パンドラ日記   作:こりど

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時期的に王都襲撃の少し前です


7話―美姫ナーベ 前編

―七転八刀

 

 

 

―城塞都市エ・ランテル・冒険者組合内

 

 

「あっ!姐さん!どうぞこちらへ」

見知らぬ冒険者から親しげに声をかけられてナーベは眉を(ひそ)めた。見ると椅子が引かれている。

(姐さん?)

 

「……南京(ナンキン)虫にしては気がききますね」

黒く流れる絹糸のような髪に繊細な細工のような細面、通称『美姫』(びき)と呼ばれる魔法詠唱者(マジックキャスター)ナーベは彼女の為に引かれた椅子を暫しじっと見つめ、やがて無言で座った。

 

「他に何か?」

 

 明後日の方を向いたままナーベは尋ねた、きつめの視線からはこれ以上お前達下等生物(やぶ蚊)と話す事は一切無い。と言う態度が放たれていたが、言われたかなり整った顔付の男は「イエッサー何もございません、また何かございましたらまた何なりとお呼びを」と言うと酒場の端の仲間とおぼしき集団の方にすっ飛んで行った。

 そのままナーベからすると気色の悪い目でまだこちらを見つめている。ナーベとしても、これが日常的に彼女を口説きに来る下等生物(アブラムシ)ならいつもの通り「お断りします」の一言で素気無く追い払うのだが。今日は何か様子が違っていた。

 

「……?」

 

(何ですか気持ちわるいですね……)

 

ナーベは視界の端に居る7人の男達を迷惑そうに一瞥して、またそっぽを向いた。

 

 

 

 

 ナーベがちょっと使えない。

 

 最近のアインズの悩みの一つであった。漆黒チームの名声が上がるのは依然順調なのであったが、今一横の広がりが出来てない。冒険者としてのネットワークの構築が当初の目的の一つのはずだったはずなのだが……。

 原因の一つが相棒のナーベ。その正体はナザリック大地下墳墓、戦闘メイド六姉妹(プレアデス)の一人ナーベラル・ガンマ。がちっとも人間とのコミュニケーションを計ろうとしない。または改善の見込みが無い事。

 

 そしてあろう事かほとんど人名を覚えていなかったと言う事実に直面した時アインズは我がの耳を一瞬疑った。名刺交換のできないこの世界でアインズは割と必死で日々モモンとして顔を合わせる上位冒険者や都市の有力な人間を相手に名前を覚えようとしていたのだが、何と相棒と言う名の肩書きである部下であるナーベは一切名前を覚えようともしていなかったのだ。

 モモンが「ナーベあの者は誰だったかな」尋ねた時など「は、あのヨトウガの事でございますか?」などと言う答えが返ってきてアインズを心の底から愕然とさせた。比べるのもアレだがあれ(ルプスレギナ)より酷い、あれは一応名前ぐらいは覚えていたはずだ。

(私が社長なら、ナーベラルは言わば専属の第一秘書みたいなものだろう、ありえんだろコレ……)

 

そこでパンドラをナーベに化けさせて一度使ってみてはどうだろうかと言うのが今回のアインズのアイデアだった。

 

(ええと……確かパンドラの能力はスキルの大体80%程度のコピーだったよな、と言う事は8位階の8割程度で……6位階ちょいか、それだけあれば通常の依頼は十分こなせるな、表向きは3位階までしか使えない事になってるわけだし)

 チラリと見ると今回留守番を命じられて内心不機嫌な(と思われる)とは言えアインズの見た目には表にはおくびも出さ無いナーベラルが命令を待って控えている。

 

「パンドラ準備せよ」

「御意のままに、それではナーベラルどのこちらへ」

「畏まりました」

コクリと頷き近づく戦闘メイドナーベラル・ガンマ。次の瞬間そこに鏡合わせのように二人のナーベラル・ガンマがアインズの前に跪いていた。

「いつもながら見事なものよ」

(それにしても、考えてみればナーベラルもこいつと同じ二重の影(ドッペルゲンガー)なんだよなぁ、こんな事になるなら後一つでも外装取れるようにしといてもらえば良かった……)などと考える。

