Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもこんばんわ、最近アケコンの新調を検討している作者です。

さて、今回はミオン砦にカチ込む前の所謂インターミッションです。
前回の終わりに紋章術を尊に叩き込むといいましたが、展開の都合で次回に持ち込みます。
5千文字を目途にしていたのに7千オーバーってどういうことなの……。

それはさておき、本編第18話、どうぞご覧ください。


第18話「要人誘拐奪還戦」

 電話をかけてから様子がおかしい尊を4人が不審に思っていると、当の本人はバツの悪そうな顔で溜息を一つ。シンクに電話を返しながら言いにくそうに打ち明ける。

 

 

「シンク、どうやら俺とおまえは同じ地球でも違う世界の地球出身らしい」

 

「同じ地球でも違う世界……ですか?」

 

 

 話を聞いていたエクレールが要領を得ないといった風に尋ねると、そうだと返して尊は続ける。

 

 

「フィリアンノ城で期限について聞いていた時点でまさかとは思っていたんだ。春休み云々と言っていたことからシンクの中では今日の日付が3月半ばだろうと思うが、俺が最後に確認した暦は9月……秋に差し掛かろうって時期だ。時系列の問題だけかとも思ったが、さっき電話をしたのは俺の実家の番号だったのに、結果は全く知らない家につながった。これらを統合すると出てくる答えはさっき答えた通り、同じ地球でも違う世界の出身にたどり着いたという訳だ」

 

「じゃ、じゃあ自力で帰れるかもしれない方法っていうのは……」

 

「俺の世界はともかく、シンクの世界に行くのは確実と言えなくなる。如何せん俺も、この手段は一回しか使ったことがないからな……すまない、期待させておいてこんな結果になってしまって」

 

「あ、頭を上げてくださいよ! それにこんなことになるなんて、誰もわからなかったんですし」

 

「そうであります! それにまだ帰還方法の捜査は始まったばかりであります! 諦めたらそこで終わりなのでありますよ!」

 

 

 頭を下げる尊にシンクは慌て、リコッタは自分が何とかしてシンクを元の世界に戻る方法を見つけなければと強く決意した。

 その様子を見ていたエクレールも装置に備えられた通信機を手に取り、フィリアンノ城にいる兄へ向けて経過報告の連絡を取る。

 

 

『――そうか、勇者殿と尊殿は同じ世界の出身ではなかったのか』

 

「ですが、勇者が元の世界と連絡を取ることに成功しているので、まだ希望はあるかと」

 

『うむ。では引き続き、エクレールは勇者殿たちと行動を共にしてくれ――ああそれと、先ほど連絡があって、ダルキアン卿と隠密筆頭がもう間もなく戻られるそうだ』

 

「本当ですか!? それは心強い!」

 

『そのあたりの説明をしながら城へ戻ってきてくれ。今からなら、姫様のコンサートにも余裕で間に合うだろう。ああ、別に尊殿たちにダルキアン卿たちのことは話しても構わない。遅かれ早かれ、レオンミシェリ閣下が情報を伝えるだろうからな』

 

「わかりました。では」

 

 

 受話器を戻すと四つの視線がエクレールに集中していた。その中で一番彼女と親交があるリコッタが代表して問いかける。

 

 

「エクレ、何か朗報でありますか?」

 

「ああ、ダルキアン卿がユキカゼと共に戻ってこられるそうだ」

 

「本当でありますか!?」

 

 

 心底嬉しそうな声を上げるリコッタに対し、その二人を知らない尊たちは頭にハテナを浮かべ尋ねる。

 

 

「えっと、どなたですか?」

 

「ダルキアン卿はビスコッティが誇る最強の騎士で、ユキカゼは私やリコの大切な友人です」

 

「お二人とも、ものすっごく強いのであります」

 

「へぇ、どれくらい?」

 

 

 シンクの質問に二人は顎に手を当てて思案し、それぞれが特徴を上げる。

 

 

「ダルキアン卿の本気は見たことがないが、レオ閣下と同等かそれ以上というのを聞いたことがある」

 

「ユッキー……っとと、ユキカゼもビスコッティ騎士団の中でも上から数えた方が早いのであります」

 

 

