深淵歩きとなりて   作:深淵騎士

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お気に入り件数が250件を超えました。この作品をご覧の方々、本当に感謝の言葉以外見つからない程感激しております。皆様が少しでも面白いと思える作品にしていこうと心より思います。


第三話

「はぁ」

 

 

軽いため息を吐きながら、灰色鎧の騎士、アルトリウスは剣を地面へと突き刺し立てる。足元には袈裟に、縦真っ二つに、首を一閃にされたオーガの死体が転がっていた。一体の死体にどっかりと腰を下ろす。硬いのか軟らかいの良くわからない、居心地の悪い感触だ。彼がこのオーガ達と戦った感想は一つ

 

弱い

 

あまりにも弱すぎる、この程度だとは思っていなかったのだ。だが今のは所謂

 

 

「フル厨装備にして戦う、序盤の亡者兵士と言った所か」

 

 

ボソッと呟き、自分の手を見る。オーガを切り裂いたときの感覚、周囲に漂う生臭い血の香り。どれもユグドラシルで体験することの出来ないことであった。もしかしたらゲームの世界が現実になったのではないか?彼は推測する。あり得ない、それはあまりにも非現実的すぎる。だが、目の前の現実を見てしまうとその説は濃厚になってしまう。

 

ともあれと立ち上がり、剣を背中に納める。こう大剣を背中に携えると、今から冒険でも始まるのでないかと、気分は幾分高揚する。

 

 

「まずは……」

 

 

もしこの場にモモンガが居れば何をするか、情報収集だ。彼ならまずは情報を集め、これからの行動方針を決めるべきと判断するだろう。

 

 

「さて、どちらに向かうか……」

 

 

左右を見渡すと彼からまたため息が漏れる。

 

 

「とりあえず宛もなく歩くか、邪魔者は多そうだが」

 

 

先程と同種のオーガであろう。数も十体前後、視界に映る肉の壁はアルトリウスに不快感を覚えさせる。面倒だ、只それだけを口から放つと

 

 

 

 

 

「――消えろ」

 

 

 

 

 

森の鳥達が一斉に飛び立つ―――

 

森の生き物達が逃げ惑う―――

 

森の全てが震える―――

 

 

 

 

 

「ぐおおぉ……」

 

 

アルトリウスから放たれる異常までの殺気、オーガの群れは一匹残らず口から泡を吹き地面に身体を倒した。彼は心底驚く、ほんの少し、本当にほんの少し殺気を込めて言葉を放ったのだが、まさかオーガ達が気絶するとは微塵も思っていなかった。

 

 

「……」

 

 

言葉を失うアルトリウス。

 

 

「……行くか」

 

 

オーガに視線を向けず足を動かす。宛てもない旅、今まさに始まったのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が歩き始めてある程度時間が経った。太陽かれこれ二回、月も二回昇った。途方もなく歩き続けたのだが、彼の身体には異常が起こっている。いや、特別病的な事は起こっていない、寧ろ絶好調なのだ。それが本来であれば妙な話しになる。何故ならアルトリウスは一切休みも取らず、ずっと足を止めないからだ。

 

疲労感もない、空腹感もない、睡魔すら襲ってこない。間違いなく自分の身体は異常だと。病み上がりの身体だ、疲れたら休みもうとしたが幾ら歩いても疲れないためこうしているのだ。

 

 

「俺の身体……どうなってんだ……」

 

 

ただ疲れないのはある意味良いことだと、無理矢理良い方向へ考える。そうでもなければやってられないだろう。幸いオーガのようなモンスターの類いは襲いかかってこない、まるでアルトリウスに恐怖を抱いているように一定距離を置いて彼の様子を伺っているのだ。

 

すると遠目であるが、森の先に村と思わしきものが。ようやく人間に会えると解ると足取りが軽くなる。

 

 

「まずは情報収集といこうか」

 

 

 

 

 

 

 

「すまない」

 

「はい?ひっ!!」

 

 

第一村人発見!と意気込んで話しかけたのだが、予想外の反応が帰ってくる。ふとアルトリウスは自分の姿を考えてみた。

 

明らかに大の大人よりも頭1つ抜けた2mはある身長、全身を包む鎧。本来なら顔が見えるような兜なのだが、顔の位置は井戸の底の様に暗くなっている。更には背中に身の丈ほどを剣。これで警戒か恐ろしいという感情が出ないほうが変だろう。

 

 

「警戒しなくてもいい、私は旅のものだ。この辺りの周辺地理を知りたいのだが、村長の類は居るか?」

 

「は、はあ……少々お待ちを」

 

 

アルトリウスは第一村人(彼命名)が小走りで走っていくのを見届けると

 

 

