やっぱり見てくれている人が居るってわかると
モチベーションが上がりますね。
これからも早めの更新を目指します。
そして今回結構長めです。
アインクラッド55層の迷宮区
現在の最前線に俺は来ている。というより連れて来られた。
アスナとリズと一緒に迷宮区にたどり着いた後、キリトを発見するのにそう時間はかからなかった。
というのもアスナが鬼のように強く、遭遇した敵は30秒もしないうちにポリゴンの破片になり、リズがフレンド追跡を使って最短ルートを案内していたので、15分ほどでキリトのところまでたどり着くことができたってわけだ。
いやたどり着いてしまったわけだ・・・・
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「こんにちはキリト君」
「うん?何だアスナか」
「あたしもいるわよ」
「リズ!?なんでこんなところに、安全マージンは大丈夫なのか?」
「アスナが居るんだから大丈夫よ、そんなことよりもう一人居るわよ」
「もう一人?」
「・・・・・・・・・・どうも」
ガスッ!
思いっきり乗り気じゃない俺の態度が癪に障ったのかリズに思いっきり蹴られた。
普通に痛い、というかここ圏内じゃないからそんな思いっきり蹴るとダメージはいるかもしれないだろ。オレンジプレイヤーになっちゃうぞ。
とりあえずアスナが先導してキリトに俺の紹介をしてもらった。
まさか本当の目的をキリト本人に伝える訳にはいかないので、俺たち3人がここに居る理由は「リズの依頼でアスナと俺がレベリングを手伝っていた」って事にしておいた。
「へー万屋か、なかなか面白そうなことやってるんだな。俺はキリト、ソロだ。よろしく」
「・・・・・クレハだ、よろしく頼む」
「ここで会ったのも何かの縁だし、4人でパーティ組みましょうよ」
「そうね、それがいいわ!キリトも私のレベリングに付き合いなさい!」
あくまで偶然遭遇したことにするのか、こういうときの女の子同士の連携はすごいよな、打ち合わせもなしにキレイに口裏を合わせられるんだから。
こういうとき男は下手に口を出さずに居たほうがお互いのためだ、俺も下手なことを喋ってキリトに感づかれたら困るからな。
「なんだよそれ・・・・まぁ俺はかまわないが、クレハはそれでもいいのか?」
「ああ、俺はかまわないよ。リズと違ってレベルは足りているからな」
「そうなのよね、クレハ君のレベルってどうしてそんなに高いの?準攻略組位のレベルが有るし・・・」
「ほんとよね、普段店でだらだらしてるくせに」
「失礼だな」
2人が言うとおり、俺のレベルはキリトやアスナには劣るがそれなりの数値まで上がっている。55層という最前線でもそれなりにやっていけるほどだ。
もちろんボスに挑めるほどのレベルは無いし、攻略組に混ざって戦えるほどではないが、俺のレベルが少し高いのには理由がある。
「俺のレベルが高いのは、俺の仕事が原因だな。いや原因というよりおかげって言った方がいいか」
「仕事のおかげ?万屋でそんなに経験値が稼げるのか?」
「稼げるって言えば稼げるな。そうだな・・・ヒントを出すなら『クエストの助っ人』かな?」
「「クエストの助っ人?」」
「それって・・・・けどそんなこと可能なのか?ほかのMMOならともかく、SAOで出来るとは思えないぞ」
「現に俺ができてるだろ?まぁ抜け道みたいなのがあるんだよ」
キリトはその一言だけで大体察したようだ、信じられないって感じだが。
リズとアスナはピンときていないようだが、まぁコレに関してはネットゲームに詳しい奴のほうが理解しやすいか。
というか、意外とキリトと会話しても気づかれないもんだな、俺の気にしすぎだったのかのしれない、コレならアスナの依頼を達成するために俺が動くのも可能かな。
「ちょっとクレハ!2人で話を終わらせないでちゃんと説明しなさいよ」
「そうだよクレハ君、キリト君も分かったなら教えなさいよ!」
「ご、ごめんアスナ・・・」
「正直言って説明するのが面倒なんだが・・・・」
2人ともキリトみたいに察してくれれば楽なのに、とか思っていたらリズが今にも俺を蹴り飛ばそうとしているのでおとなしく説明しよう。
「・・・・クエストを達成したらNPCなりクエスト屋に報告に行って、経験値と報酬を貰うだろ?」
「・・・まぁそうね、報酬を貰うためにクエストを受けたわけだし」
「報酬以外にも、クエストによってはたくさん経験値が貰えるものもあるから、それを貰うためでもあるわね」
「それが分かるなら簡単な話だ、俺はそういう割の良いクエストを何回も受けて、それで得られる経験値でレベルを上げたんだ」
「え?けどクエストって、普通は何回も受けられない一回限りのクエストだったりするじゃない。『村娘の病気を治してあげる』とかのクエストをクリアしたら、それ以降は『治してくれてありがとう』っていうお礼を言われるだけで、もう一回クエストが始まったりしないはずだけど・・・」
そうなのだ、SAOがVRMMOで有る以上、大抵のクエストは1回きりで何度も受けることは出来ない。モチロン例外はあるが、そういったクエストは総じてたいした利益を得ることが出来ない。