 自分とエクレールをあしらったレオと同等かそれ以上と聞いてシンクは純粋に驚き、レオの力の一端を垣間見た尊は魔王城での死闘を潜り抜けたという自信を無くしそうになった。

 無論、尊も精神コマンドや魔法をフル活用すれば一矢報いることは可能かもしれないのだが、基礎能力の時点で大きく負けているのがわかっているためどうにも前向きになれない。

 

 ――こんなんじゃ、ラヴォスを倒すなんて夢のまた夢だな。

 

 自嘲する尊を余所に、エクレールは話を進める。

 

 

「二人の話は移動しながらまた教えるとして、我々も送還の調査と姫様のコンサートに備えて一度城に戻るぞ」

 

「姫様のコンサート?」

 

 

 聞きなれない言葉にサラが尋ねると、リコッタが誇らしそうに語りだす。

 

 

「今回の戦でビスコッティが勝利しましたので、戦勝イベントとしてフィリアンノ音楽ホールにて姫様が自らステージで歌われるのでありますよ!」

 

「我らの主、ミルヒオーレ姫はこのフロニャルドにおいて世界的に有名な歌い手なのです。ここしばらくは戦興行の関係でなかなか機会に恵まれませんでしたが、今日は久しぶりに拝聴できるということもあり皆楽しみにしています」

 

「なるほど。で、リコッタはそのコンサートが始まるまで調査を進めるということか」

 

「そういうことであります」

 

「お二人はどうされますか? コンサートは国中に中継されますが、ホールでお聞きになるというのでしたら早めに席を確保する必要がありますが」

 

「そうだな……」

 

 

 まだ彼女たちの姫様とやらがどんな人物かわからないが、エクレールにここまで言わせるのだから相当高い歌唱力を持っているのだろうと尊は推測する。

 生で聞いてみたいという気持ちがないわけでもないが、それよりも優先するべきものがあるとその考えを振り払う。

 

 

「俺はちょっとレオンミシェリ殿に話をつけたいことがあるから、遠慮させてもらおうかな。 サラ様はどうされますか?」

 

「私もミコトさんと同じで構いません。中継されるのでしたら、そちらで拝聴させていただきますし」

 

「わかりました。ではこのままレオ閣下の元に戻られますか?」

 

「ああ。あとできればガレットの陣営まで案内を頼みたいんだが、いいか?」

 

「分かりました。では、早速移動しましょう」

 

 

 エクレールの合図で各々が撤収の準備を始め、片が付くと同時にやってきた道を引き返した。

 

 

 

 

 

 

 尊とサラがエクレールにガレットの陣営まで連れて行ってもらった頃、見晴らしのいい場所からフィリアンノ城を眺める四つの影があった。

 

 

「姉上を倒したってことは、やっぱその勇者っヤツはつええのか?」

 

「そのようです。戦闘スタイルは軽装戦士型、ガウ様と同じタイプのようです」

 

「エクレちゃんと協力したとはいえ、レオ様を撃破した実力は確かなものだと思いますよ」

 

「せやな。しかもあれ、ガウ様ほどじゃない思うけど間違いなくもっと伸びんで」

 

 

 マントをなびかせる銀髪の少年に答える三人の少女。

 黒、緑、黄色と何ともカラフルな三人の答えに満足したのか、少年はニッと笑う。

 

 

「面白れぇ。姉上の敵ってわけじゃねえが、いっちょ遊んでやるとすっか」

 

 

 楽しそうに準備を始めようとする少年――ガレット現領主の弟、ガウル・ガレット・デ・ロワは親衛隊ジェノワーズであるノワール・ヴィノカカオ、ジョーヌ・クラフティ、ベール・ファーブルトンの三人を引き連れてその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 シンクたちと別れた後、俺たちは兵たちに尋ねながらどうにかレオンミシェリ殿の天幕まで戻ってくることに成功した。

 中に入るなり目に飛び込んだのはどこか不満げな表情でワインを傾ける彼女の姿だったが、あちらも俺たちの存在に気づくと手にしたワインを側にいた女性に預け、笑みを浮かべて迎え入れる。

 

 

「よく戻った。 どうじゃ、何か進展はあったか?」

 

「ええ、良くも悪くも実りのある話ができました。それで、レオンミシェリ殿にお願いがありまして……なんでしょう?」

 

 

 お願いといったあたりからレオンミシェリ殿の表情がどこか不満そうなものへと変わり始めた。なんだ、言葉遣いにまずい表現でもあったか?

