駄文ですがよろしくお願いします。
万屋の日常
VRMMO ソードアート・オンライン
「世界初のフルダイブ空間」と称された夢の世界も、今では今世紀最大のサイバー犯罪として名を馳せている。
サービス開始初日から一万人のプレイヤーは期待に胸を膨らませ、続々とプレイを開始した。
ある人は自分で戦う楽しさに魅せられ、ある人は仲間と冒険に向かい、ある人は世界の美しさにただただ感嘆していた。
この世界がデスゲームとなることも知らずに・・・
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そのデスゲームの中、俺こと青崎 紅葉・プレイヤー名『クレハ』は生き続けていた。
現在アインクラッドは55層まで攻略され、デスゲームは少しずつだが順調に終わりに近づいてた。
俺もアインクラッドの攻略に参加し、いち早く現実世界に戻るために活動するべきなのだが、俺はとある理由から最前線で命を懸けて戦うことはできない。かといって全く攻略に関わらずにいるのにも気が引けるわけで…
そこで俺が取った選択肢は「プレイヤーのサポート」である。
いわゆる生産職と呼ばれるもので、武器屋や防具屋、商人などの直接戦闘に関わらずに攻略に協力する立場だが、俺はその中でも特殊な立場に立っている。
48層にある俺の店は、万屋「秋風」
『護衛、情報収集、料理、お使いなんでもござれ』ってことで、俺の技術でできる範囲なら報酬しだいで何でも受け持っている。
今日も俺は、大して多くもない依頼を受けながらこのデスゲームを生き抜いている。
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「・・・・ひまだな。」
昨日から受けた依頼はたったの3個だけ。それも買い物の付き添いとクエストの情報提供、あとは俺が作った料理を少し売っただけ。時間を合算しても30分にも満たないぞ。
「金になるのはいいけど、もう少し手ごたえがある依頼はこねーもんかねぇ・・・命の危険が有るのはごめんだけど」
「客商売でわがままいってんじゃないわよ」
不意に入り口のほうから聞こえた声に釣られて振り返ると、ピンクのショートへアーをした少女が鍛冶用の片手サイズのハンマーをもってこっちをジト目で見ていた。
「なんだリズ来てたのか、店はいいのか?」
「あたしはあんたと違ってきちんと予定を組んで仕事してるから、今日の分の予約はもうないわよ」
「予定が組めないのは仕方ないだろ、俺の商売は客の都合しだいなんでね」
「よくそんなのでやっていけるわね・・・」
彼女はリズベット俺と同じ48層で武具屋をしている鍛冶職人で、俺の店の常連さん・・・もといひやかしさんだ。
最初は普通に客としてきていたんだが、とある出来事から依頼もなしに俺の店に来るようになった。
「んで、今日は何の用だ?」
「決まってるでしょ、いつものコーヒーと洋菓子よ」
そう、とある出来事って言うのは大した事もない、ただ俺がリズにおやつを振舞っただけ。クッキーとコーヒーというかなり簡単なものだがリズはそれをずいぶんと気に入ったらしい。それからほぼ毎日俺の店におやつを食べに来るようになった・・・金も払わずに。
まぁいつもの事だしいまさら気にして無いわけで、俺は文句を言いながらもいつも通り準備にとりかかる。
「またかよ・・・。そんなに好きなら自分で『料理スキル』上げればいいだろ」
「いやよめんどうくさい、それに今から上げたってあんたの腕には追いつきゃしないわよ。・・・というかあんたの料理スキルって今どのくらいなの?」
「めんどくさいっておまえな・・・。まぁいいか、スキル熟練度は完全習得目前ってとこだな」
「はあ!?完全習得ってあんたいくらなんでも早すぎじゃない!?アスナだってこの前やっと半分を超えたって言ってたのに・・・。あんた相当暇だったのね」
「ほっとけ、というかアスナってあの『閃光』のアスナか? 攻略の鬼とか言われてる割に料理スキルなんて上げてるのか、変わり者だな」
まぁ気持ちはわかる。SAOの料理はどれも微妙すぎるからな、不味いのではなく微妙なのだ。
食えないわけではないが決して美味しくない。そのため美味い料理はSAO唯一の娯楽とまで言っていい。だが当たり前なことに『料理スキル』は戦闘に関しては全く役にはたたないので、上げているプレイヤーなんて殆ど居ない。
「というかリズ、お前なんで血盟騎士団の副団長と知り合いなんだよ」
「数少ない女子プレイヤー同士、自然と知り合ったのよ。今じゃ私の店の常連よ」
なに?こいつそんなビッグネームの常連客ゲットしてたのか、だからこいつの店は繁盛してんのか。いいなー俺の店にもビッグネームの客がこねーかなー。血盟騎士団団長のヒースクリフとか他の有名ギルドでもいいなー・・・・・
「・・・・・・・・うーん」
「何ブツブツ言ってんのよ」
「なんでもねーよ。ほらできたぞ、コーヒーもどきとクッキーもどきだ」
「まってましたー!相変わらずすごいできの良さね。いつも思うけど何でコレがもどきなの?完璧じゃない」
「俺がやってるのはあくまで味と見た目を極限まで似せてるだけだからな、現実世界の本物とは似て非なるものって訳だよ」
「なるほどねー。けどさっきのアスナの話じゃないけど、あんたは何で『料理スキル』を上げようと思ったの?言っちゃ悪いけど似合わないわよ?」
「・・・・・・・・・・」
料理スキル・・・・・・
あげるのに無駄に時間がかかる上に戦闘では全く役に立たんスキル・・・・
・・・・・・・・・・・俺が『料理スキル』を上げてる理由?
・・・・・・・・・・・そんなもん決まってんだろ
「なに?どうしたの?似合わないって言ったのが気に障っちゃった・・・・?」
「・・・・・・・」
「いや、その・・・いつもの軽口のつもりだったのよ?別に本気って訳じゃなくて」
「・・・・ヒー・・・」
「え?」
俺が『料理スキル』を極めている理由は・・・
「この世界にコーヒーがねぇからだよ!!」バンッ!!
「うわぁびっくりしたぁ!・・・ってコーヒー?それだけ?」
「それ『だけ』だと!?お前俺がこの世界にコーヒーが無いって知った時どれだけ絶望したか分かってんの!?いいか、俺にとってコーヒーっていうのはだなぁ・・・・・」
「いや、あの、クレハ?」
クレハのコーヒー談義は日が沈むまで続いた、この日を境にリズベットは
「クレハの前でコーヒーの話題は出してはいけない」
と固く誓ったのだった。
とりあえずこんな感じです。
SAOにコーヒー・・・あるかもしれないですけど。
そこはこの小説での解釈ということで一つ。
今後もこんな感じでまったり続けていく予定です。