【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
どうも、前回から一日後の投稿です。
では、ちょっと今回は異色なんで違和感ありあり、ガバガバですが我慢して下さい(真摯)
食堂の片づけはどうやら駆逐艦の艦娘が数人と給糧艦の艦娘の間宮と伊良湖がやっている様だ。
「何か手伝いましょうか?」
俺はそう言って間宮に話しかけた。皿は丁寧に艦娘が帰るときにそれぞれで流しの近くまで運ぶようなので、間宮はせっせとそれを洗っていた。
「提督?提督に手伝っていただくなんて......。」
「いいさ。」
俺は間宮が洗った皿を皿布巾で拭き始めた。布巾は間宮に訊いて使っていいものを使っている。
「何時もこれくらいなんですか?」
「はい。」
間宮は顔色一つ変えずに皿を洗っている。
そしてさっきはよく見てなかったけど、よく見たら間宮も俺の想像よりも遥かに若かった。せいぜい19か20というところだ。
そして例の如く、俺は姿勢を正した。
「間宮、済まなかった!」
「何がですっ!?」
俺の突然の謝罪に間宮は困惑した。無理もないが、俺は鳳翔の時と同じように説明をしたら納得してもらえた。こういうところは何だが俺の予想通りだった。
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俺は皿洗いを済ませるとあちこち散らばっている物を回収に食堂内をウロチョロしていた。
あっちには瓶。回収し忘れたコップ。台拭き。いろんなものがまだ残っていた。それを見つけれた分だけ持って歩いていると、テーブルの上を忙しなく動いていた妖精が立ち止り、俺の方を向いた。
「提督。」
妖精は俺を呼び止めて、話し出した。
「なんだ?」
「私は装備の倉庫の妖精です。装備に関して少しいいですか?」
そう言った妖精はサイズ感的に出せないくらいの大きさの紙を俺に見せた。その紙には俺が装備を廃棄した日時と個数が記録されている。秘書艦である長門が管理する書類の一部のコピーの様だった。
「ここ、艦載機についてです。」
そう言った妖精は別のところに居た妖精を呼び寄せた。
「この妖精は艦載機に搭乗する妖精です。」
「はい、私は天山の妖精です。」
そう言った妖精の言葉に少し反応してしまった。天山。今、装備で数個余らせている艦載機だ。比較的出しやすい艦上攻撃機だ。
「提督、私たちを軽空母の艦娘の艦載機に乗せ換えてくれませんか?」
そう天山の妖精に言われた。気付けば天山の妖精らしき妖精が数人集まっている。
「そうだな......よし、分かった。明日、軽空母の改装にて艦載機の更新をやるよ。天山の妖精たちもそのつもりでお願い。」
そう言うと、妖精たちは笑顔でちりぢりに作業に戻っていった。
「妖精が頼みに来るなんて思わなかった......。」
妖精が全員離れたあと、俺はそう呟いた。
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しばらく食堂の中をウロチョロして回収し忘れたものをあらかた集め終わると、間宮と伊良湖が俺のところにやってきた。
「提督、ありがとうございました。」
間宮はそう言って、食堂の椅子で休んでいる俺の前の席に座った。伊良湖はその横に座った。
「......提督、もう慣れました?」
「何が?」
俺がだらけて座っていると、唐突に間宮はそう訪ねてきた。
「別の世界から提督は呼ばれた訳ですし......。環境の変化とか?」
「あぁ、大丈夫だよ。これでも環境適応能力は高いから。」
俺はそう言って突っ伏せた。本当は環境適応能力だなんて言ったが、結構疲れていた。意味があるのかと疑問を持ってしまう様な書類を片づけたり、何ともない執務室の窓から見る空を眺めるのにもだ。
「そうですか。ですが、無理をしないで下さいね?」
そう言って間宮はアイスを俺の目の前に置いた。
「私が作ってるアイスです。良かったらどうぞ。」
「ありがとう。」
俺は礼を言って、スプーンですくって口に運んだ。口に広がるのは甘いバニラの香りとひんやりした刺激。アイスは俺のいた世界では日常的に食べていたが、なんだか別物の様に感じた。
