ナザリックの核弾頭   作:プライベートX

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検証:形態変化

「根源の火精霊召喚」

 

 モモンガの一言で一際大きな焔の渦が巻き起こった。

アンデッド召喚とは比較にならない程派手だな。

炎を巻き込んだ熱風がジリジリと感じる。

この熱さ、生身で空気を吸い込んだら最後……

喉を大火傷して窒息死だな。

まぁ俺や団長は炎に対する絶対耐性を持っている。

アンデッドなら必須の耐性なのだ。

だから、火に対して心配は全然していない。

寧ろ、俺はこの防爆コートも着ているからな。

尚更問題無さすぎる。

あれ、でも何だか……

気持ちが高ぶってくるな。

俺の闘争本能にも火を着けたとでも言うのか……

あ、でも落ち着いたわ。

でもまぁ、このまま派手に殺りますかね。

ふっ、見える、見えるぞ……

私の敵が見えるっ!

 

「オォォォァァァァ!!」

 

 それは咆哮。

その場に居た誰もが震え上がった。

タイラントの防爆コートが弾け飛び、岩の様な皮膚が露になる。

筋肉がドンドン盛り上がり、亀裂が身体に出来ていく。

隙間から見えるマグマの様な血液。

異常なまでに発達していく両腕。

何故か発動してしまった【溢れ出す力】(オーバーフローフォース)

結果的に言うと形態変化をした。

うむ、ハイパー見た目がゴツくなった。

耐久力、攻撃力、対魔力が爆発的に上昇するが……

その代償として装備品が一度全てリセットされてしまう。

もちろんその効果も全部消える。

しかし、そんなぺナルティなど微々たるもの。

それを補って余りある力を行使出来るのだ。

一応言っておくけど全裸ではない。

ちゃんとズボンも履いているし問題無い筈。

 

「ゴァアアアァァ!!」

 

 咆哮と共にタイラントが根源の火精霊(プライマル・ファイヤー・エレメンタル)に突貫していった。

巨体からは想像も出来ない速度で走り出す。

先程の駆け足とは比べ物にならない。

身体強化の魔法をかけてもこうも速くは走れないだろう。

大地を削りながら巨体が走る。

あっ言う間に二体の距離は縮まり、タイラントは拳を強く握る。

そして走り幅跳びの選手が如く飛び上がると……

速度そのまま炎に殴りかかった。

暴君の拳が炎の精霊に突き刺さり、地面に叩き落とす。

落とすなど生易しいものではない。

最早、【大地に縫い付けた】と言うべきだ。

仮にも元素精霊に限りなく近い最上位の存在。

それをたった一撃で行動不能にする。

拳一つでだ。

まぁ、あれを只の拳と言うべきなのか疑問は残るが。

地面にめり込んだ精霊を狂った様に殴り続ける。

まさしく【暴君(タイラント)

暴虐と暴力の権化が其処には居た。

大きく振りかぶった一撃は地面ごと精霊を砕く。

見るも無惨な元・精霊の身体が燃えだした。

最後の最後で炎は大きく燃え上がる。

煉獄の炎がタイラントごと燃やし尽くそうとしていた。

しかし、何事も無かったかの様に歩き出すタイラントが居る。

炎に対する絶対耐性。

それは、ほぼ全裸でもしっかり機能している。

 

『タイラントさん……

ガチでやりましたね』

 

『ある程度本気出さないと。

弱い指揮官に兵隊は着いて来ないでしょう』

 

『確かにそうですね。

此方もやりたい事は概ね出来ました』

 

『これで多少の事なら何とかなりそうですな。

まぁ、団長安心して下さい。

いざって時は俺が殿しますんで。

その間に逃げて下さい』

 

『そんな、逃げるなんて出来ませんよ!

ゲームなら大丈夫でしょうけど……

此処で死んだら……

本当に死ぬかもしれないんですよ!』

 

『団長俺はね、俺は……

【死】に対しては別に何とも思ってない。

現実でもゲームでも何にも変わらねぇ。

あぁ、俺は此処でくたばるのかって死に際で思うだけだ。

ソマリアのあの時も……

いや、何でもない。

兎に角、団長が気にする事は何もない。

遠慮なく逃げて下さいな』

 

『……分かりました、タイラントさん。

その時が来たらお願いします』

 

 少々昔の事を思い出しちまった。

全く俺も頭のどっかネジが飛んでるかもな。

まぁ今の俺が出来る事やらないと。

この何だか良くわからん事態に巻き込まれたが……

いずれにせよ現実よりか……

少しは【面白くなりそうだ】。

 

 

 バサリと漆黒の防爆コートを羽織りいつもの姿へ。

あれ?俺は一体どうやってコートを?

コンソールも開けないのに?

