たんに面白くないだけかも…
これがextraの最後になります。
sideカトル
「ねぇ…そろそろたすけたほうがいいんじゃないの〜?」
隣にいるマイハニー、ナナリーが心配そうに13回目の同じセリフを綴る。
その反対側、つまりは僕の隣に居るテオも最初はただ見ているだけだったが、表情は変わらないが戦意が高揚しているのがわかる。
僕はナナリーを落ち着かせるようにゆっくりゆったり話しかける。
「心配ないよ。ハンゾウだってこれまでに幾度となく死線を潜り抜けて来た。彼はもう…立派なハンターだよ」
「…でもぉ〜…」
“落ち着かんかナナリー。お前らしくないぞ。ハンゾウとて何の覚悟もなしで覇龍に挑んだわけではあるまい”
ナナリーが心配するのも無理はない。僕から見ても、彼は防戦一方。あのハンゾウが全く攻め込めない状況は僕でも不安になる。
「…彼を信じよう。どんなに辛くても、彼が諦めるまで見守ろう」
ーーー負けるなよ。ハンゾウーーー
sideハンゾウ
“オいおい…つまらんゾ?なァんでこんなカスみたいな奴二、ワシの力を与えなんざしなきゃいかんのダ?ん?”
「…く……そ…が‼︎…」
戦闘開始から約15分…正直やべぇとしか言えない状況だった。
脚部は何度かあの牙を蹴りつけたり、尾撃を受け流したりに使って感覚がないし、自分が立っているのかすらわからない程だ。でも、多分立ってはいる。
両腕部は奴のソニックブラスト(口から放たれるかまいたちのような突風)をガチで正面から受けて血まみれの腕が露出した状態だが、脚よりは感覚はある。
胴体はソニックブラストを受けた際にぶっ飛んで、壁にぶつかるまでの間に5~6回前後バウンドした時に凄く嫌な音がしたから確認したくない…
視界はぼやけ始め、気をぬくとぶっ倒れそうだ。あと、左耳の鼓膜は弾け飛んだらしい。
俺は目の前の絶望に対して、只々立って見ているしかできなかった。
“…もう終わりにするカ?お前はよク闘ったヨ…せめてもの情けダ…最期は楽に一撃で、シトメル”
刹那
覇龍に前足で押さえつけられ、大きく体制を崩す。仰向けで覇龍に押さえつけられた俺は、奴の口が迫るのをただ呆然と見ていた。
俺の頭の中に何かが流れる。あぁ、こいつが走馬灯ってやつか…ってことは俺は死ぬのかな…まぁ、楽しかった…かなぁ…
“おいバァカヤロウ‼︎…死ぬんじゃぁねぇ‼︎テメェにはまだ命があるじゃねぇか‼︎諦めるんじゃぁねぇぞ‼︎オレの力をテメェにくれてやる‼︎大サービスだかんな‼︎”
声…?
この声は覚えがある…
“主肉を無くしたオレの力…奴の身を食ろうて使うが良い‼︎”
確か…始めてカトル達と会った…
あの日の声と同じ…⁉︎
“求めよ!オレの『力』を‼︎超えよ!己の思う『限界』を‼︎感じよ!己の『覇道』を‼︎”
そして…
俺は覇龍に喰われた。
しかし、絶望も恐怖も、死ぬ気も全く起きず、身体の奥底から湧き上がる熱を感じた。
“教えてやる。これがオレの…『覇王』の力よ‼︎”
「ゥオォォオォオォオオオ‼︎」
“本能のままに…喰らえ‼︎”
「マ、ダ、シィイィネェルカァァァア‼︎」
“奴の心臓は…そこだ‼︎”
「オォォォレワァァア‼︎」
刹那
覇龍の体が弾け飛ぶ。まるで体内で大爆発が起きたかのように…それは盛大に。
そして…覇龍の残骸の中心には、これまでとはまるで違う装備と『覇気』を纏うハンゾウの姿があった…
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sideカトル
「…あ、あはっ…あはは…なんだよ、あれ」
僕はナナリーとテオと一緒にベースキャンプから飛び降りた。
その先で今まさに捕食されそうなハンゾウを救うために。しかし、非情にもハンゾウは一口で食べられてしまった…
そして、あの覇龍がこちらを向いて、今まさに何かをしようとした時、覇龍の身体がガラスのように弾け飛んだのだ…
