【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
俺は執務室の窓から鎮守府を眺めていた。
鎮守府が奇襲を受けてから一週間ほどが経ったが、全部の施設が元通りになり、稼働している。もう奇襲を受ける前の鎮守府と何ら変わらない状態だった。
と、言いたいところだが、最近頭を抱える事が無くなったかと思ったらまた1つ増えたのだ。
「司令官さん、また今日も来てますよ。」
そう呆れた表情で入ってきたのは、今日の秘書艦である鳥海だった。
「またか......。」
そう言って俺は終わっていた書類を鳥海に渡すと、執務室を出て行った。
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俺は今、西川と途中で合流して正門に向かっている。
「どうしちゃったんでしょうね?」
そう西川は言ってるが、それは俺も言いたい事だった。
「馬鹿な議員共は出て行けっ!」
全てはこの声から始まった。
鎮守府が奇襲された際、抗議に来た自治体の事をどこかで知った近隣住民が怒ったらしい。理由は『自治体は市民の事を考えずに一目散で艦娘に助けてもらった癖に、攻撃された事を抗議しあがって。俺らが空母の艦娘に救助されている間も、ここの人たちは皆爆弾の雨に耐えていたんだぞ!』らしい。ここの人たちというのは、事務棟で働く海軍の非戦闘員と、酒保で働く人たちの事を言ってるらしい。確かにあの時、空母に載せて避難させるより、地下シェルターの方が安全だと思って入れて爆撃を体感してるが......。『提督の歳も見てわからんのか!軍が減りに減った人口からなけなしに未成年まで戦場に駆り立ててるんだぞ!情けないとは思わないのか!』とかも言ってるらしい。ソースはその時正門の番をしていた門兵。
「やっぱやってますねー。」
そう言って西川は門の向こうを見ていた。
確かに、何かの団体と何かの団体が睨みあっている。ちなみに静かな方が近隣住民らしい。
「危険な基地はここから出て行け!」
「国民を危険にさらすな!」
「深海棲艦との戦争はよそでやれ!」
そう聞こえてくる。だが近隣住民の方は黙って睨みを聞かせていた。そして誰かの合図で一斉に団体の方に歩み始める。
「出て行け。」
「何もしなかった馬鹿共は出て行け。」
「艦娘と司令官を悪く言うな。」
そう通常の会話のトーンで言いながら進む近隣住民は狂気に思えたが、これは多分俺や休んでいる艦娘への配慮だろう。騒ぎを大きくすると来ることを知っている様だ。
「何だ!皆、怖い思いをした仲間じゃないか!!」
そう叫ぶ何かの団体の声は段々遠ざかって行った。
「終わった様ですね......。また近隣住民の人たちが束になって押し返したんでしょうね。」
そう西川は苦笑いしながら言った。
「そうだな。」
そう言って俺は執務室に戻って行った。
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俺が戻ると、鳥海も苦笑いしていた。
「アレは非難されないだけ、うれしいですが追い返し方が怖いですね。」
「俺もそう思うよ、叫ばずに会話のトーンで言いながら詰め寄ってくる。想像しただけでも怖い。」
そう言って俺は新たに机に置かれていた書類に目を落とした。どうやら俺が見に行ってる間に鳥海が事務棟に行ったみたいだった。
書類の内容は、『支援物資の納品』と書かれている。鎮守府が奇襲に遭ってから3日経ったころから始まったコレは特産品や娯楽品などが詰められた段ボール箱が送られてきていたものだった。送り主はどこだか分かっているのだが、ずっと送ってきてくれている。
「また来たか......。お礼の手紙は送ったんだがな。」
「はい。しかも武下さんがわざわざ行ったんですよね?」
「コチラとしては本や特産品を送ってくれるのはありがたいんだが、資料室に置く本を選別するのは大変なんだけど......。」
そう言って俺は右端に置いていた送られてきた本のリストを見た。たぶんこの机に置かれた書類の中で一番多い枚数だ。
「そうですね。資料室も今や戦術指南書よりも寄贈された本が多すぎて、資料室というより図書館みたいなんですよね?」
「そうだな......。」
そう言って俺はさっき鳥海が持ってきた書類に目を通した。
「うわっ......今度はテレビまであるぞ......。」
「テレビですか......。食堂にはありましたよね?」
