私のまちがってしまった青春ラブコメはもう取り戻せないのだろうか   作:ぶーちゃん☆

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【後日談②】元ぼっちは卑猥な目に合わされる

「と、と……ちに……た」

「……へ?」

「だから……もだち……なったのっ……」

「二宮さん?全っ然聞こえないよ!?」

「ちょっと美耶?もうちょいボリューム上げてくんない?」

「……だーかーらー!と、友達になったんだってばっ!」

「「……はい?」」

「友達になったの!私と比企谷君!」

 

たぶんこれから二人の激しい追求があるであろうことを見越した私は、によによする二人に開口一番メインディッシュを食らわせてやったのだ。

いや、それは本当のメインディッシュを隠すための大盛りオードブル。おいおい、こんなに前菜ばっか持ってこられちゃメインまでお腹が持ちませんよシェフ。ってな具合の為の撒き餌。

だってさ、いくらなんでも告っちゃったことなんて言えるわけないですもの。無理ゲー無理ゲー。

 

「ホントにー!?良かったじゃん二宮さーん!」

 

上手い具合に食い付いてくれた仲町さんは、私の発言に手放しで喜んでくれた、のだが……

 

「……うっそマジで……?

ちょ、ちょーウケる……」

 

と、折本さんはウケるって台詞とは裏腹に全然ウケてはいらっしゃらないご様子。

あれ?絶対に、ウケるそれあるウケるそれある祭りになるかと思ってたんだけどな。

 

「あ……れ?かおり?あんた珍しくウケないの?」

「……え?……は?

い、いやいやいやいや、ちょ、超ウケてますけども?」

 

どのへんがだよ。なんか笑顔が引きつってますけど?あなた。

 

「…………くっ…………」

 

くっ?

折本さんはその引きつった笑顔を俯かせぷるぷると震えだしたかと思ったら、次の瞬間には急にガバァッっと凄い勢いで詰め寄ってきた。

ホント忙しい人だなぁ。

 

「嘘嘘嘘!全っ然ウケない!

くっそぉ!美耶に先越されたぁ!」

 

ああ、悔しかったんですね……ふふふ。

 

※※※※※

 

うがーっ!と全身全霊で悔しがる折本さん。あらあら、そんなに悔しいのん?

 

「ちょっとかおりー……。せっかく二宮さんが大好きな比企谷君と友達になれたって喜んでんだからさー」

 

ちょっと待って?大好きなとか余計な一文入れなくたってよくない?

 

「ぐぬぬっ……そ、その点に関しては嬉しいんだよ?嬉しいし良かったじゃんて言ってあげたいんだけどー……

ぐぅ……でもまさかたった1日で先越されちゃうとは思わなかったぁ!」

 

……てかさ?あんた悔しがったり友達になられちゃうとは……とか言ってっけどさ?

あんたが私を比企谷君の元に行かせたんすよね?私、あんたに言われなかったら行ってないかんね?

 

「……あ、あのさ折本さん……?目ぇキラキラさせて行ってこい行ってこいと自分で言っといて、友達になれると思ってなかったってヒドくない……?」

 

 

マジ最悪だなこんにゃろめ……と、半目になって睨んでやると、こいつはあっけらかんとこう宣う。

 

「だってさ、比企谷だよ?比企谷。

あたしてっきりさー、もし美耶が「仲良くして欲しい」みたいなこと言っても「いやなんでだよ。やだよ面倒くせぇ」とか言って断るもんかと思ってたからさー」

 

ひ、ひでぇ……あれだけ押せ押せムードで私をけしかけといて、断られる前提だったのかよ。

 

「でもそれは比企谷のことだからどうせ単なる捻くれじゃない?

ホントは自分だって仲良くしたい癖に意固地になっちゃうってヤツ?

だからそこを利用して、ホントは仲良くしたいとか思ってる比企谷を美耶で釣って遊びに連れてったりして、そのままあたしも一緒に友達になっちゃえばいいんじゃん?とかって思ってたのにさー」

 

こ、このアマ……!私を捨て駒にしてから、尚且つ餌にする気だったのかよこんちくしょうっ!

