艦これのSS(仮)   作:ヘッツァー

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いつか、あの空で(11)

「くそっ、こいつらどれだけいるのよ!」

「瑞鶴!気を抜かないで!」

「分かってるって翔鶴姉!あっ、矢矧、危ない!」

 

深海棲艦の多さに思わず瑞鶴が悪態を吐き、それを翔鶴が諌める。

その時、随伴艦の矢矧に砲撃が命中する。

それでも矢矧は尚のこと、前に出ようとする。

谷風、浦風、磯風もその後に続く。

この中に誰も無傷の者は居なかった。

 

「ぐっ、まだ、まだよ!私を沈めたいなら、魚雷五、六本撃ち込まないと・・・駄目よ!」

「矢矧さん!こいつらよくもっ、ちっくしょーめ!」

「ちっ・・・撃って撃って撃ちまくれ。」

「いやぁ!痛あ、ちっと失敗・・・!」

 

だが、次第に皆の損害が酷くなっていく。

敵の数が多過ぎる。

このままでは・・・。

翔鶴の脳裏に嫌な考えが浮かぶ。

 

「ッ!翔鶴さん、直上!」

「えっ⁉︎も、もう!なんで私ばっかり!」

「言っとる場合じゃないじゃろう!」

 

運良く爆弾は翔鶴を逸れるが、いつ当たるか分かったものではない。

 

「やるなぁ・・・数がだんちか。だが負けない。」

「あれは、くそっ、敵の新手来ます!」

「待って!あれは、援軍⁉︎」

 

「優秀な子達、本当の力を見せてあげて!」

 

その叫びと共に大鳳の艦載機が風を切り飛来する。

 

「くそっ、せんとうかいいきにいちばんのりか!だいごしょうたい!いくぞ!」

『『はい!』』

 

翔鶴達の上空の制空線を確保する為、大鳳の艦載機が翔鶴・瑞鶴の航空隊と合流する。

それによって少しずつだが、制空権を取り戻しつつある。

さらに。

 

「妙高、参ります!」

「あなた達の背中は、私達が守ります!」

「素敵じゃねぇ、助かるけぇの!」

「ここからが私の本領発揮よ!皆、巻き返すわよ!」

「がってん!」

「まだまだいける、舐めるな。」

 

味方艦隊も妙高さん達が合流し、戦況を巻き返しつつある。

だが・・・。

 

「くっ、かずがおおすぎる!いくらおとしてもまだまだでてくる!」

 

航空隊は敵の物量に苦戦していた。

ただでさえ墜とされて減っていくのに、この状態で零戦を攻撃隊の護衛に回せば、せっかく取った制空権を手放してしまうだろう。

 

その時、上空に敵編隊を発見した。

ここからでは、戦闘機か艦爆かの区別がつかない!

 

「っ!てっきをぜったいにかんたいのじょうくうにいかすな!」

 

何が空母二隻だ、倍はいるんじゃないのか⁉︎

俺は機体を上昇させながらそう愚痴る。

 

「翔鶴姉!今よ、第二次攻撃隊、稼働機全機発艦!」

「ええ!全攻撃隊、発艦始め!直掩隊も攻撃隊の援護に向かって!」

 

海上では二人の空母から次々と攻撃隊が発艦させている。

それに伴い、五航戦所属の零戦達が次々と護衛に回る。

必然的に、艦隊上空の直掩機は減っていく。

と同時に、深海棲艦の艦載機も攻撃隊に向かっていく。

 

「ばかな、こうげきたいにしねっていうのか⁉︎」

 

確かに攻撃隊を堕とそうと敵も向かうだろう。

そのお陰で、艦隊上空の制空権は取りやすくなる。

制空権が取れれば、妙高さん達も戦いやすくなるはずだ。

 

だが、攻撃隊はどうなる?

確かに、爆撃や雷撃を成功させ、敵艦を沈めている機もいる。

だが、あんな敵だらけの中に突っ込んでは、帰還は絶望的だ・・・!

あれではまるで的だ・・・!

艦攻や艦爆達が次々と堕とされていく。

 

「ああ、そんな・・・。でも、こちらもてがはなせない・・・!」

 

俺はそう呟きながら敵編隊の後ろへ着く。

 

標準を合わせ、機銃を掃射。

俺の後ろからも列機二機分の曳光弾が飛んで行く。

それらは編隊の後ろの方の数機へ当たる。

火を噴きながら堕ちていく敵機達。

 

俺達に気付いた敵機達が下に回避行動を取る。

 

「このままかんたいごえいをさいゆうせん!あしのおそいやつはゆうせんしておとせ!」

 

そう言い敵機を追いかけ機体を降下させる。

列機もそれに着いて来る。

そして、残りの敵機を堕とした後、それを見つけた。

 

目につくのは、赤と青の袴。

最強の機動部隊と名高い第一航空戦隊。

その空母の名を引き継ぐ艦娘達。

通称一航戦、「赤城」、「加賀」。

数多の深海棲艦を葬り続ける最強の空母達の姿が、そこにはあった。


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