 

 「ナーベよ今回のこれは実験的なものに過ぎぬ、お前の普段の働きには十分感謝している、外されたからと言っていらぬ懸念などせぬようにな」

「……私ごときにもったいないお心使い感謝致します、アインズ様の決定にシモベとして不満など一片も存在するわけがございません」

ウムと頷くアインズは、とは言われても上司としては一応外された部下の不満解消(フォロー)もしておきたいんだよねと内心呟いた。

 

 

 

―エ・ランテル―冒険者組合

 

「ううーん」

「どうよリーダー?」

 

リーダーと言われた若い金髪の男は暫し腕を組んで目を瞑っていたがやがて決断した。

「よしこれ受けよう、と思う。いまいち怪しいが背に腹は変えられない……皆はどうだ?」

 

 丸いテーブルを囲む軽く男達は七人、一様に皆若い見るからに冒険者と言った帯鎧(バンデッドアーマー)鎖帷子(チェインメイル)皮鎧(レザーアーマー)と言った思い思いの格好が、頷いたり、テーブルに突っ伏したまま小さく手を上げたり思い思いの形で賛成の意を表した。首には白金と金プレートが輝いている。

「まぁもうね、うちとか選択肢なんかあんま無いし、中途半端に人数多いし」

「簡単過ぎる以来ばっか受けてては装備の更新もままならないしな」

「まったくだ]

「人数だけなら噂に聞くかの有名な帝国のアダマンタイト級パーティ漣八連よりは一人少ないが……早くこの自転車操業から抜け出して、あのぐらい有名になりたいもんだ……」

 

 金・白金冒険者混成PT(パーティ)七天八刀、彼らは中堅のやや上に差し掛かった者の集まりであったが、その懐事情は必ずしも潤沢なものでは無かった。

 まずPTの人数が多いため同ランクの他のグループより一人頭の取り分が少なかったし。では人数を減らせばいいのかと言うとこれまた戦力の低下の問題で難しかった。

 彼らの抱える事情は冒険者には何ら珍しいものでは無く、いくら王国に多くの冒険者が居るとしても存在する問題、需要と供給の問題であった。そしてどちらかと言うと余り気味な方に属するのが彼らだったと言うわけである。さまざまな事情から取り立てて突出したものが無い者が寄り集まってPT(パーティ)を組み現在に至っている。

 

 チームは白金級を主軸二人に金プレートが5人の計七人。

 戦士のリーダーのマッディと頭脳役の盗賊のトゥース、二人が白金で残りの5人が全員金プレート、戦士のウェイとサイス、弓兼第二盗賊のフライ、同じく後衛で弓装備の野伏サタナス、最後に少し耳が尖り、エルフの血が混じっているとおぼしき第一位階魔を使える自称魔法剣士サンで7人。役割が被っていて全員がある程度接近戦がこなせるのは強みだが応用が効き辛く、それを数で補っている、要は物理主体の寄せ集めと言った感じなのがこの混成冒険者チーム七天八刀(しちてんはっとう)であった。

 

「じゃ受付行ってくる」

 

 組合の受付の栗色の髪の30歳ほどの女性は手馴れた感じで書類に目を通すと、ウッディのプレートを確認した。

「はい結構です、ではこの『アベリオン丘陵近くの廃墟で目撃報告された吸血鬼らしき者とその周辺の調査、可能なら討伐』依頼

冒険者PT七天八刀が受注で確かに承りました。女性はにっこり微笑んで(営業スマイル)依頼書を受理して手早く分厚いファイルに収めた。

 

 

 

 「さて、試運転といきたい所だが」

と、いきなり難しい依頼で漆黒の名にケチがついても嫌だな。などとアインズが考えて依頼書を眺めて居た時。 受付から聞こえてきた吸血鬼言う言葉に彼は反応した。

 (ん?吸血鬼だと?)

