皆さん夏休みはどう過ごしましたか?
私の夏は…コミケと共に終わりました笑
では番外編ラスト…無理矢理感ありますが
ごゆるらんとどうぞ
sideハンゾウ
「……はぁ」
今日、何度目かもわからないため息を吐き、俺は足を止める。
今までのため息とは違う…自分の発言・行動を懺悔するそのため息は無情にも賑やかな夜空に消えていく。
「…なんつぅか…とんでもねぇ馬鹿野郎だなぁ…俺って」
自分1人で生きて
自分1人で戦って
自分1人で…全部が全部、できていた気がしていた。
でも、今は違う…
少しお節介なローザがいて、基本バカだけど仲間思いなマツバがいて…
そして…俺が、唯一守ってやりたいと思った彼女がいる。
なのに…その女を俺はもう、彼女を何度も泣かせた…
辛い思いを…させてしまった…
危険な目にも…あわせてしまった…
「俺は…「…何をしょぼくれている…らしくないぞ?『幻のハンター』さん?」っ⁉︎」
声に反応し、顔を上げるとそこには…
花火の柄を散りばめ、しかし派手過ぎない黄色い浴衣を着て、決して長すぎない後ろ髪を束ね上で結んでいる『姿なき煌月』が立っていた。
「ルナさ「あんたにさん付けされたり、敬語使われると虫酸が走ってついあんたの股間に散弾連射(ゼロ距離)したくなるから止めて?」…ど、どうしてここに?」
俺はいつの間にか股間にあてがわれたボウガンにひやっとさせられつつ、喜色満面で俺の息子を亡き者にしようとするルナ姉さんに問いかける。
ルナ姉さんはボウガンを畳みながら呆れたように片目を閉じて横目で俺を見据える…ちょっと色っぽいと思ったのは秘密だ。
「別に…それよりあんた、いますごい表情してるけど…なんかあったの?」
「……」
ルナ姉さんは手鏡を俺の顔に突きつける。
確かに…こいつはひでぇや…
某聖杯戦争の湖の騎士がまだ白かった時代の不幸面3割り増しって感じだ…
ルナ姉さんは手鏡を浴衣の袖口に戻すと俺をじと目で見つめる。そして
「…もしかして、さっきすごいスピードで林の中にかけて行った…えっと…セニアちゃん…だっけ?あの子となんかあったの?」
「っ!」
「はぁ…図星みたいね…まったく、ちょっとこっち来なさい」
俺は抵抗することも出来ず、ルナ姉さんに手を引かれ林とは違う方向へと連れて行かれた。
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sideセニア
はぁ…私ってなんてバカなんだろう
あれ程でしゃばっていた涙はもう出てこなかったけど、代わりに後悔やら虚しさが顔をみせる。
『やれやれ…セニアは泣き虫だなぁ』
私がまだ小さい時に、お姉ちゃんが泣いている私の頭を撫でながらよく言っていたのを思い出す…
はぁ…
「私って…弱いなぁ『弱いのならば!鍛えればいい!』っ⁉︎」
唐突に熱いトーンで知らない人に励まされる。しかも背後から。
落ち込みすぎて気づかなかった…?
いや、違う…と思う
とにかく私は声の方に振り返る。
そこには…
『幼気な美少女よ!人は誰でも強くなれるのだぞ⁉︎』
「…えっと…どちら様、ですか?」
なんかやたらと声の大きい(確か…炎王竜の素材から作られる…そうだ、【カイザーx装備】だっけ?をした)男の人がいた。
『ん?僕は…っとと名前を名乗ってはいけないのだった…うーん』
なんか独り言を言い始めた。
本気でヤバイ人なのかも…私武器持ってないし…どうしようか
そんなことを考えている間に男の人は思いついたように手をポンと打つと
『僕のことは《フレア》と呼んでくれ!そしてこちらも名乗ったのだからそちらも名乗ってはくれないか?』
…明らかに本名ではなさそうだが
「セ、セニア…です」
そう思った時には相手の気迫に負けて名乗っている私がいた。
私が答えると満足気(表情は頭装備で見えないけど)に頷く。そして
『よろしい!では君の悩みを聞こう!なに、そんな顔をせずとも僕は、あの暴漢達みたいに君に対して何か酷いことをしたりはしないよ』
「…っ⁉︎」
一瞬だがいつかの夜のことを思い出す…
ローザと2人で焚き火を囲み
楽しい時間が暴漢たちのせいで崩れ去り
2人とも乱暴されかけた…あの夜に…
……?
