私のまちがってしまった青春ラブコメはもう取り戻せないのだろうか   作:ぶーちゃん☆

1 / 22
はじめまして、ねっころがしと申します。
こちらはほぼオリキャラが主人公の物語となります。
よろしくお願いいたします。




ぼっちになった少女

 

私、二宮美耶は、現在海浜総合高校に通う高校二年生である。

 

容姿はまぁそこそこ端麗。

我ながら突出した美少女という程でもないけど、今まで男子から何度か告白された事もあるから、その認識でまぁいいだろう。

 

成績も、県内有数ってわけじゃないけど中々の進学校でもある海浜総合で常にベスト50位以内には入ってるし、運動神経も結構いい方だから、文武もまぁそこそこ両道ってところかな。

 

そんななかなか高スペックで、高カーストグループで青春を謳歌してそうな私は、現在絶賛ぼっち人生真っ盛りなのである。

 

※※※※※

 

私は、中学の頃までは元々人気者だった。

明るく可愛く優しいわたしというキャラで生きてきた私は、中二の時のとある事件で人生が一変してしまった。

そう。あれは忘れもしない……いや、ホントはもう顔も名前も忘れちゃったけど、アイツに告白擬いの事をされちゃったのがケチの付き始めなのだ。

 

私は中学二年に上がると、誰もやりたがらない学級委員に立候補した。

理由は、くじ引きで委員長に決められた男子(アイツ)が女子の委員を決めなければならなくて困っていたから。

ここで明るく元気に、困ってモジモジしている暗そうな男子を助ければ、クラス内のウケが良くなると考えたから。

 

『これから一年間よろしくね』

 

と笑顔で挨拶してあげたらあの男子喜んでたっけ。

 

正直その男子の事は暗くてキモくてどうでもいい存在だと感じていたのだが、一緒に委員の仕事をしていく内、まぁクラスの他の娘達が言うほど悪いヤツでも無いかな、と。むしろ結構良いヤツかも、と思えるくらいの認識へと変化していき、言うほど嫌いでは無かったので、可愛いわたしを演じつつフレンドリーに対応していた。

優しい美耶ちゃんを見つめる周りの目だってあるしね。

でもやっぱりそこがいけなかったんだよね。私的には全く嬉しくない勘違いをさせてしまった……

あれはアイツと学級委員を一週間ちょっとやったある日の放課後、担任に命じられたプリント回収を二人でやってる時の事だった。

 

 

アイツは急に何言ってんのコイツ?と思うくらいの唐突さで質問を投げ掛けてきた。

 

『あ、あのさ、好きな奴とか居るの?』

『えー、居ないよー』

『いやその答え方は絶対居るって!誰?』

『……誰だと思う?』

『わっかんねーって。ヒントっ!ヒントちょうだい!』

『ヒントと言われてもなぁ』

『あ、じゃあイニシャル、イニシャル教えて。苗字でも名前でもいいから、頼むっ』

『うーん、それならいっかなぁ』

『マジで!?やたっ!で、イニシャルは?』

『……H』

『え……それって……俺?』

『え、何言ってんのそんなわけないじゃん、何、え、マジキモい。ちょっとやめてくんない』

『あ、はは。だ、だよなー。ちょっとボケてみた』

『いや、今のないと思う……もう終わったし、私帰るね』

 

正直マジで引いた。

ん?てか名前も忘れてるようなヤツなのに、イニシャルはHなのか。

とにかく今までは、どうでもいいんだけどまぁ結構良いヤツって存在だったのが、一気にキモいヤツって認識に変わった瞬間だった。

ま、私が勘違いさせるような態度取ってたのがいけないんだけど……

 

でも本当にいけなかったのはそこからだった。

この告白モドキ事件は、ここで終わらせておけば良かったんだ。

 

※※※※※

 

『でさー、今日の放課後―――に好きな奴とか居るの?とかって聞かれてさー』

 

そう。私は帰宅してから、当時仲の良かったしーちゃんに、その事件の事を笑い事のように根掘り葉掘り話してしまったのだ。まさかその翌日、その笑い話がクラス中に広がってしまうなんて思いもせずに。

最初はまだ良かった。単なるあの男子の笑い話だったから。元々クラスで浮いてた奴の弄られる要素が一つ増えただけ。

それだけだったはずなのに、いつの頃からかあの男子が弄られた際に咄嗟に出す苦笑いを見るのが辛くなっていた。

……それはたぶん罪悪感なんだと思う。

こんな大事になるとは思わなかったから。暗いけど、キモいけど、実は結構良いヤツだと知ってたから。

 

人の噂も七十五日。

実際には七十五日も掛からず速攻で飽きられたのだが、まぁとにかくその話が飽きられた頃には本当に助かったと安心してた。

ようやくこの罪悪感から解放されるんだ!って。ようやくあの件で弄られて苦笑いをするアイツの辛そうな顔を見なくても済むようになるんだ!って。

でも……それなのにアイツは次から次へとおかしな話題をクラス中に学年中に提供しまくったのだ。

アニソンのラブソングを告白代わりに女子に渡して、それを校内放送で流されたり、三年に上がってクラスが分かれてからも、今度は私よりも人気があってトップカーストの女子に告ってクラス中、学年中に噂を広められたり……!

