【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
鎮守府に来て結構時が流れた。最初は色々な事に戸惑い、その時々で問題を起こし起こされ、楽しい時間を過ごした。
と言っても些細な事だ。大きな事は起きずに、大体が足柄だったり蒼龍と飛龍に絡まれたりだったがな。
「金剛君っ!早く来てよー!!」
こんな調子で俺は今日も鎮守府で生活をしている。
鎮守府に来たのはもう数ヵ月も前の事だった。あれから白瀬さんは昇進したりして鎮守府は大きくなった。下っ端が担う作戦、任務でさえもそつなくこなし、コツコツと実績を積み上げた結果だと白瀬さんは言っていた。と言っていても未だに偵察や露払いをしているのであまり変わらない。そこに主力艦隊としての任務も入ってきてる訳だから実働する俺や艦娘たちよりも遥かに頑張ったのだろう。だが白瀬さんはいつも遊んでいる様に見えていたがな。
「今行くから少しは黙ってだな......。」
今から俺は年に一度行われる観艦式に参加する為、鎮守府から離れて横須賀に来ていた。
観艦式にはその年に功績を挙げた鎮守府の主力艦隊が出席するのだ。
これから観艦式だ。今回の観艦式に出るにあたって白瀬さんとは一悶着あった。俺の式典参加で鎮守府で揉めた。何故かと言うと男の艦娘だなんて現れたら騒ぎが起きかねないという事になるとかならないとか。だが俺が海軍大将に気に入られて連れて行かれるやらの騒ぎのお蔭で結構知られているので問題ないとなった。
今、観艦式会場で俺は蒼龍と飛龍に捕まりながら海に立とうとしていた。これから海を走り、観艦式となる。見世物になる訳だがいつもの事なのでそれ程緊張してなかった。
「では、行きますか。」
俺はそう言って号令を出し、海の上を走り出す。
飛沫を上げながら海を走り、後ろを確認する。観艦式には艦隊の隻数規定はない。今、俺の後ろを航行しているのは蒼龍と飛龍、比叡、大和、武蔵、翔鶴、瑞鶴、足柄、羽黒、夕立、時雨だ。全員武勲を挙げた実力者たちだ。そもそも大和型と言うものは一度海に出れば戦果を挙げると言われているが、白瀬さんの大和型は一味違った。全戦無敗で、武蔵に至っては素手で深海棲艦を轟沈させる。素手で戦うのは白瀬さんの長門じゃない他の長門らしいが、見たことが無い。演習でさえも武蔵は素手で戦うので偶にストップがかかる程だ。
『次は、舞鶴第五鎮守府所属艦です!かの有名な金剛型一番艦 金剛がおります!』
アナウンスが入り、俺は会場の前を走り、手を振る。こういうサービスも必要だと白瀬さんから言われている。全くその通りだが、この黄色い声援はどうにかならないのだろうか。
「キャー!!金剛くーん!!」
「カッコいいわー!!」
「私とケッコンしましょー!!」
目の焦点の合ってない黙っていれば美人な人がそんな事を叫んでいるのだ。黄色いというよりむしろ、叫んでるのは脳内ピンク色だ。俺はそうである自信がある。
「あはははっ......はぁ......面倒だ。」
俺の本音はそんな人たちの相手をするのが面倒だと言う事だ。唯一そう言う目で見ないのは金剛(本物)と比叡、榛名、霧島、大和、武蔵くらいだ。偶に遊びに来る夕立なんかも懐いた妹みたいな気もしなくもない。そこまでやらしい感じはしないのだ。じゃれてるだけって感じ。他は足柄並びにとなる。ガツガツ来る。いい例が蒼龍と飛龍だ。こいつ等、かなりぐいぐい来るのだ。この前なんか、俺の部屋に押し入ってきて『男の子だから掃除とかしないでしょー?!私がしてあげるー!!』と言って扉ぶち破ってきたもんだが俺は流石に怒った。だが俺の部屋は案外片付いている。そういうのは好きなんでね。残念そうに帰ろうとしたもんだがら扉直してから帰れと言って扉を治させた。
白瀬さんは最近結構俺に構ってくるようになった。やれ秘書艦だの、やれ開発と建造してこいだの、やれ接待だのと言って俺を連れまわす。まぁ白瀬さんは言うなれば上司みたいなもんだから逆らえないが、それ相応の対価はあるんだ。給料上乗せだったり接待だったりすると帰りに奢ってくれる。気前がいいのか分からないが俺がラーメン啜ってるのを横から見てニコニコしてるもんだから気分はいいんだろうな。
そんなこんなで話が脱線したが、面倒なのだ。
「モテモテじゃないのぉ~。でも金剛君は私とケッコンするもんねー?」
「蒼龍ズルいっ!金剛君は私とケッコンするもんねぇ?」
観艦式で会場の前の航行が終わるなりそう言って蒼龍と飛龍は間合いを詰めてくる。俺はそれを後ずさりしながら距離を置くが、すぐに距離を縮めてくるのだ。こんな時は、と思い辺りを見回してすぐに走りだした。
