【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
「あー、雪風。」
「はい!」
朝、雪風は朝食を摂るとすぐに執務室に来てくれていた。
「今日の建造だが、開発は昨日と同じで建造はレア駆逐レア軽巡レシピ4回やってくれ。」
「はいっ!」
雪風は俺の指示を聞くとすぐに執務室を出て行った。開発に向かったのだ。
その光景を眺めていた長門は目を細めている。
「どうした、長門?」
「何だろうな......いつもの光景が平和に思えた。外洋ではずっと戦争をしているのにな。」
そう言った長門は今日こなす分の書類を俺に渡してきた。いつも渡される枚数は5枚。本当に少ない。俺はてっきり書類が山積みになっているのばかり思っていた。この世界に来るまでは。
何でもここに回ってこない書類は長門の言う人間が処理しているらしい。長門の見解だと、戦争を押し付け更に気が遠くなる程の量の書類をやらせていては何時か艦娘が反乱を起こすのではないか。過労で戦争どころでは無くなるのではないかという事らしい。
「俺は外洋の戦闘を知らないからな......。この世界に来る前、この世界の存在なんて知らなかった。平衡世界だなんておとぎ話だったよ。」
「そうか......。私たちは知っていたがな。」
そう言うと長門は俺に手渡した書類を眺めると話を切り出した。
「......提督。提督の居た世界の話をしてくれ。」
「何だ、藪から棒に。」
「気になったんだ。深海棲艦のいない世界が。」
俺は話すことにした。もし俺の居た世界の存在そのものを知らなかったというのならば話すのを控えようと考えていたが、目の前の彼女は知っている。だが、どんな世界なのかは知らない。
俺もこの書類を片付けたら暇だから付き合う事にした。
「いいぞ。だがこれを片付けてからだ。」
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この世界に来てどれ位経っただろうか。主観時間的には二か月がいいところだ。それまで書類を3時間で片付けていたが、やろうと思えば1時間半で終わらせることができた。
勿論、手は抜いてない。
俺は長門に訊かれていた俺の居た世界の話をしようと考えた。
「長門、さっき言ってた話をしよう。」
「あぁ、聴かせてくれ。」
「まず何から行こうか......。長門は何が聞きたい?」
俺はこの世界と、艦娘の行っている生活があまりに俺の居た世界と違い過ぎるので、どれを話もいいのだがここは長門の知りたいところだけを話してみようと思った。
「そうだな......。私がこの世界に呼ぶまで、昼の時間は何をして過ごしていたんだ?いつも指令書は夜中に届いていたからな。あぁ、土曜日と日曜日は朝とか夕方にも届いていたが。」
ベタな事だった。『何をしていた。』はどこの世界に行っても聞かれる事なんだなと俺は思い顎に手をやった。
「まず、俺の年齢を当ててくれ。何歳だと思う?」
「うーん......、ここに来る人間より遥かに若いからなぁ......18くらいか?」
「正解だ。」
俺は長門の観察眼に少し驚いたが、動揺せずに続けた。
「俺の居た世界では18歳は『高等学校』っていう学校に通う事が多いんだ。俺もそうだった。」
「学校か......私は通った事がないが、楽しいのか?」
「人によるが、俺は楽しんでいた。」
「そうか......。」
俺がそう答えると長門は少ししょんぼりしてしまった。
「だが、楽しく無い事もあるぞ?朝から夕方まで勉強してから家に帰るんだ。」
「それは楽しくないかもな。高等学校とは、名前の通り高等......高度な教育を受けていたという事か?」
「そうだな、高度な普通教育と専門教育を俺と同じ年代の男女が入り混じって学ぶんだ。」
「私たちは基本的な道徳、習慣、読み書きが進水した時から備わっているからこの生活には困らないからな......。ちなみに提督はどんな事を学んでいたんだ?」
「それは科目の事か?科目なら現代文、古文、数学、物理、化学、世界史、政治経済、英語......あと保健体育、美術、情報だな。」
「そっ......それは多すぎやしないか?」
「そうか?俺の学んでいた量は普通くらいだが、知ってるところだと生物、日本史、倫理、現代社会、アラビア語、フランス語、とか聞くぞ?」
「後半が何言ってるのかわからないが、凄い量だな。それを朝から夕方までやっていたのか?」
「いや時間を決めて週5日でやってた。」
ここで長門の学校に関する質問は途切れてしまった。
そうすると長門は顎に手をやり、何かを考え出したと思ったらすぐに口を開いた。
「私たちには人間から見た年齢がつけられてるのを金剛から聞いたと思うんだがどうだ?」
「あぁ、聞いてるよ。見た目でつけられたってやつね。」
「そう。私は人間に20歳と言われたんだが、提督の居た世界ではそれくらいの女子は何をしているんだ?」
「そうだな......20歳くらいだと大学っていって高等学校よりも更にレベルの高い専門教育をする学校に通うか、専門学校という将来が固定される様な学校に通うか、働いてるな。」
「大学?というのはさっきの高等学校から連想して大体想像できたが、高等学校と違いはあるのか?」
「あぁ、なんでも自由な時間に勉強をして遊ぶ。人生の夏休みって言われている時期だ。」
「そうなのか......では専門学校とは何だ?」
「手に職を付けるとか、国の認定のいる職業に就きたい人間が通う学校だ。」
「成程。では、働くとはいったい何をしているんだ?」
「大体が事務、商業、医療現場、技術職......色々な事をしているよ。」
「そうか......。」
そんな話をしていると、廊下から足音が聞こえていた。誰かか来ている。しかも足音が2人だ。
「おっと、誰かが来たみたいだな。悪いがこの話はまた別の時に。」
「あぁ、その時も頼む。」
そうすると、足音が執務室の前で止まり、扉が開いた。
「司令ぇ!新しい仲間が進水しましたっ!」
「「またかっ!?」」
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「島風ですっ!速さなら誰にも負けません!」
そう言ってうさみみをピョコピョコさせているのは今日進水したばかりの駆逐艦、島風だ。どうやらまた雪風は運が全快らしい。
「よろしく。俺はここの提督だ。」
「ええぇぇぇ!!提督が居る鎮守府!?やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
と毎度の如くこの反応である。
長門と雪風はそれを微笑まし気な顔をして眺めていた。
「雪風、結果は?」
「はいっ!建造では島風ちゃんと、他は全部艤装でした!開発は10cm連装高角砲が2こと失敗です。すみません......。」
「大丈夫だ。昨日と同じなんだろ?」
そう言うと雪風は笑顔で答えた。
俺はすぐに島風を案内するように促し、雪風のその任を与えた。さっき長門に俺の居た世界の話をしていたら不憫な島風の話を思い出してしまったからだ。
雪風がきっといい友達になってくれるはずだと考えての事だ。
「雪風、島風に鎮守府を案内してあげて。」
「了解しましたっ!行こっ!島風ちゃん!」
「うん!」
2人は元気よく執務室を飛び出していった。
俺と長門はその後姿をみとって、同じことを口にしていた。
「「デジャヴだ......。」」
雪風の開発日記シリーズが3回目となりましたが、雪風が開発に行ってる間の下りはどうしてもこうなるみたいです。
ちなみに、島風が出た瞬間窓空いてるのに喜んでしまった......恥ずかしい。
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