そう言うが、テレビなんて高価なものを無償で受け取るのには少し抵抗があった。そこで、俺は遠い昔の記憶を何故だか思い出した。
那珂というか、川内型姉妹の願いをここで叶えるいい機会だ。序に近隣住民やこんなけ支援物資を送ってくれる人たちへの感謝の意味を込めて......。
「やるか。」
俺はそう言って立ち上がった。那珂を探しに行くために。
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探そうとしなくても案外すぐに見つかるものだ。埠頭や運動場に行けば大概の艦娘は見つかる。
「那珂ー!」
「はーい!」
俺が呼ぶとすぐにこっちに来た。仲がいいのやら川内や神通も居る。
「この前の事覚えてるか?」
「この前って?」
「バトミントンしただろう?あの時俺がいった事。」
そう言うとみるみる那珂はキラキラが増していき(※そう見えるだけです)ズイッ前に出てきた。
「ステージをって奴だよね?!」
「あぁ。」
「提督がこの話をしに来たって事は?!」
「おうとも。」
そう言うと那珂は飛び上がった。よほどうれしい様だった。
「だがまだだがな。」
そう言うとズゴーと那珂たちが滑った。
「まだ大本営に許可を取ってない。取れ次第、計画を立てて開くぞ!」
そう言って俺はすぐに方向転換した。執務室に行き、大本営に送る書類を作るためだ。
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書類は出来てすぐに送った。やる事になった経緯と、やる内容を書き留めた。
横で見ていた鳥海は終始不思議そうに見ていたが、俺がニヤニヤしながらだったのを見たのか楽しい事なのだろうとは感づいた様だった。
「ふふっ。」
「どうした鳥海。」
「その書類、許可が下りるといいですね。」
「あぁ。」
俺はそう言って書き留めた書類を封筒に入れて封をし、鳥海に渡した。
「では、出してきますね。」
そう言って鳥海は執務室を出て行ってしまった。
それを見送った俺は紙を出して、ある事を考え出した。何をやるか、どういう配置を取るか......那珂のバックダンサーはどうするかだ。
もし許可が取れたとしても準備には相当時間が掛かる。それまでの間に選ばれたバックダンサーは全員ダンスの練習をしなきゃいけない。そう考えると、バックダンサーは一番最初に決めるべきだ。そう思い、色々と挙げて行く。
「第四水雷戦隊......。」
そう思い付き、俺は調べ始めた。
「村雨、夕立、五月雨、舞風、涼風、朝潮か......。」
そう思い、挙げてみたものの舞風まだドロップしてなった。
「うーん。舞風は無理だ。じゃあアレだな。これで一応、那珂に訊いてみるか。」
そう言って俺は舞風にバツをうって紙を折った。
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夕方になる頃には鎮守府は妙な雰囲気が流れていた。ソワソワしているというかそんな感じ。
俺は夕食が始まる前に、俺は食堂に行ってテレビの電源を付けていた。もう結構集まっていて、俺が付けるなりわらわらと艦娘たちが集まってきた。
「この光景も慣れたな......。」
俺はそう呟いて、テレビに集まる艦娘たちを見た。駆逐艦が前列を占領するあの陣形だが、駆逐艦の艦娘に混ざってデカいのが居る。そんなのを眺めていると、誰かが列に入り、そのデカいのは連れて行かれた。
「離すデース!霧島ぁー!!」
「ダメですよお姉様!司令が大型艦は後ろで見なさいって言ってたじゃないですか!」
「クスン......酷いデース。」
「ちゃんと守らないと司令に怒られますよ。」
そう言って霧島が手を放すと、金剛が俺の横に来るのはいつもの事だった。
「霧島にまた引っこ抜かれマシタ......。」
「当たり前だ。」
そう言って俺は金剛に軽いチョップをかます。
こんなのが『近衛艦隊』で頭をしてるんだからちょっと変な感じだったりもする。
「でも見たのは見れたので、良いデス。」
そう言って金剛はニコニコしだした。
「そうか。」
そう言って俺も今いる席からテレビを眺めるのだった。
3日で復興が終わったと言いましたがアレは大まかにと言う意味です。今回のはちゃんと機能を始めたと言う意味で復興完了ですので。
色々と外でも起きてますが、提督はまだまだ色々あるんですね。
ご意見ご感想お待ちしてます。