僕はナナリーを庇いながら、覇龍の残骸の中にハンゾウと思しき人影を見つけた。
しかし…声をかけるのに躊躇しているのが現状だ。
彼のあの装備は『アカムX』装備である。
彼は確かにアカムに挑んではいたが、自身がアカム装備になる理由がまったく見当たらない。
それに…
「あの力と…禍々しいオーラはなんだ?」
目視でもわかる赤黒いオーラ。まるで何かに取り憑かれたかのような真紅に光る眼光。ただでさえ灼熱の暑さを誇る極地で、彼の周りだけ異様に歪んで見える。
暫く彼はその場から動かなかったが、やがて顔を上げカトルと目が合う。
その顔は何処と無く哀しげで、フルフェイスである筈の彼の口元には微かに脈動する心臓が咥えられていた…
「はん…ちゃん?」
「っ⁉︎みちゃだめだ‼︎」
僕は咄嗟にナナリーの視界を僕の防具のマントで隠す。
刹那
彼はそれを噛み潰した。
大量の血が宙に舞い、マグマに照らされさらに紅く燃え上がる。
「フハ、アハハハハ‼︎アーハッハッハッハ‼︎ヒャハハハハハハ‼︎」
狂ったように高笑いをする彼に戦慄する僕とより一層険しい表情を作るテオ。
そんな張り詰めた空気と静寂を破ったのは笑終え、只々その場に佇む彼の方だった。
「…タチサレ…ハヤク…」
“ハンゾウ‼︎貴様に何があったかは知らぬが、無事に試練を終えたのならば…っ⁉︎”
テオが彼に呼びかけるが、最後まで言い切る前にありえないことが起きた。
距離にして700mは離れている場所にいた彼が、一瞬でテオの前に来て顎をひっつかんでいるのだ。
テオが右腕を振るうが彼はビクともしない。
彼はその状態のままもう一度口を開く
「タノム…カラ……ハヤク………ニゲ…テクレ……ぅうっぐっ!」
「ハンゾウ⁉︎ハンゾウなんだな‼︎早く自我を取り戻せ!君はまだ完全に《呑まれた》わけじゃない!まだ戻れる!だから!」
「…ダカラ?」
「っ⁉︎」
彼はテオの顎から手を離すと僕の方にゆっくりと向き直った。
僕の身体全身が逃げろと告げる。しかし、肝心の足は動かないし、ナナリーもいる。
そんな中一人で逃げるなんて選択肢、僕の心の中にはあるわけない!
僕は全力で本能に抗い、テオの身体に向かってもどり玉を投げつけて、ナナリーを突き飛ばす形でテオに預けた。テオは驚愕し、ナナリーは半泣きしていた。
“カトル!何を⁉︎”
「あとは、頼むわ!ナナリーをちゃんと送り届けるんだぞ!」
僕はテオに笑顔を向ける。
緑の煙が二人を包み込み消える寸前、ナナリーの顔が見えた。涙で濡れた顔も、素敵だった。もっといろんな表情も見てみたかったな…
「…さって!僕は僕でやることやりますかね!弟子の尻拭いは師匠の務め‼︎」
「…逃げて…くれよぅ……キィヒッ……キィヒヒヒヒヒ‼︎…カ…トル…」
彼の目から真っ赤な涙が溢れでてくる。
あ〜あ、今日は涙をよく見るな…でも‼︎
「弟子より先に逃げ出す師匠なんかになったつもりはないし、これから先もなる気はあんまりないね‼︎」
僕は彼を止める。
この命に代えても…僕の弟子、そして…家族、だからね。
「行くよ…ハンゾウ‼︎」
もう誰も、泣かせはしない‼︎
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気づけば、俺は火山の極地にいたんだ。
いつからなんてわからない。
どうしてなのかはわかってる。
ここで俺が…何をしたのかも…
これから俺が…何をするのかも…
わかってる
今日も明日もその先も…
「さてっと…まぁ気長に待ちますかね」
俺という化け物を狩猟してくれるハンターをここで待ち続ける。
それが、今の俺の全て。
緋色のマントに身を包み、今日も一人、獄炎に座し、狩人を待つ。
はい。
次からはいよいよ新章突入‼︎
彼が合流する日もちかい⁉︎笑
ハンゾウ「乞うご期待‼︎」
*大変身勝手ながら一部変更させていただきました。
変更前を読んでくださった読者の皆様には深くお詫び申しあげます。