閑話です
時系列的にはかなり先のお話となります
飛ばしていただいても何の問題もなかったりします
文字数はいつもの倍以上あります
それは不思議な出会いでした。
別にドラマ的でもなかったし、最初に出会った時はどうすれば良いのか本当に困った。
けれども、あの出会いは私にとってすごく大きなものになったのは確かなことだと思うのです。例え、不本意でもそれは本当のことだと思ってしまうのです。
結局、あれから彼と一緒にクエストへ行くことはまだないけれど、それでもあの時一緒に戦った1回のクエストは私にとってすごく大きなものとなりました。
それくらいインパクトが大きかった。良い方にも悪い方にも……
そんなお話は、私がまだ周りも碌に見えていないような駆け出しのハンターの時でした。
―――――――――
「はい、リオレイアの狩猟ですね! 今度こそ頑張ってください! これをクリアできればハンターさんのHRも上がりますから!」
私がHR1から2へと上がるためのクエストの内容はリオレイアの討伐でした。
けれどもこれで、もう4回目の挑戦。何度戦ってもあの空中へ飛んでからの尻尾攻撃に当たってしまう。それで、毒になってピヨピヨしてブレスでやられる。ずっとずっとそんなことを繰り返していました。
別に一人でクリアしなくて良いのですが、勇気のない私は他の人を誘うこともできず、結局一人で。それにたぶん、私のようなハンターについて来てくれる人もいなかったと思うのです。
防具はケチャ一式、武器はパワーハンタボウⅠ。弱い装備ではないと思うけれど、強い装備ではない。でもこれが今の私に用意できる最高の装備だったんです。
よしっ、今日こそは頑張ろう。
なんて、いつものように自分へ気合を入れる。けれども、私の中にいる卑屈な私はどうせ今日もダメだろうな。なんて呟くのです。
そんな自分が嫌いでした。
変わらなきゃって思う。でもきっかけが何もないからやっぱり変わることができない。人間は難しいのです。
そして、少々重くなった気を引きずりながらクエストへ行こうとした時でした。
それが彼との初めての出会い。
私が変わることができたんじゃないかって言う一つのきっかけ。
「あの、そこのお嬢さんちょいとよろしいですか?」
防具のせいだとは思うけれど、篭ったような声をそんな言葉を後ろからかけられました。
いきなり声をかけられたものだから、少しビックリ。そして後ろを振り返り声をかけてきた人物を確認。其処には――
「あの……生理的に無理です」
丸々と太ったピンク色のクマの着ぐるみのような防具をつけ、黒い猫のハンマーを担いでいる男の人がいました。
「ひでぇ……え、えとですね。もしよろしければ俺もクエストへ連れて行ってくれないでしょうか?」
自分でも先ほどの言葉ちょっと酷いとは思いましたが、彼の装備を見たら誰だってそう思うはず。なに、その装備? 私をバカにしてんのか。
「……全力でお断りします」
そりゃあ私だって上手くはありません。それにこのクエストをクリアできない可能性の方が高い。けれども、この彼よりは私の方が頑張れる気がしました。
なんと言うか……彼から溢れ出る地雷臭がもうすごいのです。
基本的に狩りは一人よりも二人の方が絶対に良い。けれども、彼と一緒は不味い。
「あっ、いや、確かに装備……てか見た目はアレだけど、絶対に脚は引っ張らないし役に立つのでどうかお願いします!」
お願いされても困ります。
あと、自分の見た目が不味いとわかっているのなら変えれば良いのに……
「あれ? こんなところで何をしてるのー? 今日はいつものメンバーと一緒じゃないのー?」
ついに土下座までして私に頼み始めた彼。マジやめろ。
そんな私と彼にあの闘技大会の受付をしている女性が話しかけてきました。そしてどうやら彼女は彼のことを知っているらしいです。まぁ、こんな見た目なのだし彼は有名なのかもしれませんね。
