デスゲームでの日常を   作:不苦労

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かなり時間があいてしまいました。

リアルで忙しい時期がもう少しで終わるので、
それを乗り切れば少しはペースが上げられそうです。


結婚報告

3日前の夕方。俺とアルゴが店で駄弁ってる間にいろいろな事が起こっていた。

 

 

アルゴが話していた『キリトに友好的じゃない奴』。プレイヤー名クラディール。

結論から言えば、こいつはレッドギルド『笑う棺桶(ラフィンコ・フィン)』のメンバーだった。血盟騎士団に入ったときからずっとそうだったのか、途中でそうなったのかは分からないが、こいつがキリトに正体を現した時、躊躇いなく同行していたプレイヤーであるゴドフリーをPKした。

 

PK(プレイヤーキル)。これはただのMMOならたいした問題にはならない。それもゲームの楽しみ方の1つだ。

 

だがSAOの世界でのPKはそんな甘い物じゃない。『HP 0=死』の世界でのPKは現実世界での殺人と何も変わらない。そんなバカげたことを日常的にやってのける『笑う棺桶(ラフィンコ・フィン)』というレッドギルド。俺やシリカが出会ったオレンジギルドよりたちの悪い本物の殺人集団のメンバー。

 

 

キリトはそいつに命を狙われたらしい・・・・・

 

 

任務の途中で休憩を挟み、昼食を取ろうとした時に事件は起きる。

キリトとゴドフリーの飲み物に麻痺毒が仕込まれていて、キリトとゴドフリーは行動不能になった。行動不能になったゴドフリーに対し、クラディールは躊躇いなく剣を突き刺し、そのHPを全損させた。右腕につけた『笑う棺桶(ラフィンコ・フィン)』の刺青を見せつけながら、未だ動けないキリトを殺すためにじわじわと剣を突き刺していく。

 

だが、キリトのHPが全損する直前。ゴドフリーの位置情報が消滅した事に気がついたアスナが駆けつけ、ギリギリでクラディールを弾き飛ばす事に成功。アスナはクラディールへ追撃を続け、HP全損寸前まで追い込んだが、殺す事が出来ないアスナでは止めを刺す事はできず、逆に反撃を受けてしまう。

 

剣を振りかぶり、アスナを殺そうとするクラディールを止めたのは、麻痺毒から回復したキリトの一撃だった。その一撃でクラディールのHPは全損し、アバターは結晶となって消えた。

 

 

そして、その後・・・・・・

 

 

 

 

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「・・・・・・・もう一回言ってもらって良いか?」

 

「いや、だからさ」

 

「私とキリト君はね」

 

「結婚したんだ」「結婚したの」

 

 

・・・・・・なんで今の話の流れからそうなるんだ。

 

 

かなり真面目な、というかぶっちゃけかなり重い話を聞かされてどうしようかと思っていたのに、気がついたらノロケ話にシフトされていた。

自分のギルドの中にレッドギルドのPKがいて、そいつに殺されかけた奴がその日のうちに結婚ってわけわからんわ。

 

 

「まあ・・・・取り合えず言いたいことは山ほどあるんだが、それは後に回して先に1つだけ言わせてくれ」

 

「なんだ?」

 

 

本当に言いたい事は山ほどあるが、俺が最初に言いたいのは・・・・・

 

 

「ここまで来るのにどんだけ時間かけてんだよ!」

 

「「え?」」

 

 

アスナから恋愛相談受けたのが55層の時だぞ?もう10層近く進んでるじゃねーか。あれから週に3回以上は俺の店でお茶会してたくせにお互い何にもしやしないし、それなのにお互い意識してるのは周りにはバレバレだったし、正直俺もリズもさっさとどっちかに本当のことを話してやろうかと思ってたくらいだ。

 

 

「アスナは一人で俺の店に来た時はキリトの話しかしないし」

 

「う・・・・・」

 

 

毎度毎度俺の店に来てまでノロケ話をしていかないで欲しい。こちとら男一人寂しく店番してるんだから、美少女から聞く好きな人の話とか、その気がなくても悲しくなる。

 

 

「そうなのか?なんか今聞くと照れるな・・・・」

 

「キリトもそうだろうが」

 

