怪奇な東方放浪記   作:クロノス12
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お久しぶりです。
こう、自由気ままに投稿していくスタイルは多分永遠に変わることはないでしょう。そう言う性分です。

では、どうぞ。





第4章 追憶と幻望のクレリティ
34.廻る




「…………」

いつにも増して静かな朝。
朝露で濡れた葉が、朝日を浴びて煌めく。

「……あら、茶柱。」

淹れた茶から湯気が収まり始めた頃、彼女はささやかな幸運に気づく。
そしてその茶を啜った。

「…………」

そして煎餅をひと齧り。
パキリ、と小気味のいい音が静かな境内に響く。

「………暇ね。」

誰に聞こえる訳でもなく、彼女は一人ごちる。勿論だが、そんな事を言った所で暇が解消される訳もない。

コツ、コツ、コツ。
そんな暇さ故だろうか、はたまた運命の悪戯か、彼女には小さく足音が聞こえた。

「………幻聴じゃないわね。こんな朝から誰かしら?」

彼女は不思議がった。
こんな朝早くから、行儀良く足音を鳴らす友人は彼女には心当たりがなかった。

足音は彼女へと近づいてきた。
来訪者を歓迎する訳でも、邪険にする訳でもなく、彼女はただ足音のする方に目を向けた。

「………よぅ。」

足音の主は彼女に声をかける。
彼女は大した驚きの様子も見せなかった。

「……何の用?」

「何の用、って事は無いだろ。
なんか用がなけりゃ来るのは不味いのか?」

「生憎こちとらそんなに暇じゃないのよ。」

「それは、炬燵に半身いれてぐったりしながら言う台詞じゃないな。」

そう言われると、彼女は興を削がれたように炬燵の蜜柑に手を伸ばす。
彼女はもう声の主の方向は見ていなかった。

「あんたが来ると碌な事がないのよ。」

彼女は大分投げやりにそう言い放つ。

「随分と酷い言い草だな。個人的にはあいつよりはマシだと思うんだがどうだ?」

「優劣つけられる時点で諦めなさい。」

「ごもっともで。」

そう言い、足音の主は境内に腰を下ろした。
板がミシリ、と軋む様な音がする。

「せめて賽銭でもいれて行きなさい。」

「アイツが入れに行ってるよ。」

そう言い指を指す。
指が刺された方向には、賽銭箱の前に一人の人影があった。

「あいもかわらず、毎回律儀なことだ。」

「貴方も入れなさいよ。」

「阿呆か、二人分に決まってるだろ。
そもそも賽銭の出資者を誰だと思ってるんだよ。」

「あら、賽銭を入れるのに神様にお願いはしないわけ?信心深くないのね。」

「言っとけ。大体、本当に願い事があったら今頃直談判してるわ。」

「これは一本取られたわね。」

「何がだよ。」

二人で下らない事を話していると、賽銭箱の方から足音もなく人影が現れた。
その人影はまもなく、先程の足音の主の目の前で立ち止まった。

『全く、暇なのですか?』

「それは違いないな。」

『ではご自分で賽銭を入れに行っては如何でしょうか?』

「面倒だから却下。」

『まぁどうせそんな事だろうとは思っていましたが……』

「まぁ暇なことは否定しないな。」

そういいちらり、と彼女を見やる。

「なんでこっち見ながら言うのよ。
暇なのはアンタでしょ?」

「俺もだがお前もだろ?」

『どうでも良いですが、そろそろ帰りますよ。今日は少々、予定があります。』

「そうか。名残惜しいが、また来る事にしよう。」

そう言い足音の主は腰を上げた。

「別に来なくて結構よ。」

「そう釣れない事言うなよ、博麗。」

そう言い残し、その二人組は鳥居をくぐって神社を出て行った。
そして、何事もなかったかのように沈黙が訪れる。

「はぁ……」

彼女、博麗霊夢は誰もいなくなった神社で小さく溜息をついた。









「で、今日の予定は?」

鳥居を潜り、階段を降りる途中で男が声をかけた。

『あの方から呼ばれています。
「遅刻厳禁」との事です。』

声をかけられた女は、男の方を向き一言そう告げる。

「そうか。」

『………主よ、何をニヤニヤとしているのですか?』

「そりゃあニヤニヤともしたくなるもんだ。
遂に、辿りついたんだからな。」

「この、『幻想郷』に!」

そう言いニヤリと笑う男、仮陽影人は残りの階段を思い切り駆け下りていった。

階段から見える景色。
自然豊かなそれは、ここが現代とは別の時代だと錯覚させるには十分である。

"幻想郷"。



ここはあらゆるものが住むところ。





"幻想郷"。



ここは現世と隔離されたところ。





"幻想郷"。




ここはー




独自的で不可思議な男その人の、運命の行き着く果てである。





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