万屋「秋風」
俺が経営しているこの店は、いわゆる何でも屋だ。
報酬さえもらえれば、俺の出来る範囲なら何でもやる。
まぁモチロン中には例外もあるのだが、大体そんな認識でいいだろう。
人にお願いされることが仕事なわけなんだが・・・・・・
「俺に何でも依頼してくれ!!俺に出来る範囲ならなんでもするぜ!!」
俺は今、俺の仕事内容と全く同じようなことを言われている。
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「だからさー、俺は別に何にもいらないって」
「いや!それじゃあ俺の気がおさまらねぇ!何でもいいから言ってくれ!」
「なんでもいいっておまえな・・・」
俺に『依頼することを依頼』しているのはキリトが俺に会いたがっていると言っていた、バンダナ男のクラインだ。
初対面だったが気さくで話しやすい。波長が合うのか、会って数分で打ち解けることが出来た。ギルドでも慕われてるみたいだし、同姓に好かれる性格の持ち主らしい。
この前俺とキリトとアスナが助けた6人のプレイヤーというのはこのクライン率いる風林火山だったらしく、義理堅いギルドマスターが俺に恩返しに来たって訳だ。
正直めんどくさい。俺は別に恩を売ったわけでも無いし、何かしてもらいたいわけでも無いんだが、クラインはそれじゃあ気がすまないらしい。
適当な依頼もすぐには思いつかないし、どうしたもんか・・・・
「なークレの字よー、お前ホントに何にも困ってねぇのか?」
「何だよクレの字って・・・・。実際何にも困ってなんかねぇよ、今日は店も休みだから、人手が足りないなんてことも無いしな」
「そうか・・・・けどそれじゃあ俺の気が治まらないんだよ!俺達ギルドの命はお前に救われたんだぜ!?」
「それは大げさだろ、実際俺がいなくてもお前達は助かったと思うし。というかキリトとアスナもいただろ。何で俺だけなんだよ」
「キリトとアスナさんにはもう恩返しにいったぞ」
まじかよ・・・・
そうか、俺が数日間引きこもってた間にすませやがったな。俺もその時さっさと済ませておけばよかった・・・
「ちなみにキリトとアスナには何をしたんだ?」
「ああ、キリトは穴場のNPCレストランを教えたな。アスナさんは、なんだかよく分からんが、47層にあるクエストの情報が欲しいって言うからそれをあげたぜ」
「47層?なんでまた」
「さあ?ただ『思い出の丘』ってところに行きたいらしい」
「・・・・・ああなるほどね」
47層の『思い出の丘』っていえばカップル御用達のフラワーガーデンじゃねぇか。
大方キリトと一緒にそこに行きたいけど、素直に誘うのは恥ずかしいから2人で受けれそうなクエストを探してたってとこか・・・・
「・・・・・どんだけ初心なんだあいつ」
「だれがだ?」
「知らないほうがいい、お前には多分耐えられん」
「なんだよそりゃ?」
こいつ男から慕われてても女には縁遠そうだもんなー、アスナがキリトに気があるなんか知った日には発狂して廃人にでもなりかねん。
いや、なんだかんだ文句を言いながらも応援するのかな、こいつの場合。
そうやって他人を優先していって、自分の幸せを逃していくタイプだな絶対。
「クレハ?」
「いや、お前にもいつか良い人が見つかるって」
「わけがわからん上に失礼だなお前」
「気にするな、こっちの話だ」
「よく分からんが・・・それより依頼だ!俺に何かさせてくれよ!恩返しだ!」
「だからそんな急には・・・・」
「おいクレハ、邪魔するぜ」
俺とクラインの会話に低音のイイ声が割り込んできた。
割りと聞きなれた声の方には2mは有りそうな大男が立っていた。
色黒で筋肉質な体にくわえ、スキンヘッドがその威圧感を助長している。
だがイメージに反して、その男はにこやかに俺の店に入ってきた。
「なんだ、エギルか。どうしたんだ急に」
「お前に良い話が有ってな・・・・・ってクラインもいるのか」
「おうエギル!久しぶりだな」
「なんだ、お前達知り合いだったのか」
「ああ、クラインは俺の店の常連さんだからな」
