※この世界ではアルシェは生き残りましたが、妹イベントは発生しておりません、作者の好みによりweb版の設定を流用しています。 10/5 改稿
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珍しく最近ではまともな思考にふと我に返る。いや、いやだ、いやだ考えるのが怖い。怖いのだ生き残った事が、仲間を、ヘッケランを、イミーナを、ロバー……止めよう、もう考えたくない、だって今は私は幸せだもの、幸せだもの、幸せで頭をいっぱいにしなくっちゃ、怖いのはもう嫌、もっと気持ちいい事だけ考えなくちゃ……。
流れる美しい銀髪に端正な顔立ち、白蝋のように輝く肌、彼女の絶対の飼い主、シャルティア様の命令はいつも突然だ。
「さっさとしんなまし」
「はい、シャルティア様、愛しいご主人様、喜んで今すぐに」
今日は尻尾はいらないのだそうだ、お手づから装着していたものを外して頂き喜びに体が震える。
今日のご主人様のご命令は一風変わっていた、アルシェはただお行儀よく座っているだけ。目の前には、ピンクのまん丸卵に奇妙な帽子を被った異形の姿がしげしげと自分を見つめている。黄色ががかった服装は彼女の知識にも無いものだ。シャルティア様にも匹敵するような強大な力を感じる。これが以前なら耐え切れず吐いてしまっていただろう。だが今は普段からご主人様の力に当てられ続け半ば感覚は麻痺している。その隣に居る男には見覚えがある。スーツ呼ばれるオレンジの装束に身を包んだご主人様にも劣らないと言う―悪魔のような男、アルシェに解るのは彼らにとって自分の存在は芋虫にも等しい無力な存在と言う事だけだった。
ついとご主人の命令を待たずに上着をずらしかけたが、「ああ脱がなくて結構ですよ」とスーツ男の方から声がかかる。
「勝手なマネをするな」とのお叱りの声に、震え上がり許しを乞いながら体を投げ出しては這い蹲った。
見上げるとそこには
ああ、あれ?なんだろうこれは?もう私のまともと思っていた部分もおかしくなっていたのだろうか?いや気がついてないだけでもう狂ってしまったのかもしれない?本当にそうであるなら楽なのに、薄い闇に白く浮かぶアルシェ・イーブ・リリッツ・フルトの顔がこちらを見降ろして、にっこりと微笑んだ、その貌は彼女が思っていた自分よりも美しく、私って結構綺麗だったんだ…少しそう思って場違いにも嬉しくなったアルシェはアルシェに微笑み返した。
「やはりだめですか」
にこやかに微笑む少女を怪訝な目つきで眺める、あれは精神はまだ正常なはずでしたが、と首を捻る。
「申し訳ないですねデミウルゴス」
「君が謝る必要などないよパンドラ、ンフィーレア君の件も含め、未だ一度も成功が無いのだから」
スーツの男は残念そうに肩をすくめ、アルシェの姿をしたパンドラは成長しかけの細い腰に手をあて、洒落た動作でごもっともと答える。
「……確かに、しかしタレントの
「ふむ、まあ、元より今回のこの娘の能力は<魔力看破>是非とも欲しい能力でもありませんのでそう気にすることはありませんが……しかし今後はより有用なタレントの発見があるやもしれません。あるいは確率と言う事も有り得ますので、数をこなすことはどうしても必要になります。将来に備えると言う意味ではやはりそろそろ一度は成功例が欲しいところですね」
「『牧場』でしたかな?やはりタレントは簡単には見つからぬものですか?」
「……まぁ『羊』は数だけは放っておいても増えますからね、そこは気長にやるつもりですが」
苦笑して頭を振るデミウルゴスの言に、貫頭衣姿のパンドラ・アルシェも少女の表情に邪悪な微笑を浮かべ「その忠勤に励むお姿さぞやアインズ様もお喜びになるでしょう」と大げさに手を挙げ応える。
「デミウルゴス……私とて至高の御方に仕える者の端くれです。貴方のナザリック随一と呼ばれる智謀、私のこの身必要とあらばいつでも……それが例え100が1000回でも魂が擦り切れるまでお使い下さい。それこそが我が本望でありますゆえ」
ダンサーが舞台挨拶をするように大きく腕をたたみお辞儀をする、見た目が細身の美少女であるだけにバレリーナのように絵になって見えた。
「感謝するともパンドラ……もちろん同じ守護者として君の気持ちは十分解っているつもりさ、だが君は同時にナザリックの偉大なる支配者アインズ様の創造物である。私としてはその事を忘れてはいけない、その身に宿る価値を思うと私の一存で使い潰すなどやはり恐れおおい事だよ。君に無理をさせるのはそれはそれでアインズ様のナザリックに連なる者を守ると言う意に反すると言うもの……さて、悪かったね、私達の実験への協力に感謝するよシャルティア。君のペットをお返しよう……おっといけない、そうだ」