そういえばあの後…どうなったんだっけ?
いつの間にか宿にいて、いつの間にかハンゾウさんがいて…
『?…どうしたセニアちゃん?』
…ダメだ…やっぱり思い出せない…
でも、何か大切な…とても大事な何かを忘れているような…
『…うーむ。セニアちゃんの悩み、そして求めている【強さ】がなにかわかった気がするよ』
「…へ?」
私…なにか言った?『いや、なにも言わなくても分かるさ』…そんなに私ってわかりや『分かりやすいからね!君の、特に悲し気な顔はあの子とよく似ている』やっぱりかぁ前にもお姉ちゃんに言われ…?
…あの子?
そういうと、フレアさんは徐ろに頭装備を外すととても優しい笑顔を向けて
『うん!僕の弟子…いや、大切な家族のあの子にね!
それじゃぁ!迷える子猫に僕からのアドバイスだ!』
それを言うなら子羊じゃないかなぁ…
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夜は更け、賑わいは最高潮に達し、そして祭りは終わりに向かう。
その賑わいはその場を明るく、にぎやかに染め上げ、何人たるものも例外なく喜色に照らしだす。
そこから少し外れた林の中…
やがて2人が出会うその場にはもう、他の誰も居なくなっていた。
「「……」」
2人が隣りあい、座り始めてから15分が経とうとする。
しかし、お互いなにも話さない。
既に言葉など必要ない関係に…という訳でもなく…
((…どうしよう))
けれど考えてることは一緒だった。
sideハンゾウ
どうしようか…ルナ姉に色々言われすぎて…ほんとに言われすぎて半分くらい覚えちゃいねぇが…頭こんがらがってる上に、セニアと会えたのは良かったが、さっきから一言も発してくれねぇ…
いや、男の俺からさりげなく切り込むのがいいんだろうが、俺もなんか…こう…どう切り出したもんか…勝手がわからん…
ローザのことか?祭りのことか?それともやっぱり謝罪からか?
はぁ…だが、このままってぇのも絶対良くねぇな!
よし!
よく分からん覚悟を決め、俺はセニアの方に顔を向けた。
同刻sideセニア
どうしよう…さっきのフレアさんは
『あっ!僕そろそろハンゾ…じゃなくって…用事があるから行かなくちゃ!
セニアちゃん!僕の話し、しっかり聞いてくれてありがとう!そして君はもっと自分に自信を持つといい!
それじゃぁ!また何処かで会おう!サラダバー!!!』
って言い残してどっか物凄いスピードで走っていっちゃった…
その後にハンゾウさんが来て…
それとなく隣同士に座って…
なんとなく気まずいまま現在に至る。
で、でも悪いのは私なんだよね…
いきなり逃げ出したりして…ハンゾウさんも、私のこと…心配してくれて…
あぁんもう!また泣きたくなってきた!
でも…このままじゃ、やっぱりダメだし、私も嫌だから…
…よし…ここからは私のステージだ!
よく分からない勇気を出して、私はハンゾウさんの方へ振り向く!