……ま、そうでもしないとあの捻くれ者の比企谷君は、自分どころか私とも仲良くなんてしてくれないって思ったんだろうけどね。

 

それからも腕を組んでんーんー唸ってた折本さんだったんだけど、なぜかふっと笑ったかと思うと急にニカッと私を見てきた。

 

「んー、ま、いっかー!めでたいことはめでたいもんねー。やっぱちょっと悔しいけどさっ。

ひひっ、美耶おめでとさん!」

 

ったくこの女はマジ自由人だな。

ふふっ。ま、こんなんだから私を受け入れてくれたんだろうけどさっ。

 

でもね?あなたはひとつ大きな勘違いをしてますよ。

だから私はその勘違いを訂正すべく、まるで鼻で笑うかのようなとても冷めた態度でこう言ってやるのだった。

 

「……べっ……別に大しておめでたいことなんてないしっ……」

「真っ赤な顔でニヤニヤしてなに言ってんの?やばいこれがツンデレってやつ!?ウケる」

 

うるせーよっ。

 

※※※※※

 

「でさでさ!」

 

なんだよ……折本さんの楽しそうな表情って、不安感しか生まないから凄い。

 

「あの比企谷をどうやって口説き落としたの?」

「……口説っ!?」

 

ちょっとまるで私が交際を申し込んでOK貰ったみたいな言い方やめてもらえませんかね。

交際申し込んで振られてますんで私(白目)

 

「だってさー、あいつ確かに中学の時より超ウケる奴になってていい感じだけどさ、それ以上にめんどくさい奴になっちゃってんじゃん?

どうすればあいつと友達になれたのか後学の為に教えてよー」

 

い、いやー……あれは参考にならないっすよマジで。

 

「絶対に並大抵じゃ折れないだろうと思ってたから、美耶が断られんの織り込み済みの上で、二人がかりで落としてやろうと昨日遊ぶ約束取り付けたのになぁ」

 

……ん?約束なんか取り付けてたっけこの人?

と思ったんだけど、そういや昨日……

 

『じゃーねー!

あ!比企谷ー、今度どっか遊びに行こうよー』

『なんでだよ行かねぇよ』

『いいじゃん、ケチー!んじゃ約束ね!』

『勝手に約束取り付けんな』

 

…………いやいや、どう解釈しても有無を言わさず断られてたでしょ。

うっそ?リア充の中ではアレで約束のOKサインと取られちゃうの?

やっぱリア充ってすげーわ。

 

「……かおり、あんた超嫌がられて断られてたじゃん……」

「え?あれって断られてたの!?ウケる」

 

すげーのはリア充じゃなくて折本さんだけでした。

 

「あははー、どんまいどんまーい!」

 

どこにも Don’t Mind の要素がねーよ。あんた少しは気にしろよ。

 

「ま、それはそれとしてさー、どうやったの!?」

「……え、い、言わなきゃダメなの?」

「まぁもちろん強制はしないけど、ここまで来たら言っちゃいなって!

言わないんなら言わないで、今度本人に直接聞いてみるけどさー」

「やめてっ!!?」

 

あんたそれを強制って言うのよ?知らなかった?

アレ(告白)を抜いたとしても、とてもじゃないけど本人に問いただされるとかあり得ない。それなんて拷問?

ぐっ……ならば言うほか無いというのか……まぁ比企谷君も答えないとは思うけどもっ……

 

「な……」

「「な?」」

「……な、泣き落とし……的な……カ、カンジ?」

「「……は?」」

「だ、だから……泣き落とし……たのよ。

……もちろん最初は「なんでだよやだよ」ってバッサリ断わられたけど……

そのぉ……な、涙目になって上目遣いで……、「お願い、二宮美耶復帰第一号の友達は比企谷君がいいの」……って……」

 

ぐぉぉ……こ、これは想像を遥かに超える恥辱っ……!

比企谷君本人に問いただされたら嫌だなって思ったから仕方なく答えたけど、どっちにしろ地獄でした。これはマジやばいぃ!

私は顔の……全身の熱さに耐えきれなくなって、再度ばったんと大好きな机ちゃんへとダイブする。もう私の味方はお前だけだよ机〜!ご主人様を慰めておくれよぅ!