(……装備変えといたほうが良かったか?流石にこれじゃ目立つだろうし)

 

 

マントを摘まんで離した後、腕を組み悩む。どうやらアイテムボックスは健在の模様で、前に取り出した深淵の大剣以外にアイテムは残っており、彼がユグドラシルを退く前の状態で保存されていた。中を色々確認して安心したが、在ろう事か糞団子まで残っていたのは別の話だ。すると先程の第一村人が戻ってくる。

 

 

「お待たせしました、村長の元まで案内します」

 

 

ああと小さく頷きアルトリウスは第一村人の後を付いていく。流れていく村の光景を見ていくと、まさにファンタジー世界の一般的な村と呼べるような家屋が並んでいる。それと刺さる村人からの視線が地味に痛いとアルトリウスは少し肩身狭い思いを味わうことに。第一村人がとある家の前に止まると

 

 

「ここが村長の家です」

 

「助かった、礼にこれを」

 

 

腰元から取り出すような仕草で、アイテムボックスを開き何かを取り出す。第一村人はアルトリウスに金の硬貨を手渡された。

 

 

「こ、これ、金!?」

 

 

驚く第一村人を放置し扉を開ける。普通の人間サイズの扉の為、少しかがんで扉をくぐるとそこには白い髭を生やした老人が居た。

 

 

「旅のお方、ようこそ御出でくださいました。わしがこの村で村長をしておりますペトルスと申します」

 

「は?」

 

「な、何か御座いましたでしょうか?」

 

「い、いや……(何であれと同じ名前してるんだよ、思わず反応しただろうが)」

 

 

アルトリウスのやや怒気混じりの声に村長は、何か失礼に当たることをしただろうと思い焦る。

 

 

「すまない、何でもないんだ。私の名はアルトリウス、旅の者だ。今回尋ねたのは、この周囲の地域等が知りたくて来た。何分この地に踏み入れたばかりでな、右も左も解らん状況なのだ」

 

「成るほど、解りました。では……」

 

 

そこから村長から様々な情報を得た。周辺国家、地理状況。どの国や地域はどれも彼が聞いたことのないものばかりであった。それと一つ、城塞都市エ・ランテルという場所があり、そこには冒険者が集まる組合が存在しこの村から多少は近い都市とのことだ。

 

 

(更に情報を集めるならば、そのエ・ランテルに向かうべきだろう)

 

 

一つでも多い情報は欲しい、彼の頭の中ではそれで一杯だ。村長は何やらごもりつつ

 

 

「ア、アルトリウス様は何処かの騎士様であったのでしょうか?」

 

「何故そう思う?」

 

 

一瞬だけ村長はアルトリウスの背後に置いている、深淵の大剣に視線を移す。

 

 

「その立派な剣と鎧、そしてその立ち振る舞い。何処かの国に居た高名な騎士様と思いまして」

 

「……そうだな、とある場所の王へ仕えていた騎士……間違ってはいない」

 

「おお!やはりそうでしたか!」

 

「ふむ……では村長、私はこれで失礼するとしよう。貴重な情報、感謝する。それと村の者達を脅えさせて申し訳ない」

 

 

深々と頭を下げるアルトリウスに村長は両手を振り

 

 

「いえいえ、お気になさらず!」

 

「それとこれは気持ちばかりの礼だ、先程の村人の一人に渡したものと同じものであるが」

 

 

机の上に第一村人に渡した物と同じ硬貨を二十枚ほど置く。

 

 

「金の……硬貨?」

 

「どれほどの価値があるかはわからんが、偽物ではないはずだ。鑑定して売れば少しは足しになるだろう」

 

「感謝いたします、アルトリウス様。それでどちらに向かわれるので?」

 

「エ・ランテルに向かおうと思う」

 

「でしたらここから東に向かったところに、カルネ村という場所があります。途中で寄るのもよろしいでしょう」

 

「感謝する、それでは」

 

「お気をつけて、貴方様の旅にご加護を……」

 

 

深淵の大剣を再びある場所へと携え、別れの言葉と共に村長の家を出るアルトリウス。だが扉を閉めたとき、兜の天辺に付けている房が挟まって非常に滑稽な姿を見せてしまったのは、彼にとって大きな(内面的)ダメージになったいう。

 

 

 




この間のモモンガの行動は基本原作どおりです。ええ、勿論アルベドのおp……失言するところでした。
ちなみに今後もシフ、キアラン以外のダークソウルのキャラを出していきたいと思いますのでお楽しみに。

それと、アルトリウスって日本声優を採用すれば、どんな声していそうですかね?渡し的にはクールな声のイメージがございます。

今回のアルトウスはモモンガと同じく演技をしております。彼が演技すると若干壮大な態度へと……

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