受付の方を見やったアインズは受付の前に居る一団を見て暫し考えて一つ手を打った。

その後ろでパンドラ・ナーベはしげしげと自分のアダマンタイトプレートを手に取り眺めていた。

 

 

「しかしよリーダー、吸血鬼が相手となると、例え下位吸血鬼(レッサーヴァンパイア)だとしても魔眼とか色々魔法的な備えもしとかないとヤバイせ」

「はぁ、魔法の品は高いですからねぇ、こないだので使い切ってしまいましたし…」

「お前も妙な拘り捨てて、魔法一本に絞れよなサン……」

「嫌ですよ、そこは加入する時言ったでしょう、魔法も使えて戦える魔法剣士、ここだけは譲れません」

「困ったなぁ…あんまり金かけて赤字出しても本末転倒だし、ケチって魅了されたところから戦線崩壊ってのも困る、なあ?吸血鬼ってお宝溜め込んでるもんなのかな?」

「あーあ、僧侶が居ないってのはやっぱこういう時辛いよなぁ、回復職はどこも引っ張りだこだし」

「この依頼白金からの依頼だろ、一応受付が通してくれたんは、必ずしも討伐しなくていいって事で……戦力の調査に留める手もあるが…組合も渋いしなぁ…」

 

 

「んっんーああ、もしもし君達、何かお困りのようだが少しいいかね?」

「……え? 、げぇっっ!!し、しし……漆黒のモモン殿、なな、何か我々に、ご、御用でも?」

 

 突然現れたのは冒険者としては中堅でも上にくる彼らから見ても雲の上の存在の人物、今や知らぬ者などこの城塞都市(エ・ランテル)に居ない、王国全土でも3チームしかない冒険者の頂点、アダマンタイト級冒険者。人類の切り札と謳われる漆黒の英雄モモンであった。心の準備さえあれば是非ともお近づきになりたい人ではあるが、突然の事態に驚きの方が大きい。

 

「ああ、いやいや……そう構えないで欲しい、失礼だとは思うのだが、ちょっと話が聞こえてしまってね、なにか……吸血鬼だとか?もし君達が良しければ少し話を聞かせて欲しいのだが……場合によれば私は無償で君達の仕事を手伝ってもいいと考えている」

 

「……はっ?」

突然振って沸いた美味すぎる申し出に一同が驚きの声を上げる。

少し場所を変えようか、と言うとモモンは歩き出した。一介の中堅チームでしかない七天の面々がその巨大な全身鎧(フルプレート)の赤いマントの背中に従わない理由など、どこにも無かった。

 

 

「さて」

と、ある程度受付からも隣のグループからも離れた席でモモンは話始めた。男達も普段に無く真剣な表情で聞き入る。

「私達にも事情があってね、実は私がこの地に来たのは……君達も聞いた事があるかもしれないが強大な吸血鬼を追っての事でね、だからまぁ、先ほども言ったが、この件に関して我々漆黒は報酬は要らない、ただし」

「ただし?」

「組合には黙っていて欲しいのだ。これは私個人の事情によるものなんだがね……今回の吸血鬼が我々の追ってる者と同一か、どうかは別にして、ヤツに関わりそうな情報はなんでも欲しいのだよ、だが同時に情報が漏れるのは避けたい。解ってもらえるだろうか?ここまで追い詰めて来たのだからね。もしヤツに周辺に私が嗅ぎ付けたと察して逃げられてはかなわん。そしてその代わりにこの依頼で危険な場面(戦闘行為)があれば私モモンが前に出ると約束しよう。君達は報酬を得る、私は情報を得る、どうだね君達にも悪い話ではないのだと思うのだが?」