「そういうなら、たまにはもっと安くしろってんだ・・・・」
クラインとエギルのやり取りから察するに、結構昔からの知り合いみたいだ。
俺とエギルは俺が店を開いた時からの知り合いで、分野は違えど同じ商売人てことでお互いに情報交換やアイテムのやり取りをしていた。
かなり商魂たくましいやつで、俺が『剣影』なんて呼ばれ始めた時に入場料を取って握手会を開こうとしやがった。全力で止めたが・・・・・
「それで、何のようだエギル。握手会ならやらないぞ」
「あの時は悪かったって、その侘びもかねてお前に良い情報を持ってきたんだ」
「いい情報?なんだ?」
「おおエギル!たまには良い仕事するじゃねぇか!俺にも聞かせてくれよ」
「まあ焦るなって、45層に新しいクエストが見つかったらしくてな、そのクエストの報酬で、確実にS級食材が手に入るんだと」
「S級食材!?すげーじゃねぇか!」
「どんなクエストなんだ?」
「かなり特殊でな、NPCの出す飲み物が何なのかをすべて当てるクエストらしい。いわゆる『利き』ってやつだな」
「『利き』?それってワインとかを飲み比べてどのワインか当てる・・・みたいなやつか?」
「ああそうだ、いまだにクリアできたやつは居ないらしいが、クエストを受ける時にS級食材を見せられるらしい。『これができたらくれてやる』ってなもんだ」
「なるほどな、それで?そのS級食材ってのは何なんだ?肉とかか?」
「いや、それがな・・・・『豆』らしい」
「豆?なんだそりゃ、ずいぶん質素だな。S級食材にもそんなのがあんのか」
飲み物の『利き』がクエストで・・・・・
貰えるS級食材が『豆』・・・・・・
それって・・・・・・・・・
「おいエギル、その『豆』ってまさか・・・・・・」
「ああ、『コーヒー豆』だ」
「クライン!45層に行くぞ!」
「うわぁ!どうした急に・・・・」
「うるせぇ!いいから行くぞ!俺からの依頼だ!」
「お、おいちょっと待てって!!」
バタン!ダダダダ・・・・・・・・
「さすがクレハ、コーヒーの事になると急にアクティブになるな・・・・。けどあいつら、そのNPCがどこにいるか知ってんのか?」
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45層市街地 喫茶店「プレーン」
エギルの話を聞いて数分後、俺達はクエストが発生すると言われているNPCのところに来ていた。
・・・・・・一回エギルのところに戻って聞き直してきた。
「というより、この世界にコーヒーなんかあったんだな・・・」
「ああ、俺も店には無いもんだと思ってたよ。少なくとも低層にはなかったな。けど料理スキルで作れるってことは、一応存在はしてたってことなのかな」
コーヒーを飲むために料理スキルを完全習得した俺だが、層を上げるとコーヒーは存在はしていたみたいだ。けどNPCの作るものって基本的に微妙だしな・・・・・
あまり期待はできない。
店の中を見渡すと、喫茶店のカウンターの前にいる男の頭の上にクエストNPCを現すマークが点滅していた。
「いたな、あのNPCだ」
「そうみたいだな、けどクレハ。俺『利き』なんて出来ねーぞ?」
「そうだな・・・・俺は多少出来なくも無いが、正直難易度がどれくらいのものか分からないことにはな・・・・とりあえずクエストを受けてみようぜ」
「お、おう」
「すいません、どうかしましたか?」
NPCに向かってクエスト発生のために声を掛けると、頭の上にあるクエストマークが光りだし、クエストが始まった。
『ああ見てくれ!こんなにすばらしい豆を仕入れることが出来たんだ!飲んでもらいたいんだが、コーヒーのすばらしさを分かっていない奴に飲ませるなんてことはできないのさ。そうだ!僕の出すコーヒーの種類を言い当てることが出来たら君にこの豆をプレゼントしようじゃないか!どうだい?』
クエストを受けますか?というウィンドウが表示され、Yesのボタンを押す。
ずいぶんと陽気なマスターだな。いやこの場合バリスタか?
