【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
「よっしゃ!今日も始まったな。長門ー。」
俺は朝食を済ませるとすぐに執務に入った。
今日は昨日の失敗を糧に前に進むのだ。今日の建造の為に来る金剛型は榛名だ。
「提督?」
俺が頬杖をついていると、不思議に思った榛名が話しかけてきた。
「あぁ。昨日の建造、比叡から聞いたか?」
「はい。なんでも、霧島の艤装を出してしまったとか。」
榛名は少し悲しそうな表情をした。
どうやら少し比叡に期待していたようだ。その様子を見るに俺と同じような期待だったのだろう。
「今日呼ばれたのは、判っているよな?」
「はい、もちろんです。比叡お姉様の仇、榛名が取りますっ!」
「じゃあ、長門から説明を訊いてくれ。俺は執務を始めるが、行くときには声をかけてくれ。」
「はい。」
俺がそう説明すると、比叡の時と同じく長門からの説明が始まった。
「工廠に行って建造妖精に『戦艦レシピで』というと建造が始まる。」
「建造ってそんな風に行われていたのですね。」
「そうだ。そうしたら、建造時間のところに『4時間』と出たら金剛型だ。これが今回、貴様に与えられた任務だ。」
前の日同等の音量で長門が榛名に説明している。前の日では比叡のリアクションに少し長門は戸惑っていたが、榛名は落ち着いているので結構すんなりと説明が進んでいる様だった。
「そうすれば金剛お姉様に逢えるという訳ですね。」
「いや。そういう訳でもないんだ。金剛だとしたら建造ドッグから出てくるのは金剛と金剛の艤装だが、金剛以外なら艤装だけが出てくる。注意しておけ。」
「そうなんですね。それでも榛名は大丈夫ですっ!その艤装は近代化改修に回されるのですよねっ!提督っ!今すぐに金剛お姉様に逢えますからねっ!!!」
そう言って榛名は楽しそうに執務室を出て工廠に行ってしまった。
そんな光景を見て俺はある事を思った。
「なぁ、長門。これデジャヴ。」
「奇遇だな。私もそう思ったところだ。」
「「本当に大丈夫だろうか?」」
「「あっ、これもデジャヴ......。」」
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榛名が工廠に行って数十分が経った位、俺は資材残量を見て悩んでいた。
今回の第四艦隊解放への投資として結構な数の資材(石油と鋼)を溜めていたが、一日一回とはいえ回数を重ねると資材が心持たなくなるのも時間の問題だった。
現に、出撃していった攻略艦隊(※今、長門は入渠中)は、北方海域はモーレイ海哨戒の攻略に向かって、ボス前撤退してきたところだった。
修理に幾多の資材が消え、ボーキサイトが撃墜された艦載機へと変わっていった。
「はぁ......。」
俺が溜息をつくと、執務室の扉が開いた。榛名が立っている。という事は建造が終わったという事だ。
「おっ、榛名。どうだった?」
俺がそう言うと、榛名は涙目になって机のところまで歩いてきた。
「すみません......提督......。建造で出てきたのは妙高型の艤装でした......。」
俺はこのセリフにも強烈な違和感を覚えた。
「そっ、そうか。だけどまだなんとか油と鋼は余裕がある。まだ続けられるぞ。」
「すみませぇぇぇん。」
榛名は深々と頭を下げた。どうやら失敗してしまったことを相当悔やんでいる様だった。
「比叡が出来なかったから、榛名ならどうだろうと任せてみたが......。」
そう考えなしに言ってしまったばっかりに、泣き出しそうだった榛名の瞳から涙がこぼれた。
「榛名はっ、榛名はっ、大丈夫じゃないですぅぅぅぅ!」
榛名はそう言っていつも訊く口癖を少し変えた言葉を発しながら部屋を出て行った。
まだまだ俺の第四艦隊解放への道は続く。
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「そういえば、今日の建造はどうなったのだろうな。」
長門はそんな事を考えながら入渠していた。
今回も第四艦隊解放の話でした。
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