退屈そうに椅子に座り実験の様子を眺めて肘をついていたシャルティア・ブラッドフォールンが立ち上がって顔を向けた。
「なんでありんすか?」
「君のところにブレイン・アングラウスと言う
少し宙をさ迷った視線が同僚に向いた。
「ブレイン……ああ門番に使ってるアレでありんすか」
「今度
「了解したでありんす……しかし私にはデミウルゴス達がそこまで、以前セバス達も集めていたけど現地の下等生物達の
彼女思い出す。そのブレインを自らの部下に眷属化した戦い。戦ったブレインが自ら説明した事によって初めてシャルティアは彼が武技を使用していた事を知ったものだった。武技を使ってる事すらも解ってもらえないまま小指の先で遊んでいたシャルティアに敗北したブレイン。彼女にとって自称ではあるが人間では最強の部類に入るらしいブレインの武技ですらその程度のものでしかない。
彼女が疑問を感じていたのは、ンフィーレアのようにどんなアイテムでも使えるタレントのようなものならともかく、アインズ様をはじめデミウルゴスらがそのシャルティアにして見れば、つまらないスキル、武技などにどうして拘るのかと言う事。
シャルティアとしては武技それ自体に興味は無かったが主の考える所を―例えどれほど拙くて完全では無くても把握していなければ至高の御方に忠義を尽くすのに支障をきたすのは必至であった。
自らその真意に気がつけないのはシャルティアにとって口惜しいものではあるが、だが知らぬままなのは更に許され難い。何かと失態の多いシャルティアとしては恥を忍んででも教えを請いたい所であった。
「それは早計と言うものだよシャルティア、例えば能力向上系の武技で基本能力が向上すれば1のものが2になったところで1000の君には大した問題では無いだろう誤差のようなものだ……だが1000同士の戦いではどうかね?この先そんな敵と相対する事は果たして無いだろうか、どうだい?」
赤い目を細めなるほどとシャルティアは微笑して唇に指を当てた。そういえば
「左様ですな、またタレントに関してですが調査の結果、収穫や予知に関するもの果ては寿命に関するもあるようです。ナザリックの今後の発展の為にも下等生物とはいえ軽視は出来ないものです」
(そう言えばこの
流石はアインズ様の御手ずからによる者とシャルティアは両者の説明に納得した。
「まぁ、わらわの拙い頭ではおんしらには到底敵いませんえ……ではお言葉に甘え帰らせてもらいますえ」
無邪気に笑うと、美しい銀髪の少女は淑やかに漆黒のボールガウンの端をつまんで優雅な挨拶をした。
彼女の
この物語のおけるパンドラの能力(以下の能力は書籍巻末から推測した捏造混じりの設定です)
コピーした対象の80%程度の能力を再現できる、80%程度とは、アインズを例に挙げるとステータスの8割及びスキルの約8割程度を指す、ただしスキルは下から約8割であり、超位魔法、10位階魔法などは使えない、9位階魔法の一部を扱える程度に留まる、端数はランダム、この法則は自分より格下のユグドラシルのメイドや魔将達に対しても適用される、尚外装のみ中身パンドラは可能。
現地の人間をコピーした場合、外装と使用可能な位階魔法については
外装のほとんどは至高の41人で埋まっており、これは絶対変更不可。残りの4枠を重ね撮りするように書き換え普段の業務を回している。
素パンドラ(パンドラ・モモン他)のステータス
パンドラが外装のみを
・HP モモンの1.3倍
・物理攻撃力 ややモモンより上
・物理防御力 モモンの60%程度(アインズ様けっこう硬い)
・素早さ 遥かに上、アウラらに匹敵する
・魔法攻撃 気持ち程度
・魔法防御 モモンの半分程度
・特殊耐性 モモンの半分以下
・特殊 MAX
総合評価:素早さが突出している以外は攻撃力がオリジナルのモモンより、やや上回るだけであり、反面、物理・魔法共に防御力はモモンの半分程度である、さらに外装の鎧は
補足設定1・パンドラが変化できる
パンドラ・モモンの性能を見直して見ると思った以上に原作とはタイプが違う事に。防御力は一部戦闘メイドにも劣ってしまうが、敏捷性はアウラ・シャルティア戦闘職にも引けは取らないビュンビュン飛び回って片付けるスピードスタイルに。エンリ・パンドラで見られるように飛んでくる矢を掴んでモモン以上のパワーで投げ返したりできる。
アルシェが死んでるのは嫌だからこうした、反省はしてない、でも書籍本筋だからラリパッパコース、次回webブレイン君、君に決めたー!