 粗相をしたのではないかと内心ドキドキしていると、彼女がおもむろに口を開く。

 

 

「堅苦しいのぉ……。ワシのことは殿と呼ばず、閣下と呼んで構わぬのだぞ? 名も略称で構わん」

 

 

 どうやら呼び方がお気に召さなかったようだ。確かにそっちの方がこちらとしても呼びやすいが、出会って間もないのにそれでいいのだろうか?

 そんな俺の思いを代弁するように、サラが今俺が思ったことをそのままに尋ねる。

 

 

「よろしいのですか? こう言っては何ですが、私たちはまだお互いをよく知らないのですけど」

 

「なに、既にお主たちとは知らぬ間柄ではないからな。それに名を許すくらいであれば、ワシとしても特に問題ない。ただサラ殿はともかく、ミコト殿は呼び捨てになるがな」

 

「……わかりました。では改めまして――レオ閣下にお願いがあります」

 

「うむ。なんじゃ?」

 

 

 訂正された内容に満足したのか、今度は笑みを浮かべて閣下が頷く。

 

 

「現在、ビスコッティでは勇者を送還させる方法を学術研究院が総力を挙げて探してまして、個人的にその手助けをガレットで出来ないかと考えているのですが」

 

「送還じゃと? 確か勇者召喚の前提では召喚された者は、どう足掻いても元の世界に戻ることは叶わんはずじゃが」

 

「つい先ほどのことですが、学院首席のリコッタ・エルマールの装置が功を奏して、元の世界と通信を取ることに成功しています。通信という手段が成功した以上、その先の成果も見込めるかと」

 

「なるほど。 確かに我がガレットもこれから先、戦況次第で勇者を召喚せんとも限らん。その時になって同じ問題が発生するくらいならば、今のうちに解決策が見つかってくれた方がありがたい」

 

「ということは――」

 

「うむ。本国に戻り次第、書籍の開放を許そう。発明王の助言が必要とあらば、書籍の持ち出しも許可する」

 

 

 なんという大盤振る舞い。

 確かに今ビスコッティが四苦八苦している状況が自分たちのときに発生するよりはいいのだろうが、まさか国外への持ち出しも許可されるとは。

 あとは言語の壁さえ乗り切ればどうにかといったところか。そこは城の人たちに協力してもらうとしよう。

 

 

「では早速――」

 

 

 お願いしますと口にしようとしたところへ、突然辺りから陽気なトランペットの音が鳴り響く。

 それに連動するように近くにあった映像盤が起動し、四つの影が映し出された。

 見たことのない三人が誰かを見下ろしており、真ん中にいる黒い少女の腕には――

 

 

「――なっ、ミルヒ!?」

 

 

 レオ閣下の口から驚愕とともにビスコッティの姫の愛称と思われるその名が発せられ、複数のライトが三人を照らし出す。

 

 

『我ら! ガレット獅子団領!』

 

『ガウ様直属! 秘密諜報部隊!』

 

『ジェノワーズ!!』

 

 

\デデーン!/

 

 

 コミカルなBGMとライトアップに合わせて両側のふたりがポーズをとり、三人が同時に名乗ると戦隊物の登場シーンの如く背後で爆発とともにイメージカラーに合わせた煙が噴出する。

 …………他国の人間が一国の姫の口を封じていたり、秘密諜報部隊なのに堂々と名乗ったり派手な登場をしていたりとツッコミどころが多すぎてどこから突っ込んでいいのかわからんが、そんな俺たちを置いてけぼりにして三人は画面外に隠れていたもう一人――ビスコッティの勇者シンクに向けて告げる。

 

 

『ビスコッティの勇者。あなたの姫様は私たちが攫わせていただきます』

 

『うちらはミオン砦で待っとるからな。助けるんやったら、そこまっで追ってきや』

 

『姫様のコンサートまで約一刻半。それまでに間に合うかしら?』

 

 

 一刻半って確か現代時間で換算すると45分くらいだよな?