 

 

そして、昼休みが終わるまでの間は決して顔を上げるまいと心に決めていた私の頭上で、ガッカリとした折本さんが仲町さんと言葉を交わす声が聞こえたのだった。

 

「……あたしがソレやっても無理だよねー……どう考えても」

「かおりがソレやったら最早ギャグにしかなんないもんね」

「それある!」

「……あんたちょっとは心折れなよ……」

 

すいませんね、最早ギャグにしかならないような事を全力でやった上に心がバキバキに折れちゃってて。

あー……早く昼休み終わんないかなー……制服の袖が水分過多になっちゃうよ。

 

※※※※※

 

その日の放課後。私はまたもや取り囲まれていた。

てかさ?なんでHR終わった瞬間にはすでにがっちりガードされてるのん?

あなたたち、HRの最中からほふく前進とかで誰にも気付かれないように私との距離を縮めてきてるのん?

スネークだって気付かれる程の高難度ミッションよ?あなたたちはきえさり草も無しにエジンベア城に潜入出来ちゃうくらいの潜入者なの?

 

「ねぇねぇ美耶ー」

「……な、なんでしょうか」

「今日ってさ、これからどーすんの?」

「こ、これから……?」

 

な、なんのことでしょうかね。

 

「トボけないトボけないっ。だって美耶さ……」

 

やだやめてっ!

 

「今日、雪ノ下さん達から呼び出し食らってんじゃーん」

 

「」

 

折本さんの口から放たれた、良く聞き取れなかった謎の言語を聞いた私は、そっと視線を逸らす。

 

「あ、超目ぇ逸らした、ウケる!美耶ー、現実見たほうがいいよー」

 

やめて現実を直視させないで!ずっと現実を見ないようにしてたんだから!

 

「……や、やっぱり行かなきゃダメかな……」

 

そもそも行く義務とか一切無いんですよね、この案件。

べっつに雪ノ下さん達とか、私と一切関係ないしー?

ピーと口笛でも吹き出しそうなくらい現実から逃避していると、折本さんが核心を突いてきやがりました。

 

「まぁ実際行く行かないは美耶の自由だけど、行けば今日も友達の比企谷に会えるんだよ? 友達の」

 

そう友達を強調する折本さんは、やっぱりまだ悔しいんですね。悔しいのう悔しいのう!

 

にしても……実際そうなのよね。

今日の半強制呼び出しには応じたくない私なんだけど、その一方で今日も比企谷君に会えるのかと思うとワクテカになっちゃってる私も居るのだ。

てかもうコレはぶっちゃけ友な情じゃなくてLOVE入っちゃってますよね私。振られましたけど、テヘッ。

 

これで今日もし私バックレたら、比企谷君が一人で針のムシロになるわけじゃない?

だったら二人でくんずほぐれつムシロになった方が、もしかしたら比企谷君も私に対して友な情とは違う情が生まれちゃうかも。テヘッ。

 

「ちょ、ちょっと二宮さん……?悲壮な顔とニヤニヤ顔が交互に出てきてちょっと気持ち悪いよ……?」

「ぷっ!やっぱこういうトコなんか似てるよね、比企谷と美耶って。ウケる!」

 

比企谷君と似てるって言われるのは万更じゃないけど、顔見てウケるとか気持ち悪いとか言われるのは花の女子高生としてどうなんですかね。

 

「し、仕方ないなぁ……ホント行きたくないけど……い、行ってこようかな……」

「おー、美耶やる気じゃーん」

「やっぱ二宮さんて比企谷君大好きだよね」

「だっ、大好きとかそういうんじゃ無いしっ……!」

「「はいはいツンデレツンデレ」」

 

うぐっ……ちょっともうなんなんですかねこの人たち。

 

 

「てかさー、美耶が比企谷が大好きなのは分かったけどさ」

 

だからそうじゃないのよ?と何度言えば……

 

「そんなにLOVEなのに友達でいいの?」

「……へ?」

「だって、これから更に比企谷大好きっ娘たちが居る巣窟にお呼ばれなわけじゃない?