「うぐ・・・・」

 

 

その美少女と一緒にいた話を友人から聞くのはさらにキツイ。なんかこう、現実を突きつけられている感じがヤバイんだよ。

 

まあ、ここまでくると『やっとか』って思いもあるが、『よかった』って気持ちのほうが大きい。キリトもアスナも攻略組の最前線にいるって事もあってか、かなり危なっかしいことをする2人だからな。その2人がお互いを支えられるような関係に慣れたってのは友人として素直にうれしい。

 

 

「まあ、その・・・なんだ。よかったな、2人とも」

 

「ああ、クレハのおかげだ」

 

「そうね、クレハ君がいなかったらこうはなれなかった思うわ」

 

「・・・・・・そうか、役に立てたなら万屋冥利に尽きるってもんだ」

 

 

2人からの言葉に答えながらも、俺は逆の事を思っていた。

あの時アスナからの依頼を断っていたとしても、この2人はこうなっていたはずなんだ。ただ俺がいた事で少し道筋が変わっただけ。

 

こいつらが通じ合えたのは、他ならぬ自分達のおかげなんだ。

 

 

 

.

.

.

 

 

「それはそうと、お前達はこれからどうなる予定なんだ?」

 

 

キリトとアスナの結婚報告の話に気をとられていたが、かなり危険な目にあっている2人だ。ついでに言えば大ギルドであるKoBにレッドギルドのPKが入り込んでいたなんてしゃれにもならない大事件だ。この事を公開したら他のプレイヤーに大きな不安を与えるだろうから、後処理はヒースクリフが上手い事やるんだろう。

だがこいつら2人は別だ。言ってしまえば今回のキリトは100%被害者であり、アスナもそれに近い立場だ。ギルドメンバーに殺されかけた2人を今まで通りギルドに縛り付けるなんてことは流石にないだろうが・・・・・

 

 

「今回の件で、団長から一時脱退の許可を貰ったの。しばらくは2人でゆっくり過ごそうと思ってるわ」

 

「22層に綺麗なログハウスがあってさ、前から目をつけてたんだけど昨日ついに手に入れられたんだ」

 

「・・・・そうか。前回はあんなに面倒な事をやらせれたのに、今回は結構あっさり抜けられたんだな」

 

「私が今の血盟騎士団のあり方に疑問を感じるって事を伝えたら、ちゃんと認めてくれたわ。前回のは半分私のわがままみたいな物だったから」

 

 

流石のヒースクリフも、今回の件に大しては慎重になるってことか。

アスナの言うとおり前回は個人の問題だったが、今回に関してはギルド全体の問題だ。それも昔行われた『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』討伐作戦以来の大問題。ギルドメンバーの情報確認やら任務の見直しなんかもする必要があるだろうしな。

 

 

「今はそれが一番良いだろ。ギルドが落ち着くまでは信頼できるプレイヤーと一緒にいるべきだ」

 

「団長もそう思ってるみたい。けど、別れ際になんだか意味深な事を言われたわ」

 

「意味深な事?」

 

「『君たちはすぐに戦場に戻ってくるだろう』だってさ。どういう意味だと思う?」

 

「・・・・・・さあ? まあ今はほっとけばいいさ」

 

「うーん・・・・それもそうね。分からない事を気にしてても仕方がないもの」

 

「確かにそうだな」

 

 

『君たちはすぐに戦場に戻ってくるだろう』か。相変わらず面倒な言い回しをするおっさんだ。ヒースクリフがそんな事を言ったのは、今の階層が75層だからだろう。いわゆるクォーターポイントだ。今までも25層と50層には桁違いに強いボスモンスターがいたみたいだし、今回もきっとそうなんだろう。

こいつら2人はきっと、攻略が難航している事を知ると絶対に戦場に戻るはずだ。ヒースクリフが言いたかったのは、おそらくそういうことだ。

 

けど、こいつら2人はやっと分かり合えたんだ。ゆっくり出来る時間にそんな不安を与えるのは野暮ってもんだろう。ここは黙っておくのが一番かな。

 

 

「そのヒースクリフだけど、KoBはこれからどうするつもりだ? ギルドメンバーにPKなんてマイナスイメージでしかないだろう」

 

