「敵艦隊を発見!ふっ、我が艦載機から逃れられると思ったか!」
「敵はかなりの数ですね、姉さん。」
随伴していた利根と筑摩から敵艦隊発見の報が入る。
「先行します!味方艦隊の援護は任せてください!」
「さぁ、砲雷撃戦、開始するわよ〜!」
それを受け、比叡と霧島が航行速度を上げていく。
それに続き、利根や筑摩も速度を上げる。
後方では、二人の空母が弓を番える。
「慢心してはダメ、全力で参りましょう!第一攻撃隊、発艦始め!」
「五航戦の子なんかと一緒にしないで。攻撃隊、発艦。」
軽口を叩きながら、視線は敵を捉え続ける。
そして、二人の空母から次々と艦載機が発艦して行く。
一航戦、彼女らが合流してから戦況は一変した。
瞬時に制空権を確保した後、敵艦隊へ攻撃を開始した。
驚くべきは、その命中率と生還率。
敵から見て、これほど恐ろしいものもあるまい。
五航戦とは爆撃や雷撃の命中率が段違いだった。
それに、なんと言っても艦爆や艦攻が堕とされないのだ。
護衛機もさることながら、艦爆や艦攻がまるで敵の対空砲火が来るところをあらかじめ知っているかのような動きを見せる。
第一攻撃隊で堕とされたのはそれぞれ二、三機程だろう。
それに味方艦隊に戦艦二隻と重巡二隻が合流していたのも大きい。
あれだけいた深海棲艦はかなり数を減らしていた。
『この際、徹底的に撃滅しましょう!第一攻撃隊、出撃!』
間髪入れず、大鳳が攻撃隊を出撃させる。
今は一航戦も合流しているし、五航戦の戦闘機隊も艦爆や艦攻の再装備待ちで戻って来ている。
これなら、大鳳所属の戦闘機隊が丸々いなくなっても問題は無さそうだ。
「だいごしょうたい、こうげきたいのごえいにまわるぞ!」
『『はい!』』
俺達は先程の戦闘で機体の高度を下げていたので、艦攻の護衛に回る事にした。
味方の制空域を抜ければ、敵艦載機が艦攻に襲い掛かってくる事が格段に増える。
天山は彗星に比べ足が遅い。
しっかりと敵を追い払わなければ簡単に堕とされる・・・!
「てんざんたいよりこうどをあげろ!そうすれば、てんざんたいのうしろにはりついてくるてきにたいしょしやすくなる!はいめんひこうもわすれるな!」
『『りょうかい!』』
そうして他の隊とも協力して敵機を追い払い、ついに敵の対空砲火射程内まで来た。
ここまでくれば、敵機はもういない。
ここで飛んでいると誤射される可能性があるからだ。
そして、俺達護衛機もここで離れる。
敵機がいない以上、護衛機も必要無いからだ。
「すまない、ここまでです。てんざんたい、ぶうんをいのります・・・!」
『まかせてください、わたしたちのちーむはあうんのこきゅうです!かならずやてきをしずめてみせます!』
そう通信を交わし、俺達は撤退する。
その後、しばらくして深海棲艦の大部隊はその数を大幅に減らしつつ撤退、戦闘はこちらの勝利となった。
ただ、戦闘が終了し大鳳の艤装に帰還した後も、あの時通信を交わした天山の乗組員達とは遂に会えなかった。
こんなときだけ無線機が壊れないのだから、嫌になる。
今回の出撃で、未帰還機が出てない部隊は無かった。
格納庫内は、重苦しい空気に包まれていた。
朝いた奴が、夜にはいない。
戦場では当たり前なのだろうが、やはり慣れないな。