まぁともかく、こいつがだすコーヒーの種類を当てればいいのか、どこまで当てればいいのかによってクリアできるかがかわってくるな・・・・
『じゃあ問題は2問出そう!まずはこの2つ!さあどっちがブレンドコーヒーかわかるかい?』
そういったNPCは俺達に2つのカップを差し出してきた。
香りはいつも俺が作っているコーヒーとあまり変わらない。もしかしたらNPCが作ったものもそれなにりいいものなんじゃないか?
「み、見た目ほとんど一緒じゃねーか・・・・こんなんわかるわけが」
「正解は右のほうだな、左は明らかにストレートコーヒーだろ」
『OH!正解だ!すこしは分かってるみたいじゃないか!』
まあ最初はこんなもんか、多分2問目が難しいんだろう。
さすがにコレだけだと簡単すぎるし。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クレハ、お前飲みもしないでわかんのか?」
「え?いや、だって明らかに違うだろ。わかんないか?」
「わかんねぇよ!!飲んでもわからん自信があるわ!!」
そうなのか?俺からしたら別物なんだが・・・・・・
まぁともかく1問目を正解したわけだしこのまま行きたいもんだ。
『じゃあ2問目だ!コレが分かったらこの豆をプレゼントしよう!』
「ほら2問目だぞ、クラインも考えてくれ」
「・・・・・・・・俺は自信ねぇぞ」
『さあ!このコーヒーの豆の種類を答えてくれ!』
今度は俺達の前に1つのカップが差し出された。
さっきと同じように良い香りがする。
さて、豆の種類と来たか・・・・想像していたよりは大分楽な問題だな。
SAOの中にも俺以外にもコーヒーに詳しい奴は沢山いると思うんだが・・・・・・
リアルでカフェを経営していた奴とか、そういう仕事についていた奴とか・・・・
これがいまだにクリアされていないってのはどういうことだ?
「豆の種類って・・・・クレハ、俺はもうお手上げだ・・・・・・・お前はこれも見ただけで分かっちまうのか?」
「いや、さすがにそれは飲まないとわかんないだろうな。ブレンドされたすべてを当てろとかならまだしも、一種類なら何とかなるだろう」
「おおまじかよ!これでS級食材ゲットか!?」
クラインが期待したようにこっちを見ているが、正直すこし緊張するな。
はずすことは無いと思うが、これが俺が作る以外でSAOでの初めてのコーヒーだ。
コーヒー好きとしては楽しみで仕方が無い。・・・・・・・・・では
ゆっくりとカップを口にあて、NPCのコーヒーを口に含む。
口の中にコーヒーの香りが広がっていく。
そして遅れてコーヒーの味が・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・これは!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ど、どうしたクレハ?豆の種類は分かったか?」
「・・・・・・・・・・・・・・ま」
「ま?」
「不味すぎてわからない・・・・・」
「はああああああああああああああ!?」
「これはもうコーヒーじゃねぇ。泥水だ・・・・・」
「おいおい嘘だろ!?そんなのクリアできねぇじゃねーか!!」
NPCの作るものは微妙だとは言ったが、これは微妙なんてものじゃない。
飲み物ですらないだろこんなの・・・・・
分かるわけが無いじゃないか。そういうことか、SAOにいるであろうコーヒーに詳しい奴がこのクエストをクリアできない理由は。
飲んでも分からないんじゃあ賭けに出るしかない。けどその賭けもコーヒーに多少詳しくないと豆の種類なんてぱっと出てこないし・・・・・
無理ゲーだろこんなの。
初めて俺が作った泥水と同じ味がしたぞ・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・ん?同じ味?
『さあ答えてごらん!この豆の種類は!?』
「ちくしょー!S級食材の夢もここまでかー!!」
「もしかして・・・・・」
「え?」
「この豆の種類・・・・・・・・モカか?」
「も・・・もか?」
クラインは良く分からないという感じで俺のほうを見ていた。
怪訝そうなクラインの顔を横目で見ながら、NPCのほうを向くと、満面の笑みのNPCがこっちを見ていた!