 

 一様に顔を見合わせたチーム七天八刀の面々は「……なんと」「これはついてる」「マジかよモモンさんだぜ!」と一様に言うと示し合せたように向き直った。身元は当然信頼できる、本来ならアンデッドの吸血鬼の相手なら僧侶の助っ人が望ましいのだが、相手がアダマンタイ級の二人なら補ってお釣りが十分。

 そして何より冒険者の間では何度も噂されている有名な話。漆黒のモモンの正体は亡国の王族であり、そして美姫ナーベはその従者、元は王宮付きの魔法使いの娘辺り……ではないのか?そして彼らは彼の国を滅ぼした強大な力を持った吸血鬼二匹を追ってこの地を訪れたのだ。と言うまことしやかに推測されているのを思い出す。

 なるほど彼ほどの英雄にとってはこの程度のレベルの依頼料など大した額ではないのだろう。その漆黒に金と紫の入った豪華な全身鎧(フルプレート)から見ても。

 

「解りました……うちとしては文句ありません。いえ是非ともその条件でご助力お願いします。もちろん我々の出来うる限りの事をしますし組合にも他にも絶対何も漏らしません」ウッディは身を乗り出した。

「うむ、実に結構だ、さて、ではうちのチームの魔法使いナーベを紹介しておこうか」

そう言いモモンが傍に大人しく控えていたナーベを前に出すと先ほどとは少し毛色の違う歓声が男達からわっと上がった。実は先ほどから噂の絶世の美女ナーベの事はずっと見ていたのだ。

「あの美姫と」「何か俺ら急に運が巡ってきたぜ」「もう何も怖くありません」「お前ら落ち着け」

男達は噂の美姫と一緒に冒険と言う思わぬ幸運に興奮して口々に喋っている。

 

(まぁ今回は中身は野郎……だと思うんだがな、元がアレだし大して変わらんか、知らんと言うのは幸せだな)そう思うアインズは、ともかくはサンプルゲットだとパンドラとチーム七天を見やるのだった。

 

 それにしてもと相対した者を見る。あいつの顔と似てるなまとめ役(リーダー)を名乗るウッディを見やる。

 何の因果か、以前初めての依頼で同行したチーム漆黒の剣のリーダーであったぺテルに顔立ちが良く似ていた、と言うか街で会ったらお前生きていたのかと、思わず言いそうになるレベル。髪の色と無精ひげは違っているし、少し念のため話を聞いてみたが、どうやら完全に他人の空似らしい。たまたま顔を合わせる機会も無かったようだが、それにしても世の中似たやつも居るもんだと、隣の二重の影(ドッペルゲンガー)を見やる。

 

 (やれやれ死亡フラグと言うやつか)

 縁起でも無いとは思ったアインズではあったが、彼にとっては戦闘と他チームとの擦り合わせをパンドラがどう裁くのかを見る現地実験に過ぎないものだったし、今回は組合も通してないので我々は記録にも残らん。最悪またぞろこいつらが全滅しても今回はまぁいいかと思っていた。

 

「さて、ではお互い自己紹介をしよう私は知っての通り、モモン、チーム漆黒のリーダーを勤めさせて頂いている、そしてナーベ」

「はい、ただ今モモンさんからご紹介に預かりました、ナーベと申します、一応第三位階までの魔法を使えます、皆様今回はよろしくお願い致します」

ペコリと頭を下げる。

「いえっ、こちらこそ、お二人の噂はかねがね、今回はご一緒させて頂き光栄です、お力添え真に感謝します」

ぺテルの色違い―とアインズが名付けたウッディの少し興奮した挨拶を聞き流しながら、彼はパンドラ・ナーベの受け答えに感心していた。

(いいじゃないか、まずモモンさーーん……でもない、下等生物(ダニ)発言するでもない、スムーズな受け答え上々の滑り出しだな)