「あとその気持ち悪い装備はどうしたのー?」
「い、色々あったんです……ああ、そうだ君からも彼女が俺を連れて行ってくれるよう頼んでくれませんか?」
あっ、この流れはダメだ。
これ絶対に押し切られる奴だ。
「やだよー、面倒だもん」
そんな心配はありましたが、どうやら彼女の性格的にそれはないようでした。
心から安堵。
「ほっほほ。それじゃあ、私からお願いしようかな」
そんな声の主はギルドマスターのおじいさん。一瞬安堵したのも束の間。直ぐにまた不安材料が現れやがりました。
クソが、ギルドぐるみで私へ嫌がらせか。
「確かにそこの彼の見た目は残念だけど、決して下手ではないはずだよ。それに今までソロで戦ってきたキミにとってパーティーで戦うのはきっと大きな経験になる。だから一度行ってみるのも良いんじゃないかな?」
私にそんな状況を断れるわけがありませんでした。
「……わかりました。よろしくお願いします」
本気を出し始めた世界になど、私が勝てるはずがないのです。
なんとも納得がいきませんでしたが、仕方無しに彼と二人で出発。
そう言えば、これが初めてのソロ以外でのクエストです。はぁ……そうだと言うのにその相手がコレって……
「君っていつもソロなの?」
フルフェイスの頭防具のせいでなんとも篭ったような声。
そのせいで、彼の年齢がわかり辛い。それに体型も。いったい何の防具なのでしょうか?
「……そうですが」
できるだけ不機嫌オーラを出しながら彼へ返事。全力で貴方が嫌いですアピール。
この調子じゃ今日のクエストもダメだろうなぁ……
「そかそか、まぁ、別にそれが悪いってわけじゃないんだけどさ。パーティーって言うのも結構良いものだよ」
それくらいはわかっています。
けれども、最初くらいはやっぱりソロで頑張りたいのです。それに今までもケチャワチャくらいならソロで倒してきた。今はちょっと躓いているだけ。
……きっとそうなのです。
その後も遺跡平原へ着くまで、彼は良く喋りかけてくれました。
……私がどんなに冷たく接しようが。
今まではどんなモンスターと戦ってきたのか、とか。レイアにはどうやって負けたのか、とか。それは主に私に対しての質問でした。彼の見た目が見た目だけに、真面目に聞いているのかわかりませんが、どうしてか巫山戯ているようには思えません。
もしかしたら、見た目の割に悪くはない人なのかもしれませんね。
でも、その見た目は無理です。
彼のHRはわかりません。私と同じかもしれないし、私より高いかもしれない。でも、もし私より高かったとしても尊敬できそうにない。人間、見た目は重要です。
「よしゃ、そんじゃ行くか!」
遺跡平原に着き、そんな大きな声を出した彼。
支給品ボックスからは何も取らなかったけれど、大丈夫なのでしょうか? あと勝手に仕切らないでほしい。
支給品ボックスからいくつかのアイテムを取り、慌てて彼の後を追う。いつもと違い、支給品ボックスのアイテムを全部は取りませんでした。一応、彼のために残したのです。
リオレイアの初期位置はエリア3。もう4回目だし流石に覚えます。
そして彼がそれを知っていたのかはわかりませんが、彼をエリア3に向かって走っていました。
そんな彼に続いてエリア3へ到着。
リオレイアなんかの大型種は発見時に大きな咆哮をします。だからその前に弓へビンを装填……
彼がレイアさんへハンマー叩き込んだと思ったら、吠えました。大きな咆哮に耳を塞ぐ。もちろんビンを装填できていません。
むぅ、序盤から少しだけ躓いた。
耳を塞ぎながら彼の様子を確認すると、私のように怯むことなく、レイアへ攻撃をしていました。あの防具には耳栓のスキルでもついていたのでしょうか?
