僕と天狗の取材録   作:彩風 鶴

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注意
・この作品は東方projectの二次創作です
・不定期更新
・原作とは異なる自分設定
・妄想過多
・にわか故のキャラ崩壊や原作と違う部分
・そういえばもう何年も花見なんて行ってないな……。
以上が苦手な方でも折角ですしゆっくりしていって下さいね!






10章 5話~最後まで手を抜かないで~

「やっ!」

続けざまに霊夢さんが早苗さんに向けてもう一度お祓い棒を振り下ろす。

しかし早苗さんはニヤニヤと笑みを浮かべたままそのお祓い棒を素手で受け止める。

「ざ~んねんっ。さすがにそれじゃ――」

「何が残念なのよ?」

突如早苗さんの手に電撃のような何かが走ったかと思うとバチィッと激しい音を立てて強い衝撃が生まれる。

 

「痛っ……。人間ってのはそればっかりだね……。」

 

早苗さんは少し表情をゆがめると素早く身を翻した。

逃げられる!直感的にそう気づいたが上手く体が動かなかった。

「逃がしませんよ。」

しかし僕が動く必要はなかったらしく、微笑を浮かべる文さんが早苗さんを押さえつけていた。

 

 

 

「状況が全く理解できないんだけど……。」

アリスさんに続けて僕と魔理沙さんも首を縦に振る。

分かっていることは、僕に向けて振りかぶられたお祓い棒が実は早苗さんに向けられたもので、逃げようとした早苗さんが文さんによって取り押さえられたってこと。

その早苗さんはというと椅子に縛り付けられて身動きがとれない状況にある。

 

推測できることとしては、早苗さんの中に実はエルさんかチールさん。あるいは両方が存在しているということくらいだろうか?

「ま、お察しの通りこいつが一連の事件……異変の元凶よ。」

「ちょ、ちょっと待って下さいよ!!わ、訳が分かりません!早く縄をほどいて下さい!」

早苗さん……ではなくエルさん及びチールさんは両手を後ろに回し、足を椅子の両足に固定された状態であるにも関わらず器用に霊夢さんの元まで前進する。

「逃げようとしておいて今更それは厳しいでしょう。もうちょっとマシな言い訳はないんですか?」

冷たくあしらわれて尚、必死に主張を続けるがそれが聞き入れられることはなく、霊夢さんがくるっとこちらに体の向きを変えた。

「さっき文が私にメモを渡してたでしょう?それに書いてあった内容が早苗が怪しいってものだったのよ?」

「具体的に言いますと……少し前に我々への手紙を見つけたときですが……よくあのときのことを思い出して下さい。」

あのときその場にいたのは文さんと霊夢さんに、僕と魔理沙さんだから、答えを求められているのは僕と魔理沙さんだろう。なんとか記憶を探り出す。

「あのときのことっていわれてもな……。鈴奈庵で少し話した後、現場を見に行こうって話になって現場に向かったわけだろ?」

「その途中で通り雨に降られて若い女性としばらく駄弁ったあと、現場に行って手紙が見つかったんですよね?」

「そこです。」

文さんが急に僕に向かって人差し指を突きつける。どうやら僕が何か重要なことを口からこぼしたらしい。

「あの女性が何か関係しているんですか?」

「いえ、そちらではなくもう少し前の……。」

僕は自分の発言を思い出してなぞるようにして頭の中の文章を読み上げる。

「えっと……その途中で雨に降られてわか――」

「そうそこ。」

正解だというように笑顔を作られたけど正直何が正解なのか分からない。

「まぁ、確かにあのときは雨が降ってたけど……それがどう関係するんだ?」

「これが私達宛の手紙よ。」

質問には答えることなく霊夢さんはスッとあの手紙を取り出した。もう何回も見ているけど特に変化している様子はない。あのとき雨が降っていたことと何が関係しているのだろうか?

「あぁ……なるほど…………手紙が濡れてないってことか。」

答えをひねり出す前に横で魔理沙さんがボソッと呟いた。

「あぁ!!」

「その通りです。」

確かにあのあたりに傘に出来そうなものはなかったし雨が降る前に手紙が置かれていたならびしょびしょになっていないとおかしいはずだ。ところがどっこい、実際に僕達が見つけた手紙は特に濡れている様子はない。

雨宿りしたところから事件の現場は目視できる位置にあったし、雨が止んでから手紙が置かれたということはないはずだ。

つまり手紙を見つけたと言った早苗さんが怪しいということになるわけか……。

なんだ……考えてみれば単純な話だ。なぜ僕は気づけなかったのだろう?