「そうね・・・。情報の拡散は押さえてるみたいだけど、ゴドフリーがいなくなった事は隠せないもの。みんなに知れるのも時間の問題だと思うわ」

 

「けど、ヒースクリフのカリスマ性ならギルド内で内部分裂、なんてことは起こらないと思うぞ」

 

「へぇ、キリトがそういうなんて珍しいな」

 

「数日間だけど俺も一応KoBのメンバーだったからな。他のメンバーと話してみて分かったが、ヒースクリフに対する信頼はこのくらいじゃ崩れそうにない」

 

「なるほどね・・・・・」

 

 

そこはやっぱり大ギルドのギルドマスター、ギルドメンバーからの信頼は厚いってことか。けど、それを言ったらグラディールだってギルドメンバーだ。警戒するに越した事はないだろう。それよりも問題なのは・・・・・・

 

 

「そうなると、ギルド内よりもギルド外のほうが問題だな」

 

「ギルド外?」

 

「KoBと並ぶ大ギルドだよ。アインクラッド解放軍と聖龍連合だが、今回の場合厄介なのは軍のほうだな」

 

 

大きさ的にはKoB以上の規模のアインクラッド解放軍、通称ALF。74層の時に数十人でボス攻略をしようとして失敗したギルドだ。ギルドの方針なのか何なのかは知らないが、あまり良い噂は聞かない。

通称DDAと呼ばれる聖龍連合も規模はほぼ同じだが、昔みたいに積極的に前に出てくるタイプじゃない。一時的なオレンジ化も辞さない危ういギルドだが、それは攻略のためよりは自分たちのためになる行動が目立つ。

SAOの大ギルドと言えば、KoBを含めてこの3つが主流だろう。

 

 

「それは・・・・なんでDDAよりALFのほうが危険なの?」

 

「ALFのほうがギルドの状況が悪いからだ。74層での攻略失敗以来、ギルド内で揉めてるみたいだし、正直一般プレイヤーからの評判もかなり悪い。KoBを貶める事で、相対的に自分達の評価を上げてやろうって考える可能性が高いってことだ」

 

「なるほど、DDAはどちらかと言うと保身的だ。レアアイテムの入手で手段を選ばないところもあるが、SAO内での評価を気にするタイプじゃない。リスクを犯してまでKoBにケンカを売る必要がないってことか」

 

「そういうことだな。それに、ALFは最近始まりの町で結構好き勝手してるみたいだからな。一般プレイヤーを従わせるためにギルドとしての力は重要だ」

 

「一般プレイヤーを従わせるって・・・・・ALFはそんな事をしてるの!?」

 

 

ああ、アスナは知らないのか。

キリトもなんだか面食らってるみたいだし、やっぱり常に最前線にいる攻略組にとってはあまりなじみの深い話じゃないんだろう。だけど、下層プレイヤーにとってはべつだ。

 

 

「ああ、徴税と称して一般プレイヤーからアイテムなりコルなりを集めてるみたいだ。始まりの町にいるプレイヤーは殆ど戦闘経験がない訳で、そんなプレイヤーがALFのごつい鎧を着たプレイヤーに逆らえるわけもない」

 

「そんなの・・・・! すぐにやめせさないと!」

 

「アスナ!ちょっと落ち着くんだ。気持ちは分かるけどそんな簡単な問題じゃないだろ?」

 

「それは・・・・そうだけど」

 

「それにクレハがそれを知っているのに何もしない訳がない。何か手を打ってるんだろ?」

 

 

ホントに、こういう勘だけはやたらと鋭いのは何でなんだろうな。

 

 

「アスナはALF設立の理由ってのは知っているか?」

 

「理由?普通に攻略をスムーズに進めるために攻略組の人が作ったんじゃないの?」

 

「いや、実は全く違う。ALFはデスゲームの中でたくさんの人が平等に食料を手に入れられるようにすることを目的として出来たんだ」

 

「え?けどALFは攻略組にも沢山いるじゃない。それに一般プレイヤーからの徴税だなんてそれと全く逆の事を…」

 

「ああそうだ、当初の目的と今のALFの方向性はバラバラだ。それはALFがでかくなりすぎた事が原因で、今まさに問題となっていることだ」

 

