴォーン!!

 

 

「ぐは――――っ!?」

 

「「「ガウ様――――ッ!?」」」

 

 

 轟音と共にガウルがどこかに吹っ飛ばされ、ジェノワーズから悲鳴が上がる。

 

 

「――あんたら、うちの息子になにしとんねん?」

 

 

 ガウルをぶっ飛ばしたのは何と、先ほど倒したハチくまたちより1メートル以上でかいハチくまだった。

 つーか今、息子って言ったよな? ということは……

 

 

「は、母熊……。子供のピンチに駆けつけたみたい……」

 

「子供思いなのは結構だが、今までで一番ヤバい気がする……」

 

「――ハチ熊真拳奥義!」

 

 

 そんな予感が当たったのか、母熊はなんと輝力を解放し始めた。熊なのに紋章術使えるとかマジか!?

 

 

「輝力砲だ! 各自防御――!」

 

「――熊破翔爪拳!」

 

 

 エクレールの警告が終わるより早く母熊の輝力砲が放たれる。

 一つの球体から無数に放たれた攻撃はまるでロックオンしたかのように全員に向かって飛来し、着弾した。

 俺は紋章術を使われ出した時点でヤバいと感じていたので咄嗟にシールドを挟むのに成功したが、砂埃がひどくて他のみんながどうなったかまでは確認できない。

 

 

「み、ミコトさん。大丈夫ですか?」

 

「サラか? 俺はだいじょう――ぶっ!?」

 

 

 後ろからサラの声が聞こえて振り返ってみれば、あろうことか彼女の服は紙切れのように消し飛んで多くの肌色が露出している。

 そう――つまるところ、彼女は真っ裸だった。

 俺の反応を不審に思ったのだろう、きょとんとした表情でサラはおもむろに自分の体を見下ろす。

 

 

「……きゃあああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

バシィィッ!!

 

 

「ウボァッ!?」

 

 

 悲鳴とともに放たれたサラのビンタが的確に顎部を捉える!

 張り手にも関わらず脳ミソは当たり所が悪かったのか盛大に揺さぶられ、俺の意識は一瞬にして闇の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「ああっ!? ミコトさん!?」

 

 

 裸を見られた恥ずかしさから思わず手が出てしまい、その一撃は見事に尊の意識を刈り取った。

 自分のしたことに対する後悔と、こうしなければ彼に素肌を晒し続けることになっていたという羞恥心がせめぎあう中、不覚にも倒してしまった尊の頭を胸にオロオロする。思考が混乱しているせいか、自分が今していることに気づいていないようである。

 

 

「うわ、みてみアレ。気ぃ失っとるとはいえ男からしたら夢のような状況やで」

 

「サラ様、意外と大きい」

 

「そんなことより私たちも裸なんですけどー!?」

 

 

 母熊の攻撃で女性陣は一人残らず身ぐるみを剥がれてしまい、唯一残ったシンクは尊のようにディフェンダーが間に合ったおかげで事なきを得たが少なからずダメージは通っていた。

 そんなシンクに見所があると見たのか、母熊はかかってこいと手を動かして挑発する。

 

 

「シンク、一騎打ちを挑まれているでござるよ」

 

「分かってる。 ハチくま母さん、よろしくお願いします!」

 

 

 不利な状況であるはずなのにもかかわらず、シンクは生き生きと母熊に勝負を挑む。

 前代未聞の、勇者VSハチくまの対戦カードがここに実現した。




本編第30話、いかがでしたでしょうか?

尊はサラの攻撃で戦闘不能となりました。
次回でハチ熊の話を終わらせ、DOGDAYS編も終了させる予定です。
一気に詰め込むため次の投稿がいつになるかは未定ですが、どうか気長にお待ちください。

それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。





余談

艦これの秋イベで以前取り損ねたプリンツやローマが手に入ると聞き、ツェッペリン回収も兼ねてE-4を掘り続けています。
しかし未だに誰もお迎えできていません。
バケツは後50……間に合うだろうか……。

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