「今アスナが言ったように、そういう割の良いクエストっていうのは何度も受けることが出来ない。けどそれは、『固定のパーティや少人数ギルドに入っているプレイヤー』の話だ。」
「?どういうことよ」
「例えば、キリト・アスナ・リズ・俺のパーティで一回クエストを攻略したとしよう。そのあとは、この4人でクエストを受けようとしてもクエストは発生しない、たとえパーティを解散してもな」
「そうだな、SAOはそういうところをリアルに作ってるから、パーティーを変えても一人でもクリア者が居たらクエストは発生しないはずだ」
「その通り、けどコレにも一つ抜け道があるんだ。」
「「「抜け道?」」」
今回は3人ともピンと来ていないようだ。当然か、俺も殆ど偶然見つけたモノだしな。
茅場晶彦もこういう仕様にするしかなかったんだろう。
「確かに『クエスト攻略者がパーティに居たらクエストを受ける事は出来ない』。けど、『クエストを受けたパーティにクエスト攻略者が後から加入する』のは有りなんだよ」
「「「!!!」」」
そうなのだ、クエストを受けたパーティに後から入ることが出来れば、それが1度攻略したことの有るクエストでも報酬を貰うことができる。
まあ考えてみれば『そりゃそうなるか』って感じだ。クエストによってはかなり長期にわたって進むものも有る。『そのクエストを受けている時は新規にパーティを組み直せません』じゃああまりにも辛すぎる。そうすると、クエストの終了報告をした時のパーティに報酬が入るようにするしかない。
「そんな抜け道があったのか・・・」
「あんたそれ結構反則じゃない?下手したら寄生みたいなものじゃない」
「失礼な、ちゃんと依頼主の了解は得てるし、俺がクエストをスムーズに進行させてるんだから文句を言われる筋合いは無いぞ。戦闘でもそれなりに戦力として働いてるしな」
「それはそうだけど・・・・」
「それに、この抜け道にはかなり特殊な条件が有る」
「条件?どんな条件がいるんだ?」
「もちろん『クエストを受ける時だけパーティに入っても文句を言われない立場』だ」
「「「あー・・・」」」
今回は全員が納得してくれたようだ。
この方法で経験値を稼ぐためには、当然だがすでにクエストを受けているパーティに入らなくてはならない。だが割の良いクエストはパーティの上限が4~6人ぐらいだ。
すでに出来上がっているパーティに助っ人で入れるのは戦闘の連携を考えても1人が限界だ。そうなると、この方法を取れるのはソロプレイヤーぐらいしか居ない。
しかし、パーティでクエストを受けようとした時に、いきなりソロプレイヤーがきて
『もう一度クエストを受けたいから入れてくれ』なんて言ってきても、OKする奴なんているわけがない。たとえクエストの情報を持っていても煙たがられることのほうが多い。見ず知らずのプレイヤーをパーティに入れるよりは、情報屋からクエストの情報を買ったほうがはるかに安全だしな。
ここがデスゲームじゃなかったら受け入れられるだろうが、命をかけたクエストをこなして、いい所だけを貰おうとしているプレイヤーを受け入れるやつはそうそう居ない。
仮に受け入れられても、それなりの見返りを求められる。そうなったら普通にレベリングをしたほうがはやい。
そのため、こっちからアプローチをかけてクエストに連れて行ってもらうことはほぼ不可能だ。
「結局この方法は、パーティ側からソロプレイヤーを指名した時にしか使えないんだよ」
「なるほどねー、そう考えるとクレハ君の『万屋』って言う立場はぴったりだね。依頼者はクエストがスムーズに進行するし、クレハ君は報酬が貰えるし、お互いに利益があるもの」
「それにそういう店を開いているっていうのが大きいな。パーティ内での行動がそのまま店の評価に繋がるから、パーティ側も自分達に迷惑がかかるような行動をしないはずだって思える」
「そういうことだ、まぁそれでも自分が受けたいクエストは受けれないっていう問題点は拭えないし、他の生産職より少し多い経験値が入るだけで、結局自分でレベリングはしないといけないんだけどな」
「なによ、すごい便利かと思ったらそうでもないのね、その抜け道」
「SAOだからな、100%良い話なんてのはないってこった。さあ、俺のレベルの謎が解けたなら、さっさとリズのレベリングに行こうぜ」
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「アスナ!スイッチ!」
「はい!」
敵の攻撃をはじいたキリトがすばやく後ろに下がり、それと同時にアスナの細剣が敵に迫っていった。
薄い緑色に光った細剣はすさまじいはやさで敵の体を貫いて、そのまま敵の体をポリゴンの破片へと変えていく。
「・・・・あの2人は化物か何かか?」
「気持ちは分かるけどれっきとした人間よ、安心しなさい」
さっきから殆どあの2人だけで敵を倒してるぞ、俺とリズはたまに2人に止めを刺されなかった瀕死の敵に一撃加えてるだけ。それなのに経験値は4人に入るからリズは今頃ガンガンレベルが上がっているに違いない。
他のパーティとクエストするより効率いいんじゃないか?