「大きくなりすぎた?」

 

 

さっきも言った様に、ALFは今となってはSAO最大と言っても良いほどの大ギルドだ。今現在7000人近くが居るSAOの中での攻略組大ギルドなんて数えるくらいしかない。そんななかで大きくなりすぎたギルドがどうなるかなんて考えなくても分かる。

 

 

「発足者の意見なんて関係ない。内部分裂だよ」

 

「内部・・・・・分裂」

 

 

キリトがKoBでは起こらないだろうと言った内部分裂。人が多くなればなるほど意見の食い違いや衝突が起こるのは当然で、それを起こさせずにまとめるのは至難の技だ。ヒースクリフみたいなカリスマ性と実力がないと早々出来るものでもない。ALFはそれの失敗例だ。

 

 

「発足者とギルド幹部との意見の食い違いだ。ALFはそういうの多いみたいでな、今はキバオウっていうプレイヤーの一派が徴税だのを繰り返しているらしい」

 

「……キバオウか」

 

「なんだ?知り合いなのか?」

 

「知り合いと言うかなんというか、目の敵にされてるだけだよ。第1層で俺をビーターって言い出したのもキバオウだし、それ以降の攻略会議でも何度も衝突したよ」

 

「確かに、βテスターを極端に目の敵にしてたみたいだな。それに自分が思い込んだことが100%正しいと思っているタイプだし、キリトとは相性が悪いかもな」

 

「むしろクレハ君とキバオウさんが知り合いなのが意外ね。クレハ君もβテスターなのに」

 

「別に俺も知り合いってほどじゃない。俺のことを書いた新聞記事が出回った時に少し話したってだけだ」

 

 

そのときは俺の事を慕ってくれたというか、βテスターに対する考えを改めたみたいな事を言っていたが、どうやら根っこのところは変わらなかったらしい。

自分の意見が100%正しいと思っている。それが思い込みだという可能性を疑わない。そんな奴だった。

 

 

「だがキバオウ一派なんてのが出来るくらいにはALFの中で慕われてるんだろう。自分の身内には面倒見がよさそうな奴だったしな」

 

「ああ、それは確かにそうだと思う。直情的な奴だけど、周りを巻き込む影響力はある奴だ」

 

「それがまた面倒なのよね・・・・攻略会議もキバオウさんの発言に賛成するプレイヤーと反対するプレイヤーで論争になって、そのままずるずる時間だけが過ぎたり」

 

「攻略組も大変なんだな」

 

 

なんかこう・・・各ギルドが集めたボスの情報とかを合算して、隊列とかを話し合って決めてるってのは知っていたけど、そんなに揉めるようなものだったのか。そんなのリアルの会社の会議みたいじゃねーか。

 

 

「まあともかくだ。そのキバオウ一派なんだが、ギルドメンバーを74層に特攻をさせた所為でギルド内での立場がかなり悪くなってるらしい。そのおかげでだんだん勢力は弱まってるみたいだから、徴税みたいな馬鹿な事はもうすぐなくなるはずだ」

 

「コーバッツさんたちのパーティね・・・・・あんな無茶な事をさせて死者まで出したんだもの、糾弾されるのは当然だわ」

 

「なるほど、じゃあ殆ど解決に向かっているわけか。それにしても、クレハはやけにALFの事が詳しいじゃないか」

 

「ああ、ALFから依頼が来たからな」

 

「依頼?」

 

 

俺だって初めからこんなにALFの情報を持ってたわけじゃない。まあ一応情報屋みたいな事もしてるから多少の知識ぐらいはあったが、ほとんどはつい最近手に入れたものだ。アルゴみたいなどこからともなく沸いて出てくるような情報源を持っていない俺としては、情報ってのは基本的に依頼主から入る事が多い。

 

 

「ALFギルドマスターのシンカーさんとその側近の人からの依頼だ。今のギルドの内情をどうにかしたいってさ」

 

「ALFギルドマスターって・・・・・ずいぶんとすごい人が来たんだな」

 

「ギルドマスターってことは、一番最初にALFを作った人よね?」

 

「ああ、さっきの話しで言うと『デスゲームで平等に食料が行き渡るようにしたい』って考えでギルドを作った発足者だ」

 