『大正解!!!君は本当のコーヒー通のようだね!気に入ったよ!!さぁこの豆を持って行っておくれ!!』
俺とクラインの前に「QUEST CLEAR」の文字がキラキラと光っている。
少し遅れてウィンドウが強制的に開かれ、アイテム欄に新しいアイテムが入れられていた。
『マイルドベリー』
アイテムをオブジェクト化すると、濃い茶色をした丸い豆が大量に入った布袋が現われ、俺達2人は輝くようなその豆に目を奪われることになった。
「俺はコーヒーのことはよくわかんねぇけど、この豆はなんていうかスゲーキレイだ・・・・・けど、俺の知ってるコーヒー豆とすこし違うな。なんていうか、少し小さくてまん丸だ」
「ああ、ピーベリーってやつだ。普通は実に2つの豆ができるから、コーヒー豆は片側が平たくなるんだが、まれに実に1つだけ豆が出来る時があるんだ。それがピーベリーってやつで、キレイに丸みを帯びた形になるらしい」
「なるほどな・・・・ってことはかなりレアな豆ってことか?」
「レアなんてもんじゃないな。ピーベリーはコーヒー豆に収穫量の3%くらいしか取れないらしいから、これだけの量は現実ではそうそう拝めないだろ」
「すげぇじゃねぇか!さすがS級食材だな!」
ピーベリーは形がいびつじゃない分均等に火が通って風味がよくなるらしい。まろやかでコクがあるよないいコーヒーが作れそうだ・・・・
ああ、早くかえってためしたい・・・・・
「それよりクレハよ、なんで最後の豆の種類が分かったんだ?不味くてろくなもんじゃなかったんだろ?」
「ああ、俺はあれをコーヒーとはよばせねぇ」
「じゃあなんで・・・・」
「まあ、俺が昔飲んだことある味だったからな・・・・」
「?ますますわからねぇ。説明してくれよ」
俺が最後の問題を解くことができた理由、それはいたってシンプルなものだった。
あの味がモカの味だと分かったのではなく、あの味を作るために何をしたのかがわかっただけだ。
「俺はコーヒーが飲みたくて料理スキルをあげたんだが、まだ料理スキルが全然だった時にコーヒーを作ってみたんだよ。結果はひどいもんで、泥水みたいな味だったさ。さっきのコーヒーみたいな味がしたよ」
「そ、そうなのか・・・・・けどそれとこれと何の関係が?」
「俺がその時作ろうとしたのがモカの豆を使ったコーヒーなんだよ、その味がさっきのコーヒーと殆ど同じだったってことは・・・・」
「なるほど!お前のコーヒーは『モカを目指したコーヒー』であのコーヒーは『モカで作ったコーヒー』だから、味が似てたってわけか」
「そういうことだ、いやー失敗の経験ってどこで生きるか分からんもんだな」
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俺の店に帰ってきた俺とクラインは早速取ってきたマイルドベリーを調理しようとしたんだが・・・・
「ほらクレハ、これはお前の分だ」
「は?いやいや、それはお前が貰ったクエスト報酬だろ?」
「これは俺の恩返しの品だ!・・・・それに、俺クエスト殆ど役に立ってなかったし・・・」
「お前のクエスト報酬だろう。好きなように使えばいい。俺への恩返しは一緒にいクエストに参加してくれたってだけで十分だ」
「け、けどよぉ・・・・」
「お前はホントに・・・・」
義理堅い奴だな。俺はただお前と一緒にクエストに行って、楽しんで帰ってきて、S級食材が手に入ったってだけで十分なんだが、それじゃあこいつは満足しないんだろうな。
「・・・・・・・わかった。受け取ろう」
「本当か!?そうだ貰ってくれ!俺の気持ちだ!」
「ああ、その代わりもう1つ付き合ってもらうぞ」
「・・・・・・・・え?」
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「クー坊!S級食材取ったんだロ?飲みにきたゾ!」
「S級食材!?ちょっとクレハ!私にも見せなさいよ!」
「あれ?クラインじゃないか。クレハには恩返しが出来たのか?」
「こんにちは、クラインさん。クレハ君も」
いつも通りの時間にいつも通りの面子がきやがった。
しかもアルゴにいたってはすでに俺がS級食材を手に入れたことを知ってやがる。こいつだけ確信犯だな・・・・。