「......おいしいよ。」
「ありがとうございます。それでですね、提督。提督に言っておかなければならない事がいくつかあるのですが。」
俺がアイスを頬張っているのを眺めながら間宮はそう言った。横に座っている伊良湖は口一つ開かない。
「ん?」
「艦娘の事です。」
そう言った間宮は俺にアイスをできるだけ早く食べるように言った。
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「艦娘は深海棲艦が出現して、日本近海および太平洋をあっという間に収めた頃、出現したんです。」
間宮が言った事は、俺が着任した時に説明した言葉を詳しく言ったものの様だ。
「そしてそれと同時に妖精も現れ、海域奪回が始まったんです。これは多分秘書艦の長門さんから聞いてるとは思います。」
「あぁ。」
俺は素っ気なく返した。
「私たちが現れた時、日本の状況は最悪でした。日本は経済大国として世界に君臨していたとは思えない程になっていました。枯渇する資源、慢性的な食糧難、貧困......。それが日本を襲っていたんです。」
「原因は一つしかありませんでした。深海棲艦の出現であらゆる貿易相手国との貿易線が寸断されたんですから。」
「そのような状況で私たちが出現した。私たちというより、同じ姿を纏ったもう一人の私たちでした。」
「もう一人の私たちが出現した時、日本は既に領海を失っていました。当時護衛艦と呼ばれていた軍艦は全て、当時で言う海上自衛隊の近海哨戒や前線を押し上げる作戦で喪失してましたから。」
「その時突然現れたもう一人の私たちが最初に見たのは、東京湾に攻め込んだ深海棲艦の艦隊でした。そしてもう一人の私たちはそれを自分がどうして現れたのかわからないまま、深海棲艦に砲を向けていました。」
「東京湾に攻め込んだ深海棲艦の艦隊は6隻。一方、もう一人の私たちは何十隻という大群でした。容易に深海棲艦は撃破されました。」
「最初、人間は私たちを見て戸惑いました。深海棲艦を撃破した艦は全て旧式の軍艦ですからね。しかも、横須賀の米海軍が居たらしい基地に私たちは停泊したからです。」
「すぐに当時陸上自衛隊と呼ばれていた人間たちがもう一人の私たちの艦に入ったんです。ですが人ひとりとして居なかった。」
「幽霊船だとか言われてましたが、もう一人の私たちは自分の艦に人間が乗ったのも、そう比喩したことも分かっていました。だから、もう一人の長門さんはこう言ったんです。」
「『幽霊船とは失礼だな。』と。」
「腰を抜かした人間は艦から慌てており、上司に知らせると、すぐに偉い人間が現れてもう一人の長門さんに『何者だ。』と聞いたそうです。」
「もう一人の長門さんは『私は戦艦長門。国の湾内に未確認艦艇が侵入していたので撃破させてもらった。』と言ったそうです。」
「そうすると偉い人間がもう一人の長門さんに『姿を現しては貰えないだろうか?』と聞かれました。」
「もう一人の長門さんは、提督の知っている長門さんの姿で艦橋から姿を現しました。人間たちは驚き、銃を突きつけたそうですが、もう一人の長門さんはありとあらゆる砲を人間たちに向けたそうです。」
「そこからその場でもう一人の長門さんと偉い人間とで話し合い、もう一人の長門さんが人間に協力して深海棲艦を撃滅すると決めたそうです。そこからは長門さんから聞いていると思います。」
俺は突然の説明に驚いた。
この世界ではそんな事が起こっていたのだ。今の艦娘の状況の根源である、人間との接触がこのような事になっていたなんて俺は思っていなかったからだ。
「......訊いてもいいか?」
「はい。」
「もう一人ってなんだ?」
俺が疑問に思ったのはそれだった。俺のいた世界ではもう一人とかそう言う表現はしてなかった。艦娘はカード。つまりダブる事が日常茶飯事だからだ。それをもう一人という表現を使うことに違和感があったからだ。
「もう一人ってのは、そのままの意味です。この世界には同じ顔をした艦娘がごまんといます。ですがそれぞれ性格やらが少しずつ違うんです。」
