【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
重たい瞼を持ち上げて俺は凍てつきはしないが、寒い外気から隔絶していた布団から出ると、すぐに着替えて執務室に出た。
執務室には既に今日の秘書艦である球磨が秘書艦用の椅子に座って待っていた。
「おはようクマ。」
「おはよう。」
そう言った球磨は特徴的なアホ毛を揺らしていた。
「もう今日の執務の書類は持ってきてあるクマ。いつもこれくらいクマ?」
そう言った球磨は首を傾げた。
「そうだ。だが、急に枚数が増える事がある。」
そう答えると、球磨はふーんとだけ答えて秘書艦のやれる仕事を始めた。俺はその瞬間、壁にかかっている時計に目をやった。今の時刻、6時15分。食堂はまだ空いてない時間だ。
「まだ時間があるから少しやっておこうか。」
俺もそう呟いて、椅子に座った。
昨日から誰も座ってなかった椅子はひんやりしていて少し気持ちよかったが、自分の体温ですぐに暖かくなった。
今日の執務を始めるが、いつも通りだったので何も考える事無く、手が進んでいった。
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俺と球磨は6時30分になるとすぐに食堂に向かい、朝食を摂り始めた。勿論、秘書艦特権で球磨は俺の横に座っている。
そんな球磨を見ていてある事を思い出した。球磨は遠征艦隊の旗艦を務めている。秘書艦として抜いてしまったら誰がその穴を埋めるのだろうか。
そう考えたが答えはすぐに出た。空いた旗艦の席に夕張を昨日の夜に入れたのを思い出した。直接頼みに行ったが、別にそこまでしなくていいと夕張に言われた。
「朝はやっぱり和食に限るクマ。」
そう言いながらがつがつと食べる様は結構面白かった。年端もいかない女の子が、青春真っ盛りの男の様にご飯を食べているのだ。
「朝から食欲旺盛なんだな。」
「当たり前クマ。この後、すぐに遠征に......行かないんだったクマ。」
そう言って自分でツッコンだ球磨は食べるペースを落とした。
「偶にはゆっくり食べるのもいいクマ。」
そう言って俺と球磨は黙って朝食を摂った。
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朝食を摂り終えた俺と球磨は執務室に戻るなり、執務を始めた。
朝にやっておいたせいか、かなり早く終わってしまった。いつもなら10時過ぎに終わっていたが、今日は9時には片が付き、球磨が提出に行ってしまった。
「やる事ない......。」
俺は窓から埠頭を眺めてそう思った。
朝の9時に執務が終わってしまうだなんて考えもしなかった事だったからだ。
「少し......別の事を考えるか。」
俺はそう考えて、紙とペンを取り出し、おもむろに書き出してみた。
埠頭からの出撃の取りやめと、出撃ドッグの建造。寮の独立化。艦娘の府外探索。警備の強化......。色々と考えが浮上してきた。だがその中でも重要だと考えたのは、深海棲艦の戦術パターンの変化に対する対策と鎮守府への直接攻撃への懸念だった。
前者は、大分昔に発覚していたが、これまでに対策という対策を練ってすらいなかった。後者は単に鎮守府の安全面を考えた結果だ。鎮守府にはこれといった防衛火器が無い。唯一あると言えば艦娘の艤装と、先日運営が始まった滑走路だけだった。それだけでは鎮守府を直接強襲された際、如何する事も出来ない事態になり兼ねない。そう考えたのだ。
「前者は長門と赤城、古参組を集めて会議だな。」
俺はそう言って紙に書き込むと、後者に対する案を考え出した。
「防衛火器......既存のものを買い取ってもいいが、深海棲艦に有効なのだろうか。だが、艦娘の登場以前は護衛艦が深海棲艦と戦っていたという。効果はある可能性があるな。」
俺はそう考え、既存の防衛火器の購入を視野に入れた。そして、防衛火器と同時に必要なものを考え出した。それはすぐに思いついた。
「......シェルターか。」
防空壕とも言っていい。艦砲射撃から身を守る施設が無いのだ。なので、そう言った物を作らなければならないと俺は考えた。
「だが、作ったとしても艦娘は収容できるかもしれないが、艤装は......。」
そう考えたが、艦娘は艤装を身に纏えるのでその状態で入れば問題ない。
「なら、広いのがいいのか。」
俺は考え、結局、シェルターを作る事は決定した。それに伴って保存食の購入、日用品の買い溜め、色々としなければならない事が発生した。
「それはおいおい、買えばいいか。」
俺はシェルターの建造を決定した。これに関しては大本営に許可を取らずに勝手にやろうと考え、工廠の妖精に頼むことにした。
そんな事を考えていると球磨が提出から帰ってきた。
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球磨は俺がさっき考えていた事を一緒になって考えてくれた。
俺の挙げたことには同意してくれた。だが、まだ足りないと言った。
「シェルター......防空壕はどういう作りにするクマ?」
そう聞かれ、俺は一般的な事を答えた。
「鉄骨を入れたコンクリートだ。」
そう言うと球磨は唸った。どうやら違う様だ。
「コンクリートで作るのはいいと思うクマ。だけど、深さはどうするクマ??それに入り口の数、空調......問題はあるクマ。」
そう言って球磨は俺の使っていた紙に図を書き始めた。
「深さは200mくらいでいいと思うクマ。入り口の数は鎮守府の四方にそれぞれ2つずつ。中央に1つ。空調はアレだクマ......そう、海水を電離して酸素を作ればいいクマ。それなら一応酸素は無くならないクマ。」
そう言って四角を書いたところにあれこれと書き足していった。
だが、俺はそこで尋ねてみた。
「海水を電離するのはいいが、電離する設備を破壊されれば空調は止まるぞ?それに、電力供給だって止まる可能性がある。」
俺がそう言うと球磨は唸った。電離に関しては俺もいいアイデアだと感じた。酸素ボンベを大量に置くとかだったら万が一火災が起きた時には鎮守府ごと吹き飛ぶことになる。
「電力供給に関してはアレがあるクマ。」
そう言って球磨は首を傾げた。そして何か思い出したかのようにそれを言った。
「核を使うクマ?原子力発電所なら海岸沿いに作れるし、電力も大量に手に入るクマ。」
そう自慢げに言った球磨を俺は一蹴した。
「核なんて使ったら、想像できない問題がいっぱい起こる。却下だ。」
そう言うと球磨は新たな手段を挙げた。
「じゃあ電柱をやめて地下に電線を埋めればいいクマ。」
これでシェルターの電力供給に関する問題は解決した。
「じゃあ今球磨があげたので大方いいと思うから計画を始める。」
そう言って俺は計画書を書き始めた。これで俺の執務は増えた。
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俺が計画書の大筋を書き終えた時、球磨がこちらをずっと見ている事に気が付いた。
「どうした、球磨。」
「景品の事クマ。」
そう球磨は唐突に切り出した。
「景品がどうかしたか?」
「球磨の願いを聴いてほしいクマ。」
そう言うと球磨は椅子を座りなおした。
「いつ鎮守府が深海棲艦に襲われるか分からないクマ。だから守るための武器が欲しいクマ。球磨たちの艤装だけで対処できない事も考えられるからだクマ。」
そう言った球磨に俺は答えた。
「分かった。早急に進めよう。」
そう俺が答えたのに満足したのか、球磨は再び自分の仕事に戻っていた。
俺はそんな球磨を見た後、既存の防衛火器を調べ出したのは言うまでもない。
結構淡白な話になってしまいました(汗)
今回で景品の話は終わりです。まだ願いが叶ってない艦娘のはどこかの話でちょくちょく入れて行くので心配なさらないで下さい。
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