そして、漸く咆哮の怯みが解けたと思ったら、またレイアの咆哮。
あぅ……何もできない。
でも、あれ? もうレイアが怒ったんですか? 流石にそれは早すぎる気が……
そんな疑問を感じていると、今度は視界が真っ白に。んもう、さっきからなんなんですか……
視界が元に戻ると、其処には地面へ倒れているレイアの姿。何が起こったのかは全くわかりませんが、どうやら先ほどの閃光で怯んだようです。
私も何時までも怯んでいるわけにはいかなかったので、慌てて強撃ビンを弓へ装填して、倒れているレイアの頭へ弓を思いっきり引いてから矢を放つことに。
そして起き上がったと思ったレイアは彼の攻撃を受け、また横にコテリ。今日のレイアはやたらと転んでくれますね。いつもこうなら良いのですが……
其処までは良かったのです。
けれども、起き上がったレイアはついに猛攻を始めました。
主に、私へ対して。
レイアの正面にいる私は3連突進なんて避けられませんし、ブレスなんて顔面で受け止める以外の方法を知りません。飛んだかと思えば、恐ろしい勢いで私の方へ近づいてきて、何時ものようにグルリと回りながら尻尾で攻撃。もちろん直撃です。
毒状態になり、ピヨピヨして、更にレイアに捕まり捕食攻撃まで喰らったのにも関わらず、ベースキャンプへ運ばれなかったのは、彼のおかげだったりします。
私なんかじゃ使うのも躊躇ってしまう“生命の粉塵”を彼は惜しみもなく私のために使い、更に捕食攻撃中のレイアへこやし玉まで投げてくれました。
……ありがとうございます。
やっぱり私が勘違いしていたみたいです。
人は見かけによらないとは言いますが、感謝です。
こやし玉を受け怯んだレイアは直ぐに何処かへ飛び立って行きました。ああ、しまったペイントしてない。レイアの行動範囲は広く、一度見失ってしまうとかなり面倒なのに……
そんなちょっと焦った状況だと言うのに、彼はのんきに飛んで行ったレイアへ手を振っていました。何やってんだ。
「……え、えと生命の粉塵とこやし玉ありがとうございました」
そんな彼にひとまずお礼。
私なんかのために、貴重なアイテムを使っても良かったのでしょうか……
「うん? ああ、別に気にしなくても良いよ」
やはり篭ったような声。
決して恰好良くはありませんでしたが、彼の見た目も悪くはないと思うようになってしまったのも仕方無いと思うのです。
「ほら何時までもレイアへ手なんか振ってないで、行きましょう」
「え? いや、これはレイアへ手を振っていたわけじゃなくて、観測船に……まぁ、良いけどさ。ああ、そうだ」
観測船? 観測船と言うとあの空に浮いている奴のことだったはず。
でも、何故? 知り合いでもいるのでしょうか?
「えと、どうしました?」
「あ~……余計なお世話かもしれないんだけどさ。アドバイス……的な?」
アドバイス……ですか。
確かに、今の私はちょっと情けない。それに彼には助けてもらった。
「聞きます」
「ん、ありがと。えと……レイアの弱点は頭だから、頭へ攻撃するのは良いんだ。でもさ、だからと言って其処まで頭に拘る必要はないし、そもそも君は弓なんだから横からでも頭は狙える。そりゃあ正面から攻撃した方が良いけど、それで攻撃を避けらないんじゃ仕方無い。だから一定の距離を取って自分が安全だと思ったときに攻撃すれば良いと思うよ。それにレイアは頭じゃなくて脚だって柔らかいから、頭へ攻撃できない時は脚でも良いんじゃないかな」
……予想以上に真面目なアドバイスで驚きました。
弓なんてやめて違う武器を担げ、とか。もうハンターなんてやめてしまえくらい言われるかと思った。
「……はい、やってみます」
「うん、頑張れ。ああ、あとレイアはエリア8だよ」
……あれ? もしかしてこの人って私よりそうとう上手い?