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そして現在。
((…///))
さっきと変わらず林の一角は静寂に包まれていた。
お互い、覚悟やら勇気やらを総動員してみたが、2人が振り向くタイミングがジャスト過ぎて、至近距離で顔を合わせる形になり、お互いそれによる反動で当初よりも距離が離れてしまった。
しかし、さっきのような静寂ではなく
「くっ…あはは」
「ぷっ…うふふ」
…側から聞くとホラーでしかない2人の笑い声が微かに響く。
「なぁ…その、なんだ…さっきは…悪かったな。
俺ってテレパシーがないらしくてな…お前さんを知らんうちに傷つけちまったみてぇだ…
ほんとにすまん」
ハンゾウが坐り直し、セニアに謝罪を述べる。
セニアは少しキョトンとした表情を浮かべ、再び笑い出した。
「なっ…なんだよ?そんなに可笑しかったか⁉︎」
「ふふふ…ごめんなさい、でも普通の人はテレパシーなんてないよ?」
「ぁ…」
「ふふ、それを言うならデリカシー、だね…ぷっ」
「さぁすがに笑いすぎだぞ!」
一頻り笑ってからセニアはハンゾウに向かい合う。
ちょっとたじろぐハンゾウを見てまた笑いが込み上げてくるが、それを飲み込み彼女は告げる。
「…私の方こそごめんなさい。
ハンゾウさんに…みっともない姿を見せたくなかったの…かな?」
「かな?ってなんだよ?」
「…ふふふ、私もよく分からない」
「なんじゃそりゃ…」
しばらく彼らは笑いあい、また静寂が訪れる。
しかしそこには最初の寂しさは少しもなかった。
「…もう、夏も終わりだなぁ」
「…そうだね」
「実は、このバルティフェスには俺も小せぇ頃に来たことがあってな…クライマックスには特大な花火が打ち上がるんだ。
でもその花火は特別製で、なんとマジモンの隕石を組み込んでんだと。
だからその花火に願い事すると叶うらしいぜ?」
「…花火兼流れ星ってこと?」
「そゆこと。一度で2度美味しいぜ!」
「…ふーん」ひゅるるるる〜
刹那
ドッパァアアン!!!
「「…おぉ…近い(ぇ)」」
祭りの最後を彩る花火は大歓迎と共に咲き誇り、夜の闇に消えていく。
セニアが目を瞑り願い事をしていると…
「…痛っ!」
「どした?」
「っ!…い、いや…なんでもないよ」
「?…そうか。そろそろ戻るか」
ハンゾウはセニアと目を合わせずに祭りの方へ振り返り、数歩踏み出す。
セニアは急いで後を追おうとするが、ハンゾウがその体制のままセニアに右手を差し出す。
「…く、暗ぇかんな…逸れてもまた探すの…アレだし、手ぇ繋いでくぞ」
セニアはしばらくぽかんとしていたが、ハンゾウの赤くなっている横顔を見て
「…うん!」
元気よくその手をとった。
祭りは終わる。
でも…残るものは必ずある。
セニアはさっき自分に当たったそれをこっそり確認しながらハンゾウに問いかける。
「…ハンゾウさんは、何をお願いしたの?」
「あぁ?…そりゃぁおまえ…世界平和だよ」
ハンゾウの冗談に頬を緩ませるセニアの手には、青白く輝く『流星の欠片』があった。
「そういうセニアはどうなんだ?」
「…泣き虫が治りますように…かな」
「なんじゃそりゃ」
やがて彼女達の夏が終わる。
しかし彼女達は決してこの夏を忘れないであろう。
「おーい!ハンゾウ!セニア!あんた達どこ行ってたんだい⁉︎」
「おー、悪りぃ悪りぃ」
「…ローザ…声大きい」
あったこと
思ったこと
話したこと
笑い合ったこと…
その全てが…これからの「+」になっていくのだから
『…強くなれる。あの子なら…必ず』
“…時間だ。残念だろうが、そろそろ行くぞ”
『そっか…まぁ、残念って程でもないよ。
またゆっくり…見守るだけさ』
“……”
『そんな顔すんなよ〜…なっ!お前のことも忘れないから、しっかりと頼んだよ?』
“…あぁ…分かっている…分かっているとも…友よ”
火はやがて消える。
それは命という火もまた、例外ではない。
だが…火は消えいるからこそ美しい。
「…遅かったな…ルナ」
「ごめんね、なぁんか迷子がいてさ」
「…迷子?」
「そ、とっても大きくて、面倒くさ〜いま・い・ご・が・ね♡」
「…?」
そう、だから消えるまでは…
せめて、一緒に…
彼女の願いは、心の中に花火と共に咲き誇る
そんなとある世界のとある夏の終わり
The end
次回から本編に戻ります。
感想も受け付けております。
ってぇことでまた次回〜バイバイ!