 え、それを承知でこんなことしてるのか?

 

 

『つまり、大陸協定に基づき、要人誘拐奪還戦を開催させていただきたいと思います。ちなみにこちらの兵力は、ガウ様直轄の精鋭部隊200人』

 

『ガウル様は勇者様との一騎打ちをご所望されているわ』

 

『この申し出を断ったら、姫様があーんなことやこーんなことされてまうかも知れんで?』

 

 

 あんなこと云々をやけに強調しているが、閣下はそれを了承しているのか? さっきの反応を見る限り絶対あり得ないと思うんだが……。

 

 

『さあ、返答はいかに?』

 

『――受けて立つにきまってる! 僕は姫様に呼んでもらった、ビスコッティの勇者シンクだ! どこの誰とだって、戦ってやる!』

 

 

 力強い啖呵と共にシンクが堂々と答える。

 そして町の住人はただのイベントだと思っているのか、離れているにも関わらず非常に大きな歓声がこの天幕にまで届いた。

 

 

『了解。これで戦成立とさせていただきます』

 

『では予告通り、私たちはミオン砦でお待ちしてますね』

 

『好きなだけ戦力連れてきたらええからな。んじゃ、楽しみにしとるで!』

 

 

 それだけ言い残しジェノワーズと名乗った三人は姫様を抱えてあっという間に離脱し、中継も終了する。

 

 

「レオ閣下。これはいった……い…………」

 

 

 訪ねようとしたサラの声が途中から小さくなり、不審に思って視線を閣下に向け――

 

 

「――あんの……馬鹿どもがぁ!」

 

 

 ブワッと、恐怖と共に冷や汗が全身に噴き出した。サラも閣下の怒りに中てられ小さな悲鳴と共にビクリと肩を震わせ俺に抱き着く。

 泣く子も黙りそうなほどの怒気をまるで隠さず、ぎりぎりと拳を握り締めて閣下はそばにいた女性に向けて口を開いた。

 

 

「ビオレ! ゴドウィンは!?」

 

「申し上げにくいのですが、将軍は先刻ガウル殿下の召集を受け、現在ここにはおりません」

 

「チッ! よりにもよってこのタイミングでなんてことをしでかしてくれたのじゃ、あの愚弟は!」

 

 

 忌々しそうに舌打ちする姿を見て、これが彼女にとっても知らない状況となっていることが容易に理解できた。

 しかし愚弟? ということは、ガウル殿下とやらが閣下の弟になるわけか。あの三人娘もガウ様直属とか言っていたし、今回の騒動はその弟が発端ということになるのか。

 だが今重要視するのはそこではない。コンサートまで一時間を切っているため悠長にしている時間もなく、最悪コンサートが中止になる可能性があるということだ。

 負けた国が戦勝国の催しを妨げたとあれば、国の信用失墜は免れない。さっきの大盤振る舞いな件もあるし、少し働かせてもらうとするか。

 

 

「閣下。よろしければ俺がそのミオン砦とやらに先行して即刻中断を伝えてきましょうか? ゴドウィン将軍がいるなら、少しは話が通るかと思いますが」

 

「いや、これはビスコッティとガレットの問題じゃ。お主らが首を突っ込むことではない。それに勇者が宣戦布告を受けた以上、これは大陸協定に基づいて公式の戦と認定された。ワシはともかく、わざわざ負けることに兵たちが納得するはずがない」

 

「ですが早急にこれを解決しなければ、ビスコッティのみならずガレットにも損失を与えることになります。一回の敗北と今後を考えた場合の問題を天秤にかけた場合、どちらが重要となるかは明白では?」

 

「…………」

 

 

 俺の言葉が意外だったのか、閣下は目を丸くする。

 

 

「……お主、意外と頭が回るのだな」

 

「失敬な。戦うことしかできない男だと思っていたんですか?」

 

「冗談だ、そう怒るでない」

 

 

 そういって閣下は小さく笑い、あごに手を当てて考え込む。

 すぐに算段が付いたのか、10秒もしないで顔を上げるとビオレさんに指示を出す。

 

 