それ以上の関係になんないと心配じゃん」

「い、いや……だからね」

「なんか今の美耶見てると、雪ノ下さん達にあてられて、今日あたり勢いで告っちゃいそうに見えるんだよね」

「あー、それなんか分かるかも!二宮さんてシャイに見えて、結構行動的だったりするもんね」

「だよねー」

 

なに勝手に話進めてんのよ。告るわけ無いじゃない。だってすでに玉砕済みなんだから。やだ目にゴミが。

 

「それはそれで由々しき事態なんだよね、あたしとしては。

ただでさえ友達として先越されてるのに、まさかの彼氏にでもなられたら超悔しいし!だったらあたしが先に告ってみたいなー、みたいな?

ヤッバい超恥ずかしくて超熱くなってきちゃってるんですけど!ウケる」

 

そう言って、頬を染めてニシシと照れ笑いをする折本さん。あらやだちょっと可愛らしいじゃない。

でもね?折本さん。それ今まさにクラスメイト達に聞かれてますからね?

あなたが一人で自爆するのは構わないけど、思いっきり私も巻き込まれてるんですのよ?

 

「べべべ別に私比企谷君の事なんてなんとも思ってないし!?

告白なんかするわけ無いじゃん!ただの友達だもんただの!」

「昨日カフェで比企谷に抱き付いてたくせに」

 

やめてぇぇぇ!?

 

「ちょっと折本さん!?あれは引っ張たかれそうになった比企谷君を庇おうとしただけでしょ!?」

「そのわりには比企谷に抱き付いたままなかなか離れなくなかったー?ウケる」

 

なんかによによと挑発してくる折本さん。

こいつマジ許すまじ。

 

「あ、あれは足が竦んじゃっただけでしょお!?もうホントやだこの人!

と、とにかく今日なんて比企谷君に告白なんてするわけ無いっての!」

「どうだかねー」

「絶対しないもん!するわけないもん!」

「絶対とかそんなの分かんないじゃーん。なんでそんなに言い切れんのー?」

 

なんだよ小学生かよこの女、しつっこいな。

そんなん絶対って言い切れるに決まってんじゃない。

 

「だって私、昨日バッサリ振られたばっかだもん!」

 

 

……ふっ、どうよ。異議さえも認めない程のこの見事な論客っぷり。弾丸で論破しちゃったよ。これ以上のQ.E.D証明終了とか無くない?………って、

 

「………………あ゛」

 

Oh……やっちまったぁぁ……

恐る恐る折本さんを見ると、なんかすげぇしてやったり顔してますけど。

 

「やっぱりねー。なーんか隠してると思ったんだよねー。

てか美耶アクティブ過ぎウケる!」

「ウケねーよ!」

 

もうやだこいつー!!なに私ってば無理やりハメられたの?

無理やりハメられたとかちょっぴり卑猥☆ってそんな場合じゃねーよ。

 

目の前では、お腹を抱えて笑い転げてる折本さんの頭をスッパーンとはたいてる仲町さんといういつも通りの平和な光景。

 

「ちょ!?あんたやりすぎだよ!このばかおり!」

「痛った!?千佳それちょっと容赦無さすぎだから!」

 

うぅ……もうお嫁に行けないよぅ……

またしてもプルプルと顔を真っ赤にしている私に、はたかれた頭をさすりながらも折本さんはビシィッと指を差す。

 

「へへ〜!ま、フラれちゃったとは言えやるじゃん美耶!さすがあたしの友達、超ウケる!

うっし。あの美耶がここまで頑張ってんなら負けてらんないよねー。

あたしもいつまでもウダウダやってないでとっとと比企谷に友達申請して、試しに告ってみよっかな!?

ま、今日の呼び出しが無事に済んだらだけどねっ」

 

そう言ってパチリとウインクする折本さんに、たぶん茹でダコみたいになっているであろう私は、涙目を恨めしげに向けてこう言ってやったのでした。

 

「……あんたなんか友達じゃないやい……!」

 

 

つづく

 





ありがとうございました!

てかホント進まない……前回は美耶の脳内で無駄に長くなっちゃって、今回は折本のフリーダムっぷりで長くなっちゃいました(汗)


それではまた次回お会いいたしましょう!
はたして次回こそブラッディーフェスティバル開催会場まで辿り着けるのか!?

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