「しかし、それだけで早苗が怪しいってのはさすがに乱暴すぎないか?」

「私も確かにそう思ったんですが……霊夢さんならきっと深く考えないだろう思ったので。」

文さんの言葉にムッとしたように霊夢さんが眉をひそめた。

「悪い?かま掛けて引っかかればそれで問題ないじゃない。」

「ずいぶん適当な思考回路ね……。」

 

「というわけだけど……どう?何か言いたいことは?」

「い、言いたいことも何も……さっきも言いましたけど何がなんだか意味が分かりませよ!!」

目の前の早苗さん(?)は先ほどと同じように必死にそう主張する。

僕の記憶が正しければ確かさっき「ざんねん」とか「人間はいつも」とか言っていた気がするし、本当に早苗さんにあの二人が乗り移っているとするなら白々しいことこの上ない。

しかし、今目の前にいる人物を見ていると、果たしてそれが今まで見てきた早苗さんと別人であるか疑わしく思う部分があるのも事実だ。

実は目の前の早苗さんはさっきまであの二人が乗っとっていたけれど、今はもう元の早苗さんに戻っている。そんな可能性もあるのではないだろうか?

「あんたねぇ…………往生際が悪いわよ。いい加減諦めなさいよ。」

「…………。」

早苗さんを正面から睨みつける霊夢さんに、早苗さんは黙り込んでしまった。

「はぁ……。」

と思ったらすぐに深くため息をつく。そして、早苗さんらしくないヘラヘラとした笑みを浮かべた。

「まさか、捕まっちゃうとは思ってなかったんだけどな……。」

「やっと認めましたか……。」

「ま、しらばっくれようがないみたいだからね。」

さっきまでの泣き出しそうな必死さから一転、余裕を表情に張り付けてクスクスと話し始める。

どうやら間違いなくこの人は早苗さんではないらしい。要するに目の前の人物は早苗さんの皮を被ったあの二人なんだろう。

文字通り人が変わった光景にアリスさんは呆然と目の前の様子を眺めている。そんなアリスさんに不意に偽早苗さんが声をかけた。

「やぁ、お姉さん。初めまして……ってのは少し違うかな?さっきそこの巫女さんが説明した通り、エルだよ。よろしくね。」

妙に明るく緊張感のない声が室内に響いた。場の雰囲気も相まって、耳障りに聞こえる。

「ん~……もともとはお姉さんをターゲットにするつもりだったんだけど……ちょっと難しそうだね。ま!私達の狙い通り、いい感じに妨害が入ってくれたわけだね!うんうん!このぐらいしないと面白くないもんね。」

早苗さんの見た目をした愉快犯は随分と愉しそうに語っている。もし、早苗さんの体じゃなかったとしたら思わず手が出ていたかもしれない……いや、それは自分を勇敢にかいかぶりすぎだろうか。

「それにしても、1回目から阻止されるっていうのは予想外だったな~……。さすがは私達が見込んだ奴らだね。次は負けないよ!」

「それは、残念ね……次はないわよ。」

偽早苗さんの話を遮るようにして霊夢さんが冷たく呟いた。

そして右手にいつの間にか持っていたお札を偽早苗さんに掲げると何かぶつぶつと呪文のようなものを唱え始めた。

すると面白いぐらいに偽早苗さんの表情が変わった。余裕を表すかのようにニヤニヤとしていたのが180度変わって顔を真っ青にして何とか逃げ出そうともがき始めた。

「―――っ!!」

よく分からない呪文が終わったのか言葉を勢いよく切ると空中に五芒星……のような何かを描き目をカッと見開いた。

それとともにお札から光が線になって飛び出すとピタッ……と糸が切れたように早苗さんが動かなくなってしまった。

 

「な、何をしたんですか……?」

目の前で起こることの展開が早すぎてそう霊夢さんに尋ねるのが限界だった。

「簡単な話よ。早苗の中に妖怪を閉じこめたってだけよ。」

一言の回答があったがそれだけでは何のこっちゃ分からない。僕が訳が分からないよといった様子で首を傾げていると、

「妖怪を封印したのよ。」

恐らくかなり噛み砕いた説明だったのだろう。何とか僕でも理解することが出来た。

「ってことはもう被害は広がらないってことですか…………?」

「いや、それはまだ言い切れないわね。」

「……というと?」

霊夢さんは手に持つお札を早苗さんの額に貼り付けると、椅子にだるそうに腰を下ろす。

「早苗の中に今二人ともいたかどうかが定かじゃないってことよ。」

「まぁ、そうですね。今のはエルさんみたいでしたから、チールさんの方がどこにいるか分からないですし。」

「そういうことね。ま、この手の輩は片方が無力化するだけで案外簡単に捕まえられるもんだから大丈夫だと思うけど。」

 

