艦これのSS(仮)   作:ヘッツァー

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いつか、あの空で(14)

「まさか、こんな所まで付いてくるとはねぇ。」

「もしかして、めいわくでしたか?」

「そんなばかな、うらめにでたか⁉︎」

 

妖精さんってこんなに自由行動出来たんだ。

初めて知った。

 

「いや、迷惑とかでは無いよ。そうだね、それじゃあせっかくだし今日飲みに行かないか、愛する列機達。お互いの仲を深める為に、よ。」

「そ、そんな、あいしているだなんて!」

「か、かんげきであります!」

 

軽口のつもりだったのだけど、本気にされたみたいだ。

まぁ良いか。

 

「じゃ、鳳翔さんとこにしようか。食堂では酒は出ないだろうし。」

「りょーかいしました!」

「さすがにきぶんがこうようします。」

「・・・それは誰の真似だ、長門さん?」

「ちがいますよ、まぁわたしたちもちょくせつほんにんからきいたことはないですけどね。」

「きょうおせわになったいっこうせんのこわそうなほうです!」

「あー、そうなの?それは分からんわなぁ。」

 

なるほど確かに言いそうな感じだ。

でも加賀さんが本当に怖かったらこの会話聞かれた瞬間に俺達死んでる。

 

「加賀さんにこの話聞かれたらまずいんじゃない?」

「けされますね、こなみじんに。」

「がいしゅういっしょくよ、しんぱいいらないわ。」

「多分それも加賀さんだろやめとけよ、死人が出るぞ・・・。」

 

主に俺達の中から。

 

などとくだらない事を話しているうちに、目的地に着いていた。

頭の妖精達を気遣い暖簾を手で持ち上げてから扉を開ける。

 

「ども、鳳翔さん。」

「あら、杉田さん、いらっしゃいませ。あら?妖精さんがこのお店に来るのは珍しいですね。」

「おはつにおめにかかります!」

「ふつつかものですが、よろしくです!」

「なんか挨拶の違和感凄いな・・・。まぁ、なんか懐かれてしまって。」

「ふふっ、微笑ましいですね。杉田さん、今日はお疲れ様でした。初出撃、どうでしたか?」

 

人の良い笑顔を浮かべながら、鳳翔さんが問いかけてくる。

何だろうな、この人には全て打ち明けたくなるこの感じは。

そのせいだろう、ここで本音を吐いてしまったのは。

 

「・・・護衛を務め、唯一通信を交わした天山が、未帰還になりました。他にも、多くの艦載機が未帰還になりました。」

 

鳳翔さんは悲しげな表情を浮かべ、それに返事をしてくれる。

 

「・・・そうでしたか。それは辛かったですね。でもそれは」

「仕方無い、ですか?俺はもう逃げるわけにはいかないんですよ。少なくとも、そんな言葉に逃げる権利はないんです。」

「・・・そうですか。」

 

そう呟き、より一層悲しげな表情になる鳳翔さん。

列機たちもそれを黙って聞いていた。

おいおい。

せっかく飲みに来たんだ、ここで盛り下がってどうするんだ。

 

「すいません、鳳翔さん。お酒と何か食べるものを列機たちの分も含めてお願いします。」

 

俺は無理やり笑顔を作ると、注文する。

 

「えっ、あ、はい。食べるものはおつまみですか?それとも晩御飯ですか?」

「あー、晩飯まだなんでしっかり食べたいですね。」

「おねがいします!」

「わーい、ほうしょうさんのごはんだー!」

「分かりました、ではお作りしますね。」

 

そう言って鳳翔さんが調理を開始する。

する事もないので、店の中を見渡したりしてみる。

昨日騒いでいた隼鷹ら軽空母達はその姿を見せていない。

どうしたんだろうか。

二日酔いとかなのだろうか。

 

「隼鷹さん達は二日酔いではありませんよ。無駄に肝臓が頑丈ですから。」

「・・・声出てましたか?」

「いや、なんとなくそんな事を考えていないかと思いまして。当たっていたようですね。」

 

調理の手は止めず、それでもこちらを見ながらクスッと笑う鳳翔さん。

なんだろう、すごく可愛いのですが。

俺は誤魔化す為に会話を続ける。

 

「で、飲んだくれは今日は来ないのですか?」

「いや、どうでしょうね。昨日の様に騒ぐ事もあればフラッと来て静かに飲んだりもしてますから、なんとも言えないですね。」

「・・・あれが静かに飲むんですか?」

 

意外だ。

あんな騒いでる奴が静かに飲んだりもするなんて。

 

「ふふっ、隼鷹さんは静かな時はかなり魅力的なんですよ?」

「ちなみにそれはどのくらいの確率で見れますか?」

「うーん、その珍しさを例えるならクワガタムシの雌雄同体並みですね。」

「・・・・・・そうですか。」

 

なんか例えが専門的すぎる。

そして例えから考えれば隼鷹の静かな時は高値で売買されているらしい。

まぁ、一度見てみたいではあるからな。

 

「列機達、今日はお疲れさん。初めてで生き残れれば次もきっと大丈夫だろう。」

「そうなんですか?」

「でも、またあんなてきにあってしまったら?」

「ん、そうだなぁ、まぁあれだけ損害を与えたんだ。しばらくは大人しくなるだろう。だから・・・」

「「だから?」」

 

俺はニタァと意地の悪い笑みを浮かべて告げる。

 

「次の出撃まで俺が直々にしごくよ。なぁに、二度とあんなみっともない真似はさせるものか。」

「ひ、ひいぃぃぃ!」

「お、鬼がいる!」

「とりあえず月月火水木金金、いっとく?」

「「いやぁぁぁぁー!」」

 

大げさに怯える列機達を見て、俺は少し安堵する。

良かった、初出撃のショックとかは残ってないみたいだ。

 

「程々にしてあげてくださいね?お酒と料理です、どうぞ召し上がれ。」

「おっ、これは?」

「今日はブリの照り焼きですね。良い魚を仕入れられたので。」

 

確かにかなり旨そうだ。

これは早く食べたいな!

あ、もう一つ、注文し忘れていたな。

 

「すいません、鳳翔さん。」

「なんですか?」

「ここって、大福とかってありますか?」


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