「なあ、俺たちホントに前に出なくてもいいのか?」
「ああ、クレハがリズを守ってくれていたほうが俺たちも動きやすいしな。クレハが前で闘いたいって言うなら交代するが?」
「いや結構だ、お前達みたいに動ける自信が無い」
「そう?けどさっきのクレハ君の動きは無駄がまったく無くてすごかったよ!刀は扱いが難しいのに、クレハ君はすごくしなやかに動くわね」
「そりゃどうも、一応『万屋』だからな、弱くちゃやってられないさ」
アスナの言うとおり、俺はエクストラスキルである刀を使っている。敵の攻撃を受け止める、というより受け流すことが出来るこの武器は俺と相性が良い。
このくらいの敵なら遅れをとることは無いし、本気で戦う必要も無いからあれがキリトにバレる心配も無い。キリトと友達になるって目的は達成できたし。そろそろ潮時だろう。
「なあ、そろそろ切り上げないか?リズのレベルも結構上がったし」
「そうね、じゃあそろそろきりあげて・・・」
「・・・・・・・・・・・ぅぁぁぁぁ!!」
「「「「!!」」」」
遠くのほうから微かだが声が聞こえてきたきがした。
それもただの声じゃない、今のはもしかして・・・
「悲鳴だ!」
「リズ!マップにプレイヤーの反応はあるか!?」
「え、ええっと・・・あるわ!二つ前の通路の端に6人!」
「すぐ行きましょう!」
最前線の迷宮区で悲鳴か、面倒なことになってないといいんだが・・・
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俺たち4人が到着した時、目の前の光景はすさまじいものだった。
ざっと見ただけで50体以上の骸骨の剣士がプレイヤーを囲んでいた。
赤い鎧を着た6人のプレイヤーは、迫り来る敵に一心不乱に剣を振り続けている。
あの状態で転移して無いって事は結晶無効化エリアか・・・!
「すいませんリーダー!俺の不注意でトラップに・・・!」
「過ぎたことを気にすんな!とにかく今は手を動かせ!気合入れろよお前ら!!」
「「「「「おう!」」」」」
あの様子だと死人は出てないようだな、あのリーダーっぽい奴がうまいことパーティの志気を保ってくれてるみたいだ、けどあの様子じゃいつ限界が来てもおかしくないぞ・・・・!
「あの声、まさか・・・!」
「あっおい!キリト!!」
キリトが一人で突っ込んでいきやがった!何考えてんだあいつ!
けどこのままじゃまずいのは確かだ、かといってキリト一人の助けじゃここを突破するのは難しい、となると・・・・・やっぱり俺達もやるしか無いみたいだ・・・・・
「アスナ、いけるか?」
「ええ、もちろん。絶対に助けましょう」
さすが血盟騎士団の副団長。
判断が早いし、そういってくれると思ったよ。
そうなると次は・・・
「リズ、転移結晶を使え、店で待ってろ」
「何いってんのよ!そんなの・・・!」
「大丈夫だよリズ、私たちは死なないから。私達の帰りを信じて待ってて?」
レベルに余裕がある俺はともかく、この層の安全マージンまで達していないリズをここにおいておくのはまずい。戦いに参戦させなくても、その間リズを放っておくわけにも行かないからな。
自分が渋ることで俺たちに迷惑が掛かると思ったのか、リズは意外と早く決断してくれた。
「・・・・・わかったわ。けど死んだら許さないから!」
「もちろんよ」
「あたりまえだ」
俺たちの返事を聞いたリズは無効化エリアから出た後、青い光に包まれていった。
アスナが居てくれて助かったな、俺一人だったらリズは説得できてなさそうだ。
敵の数はまだまだ多い、これは・・・
「さすがに、本気でいかないとまずいよな・・・」
コレをやると絶対に俺のことキリトにがバレるだろうが、仕方が無い。俺のわがままと人の命だったら、どっちが大切かなんて考えなくても分かる。
大きく深呼吸をして集中力を高め、俺は武器を構える。
しかしそれはさっきまでの構えとはまったくに違う。
右手には今まで通り刀を。
左手には逆手で鞘を握り締める。
「・・・クレハ君?それは・・・・?」
「俺の戦い方ってやつだ。まぁ、悪いようにはならないよ」
アスナは一瞬不思議そうな顔をしていたが、すぐに目の前の敵に意識を切り替えたようだ。
「それじゃあ・・・・いくぞ!」
俺たち2人は敵の大群の中に突っ込んでいった。
本当に、面倒なことになったものだ・・・・。
というわけで第四話でした。
SAOのクエストの解釈は、プログレッシブ読んで考えました。
何回も何回の同じNPCが同じ人に依頼してたら不自然かなーと思ったので、多分こんな感じだろうという考えです。
正直根拠も無い上に調べても無いので全然違うかもしれません。
まぁ主人公のレベルがそれなりにある理由ぐらい捕らえてください。
「『デスゲームでの日常』とかいいながら全然日常じゃねー!」
と思われた方ごめんなさい。次の話でほんのりシリアスパートは終わりで、まただらだらとした日常を書いていくつもりです。
今後ともよろしくおねがいします。