思いのほか順調なパンドラの様子に期待を膨らませるアインズだった。

 

「なるほど、大体のそちらの構成については解りました、んんっそれでそちらのあー……」

内心ごくりと唾を飲みこみ次の実験を試みるアインズ。(パンドラ!)と目で促す、心得ましたと軽く目を伏せ応えるパンドラ。

「サン様は魔法剣士と言う事ですが、このチームは全員剣を扱えるようですし七天八刀と言うのと何かご関係が?」

(見事だパンドラ!……ドヤ顔は余計だが)

 こいつは何て名前だっけかと、一応覚えようとはしていたアインズだった。が初対面の人の名前を7人もいきなり覚えるのは容易な事では無い、更にその上職種までともなると……と内心いつものように不安になっていたアインズは心の中でガッツポーズをとっていた。見事に相手の名前・職業はおろか、スムーズに会話を引き受けてくれているではないか。これで神経衰弱じみた暗記とおさらばだと思うと、アインズは心中快哉を上げていた、デミウルゴスに匹敵する頭脳は伊達ではないなと。

 

 (それにしても七転八倒(しちてんばっとう)かと思ったら七天八刀(しちてんはっとう)だったのか紛らわしい……親しみやすいチーム名ですね、などと危うく恥を書くところだったぞ……この世界のやつらはどいつもこいつも中二病が入ってんのか?)

アインズは自らのネーミングセンスは棚に上げ軽く憤慨し、無言で会話の成り行きを見守っていた。

 

「ええ、よく解りましたね、うちのチーム名はとりあえずの目標として、全員が南方からたまに流れてくる特殊な武器である刀を装備しようと言うのが由来なんですよ、それで……」

「七人なのに八刀なのは私が二刀流になる予定なんですよ、魔法が使えて二刀を振るう戦士、かっこいいでしょう?」

エルフの血が混ざっているのか僅かに耳の先が尖った秀麗な顔付の男が言う。

「あーいやまぁ、うむ」モモンが何と答えるか言い淀む。

「ねーよ馬鹿、効率悪過ぎ、お前はさっさと魔法一歩に絞れよ」

「まぁとにかくそんな感じなんです、刀は高価なんでまだまだ先になりそうですけど」

「なるほど、冒険者ならばチームカラーは必要でしょうね、目立って知名度を上げるにはとても重要な事だと思います」

アインズが応えかねていたのを見て、ナーベが話を継いでいる。

「流石ナーべ女史、解っておられる」

(グレイト!)

 アインズは感嘆していた。自分が思いつかないような事まで補足してくれる上、詰まりそうになると適度に後を引き継いでくれる。パンドラの意外な会話能力の高さににアインズは驚いていた、仮にも役者(アクター)を名乗るだけの事はある、設定したのは自分だったはずだが、こんな風に機能するとは。多少キビキビし過ぎて浮ついたようにも見えるが十分許容範囲だ。

(まさかこれほどとは、予想以上の有能ぶり、もう全部こいつに任せとけばいいんじゃないかな……)

 

 その後も文字通り有能な秘書と化したパンドラに七天メンバーへの応対を丸投げして「うむ」とか「何と言ったかな」「ナーベ」などと適当な合いの手を入れているだけでいい状態に感動すら覚えるアインズだった。それで十分会議が進むのだから運転手に任せて自分は高級車の後ろでふんぞり返っているような重役にでもなったような気分である。

(はぁ~この開放感、今までの苦労は何だったんだ……最初からこうすりゃ良かったんだよ)

 

 

「それにしても吸血鬼とはそんなに、この辺りには出没するものなのですか?」

ふと疑問に思ったモモンは尋ねた、吸血鬼を追っている設定を作ったのは自分だが現地の野良吸血鬼事情など、とんと解らない。

「え?ああモモンさんはこの辺の出身じゃないんですよね、下位吸血鬼(レッサーヴァンパイア)ぐらいならたまに聞きますね、いえこの辺でもあまり強力なのは、そうですね数十年は。あの森の一角を吹き飛ばした件のホニョペニョコ……モモンさんが討伐したんですよね?あの国堕しの弟子だって噂のヤツの話ぐらいしか聞きませんよ。後は……それこそ国堕とし本人ぐらいですかね」