うぉ、手が空間の中に入ってるぞ!

何か気持ち悪りぃな……

しかも、アイテムボックスの中身が解るぞ!

脳に直接情報が送られてくる様だ……

これは凄いぞ、俺の手持ちだけでも暫く戦争できる。

こんなにアイテム持ってたかな俺。

何だか、もう何でもありだな此処は……

オジサン少し疲れてきたよ……

あの姿になると何か疲れた気がするんだよなぁ。

現実と体力リンクしているわけじゃあなかろうに。

今も何か倦怠感があるし、精神的なものなのか?

しかし、これで俺の強さが二人にも解ってもらえたであろう。

さぁ俺に羨望の眼差しを向けるが良いさ!

さぁ!さぁ!ドンと来なさい!ドンと!

 

「モモンガ様に注いでもらえるなんて!」

 

 団長が双子に水を注いでいる。

流石は団長だ、部下への細やかな配慮に感服です。

と言うか団長は骸骨マンなのに何故、【無限の水差し】を?

の、飲めないよな……

骨だし、内蔵とか無いし。

しかし、しかしだ団長っ!

美味しい所を持っていきましたね……

ぐぬぬぬ、これがカリスマ性と言うやつか。

恐るべし団長、いやカリスマアンデッドか……

 

「テキタイ目標、センメツ完了」

 

 大きな足音を立てながらタイラントはモモンガ隣まで来た。

静かにモモンガの後ろに控える最凶の護衛。

あの禍々しい姿ではなくいつもの大男の姿へ戻っている。

アウラとマーレはタイラントの迫力に気圧されていた。

先程の凄まじい戦闘を目の当たりにした直後だから仕方がない。

白濁さした目をして何を考えているか分からない。

岩石をそのまま削った様な体躯と未知の武器。

物言わぬ兵器な様な男に脅威を感じない方がおかしい。

 

「ご苦労、流石はナザリックの核弾頭と言った所か。

その強さに私はいつも感心している」

 

「「ナザリックの核弾頭?」」

 

 アウラとマーレは聞き覚えの無い単語を聞き直した。

このファンタジーな世界に【核弾頭】なんて言葉は存在しない。

核弾頭ってのは比喩で危険物とか最終兵器とか……

しかし、何て説明したら良いものか……

自身の二つ名だし、自分で説明したいのだが片言で出来るのか?

 

「私が知る異世界において……

全てを滅ぼす決戦兵器いや最強の魔法と言っておこう。

それに匹敵する強さを持っている彼を示す様な物だ」

 

 おぉ、流石団長だ!分かりやすい!

そう、それが言いたかったのよ!

話し方と伝え方がやっぱり上手だなぁ……

 

「オレハ、ナザリックヲマモル。

オレハ、家族ヲマモル盾ダ。

オマエ達モ、マモッテミセル」

 

 何とか言いたい事は言えたぞ。

しかし、このタイラント・ボイスフィルタ―……

俺の言いたい事を簡素にして発言するぞ!

あれか、キャラの知力に関係してるのか?

糞!これでは筋肉モリモリマッチョマンの変態じゃあないか!

だがレベルはすでにカンストしてるし……

時すでに遅し……か。

 

「「タ、タイラント様……」」

 

 あ、あれ?双子が何か泣いてるぞ……?

何故だ、何故なんだ!?

やはり筋肉モリモリマッチョマンの変態が喋ったからか?

くそぅ、無口キャラで通せば良かったのか……

 

『団長、キャラメイクし直したい……

イケメンに細マッチョに直したい……』

 

『いや、タイラントさん。

あれは感動して泣いているのでは?』

 

「私達、モモンガ様とタイラント様ってもっと怖いと思ってました」

 

「そうか?それが良いならそうするが……

どうする?タイラントさん?」

 

 タイラントは無口で頷く。

団長に全て任せると言う意味で。

見た目が最凶の二人が性格まで最恐になる。

想像さしただけで冷や汗が出でしまう。

アウラは大慌てで否定した。

ふっ、可愛いのぅアウラ。

団長がアウラの頭をポフポフ撫でてるぞ!

ぐぬぬぬ、羨ましい……

 

「おや、わたしが一番でありんすかぁ!?」

 

ん?転移門(ゲート)から誰か出てきたぞ。

あれは確か、シャルティアだったかな?

ペロロンチーノさんが作ったNPC だった筈だ。

凄い、凄いぞ!

良く見たら彼の萌えに対する拘りが凝縮されている!

なにか執念じみたものを感じるが……

ペロロさん、貴方はやはり最高の男だぜ!




タイラントの形態変化も基本ダムネ基準で。
色々バリエーションありますが……
その場の状況とか投薬アイテムで変わる設定でいきます。

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