走った先には武蔵がいる。武蔵の背後に回り、艤装の煙突に捕まった。
「ん、どうした金剛?」
「まただ。助けてくれ!」
「仕方ないなぁ、ほら。蒼龍と飛龍、金剛を追いかけるなら私の屍を越えて征け!」
「「えぇ~。」」
というやりとりももう何回やったか覚えていない。
大和や武蔵がいなければ金剛とかに匿ってもらうが、誰も居ないとただ走り回るだけになるんだ。あれ、結構疲れるんだよ。
「さぁかかってくるがいい!!」
「いやぁ~.......。」
「遠慮しておくよ......。武蔵にはかないっこないもん。」
そう言ってトボトボと退散するのを見て俺は武蔵の陰から出てくる。
「いつもすまないねぇ。」
「それは言わない約束だ。」
これも恒例行事だ。
「と言って退散すると思ったかっ!!」
そう言って飛びついてくるのはさっき後ろを向いて遠慮すると言った飛龍だ。それに驚き、俺は身をかわす。躱された飛龍はそのまま武蔵に捕まり、身体を固められるのだ。これも恒例だ。
「いだだだだっ!!痛いってばっ!!!」
「卑怯な騙し討ちが失敗したからこういう目に遭うんだ。」
「あははっ......。」
絞め技をかけられている飛龍を苦笑いしながら見る蒼龍は頬を掻きながらこちらに来た。
「これも恒例だよね。もう金剛君が来てから時間も経ったし、それもそうだけどさ。」
「そうだな。」
そんな事を話しながら俺たちは海を眺める。
「どう?ここの生活には慣れた?」
「あぁ、慣れたよ。」
そう訊いてくる蒼龍に俺は淡白に返した。だがどうやら蒼龍が求めていたのと違った様だ。
「でも金剛君、急にこっちに来たって言うじゃない?向こうの事はいいの?」
そう訊かれて俺は黙ってしまった。これまで考えても来なかった事だ。毎日が新鮮で、色々な出会いがあって飽きない日常。それが当たり前の様に流れていた。
蒼龍に訊かれる様な事なんて、微塵も考えてなかった。というよりも考えれなかったのだ。
「うーん......。これまで忘れてたから別にいいと思ってる。それに、いつか帰れるだろうさ。」
「そっか......いつか帰るんだね。」
「あぁ。」
俺は水面を眺めながらそんな事を考える。
「と言っても未だに戦闘は嫌だな。適当に突っ走る奴らばっかだし、大体の空母護衛は俺やってんじゃん。」
「そうだね。よく私たちの横でぶつくさ言いながら護衛してるもんね。」
「そうだよ。全く......空母を守らんで何が機動部隊だっ......。」
そう言いながら俺は石ころを蹴ってぶぅーと膨れる。
それを見てくすくすと蒼龍は笑った。
「機動部隊ねぇ......。旗艦は大体戦艦だったりするからどちらかというと水上打撃部隊かなぁ?......おっと、金剛君のファンたちが集まってきてるよ。行ってあげなよ。」
そう言って蒼龍はあるところを見て言った。観艦式を終えた艦娘が出てくるところだ。そこには艦娘を見ようと一般の人が集まるのだが、今回は違う様だ。大体の人が団扇やらに"金剛君?"と書かれているのだ。もう一目瞭然だ。俺が目当てだ。
そんな人たちに応えてやれと蒼龍は俺の肩を押した。
「人気者は辛いねぇ。いってこーい!!!.......あっ、あとケッコン申し込まれたらキッパリ断ってよねー!!私とケッコンするからー!」
「んな事言うか!!」
俺はそう言いながらもはにかみながら歩き出す。
団扇やらを持って集まる群衆に入り、ファンサービスだ。別にこういう事をするのは嫌いではないんだが、大体誰かは鼻血を噴き出して倒れたり、急に高熱を出して倒れたり、興奮しすぎて壊れたりと色々な事が起こるからやりたくないという面もあるが。そういうのは大体一部の人間なので、目を逸らしてやっている。
「きゃーー!!」
「金剛君っ!!!こっち向いてー!!」
「あー、はいはい。」
俺はそう言いつつも対応している。
最近思う事は、作戦行動よりもこういう事が多い件についてだ。もう俺の仕事がこれであるまである。給料貰えるレベルだ。それに艦隊の一部として出撃することもあるので大忙しだ。
「金剛君っ!一緒に写真撮ってっ!!」
「分かったから、落ち着いて。」
そんなんでも俺は笑顔を忘れない。
もう俺の仕事、艦娘や深海棲艦関係無しでよくね?
最近全く投稿してなかった番外編を投稿させていただきました。
前回よりも時間的にはかなり進んでいる状態です。まぁ、話を見てれば分かりますが何事も無くいます。こっちはほのぼのって決めてましたからね。当たり前ですよ!
金剛君はもう国民レベルでアレなんでもう何も言いません。
ご意見ご感想お待ちしてます。