配属から二日目、鎮守府で初めて迎える朝である。
誰が何と言おうと朝だ。
例え太陽が昇っていなくても朝だ。
いや、悪夢を見て早く目が覚めたとかでは断じて無い。
しかし、息を整えているうちに目が冴えてしまったので、昨日出来なかった自主訓練でもやろう。
そう思い俺は私室から出た。
外は薄暗かった。
やっぱり朝ではないなこれ。
もう少しで朝だと思うけど。
構わず俺は機銃の残骸を持ち、一人鎮守府の外れの方へと向かう。
体力作りも兼ねて、走りながら。
うお、重っ。
着いた頃には既に汗だくで息も切れていた。
いくら残骸と言えども重いことには変わりはない。
しかし休んではいられない。
こんな事では。
また奴らに遅れを取る。
そんなのは二度とごめんだ。
「・・・・・・くそッ。」
そう呟きながら俺は素振りを開始する。
そしてしばらくして、太陽が昇り始めてきた。
そろそろ起床時間かな。
俺は私室に戻って軽く風呂に入って汗を流してから朝食を頂こうと、機銃の残骸を置いて来た道をまた戻って行った。
また走って。
「はぁ、はぁ、はぁ。キッツい・・・な。」
私室周辺まで戻ってきた時にはクタクタだった。
しかし、腕などに筋肉痛特有の痛みはない事からやり過ぎてはいないと思う。
息が整えば大丈夫だろうが、すぐには整わないな。
これから訓練だから、少しばかり休んでから食堂に向かおうかな。
ふと周りに視線を移せば、誰かが走ってくる。
朝の運動かな、ご苦労様だな。
走ってくるそれは、ラフなジャージ姿の大鳳さんだった。
ああ知ってた、なんか昨日配属されてからよく会うなあとは思ってたよ。
ここまでだとさすがに呪いなんじゃねえかって思ってしまう。
「・・・・・・あ。」
「・・・・・・おっ、どうも、大鳳殿。」
整わない息もそのままに、俺は敬礼する。
俺の敬礼を気にすることなく、大鳳が質問してくる。
「あなたも朝のランニング?」
「まぁ、そんな所であります。」
「へぇ、意外ね。ところであなた、今日の訓練の部隊編成は聞いていて?」
「大鳳殿の所属としか伺っておりません。」
自分で聞いておきながら、大鳳は興味無さげに答える
「あ、そ。私としてはあなたを部隊に加える気は無かったのだけど、提督に頼まれてしまって、仕方無く、ね。あなたは私の零式艦上戦闘機五二型部隊の第五小隊隊長よ。訓練とはいえ、気を抜かないでよね。」
そこまで聞いてないのにえらく饒舌になるじゃないですか。
特に私としてはって所は必要ないですよね。
「了解しました。それで、第五小隊の列機の方達はどちらですか?」
「聞いてどうするのよ。それより、朝食を頂いたら訓練へ向けた会議があるから遅れないでよね。」
「はい、分かりました。では、これで。」
「ええ。」
こんなにも俺に対して嫌悪感を抱いている艦娘の元で戦うのか。
流石にこれは嫌だな・・・。
まぁ、なんとかするしかないか。