「ビオレ、ミコトにセルクルを貸し与えよ。それと、ここからミオン砦までを記した地図もだ」

 

「かしこまりました」

 

 

 すぐさまビオレさんが退室し、閣下の視線が再び俺に定まる。

 

 

「そういうわけじゃ。ワシもビスコッティ側に話をつけてからすぐ行くが、くれぐれも無茶をしてくれるな。ワシらと違って、異世界人は怪我をしても"けものだま"になれぬのだからな」

 

 

 "けものだま"というのはおそらく、戦場で撃破した兵たちが姿を変えたような現象のことなのだろう。

 まあUG細胞改のおかげでそう簡単にやられることはないだろうから、多少ゴリ押ししても問題ないな。

 あとは同中に加速を使えば時間短縮にも……いや、まてよ。俺自身に加速がかかるわけであって、騎乗するセルクルにそれが適用されるとは考えにくい。

 ならグランとリオンからもらったヘイストの鉢巻きをセルクルに巻き付けるか? だが戦いの最中にはぐれて回収できなくなったら非常に困る。この鉢巻きは原作でも存在しなかった試作アイテムだが、その効力を失うのは余りにも惜しい。

 

 

「あの、レオ閣下」

 

 

 不意に隣から声が上がり、俺と閣下の視線が集中する。

 小さく手を挙げたサラが、何かを決めた目で口を開く。

 

 

「私もミコトさんについていきたいのですが、構いませんか?」

 

「……なんですって?」「なんじゃと?」

 

 

 予想外の言葉に閣下と揃って声を上げる。何せこれから向かう場所は戦場の最前線であり、とてもじゃないがサラのような人が加わる場所ではない。

 閣下もそれをわかっているのか、鋭い視線でそれを指摘する。

 

 

「サラ殿。ミコトがこれから向かう場所がどういう場所か、そなたは身をもってわかっておられるはずだ」

 

「ええ、十分に」

 

「では何故、自ら進んで同じ場所に向かおうとされるのか?」

 

「深い理由はありません。ただ皆さんが動いている中、じっとしているのが嫌なんです。それに私の魔法なら、ミコトさんをサポートすることも十分に可能です」

 

 

 俺たちにしか使えない魔法という概念を思い出したのか、閣下は一瞬言葉に詰まる。おそらく、魔法の有用性がどれほどのものか測りかねているのだろう。

 しかし、サラが使う魔法か。

 

 

「ちなみにお伺いしますが、サラ様の使用される魔法はどんなものがありますか?」

 

「ケアルガ、マジックバリア、ヘイスト、プロテクト、サンダガ、アイスガ、ファイガ、そして未完成ですが、コキュートスという魔法があります」

 

「コキュートス?」

 

「私が作った最大級の氷魔法です。ですが、まだ試射も済んでいないものなので効果は未知数です」

 

 

 なるほど。攻撃魔法が兵たちを"けものだま"にすることができるのかわからないが、それを封印しても補助魔法のレパートリーは文句の付けどころがない。しかもヘイストまで使えるとなれば、先ほどセルクルにつけようか悩んだ問題も解決する。

 身の安全に関しては……俺が頑張ればいいか。

 

 

「閣下。俺の知る限りサラ様の魔法はすべて戦闘で役立つものです。しかも今の自分たちに必要な速さを底上げする魔法があるのは、特に大きいです」

 

「サポートには事欠かんということか。じゃが、お主はそれでいいのか? 仮にも姫を戦場へ引きずり出すのじゃぞ?」

 

「俺はサラ様の思いを尊重したいと思います。それに、身の安全は俺が全力をもって守り抜きますよ」

 

「……そうか」

 

 

 嘆息し、閣下は俺に何か言おうとしたが、かぶりを振って最早何も言うまいと小さくこぼす。

 

 

「ならばガレット獅子団領領主として依頼する。ミオン砦に先行し、可能な限り事態の収束を行ってもらいたい。こちらも話がつき次第、早急に砦へ向かう」

 

「了解」「わかりました」

 




本編第18話、いかがでしたでしょうか?

私情により次回の投稿は少し遅くなるかと思われますが、それでも一月以内に投稿できるよう努力しますのでどうかお待ちください。

それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。

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