「す、すげぇ面子だなこりゃあ・・・・」
「ああ、『鼠のアルゴ』に『女鍛冶職人リズベット』、『黒の剣士キリト』に『閃光のアスナ』。そんでお前が『風林火山のクライン』だからな。有名人だらけだ」
「それに『剣影のクレハ』様もナ」
「うるせえよ」
「そ、それでよクレハ。俺は今から何すりゃいいんだ?」
「ん?一緒にお茶するだけだが?」
「・・・・・・は?」
クラインは意地でも俺にマイルドベリーを渡さないと気がすまないみたいだったからな、そんなに言うなら素直に受け取る。けどその後どうするかは俺の勝手だ。
「お前も飲んで行けよ、S級食材で作るコーヒー。絶対美味いぜ」
「いやいや!それはお前が大事に使うべきだろ!!」
「大事に使った結果がこれだ。一人で飲んでも寂しいだけだろ?」
「それもそうだけどよ・・・・。あのNPCも言ってただろ?コーヒーを分かってるやつが飲むべきだってよ。俺はそういうの全然わかんねぇし・・・・」
「ああ、だからあいつのコーヒーは不味いんだよ」
「は?」
NPCだから料理が美味くないとか、NPCだからプログラムされたことを言っているだけだとか、そういうことはモチロン分かっているが、俺はあいつの発言は気に入らなかった。
「コーヒーを知っていようと知っていまいと、飲んで美味いと感じることには変わりないだろ。むしろ知識を持っている奴が偉そうにしてる方が不味くなる。俺は分かってるとか分かってないとかより、飲んで欲しいかそうでないかで決めたいね。俺は俺の作ったコーヒーをクラインにも飲んでもらいたい。コレじゃダメか?」
「・・・・・・ああ、わかった。おめぇはいい奴だな。クレハ」
「お前もな」
納得してくれたようでクラインはキリトたちがいるテーブルのほうへ向かってくれた。
クラインとキリトたちは初めから知り合いだったらしいから、すぐにに打ち解けて楽しいティータイムになるだろう。
さぁ、マイルドベリーの調理に取り掛かるか・・・・・
「・・・・・・・・・・クー坊。ちょっといいカ?」
「ん?どうしたアルゴ、まだ出来るには時間かかるぞ」
「そうじゃなくてナ」
「じゃあなんだ?」
「ええっと・・・・」
暗い表情、と言うよりはなんだか不安そうな表情で俺を見つめてくるアルゴはなんだか新鮮で、いつもより一回り小さく見えた。
一体何がそんなに不安なのか、俺にはさっぱり分からん。
特にこんなアルゴは初めてなせいで、なおさら分からない。
「なんだ?はっきり言ってくれないと分からんぞ」
「その・・・・クー坊は・・・・」
「俺は?」
「・・・・・・男のほうが好きとかじゃないよね?」
聞かなければ良かった。
「ええええええ!?ちょっとクレハ!?そうなの!?」
「絶対に違う!!リズも信じるな!!アルゴ!!どうしてそうなる!?」
「だって・・・・なんかクラインを口説いてるみたいだったし・・・・」
「どこがだよ!!普通にお茶に誘っただけだろ!?というかお前素が出てるぞ!」
「けど確かに、クラインさんが女の子だったら、確実に口説いてるような台詞だったわよね」
「あー確かにアスナの言うとおりだな。俺の作ったコーヒーを飲んでもらいたいとか。口説き文句みたいだな」
「キリト!!アスナ!!お前らも掘り下げるな!!」
「クレの字よぉ・・・・悪いけど、俺は普通に女の子が好きなんだ・・・・」
「俺だって女のこの方が好きだよ!!というかお前は当事者だろ!!悪乗りするなよ!!」
「女の子ってどんな女の子がいいんダ?」
「そ、そうね、それはちょっと興味あるわ・・・」
「なんでそういう流れになる!!」
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ギャーギャーとうるさい時間はしばらく続き、落ち着いたのはずいぶんたってからだった。
俺が新しく知り合うやつはどうもにぎやかな奴が多い気がする。
次に会うのは出来るだけおとなしい奴がいいな・・・・・。
というわけで第七話でした
クラインは男性キャラクターの中で一番好きです。
純粋にいい兄貴って感じがするので。
ちなみに作者もコーヒーは好きですが知識はにわかです。
今回出てきたものの中にも間違いはあるかもしれませんので、気になった方は自分で確認されるのがよろしいかと。