 

自分だってそのデスゲームに巻き込まれた1人だっていうのに立派なもんだ。自分が助かる事じゃなくて皆を助ける事を最初に思いついて、それを実行しようとしたんだからな。けど、そういう善意を持って動ける人ってのは、どうしても悪意を持った奴に巻き込まれることが多い。今回がまさにそうだ。

 

 

「本当は俺とシンカーさんで協力して、中と外からキバオウの動きを抑制をしてたんだが、思った以上に無茶をする奴だった。74層にプレイヤーを送ったのがキバオウだって聞いたときは愕然としたよ」

 

「普通はあんな強攻策を取るなんて考えられないもの。仕方ないと思うわ」

 

「というより、俺達による抑制を受ける前から少しずつキバオウの評価は下がってたみたいで、ギルド内での評価を無理やりにでも上げようと思っての強攻策だったらしい」

 

「無茶苦茶じゃないか・・・・・」

 

 

せっかく直接的過ぎない抑制方法とか、刺激を与えない意見のずらし方とか色んな面倒な事をしてたのに一気に無駄になった。それも最悪な形で無駄にしてくれた。

 

 

「まあ何はともあれ、ALFの過激な動きは大分収まったし、キバオウもこれ以上は無茶な事もできないだろうから安心してくれ」

 

「それならひとまずは安心かな」

 

「そうね、何かあってもクレハ君に依頼を出してるなら安心だわ」

 

「・・・・・そりゃどうも」

 

 

期待しすぎだけどな

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、俺達はそろそろ帰るよ」

 

「ああ、今のうちに新婚生活を満喫しとけ。クラインあたりに邪魔されないうちにな」

 

「あはは・・・・・クラインさんでもそれは流石に・・・・・」

 

 

しないだろう。とはっきりアスナが口に出来ないくらいには信用がないみたいだな。まあ、あんだけモテないとか女の子と話したいとか叫びまくってたら自業自得だけど。

残念だったなクライン。お前がキリト達の家を知るのは当分後になりそうだ。

 

 

「暇が出来たら遊びに来てくれよ。歓迎するからさ」

 

「ああ、アルゴとリズも連れていくよ。新しいたまり場はお前達の家だな」

 

「今までクレハ君の家にばかりお邪魔してたから、今度は私達がもてなしてあげるね」

 

「お前達というよりはアスナだけだろ。キリトが人をもてなせるとは思えん」

 

「それは流石にひどくないか!?」

 

「事実だろ」

 

 

アスナの料理なりお菓子なりはかなり期待できるが、キリトが俺達をもてなすって何をするんだ? ソードスキル用のサンドバックになるとか?

 

 

「なんか物騒な事考えてないか?」

 

「気のせいだ」

 

「2人は本当に仲が良いよねー」

 

「嫁さんが何いってんだよ」

 

 

付き合う過程ぶっ飛ばして結婚したバカップルの片割れに中が良いとか言われてもな。今も手繋いでるし、こんなもん嫉妬心しか沸かない。いや、別にキリトと仲が良いアスナに対しての嫉妬じゃなくて逆な。幸せな顔をしたキリトを殴り飛ばしたい。

 

 

「クレハ君もしちゃえば良いのに。結婚」

 

「はあ?そんな相手いるわけがないだろ」

 

「「うわぁ・・・・・」」

 

「何だその顔は」

 

 

さっきまで幸せオーラ全開だったキリトとアスナの顔が一瞬で渋い表情になった。

 

 

「クレハは俺達に『どんだけ時間かかってんだ』なんていえないと思うぞ」

 

「ほんとよね。早くどうにかしたほうが良いと思うよ?」

 

「はあ?」

 

 

さっきから何を言ってるんだこいつらは。どうにかするも何も、何をどうすればいいのかが分からんのだが。

 

 

「まあ、自分のことに関しては全然自覚がないのがクレハだしな。仕方ないだろう」

 

「それもそうね。クレハ君だものね」

 

「・・・・・・馬鹿にされてる気がする」

 

「「気にしない気にしない」」

 

 

 

やっぱり馬鹿にしてるだろ。こいつら。

 

 


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