結局、会議には遅刻してしまった。
「申し訳ありません!遅れました!」
「いや、構わないよ。丁度今始めたばかりだ。それよりも、何だか疲れているようだが、大丈夫か?」
「え、ええ、問題ありません。」
「なら良いが・・・。」
提督が心配そうに声を掛けてくる。
なんであいつら俺の身体の事ばかり聞いてきたんだろう?
今回の訓練の随伴艦だろうか、集まってる三人の艦娘も俺の方に気遣うような視線を送る。
あ、この場には大鳳さんも居ましたが俺の事は無視しておりました。
正直に言うと夕張と青葉の質問攻めの所為でかなり疲れた。
しかし、訓練を受けない訳にも行くまい。
俺のそういう心情を察してくれたのか、提督は一つ咳払いした後、また説明を続ける。
「コホン。では、最初から説明しようか。今回の訓練は鎮守府近海にて大鳳所属の飛行隊の発艦・着艦訓練だ。通常は鎮守府湾内でやるのだが、より実戦を意識するためにあえて鎮守府近海とする。」
「はっ!」
「了解しました。」
ビシッと俺と大鳳が敬礼する。
うむ、と頷きつつ提督は話を続ける。
「なお、護衛は妙高、羽黒、朝雲を付ける。その付近に今の所深海棲艦の反応は無いが、万が一の事もある。」
「妙高と申します。共に頑張りましょう。」
「羽黒です。こんな私ですが、せいいっぱい頑張りますね!」
「駆逐艦朝雲よ、任せておいて。」
「ありがとう、心強いわ!」
「よろしくお願いします。」
それぞれ自己紹介を済ませる。
それを確認し、提督が宣言する。
「くれぐれも怪我のないように。では、出撃!」
「「「「はい!」」」」
「了解。」
出港準備中、俺は艦載機の一つを手の平に乗せ、目を閉じ、意識を艦載機に集中させる。
そして目を開けると、俺はコクピットの中に居た。
支えを失った艦載機は落下していき、その途中でふわりと大鳳の手によって回収される。
こうやって俺は妖精化する。
詰まる所、手元に艦載機が無いと妖精化出来ないのです。
大鳳が艦載機を弾倉にしまいつつ、愚痴をこぼす。
「ねぇ、この変身方法もう少しどうにからならないの?このままだといつか艦載機を傷付けるわ。」
しかし、返答は無い。
艦載機には無線が付いており、通信出来るはずなのだが・・・。
もしや中で何かあったのだろうか、と少し不安になる。
「ちょっと、聞いてるの?ねぇ、もしかして何かあった?」
『こちらすぎたです。もうしわけありません、へんとうがおくれました。』
今度は返答があった。
しかし、これは艦載機からの通信ではない。
弾倉内の設備から通信が入っている。
言うなれば、艦載機内ではなく艦内の通信設備を使っている感じだ。
「ねぇ、何かあったの?しばらく返答が無かったけど。」
『じつは、さきほどのしょうげきでおれのかんさいきのむせんきがこしょうしまして。』
「それって、もしかして私のせい?そんな・・・。」
大事な艦載機を傷付けてしまったのだろうか、と大鳳は落ち込んでしまったようだ。
やっぱりそっちだよな、と思いながら俺は大鳳を励ます。
『いや、どうももとからちょうしがわるかったみたいですね。このようすだとひこうごにどうせこしょうしていましたから、きにやむことはないですよ。』
「そう、なら良いけど・・・。」
『では、これからおれはぶたいのみんなとくんれんのさいしゅうかくにんがありますので、これで。』
「・・・ええ、分かったわ。」
ブツリ、と通信が途絶える。
「さて、そろそろ訓練開始ね・・・。」
不思議、なんかいきなり一人ぼっちになった気分だわ。
そう思いながら大鳳は仲間の元へと向かう。