 

なにが辛いって、アイツがそういう噂を自ら立てる事で、その度に私のあの時の噂までが常に引き合いに出されることだった。

 

『そういえば二年の時、美耶もアイツに告られたよねー!』

『あー!あったあったぁ!あの時も超笑えたよねー!』

『美耶可哀想だったぁ!だってアイツ超キモかったもーん』

 

『あ、あはははは……

うん……そ、そうだよねー……』

 

アイツが弄られという名の笑い者にされる度に、常に私が引き合いに出される毎日に、いつの間にか私は人間関係って恐い、人間関係って面倒臭いって感じるようになってしまった。

最初はキモいと思ったから単なる出来心で他人に話し、それが次第に罪悪感へと変わり、そしてそれが周りの人間への嫌悪感に変貌した頃には、一人の立派なぼっちの出来上がりでございます。

そう。私はぼっちとは言っても、ただ他人と関わるのが面倒臭くなっちゃったから、自らぼっち道を歩く自立型ぼっちなのだ。

 

ぶっちゃけ、アイツのせいでこんなになっちゃったとかってムカつく気持ちはちょっとだけある。

でもそれは自業自得だもんね。ちょっとだけムカつくけど、決して恨んでるわけじゃ無い。

ま、アイツのおかげで上辺ばっかりだったしょーもない人間関係をリセット出来たんだと思えば、むしろ有難いまであるの、かな?

 

※※※※※

 

私は今、学校帰りに千葉駅のパルコに寄っている。

ぼっちというのは、行き着く先は一人でどれほど時間が潰せるか?一人でどれほど楽しめるか?にあるので、必然的に自分なりの趣味を見付ける事こそが極意となるわけだけど、私はその一人遊びの対象が漫画やラノベやアニメやゲーム。つまりサブカルチャーに向いた。

まぁそこまで大した趣味でも無く、人並みに嗜んでいるって程度なんだけどね。

 

今日はそんな趣味の買い出しの為に書店に訪れたんだけど、目的のブツを手に入れた後は久しぶりに服なんかを見ていた。

まぁぼっちでサブカル好きな寂しい女子高生ではありますが、そこはやっぱり女の子。ちゃんとお洒落は楽しみたい訳なのですよ。

 

「あっ、スミマセンっ」

 

ちょうどそんな時、とても見覚えのある制服に身を包んだとても可愛い女子高生と肩がぶつかった。

 

「あ、いえいえこちらこそ」

 

ペコリと頭を下げるその可愛い女子高生に、私も頭を下げて謝った。いくらぼっちとは言え、マナーとかはちゃんとしてなきゃダメですよね。

それにしても……総武高かぁ。

ここら辺の高校生で総武高校の制服を知らない奴は居ない。我が海浜では無く、あっちこそが県内有数の進学校なのである。

 

かくいう私も、人間関係をリセットしたくておな中からは誰も行かなそうな総武高校を第一志望に挙げて頑張ってはいたんだけど、力及ばず落ちちゃったんだよねー。

だからこの制服に若干のコンプレックスを持ってたりするのです。

くっそう!こんなに可愛くて頭緩そうなビッチが総武に受かるだなんてっ!しかも同じ総武生の彼氏付きかよ!と軽く憎々しげにその可愛い総武生を見ていると、その総武生はその彼氏の腕をグイグイと引っ張っていく。

 

「ちょっとせんぱーい!早く行きますよー」

「……だから引っ張んなっつってんだろが……」

 

ちっ、イチャイチャしやがってバカップルめが。

そう思っていたら後ろから乳のデカイ美少女が慌てて走ってきた。

 

「ちょっとヒッキー待ってよー……ってかいろはちゃんヒッキーにくっつき過ぎー!ヒッキーマジキモいっ!」

「なんで俺が罵られるんだよ……」

「今日はわたしの買い物に付き合って貰ってるんですから結衣先輩は邪魔しないでくださいよー!」

「ぐぬぬっ」

 

お、オイオイ総武生……カップルかと思ったら三角関係かよっ!このリア充共め爆ぜろっ!

 

「ちょっと貴方達、いい加減にしなさい……そして一色さん?」

「はっ、はぃぃっ……」

「バイ菌が移るから、今すぐその男から離れななさい。今すぐによ」

 

まさかの四角関係でした。

ちょっと総武高校どうなってんの!?ただれまくってんじゃない……!しかもこの娘たち、みんな超可愛いんですけども!?

 

こんな美少女を三人も引き連れてる爆ぜてしまえばいいようなリア王ってのは一体どんなもんなのか。

俄然興味を持った私は、そのリア王たる総武高校男子生徒に目を向けるのだった。

 

 

つづく

 




ありがとうございました。
原作を読んだ方、アニメ第一期を見た方は知っていると思いますが、こちらは原作1巻に回想としてチョイ役で出てきて、比企谷八幡に大きなトラウマを与えた少女の物語となります。
どれほどの物語となるかは未定ですが、もしよろしければ次回も読んで頂けたら幸いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。