「そうそう!片方を崩せばもう片方なんて勝手に崩れ落ちるもんなんだから。」

 

「えぇ……その通り……………………!?」

偽早苗さんはバリバリと派手な音を響かせながらお札を自らの手ではずすと、小さな口から舌の先端だけをのぞかせた。

すぐさま同様を隠し切れてない霊夢さんが偽早苗さんに向けて掴みかかる。

しかし、その先にさっきまでいたはずの偽早苗さんの姿はなく、霊夢さんはピタッと制止する。

 

「は~い。皆スト~ップ!」

 

後ろで静かに呟かれる。

僕の首もとに突きつけられた手のひらサイズの小さなナイフは残忍に光っている。

バカでも分かる。《人質に取られた》のだと。

これまでここで起こったことの殆どを理解することが出来ていない僕だったが、今の状況はもっと理解に苦しむ。

しかしまぁ、こうなってやることと言えば一つだ。僕は静かに両手をあげた。

「動かないでね?絶対に動かないでね?あ、別に某飛べない鳥クラブみたいなノリじゃないからね?」

後ろでは早苗さんの皮を被った妖怪が一人で楽しそうに笑っている。

「それじゃ、私はお暇させてもらおうかな……いやぁ、あれ喰らったらひとたまりもなかったと思うよ。うん。さすが博霊の巫女さんだ。」

後ろ歩きで徐々に入り口のほうへと連れて行かれる。扉のところまでたどり着くと、今まで塞いでいたツタがまるで偽早苗さんに道を開けるように人が通れる隙間分だけ開いた。

「じゃあね。次も期待してるよー!」

最後にそう言い残すと、僕は入り口からまた部屋の中へと押し戻された。

「待―――」

逃がしてなるものかと振り向いたそこには最初からいなかったかのように偽早苗さんは見あたらず、先ほどと同じようにツタが入り口を塞いでいた。

 

 

 

 

   続く……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!どうも!脱脂綿とタイムカードのハーフです!

もうそれ人間じゃねぇよ。

さてさて!今回もここまで見ていただき誠にありがとうございます!!
10章という節目も終わりを迎えまだまだ先が見えない恐怖に怯えております(コワイワー)
しかしまぁ、こうも簡単に早苗さんが犠牲になってしまいました。
体を乗っ取られた早苗は果たして自我を取り戻すことが出来るのでしょうか!?
そして何人もの犠牲者を出したこの異変は博霊の巫女とその愉快な仲間によって解決する事が出来るのか!?
彼女らの冒険はこれからだ!!

彩風先生(笑)の次回作にご期待ください。

終わりません。
残念ですが終わりません。



さてさて、余談の時間です!
今回もゆっくりしていってね。

さぁ、前回もお話ししたとおり吹奏楽への入部が決定した彩風。そこで彩風を待ち受けていたのは驚きの連続だった!!
訳でもなく、そこそこ忙しい充実した日々を送っています。
しかしまぁ、吹奏楽部と言えばみなさんのご想像通り中学、高校では部員の9割は女子となります。(そして男子部員はだいたいそこが目的で入ったと思われる。)
当然女子部員が2桁も集まれば部員同士のいざこざが発生します。
彩風の入る吹奏楽部も例外ではなく、さっそく1年生女子部員の間でも2つの勢力が発生しています。
そんな中、数少ない男子部員はといえば口を出せば○されるので波風立てぬように1歩引いて眺めているしかない……のであれば楽なのですが無干渉であれば、それはそれで色々文句を言われます。
どちらの味方につくでもなく、かつ適度に関わっていくという不可能に近い技術を要求されるのです!←大袈裟

それにプラスして最近では顧問の先生と2・3年生との間で1年生のパートを巡ってなのか、トラブルが起きたらしくとんでもなく部活の雰囲気が悪いのです。
もう最初からハードルが高すぎてつらたん。

とまぁ、余談と言うよりはただの愚痴になってしまいました……。
これに関してはどんな部活でも似たようなことは起こっているでしょう。吹奏楽部だけが特別なんてことはないはず……です。
現在青春真っ盛りの皆さんも青春なんざ昔の話だという皆さんもバテて転んでしまわない程度に日々頑張ってくださいね!


それでは!次回も是非ゆっくりしていってくださいね!!


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