「くそっ、こいつらどれだけいるのよ!」
「瑞鶴!気を抜かないで!」
「分かってるって翔鶴姉!あっ、矢矧、危ない!」
深海棲艦の多さに思わず瑞鶴が悪態を吐き、それを翔鶴が諌める。
その時、随伴艦の矢矧に砲撃が命中する。
それでも矢矧は尚のこと、前に出ようとする。
谷風、浦風、磯風もその後に続く。
この中に誰も無傷の者は居なかった。
「ぐっ、まだ、まだよ!私を沈めたいなら、魚雷五、六本撃ち込まないと・・・駄目よ!」
「矢矧さん!こいつらよくもっ、ちっくしょーめ!」
「ちっ・・・撃って撃って撃ちまくれ。」
「いやぁ!痛あ、ちっと失敗・・・!」
だが、次第に皆の損害が酷くなっていく。
敵の数が多過ぎる。
このままでは・・・。
翔鶴の脳裏に嫌な考えが浮かぶ。
「ッ!翔鶴さん、直上!」
「えっ⁉︎も、もう!なんで私ばっかり!」
「言っとる場合じゃないじゃろう!」
運良く爆弾は翔鶴を逸れるが、いつ当たるか分かったものではない。
「やるなぁ・・・数がだんちか。だが負けない。」
「あれは、くそっ、敵の新手来ます!」
「待って!あれは、援軍⁉︎」
「優秀な子達、本当の力を見せてあげて!」
その叫びと共に大鳳の艦載機が風を切り飛来する。
「くそっ、せんとうかいいきにいちばんのりか!だいごしょうたい!いくぞ!」
『『はい!』』
翔鶴達の上空の制空線を確保する為、大鳳の艦載機が翔鶴・瑞鶴の航空隊と合流する。
それによって少しずつだが、制空権を取り戻しつつある。
さらに。
「妙高、参ります!」
「あなた達の背中は、私達が守ります!」
「素敵じゃねぇ、助かるけぇの!」
「ここからが私の本領発揮よ!皆、巻き返すわよ!」
「がってん!」
「まだまだいける、舐めるな。」
味方艦隊も妙高さん達が合流し、戦況を巻き返しつつある。
だが・・・。
「くっ、かずがおおすぎる!いくらおとしてもまだまだでてくる!」
航空隊は敵の物量に苦戦していた。
ただでさえ墜とされて減っていくのに、この状態で零戦を攻撃隊の護衛に回せば、せっかく取った制空権を手放してしまうだろう。
その時、上空に敵編隊を発見した。
ここからでは、戦闘機か艦爆かの区別がつかない!
「っ!てっきをぜったいにかんたいのじょうくうにいかすな!」
何が空母二隻だ、倍はいるんじゃないのか⁉︎
俺は機体を上昇させながらそう愚痴る。
「翔鶴姉!今よ、第二次攻撃隊、稼働機全機発艦!」
「ええ!全攻撃隊、発艦始め!直掩隊も攻撃隊の援護に向かって!」
海上では二人の空母から次々と攻撃隊が発艦させている。
それに伴い、五航戦所属の零戦達が次々と護衛に回る。
必然的に、艦隊上空の直掩機は減っていく。
と同時に、深海棲艦の艦載機も攻撃隊に向かっていく。
「ばかな、こうげきたいにしねっていうのか⁉︎」
確かに攻撃隊を堕とそうと敵も向かうだろう。
そのお陰で、艦隊上空の制空権は取りやすくなる。
制空権が取れれば、妙高さん達も戦いやすくなるはずだ。
だが、攻撃隊はどうなる?
確かに、爆撃や雷撃を成功させ、敵艦を沈めている機もいる。
だが、あんな敵だらけの中に突っ込んでは、帰還は絶望的だ・・・!
あれではまるで的だ・・・!
艦攻や艦爆達が次々と堕とされていく。
「ああ、そんな・・・。でも、こちらもてがはなせない・・・!」
俺はそう呟きながら敵編隊の後ろへ着く。
標準を合わせ、機銃を掃射。
俺の後ろからも列機二機分の曳光弾が飛んで行く。
それらは編隊の後ろの方の数機へ当たる。
火を噴きながら堕ちていく敵機達。
俺達に気付いた敵機達が下に回避行動を取る。
「このままかんたいごえいをさいゆうせん!あしのおそいやつはゆうせんしておとせ!」
そう言い敵機を追いかけ機体を降下させる。
列機もそれに着いて来る。
そして、残りの敵機を堕とした後、それを見つけた。
目につくのは、赤と青の袴。
最強の機動部隊と名高い第一航空戦隊。
その空母の名を引き継ぐ艦娘達。
通称一航戦、「赤城」、「加賀」。
数多の深海棲艦を葬り続ける最強の空母達の姿が、そこにはあった。