【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
「おはようございます。提督。」
俺が朝起きてくると既に大井が執務室に居た。今日の秘書艦、というか建造されてからこの方大井はレベリングや何かで忙しかった。だが今日は休み。厳密に言えば別の艦娘がレベリングなので俺が秘書艦として指名しただけだ。
「おはよう。今日は朝早くからすまん。」
「いえ。朝食の時間を考えるとこれくらいがいいんですよ。」
そう言われて俺は壁にかかっている時計を見た。現在は6時10分。そうは言っても結構早い時間だ。
「加古はもう起きてるか?」
「えぇ、叩き起こしましたよ?」
そう言うと大井はドヤ顔をした。
「加古はいつも起きないから秘書艦に頼んでやってもらっててな、すまん。俺が艦娘の寮に行く訳にはいかないんだ。」
「古鷹さんから訊きましたよ。何でも長門さんじゃなければ起きないとか。」
そう言った大井は何でだろうと首を傾げた。
「長門が......何で?」
「怒るらしいんですよ。」
そう言って大井は秘書艦の席に座った。
「長門が?......無いな。」
俺も自分の椅子に座ると最初に計画書を引っ張り出した。勿論、シェルターに関する物だ。
構造。設備をどうするか。電源はどうするか。そんな事を書いた書類だ。
「ふーむ......一回集めるか。」
俺はそう呟いた。こればかりは他の意見も取り入れたい。だが、目の前にいる大井はまだ日が浅いので任せられない。そう思い、朝食の際に集める事にした。
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俺と大井の前に古参組の艦娘が集まっていた。長門、赤城、高雄、吹雪が並んで座っている。
「重要案件につき、集めた。」
そう俺が味噌汁を啜りながら言うと、困った顔をして長門が言った。
「重要案件ならば食堂で話さなくてもいいだろう?」
そう言った長門に続いて大井が言った。
「長門さんと赤城さん、高雄さんはレベリングで海域に出るんじゃありませんか。至急の案件なんでしょう。」
そう言って大井も味噌汁を啜った。
「朝からそんな話が出るだなんて、何でしょうか?」
赤城も俺と大井同様、味噌汁を啜りながらそう言った。
俺は赤城もブレないなと思いつつお椀を置いた。
「重要案件とは、現在水面下で進んでいるシェルターの建造だ。」
そう言うと全員が頭の上にハテナマークを浮かべた。シェルターの必要性に疑問を感じているのか、はたまたシェルターという単語の意味を知らないのか。
「シェルター......防空壕の事ですか?」
赤城はそう言いかえた。
「防空壕とも言う。最近の深海棲艦の戦術パターンの変化によって起こる不測の事態に備えて建造するべきだと俺のところに意見具申があってな、それに伴って建造することになった。」
そう言うとあまり海域に出ない吹雪はよくわかってない様だが、他の長門たちは分かった様だ。
「シェルターの用途は鎮守府に直接攻撃を受けた際、避難する場所だ。救援など待ってられない事態に備えて、地上にある施設を地下にも作ろうと思う。」
そう言って俺は持ってきていた予定見取り図を開いて見せた。
「シェルターには食料、生活に必要な設備、入渠場、ドッグ、倉庫を用意する。外気と遮蔽される事も備えて海水電離層で酸素の供給を行えるようにする予定だ。」
そう言うと長門は何かを呟いた。
「......これは......吹雪っ!」
突然長門は吹雪を呼ぶとある事を訊いた。
「あの紙、持っているか?」
「私室にあります。」
「持ってきてくれまいか?」
「分かりました。」
俺は何の事だか分からずに取りあえずその紙を丸めた。
「とまぁ、そんな計画が動いている。そこで俺は長門たちに助言を貰いに来た。正確に言えば意見を貰いに来たと言うのが正しい。」
そう言って俺は脇にその紙を置くと、茶碗を持った。
「どう思う?」
俺がそう言うと高雄は答えた。
「それは吹雪ちゃんが帰ってきてからお話します。」
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吹雪は数分で帰ってきた。その片手には何やらファイルが握られている。表紙には何も書いてないが、年期は経ってない様だが何度か開かれた様な雰囲気を出している。
「それは?」
そう俺が訊くと吹雪は俺にそれを渡してきた。
「それはこの鎮守府にある『もう一つの施設』だ。」
そう言われて俺が開いてみると、中には地図がある。鎮守府を書かれたものだが、異様な事に彼方此方に赤く丸で囲まれているところがあった。
「提督。シェルターなぞ作らずとも、もうある。それはここが普通の海軍基地だった時代に作られたものだ。用途は『深海棲艦の基地強襲の際の避難場所。兼地下司令部。』。提督が考えていたものがそのままある。」
俺は絶句した。もう既にそのような施設が存在しているなど、知りもしないものだったからだ。
「入渠場とドッグを増設すれば提督の考えていたものができるだろう。」
そう言って長門は食べていなかった朝食に箸を伸ばし始めた。
「ですので、わざわざ作らなくともいいんですよ?」
吹雪はそうニコッとして言うと朝食を摂りはじめた。
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俺は執務室に帰るなり、吹雪が持ってきたファイルを俺の考えていた計画書を机に置くと項垂れた。これまで考えてきた事がほんの数分で消し飛んだからだ。
「大井......。」
一緒に帰ってきていた大井に俺は声を掛けた。
「はい。」
そう答えてくれた大井に俺は計画書を差し出した。
「処分しておいてくれ。」
「はい。」
俺は結局項垂れたまま30分間過ごし、執務を始めた。
ちなみにそのあと、工廠の妖精に地下施設の増設を頼みに行ったら快く了解を得た。すぐに着工して、明日から使えるようにするとの事。どれだけ仕事早いんだ。
結局地下にあったという......。とんでもないオチですみません。
大井が秘書艦をするとどうなるか、少し想像がつかなかったものですから少し淡白になってしまってるかもしれません。
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