そう間宮は言った。確かに演習などをやる時、相手艦隊に同じ艦が居ることがある。だが、この世界に来てからは演習を見てない。指示を出すだけだったからだ。
「そうか。」
「はい。」
俺は考えた。艦娘が人間側について戦う理由は。だが、どうして人間に深海棲艦と同じだと言われたのかが疑問だった。そして妖精の存在もだ。間宮の話では妖精も同時に出現したと言ったが、さっきの話では一回も出てこなかった。
「あと、妖精についてだが。一緒に出現したって言ったけど、どうして艦に乗り込まれた時に妖精の姿が人間に見られなかったんだ?」
「それは、提督も分かるでしょう?あのサイズです。艦内ならどこでも隠れる事が出来ます。妖精たちは艦内に隠れてたんですよ。」
そう答えると、伊良湖も遂に口を開いた。
「あと所謂ドロップ艦や建造艦に関しては、提督のところに既にその艦の艦娘が居ると現れないんです。」
「そう言う事だったのか。」
俺は伊良湖から聞いたことも何れ訊こうと思っていたので、そのまま聞き流した。そして次の疑問を訊く。
「それじゃあ、なんで人間に艦娘も深海棲艦と同じだって言われ始めたんだ?」
そう言うと間宮が説明を始めた。
「それは人間と協力して深海棲艦を倒し始めた頃、人間に頼まれて深海棲艦の写真の撮影を依頼されたんです。」
「その時に取られたのは戦艦と空母。深海棲艦の戦艦と空母は割と艦娘と似たような感じだったんです。艦に人間と同じような少女が居て、艦を操作する。それはどう見ても深海棲艦と私たちをイコールで結ぶには十分な素材でした。」
「それは最初は自衛隊内だけで言われてましたが、遂にメディアに流れてしまって国民に知れ渡ったんです。そこからです。艦娘が鎮守府に閉じ込められたのは。これ以降は長門さんから聞いてると思うので言いませんよ?」
そう言って間宮は一息ついた。
俺は間宮の艦娘が鎮守府に閉じ込められた理由はなんとなく想像していたので、確認になってしまった。
もう、疑問に思う事は無かった。
「そうか、分かったよ。」
「はい。」
そう言うと伊良湖は立ち上がり、お茶を入れると言って席を外した。そうすると再び間宮は口を開いた。
「あと、艦娘は異常に提督に執着します。」
突然言った間宮の言葉に驚いた。異常に執着する、意味が判らなった。
「どういう事だ?」
「そのままの意味です。私たちは腹を空かせたり、感情があります。人間は艦娘を人間同等として扱っていたんです。ですが艦娘には欲しいもの、欲求と言うか物欲?人間で言う三大欲求以外の欲が無かったんですよ。」
そう言った間宮は少し顔を赤らめたが、俺は気にせず聞いた。
「それで、欲が無かったのと提督に執着するのにどういう関係が?」
「人間に深海棲艦を倒してもらっているから何かを贈ろうと言われても、艦娘たちは欲しいものが無いと答えたんです。」
「だけど、提督は欲しがってた。」
「そうです。自分たちを指揮する指揮官が欲しいという共通の欲があったんです。それを言ってみると人間は大層困ってたみたいですね。」
「俺はそこまで提督に執着する理由が判らない。」
そう言うと、お茶を入れに言っていた伊良湖が戻ってきた。
「艦娘は生まれた時から提督を求めてるんですよ。」
そう言って伊良湖は俺の前にお茶を置いた。
「そうか。」
俺はその伊良湖の言葉にこれ以上訊くのも意味がないと思った。それが艦娘にとっての自然だったんだ。理由なんてないんだ。聞いても無駄だと察したのだ。
「じゃあ、提督に執着するってのは......。」
「言葉そのままの意味で捉えてもらえればいいです。」
そう言われて俺は黙ってしまった。最後に訊きたかった事がそれだった。本当に言葉通りの意味だったのか、という事だ。
「ではもう大丈夫ですので、提督もそろそろお休みになって下さい。」
俺はそう言われ、お茶を飲み干すと、私室に戻った。
もう艦娘がどうのってのは考えないほうがいい、と俺は感じたのだった。
やっと挨拶回りが終わりましたよ。疲れた.....。
まさか7本立てになるとは思ってませんでしたよw
次からはほぼリアルタイムでの話にするつもりですので。
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