 

 ふむ確か下位吸血鬼(レッサーヴァンパイア)ならシャルティアの作る最下級のものと同程度であったはずである、レベル的にはこいつらでも何とかいけるのか、などと考える。

「モモンさんなら楽勝ですよ」「ホントに国堕としが来ても勝てそうだ」などと口々に言い始めている。

「ハハハ、まぁ貴方達の安全はこのモモンが保障しますよ、危ないと思ったら先に逃げてもらっても結構、私が追ってるのはカー……その弟子の一匹ですが、例え『国堕し』本人が登場したとしても一刀のもと脳天から真っ二つにして見せると君達に約束しよう」

「おお」と言う一同にアインズもまたパンドラにより楽になった気楽さから軽く請け負うアインズであった。

 

 

 

 

―出発前・ナザリック

 

「さてと一緒に行動するに辺り軽く確認しておくか、パンドラよ今回の交代の目的は把握しているな?」

「はっ、我が主の深遠なるお心の全てをとは、と多少自信がございませぬが概ねは」

 

「まぁ、細かいところは追々修正していけばいいだろう、そうだ、ナーベのキャラ……あー特徴はどうだ?理解してるだろうな?」

「左様でございますな……あまりナザリック内でお会いした回数は多いとは申せませぬが、余り下等生物(げんちじん)の事を心良く思って無いご様子、ついつい口が滑る事もあるようで」

 

「そうだな……所謂毒舌家と言うわけだが、そこら辺りを矯正して無くしていきたい、その辺お前はどう思う?」

「私自身は(カルマ値ー50)そこまで下等生物(げんちじん)の事については拘りがございませぬのですが、あまり急激にその辺りの扱いを変えるのもいかがなものかと愚考致します」

「ふむ?続けろ」

「は、そうですな……本人の努力の末言葉使いは改まって来たが、ふとした弾みにポロリと暴言を吐いてしまう、その辺りでいかがでしょう?」

 

「ふーむ、私としては下等生物(クソムシ)発言は0に控えて欲しいものだが、やはりあまり急激に美姫の対応が変わるのも変か?」

「多少の毒ならばナーベどのの美貌には良いアクセントかと、感情が高ぶったかのような場合やモモンと離れている時は思わず少し本性が覗いてしまう……などと言うのは異性から見れば魅力的に見える事もございます」

 

「……むぅそうだな、言われてみるとそうかもしれん。それにあまり完璧に修正し過ぎるとナーベ本人に戻った時また修正が大変か……コロコロ人格が変わっては美姫が躁鬱病にでもなってるみたいに見えるかもしれんな変な噂になったら本末転倒か……

 親しみやすい方向に努力中だけどうっかり口調がたまに変になっちゃう事もある意外に人間味を感じさせる美姫、まぁ今回はその辺にしとくか、よしその線で行こう。多少の暴言は(・・・・・・)私がフォローする、それでは任せたぞパンドラ」

 

「畏まりました、我が能力(やくしゃ)の及ぶ限りの全力をもって冒険者ナーベを演じてお見せ致します」

「そのポーズは封印な……あと口」

芝居がかったポーズで跪き畏まったナーベは、ニヤリとナーベの顔で微笑していた口元を慌てて覆った。

「……まぁ確かにこっちのうっかりもフォローしやすい設定だよな」

とアインズは多少の不安と共に頷いた。

 

 

 

 

 




「殿ぉ某もついて行くでござるよ!忘れないで欲しいでござる!」
「素で忘れてたわ」
9人と一匹の一行はエ・ランテルから南西へ


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