どうして彼がレイアのいるエリアを知っていたのかはわかりませんが、エリア8へ行くと確かにレイアはいました。ただ、段差が多いせいで、先ほどのエリアより戦い難い。
そんなことを言っていても仕方ないので、早速彼に言われたことを実践。正面に立たず、横から横から。
すると、確かにレイアの突進やブレスには当たらないようになりました。まぁ、代わりに回転攻撃による尻尾が良く当たるようになったわけですが……
けれども戦い易くなったのは確か、今まで狭かった視野が一気に広くなったような感覚。そのおかげか、彼の戦う姿もよく見えるように。
残念ながら私はハンマーを使ったことはありませんし、ハンマー使いの方を見るのも彼が初めてです。ですので彼がハンマー使いとしてどうなのか私には良くわかりませんでした。
けれども、彼が私よりも上手いことは確かみたいです。
まず、彼は攻撃を喰らいません。私よりも危ない位置にいるはずなのに、最後まで彼が攻撃をくらい吹っ飛ぶところは見ませんでした。それでいて、手数も多い。
どうやらあのハンマーは麻痺武器だったらしく、彼一人で麻痺を取り、そして頭を攻撃してレイアからダウンを取る。
詰まるところ……私いりませんね。
そのことがわかった時はかなりショックでしたが、それでも戦わないわけにもいかず、一生懸命私なりに頑張ったつもりです。
そして、戦い始めて10分も経たないくらいでレイアは倒れました。
私がアレだけやったのにクリアできなかったモンスターが今、確かに目の前に倒れています。何だか複雑な気分。
どう考えてもこのクエストをクリアできたのは彼のおかげ。あんな巫山戯た装備をしている彼のおかげ……
なんでしょうね、この気分は……もっと上手くならなきゃです。せめて、この人と同じくらいには。
でも、ちょっと遠いなぁ……
「っと、終わりか。ん~……お疲れ様」
「あっ、はい。お疲れ様です」
そんななんとも複雑な気分のまま、倒れたレイアから素材を剥ぎ取ってから遺跡平原を出ました。
気分は何とも微妙な感じ。ただ、前よりはいくらか気持ちが軽くなった気がします。
クエストからの帰り道。彼からは色々なことを教わりました。
どうやら彼も弓を使っていたことがあるようで、私が知らなかったことを沢山教えてもらいました。彼の見た目はちょっとアレですが、それでも多少は彼を見ることができるようになった気がします。
あと、観測船に向かって手を振ると大型種のいるエリアを教えてくれるそうです。それは知りませんでした……
「あの……」
「うん、どしたの?」
もう直ぐバルバレに着く辺り。ガタゴトと揺れる馬車の上で疑問を彼にぶつける。
「貴方ってHRはいくつなんですか? あと、どうして私のクエストへついて来てくれたのですか?」
彼が私よりは上手いのは確か。
もしかしたら彼は上位ハンターなのかもしれない。そんな人がどうして私何かについてきたくれたのかがわからなかった。
私は知り合いが少ないけれど、一人だけ上位ハンターの知り合いがいます。彼女はどう思っているのかわかりませんが、それは私にとって大切な友人で私の目標の人。HR7と言う、あの古龍へ挑む権利を持ち、実際に何体かの古龍を倒している憧れの女性です。
まぁ、彼女は私と違い弓使いではなく、操虫棍使いですが。
いつか、彼女と同じパーティーへ入るのが私の密かな目標です。確か彼女のパーティーはまだ3人だけのはずですし。
「HRは……まぁ、君よりは高いかな。それで、君のクエストへついて行ったのはですね……」
そう言った彼の声はただでさえ篭り聞こえ辛かったのに、余計聞き取り難くなった。
なんでしょうか。もしかして何か大きな理由が……
「……君を手伝ってあげてくれと頼まれていたんだよ。知り合いから」
なんと、そうだったのですか。
確かに、私は何時までもHRが1のまま。誰が彼に頼んでくれたのかはわかりませんが有り難いです。しかし、どうしてそんな装備を……
「その装備は?」
「ああ。これは罰ゲームで」
…………うん?
罰ゲーム?
「あっ、だからと言って今日は手を抜いていたわけじゃないよ! 装備はアレだけど俺にできる最大限の力は出しました!」
「じゃあ、何時もその装備ってわけじゃないんですね……」
わたわたと慌て始める彼。
私は手伝ってもらった側なのだし、文句を言える立場ではない。それに彼が真面目に戦ってくれていたのも知っている。
ただ、なんでしょう……それならちゃんとした貴方と出会いたかったです。
そんな何とも微妙な空気でバルバレへ着きましたが、私のせいではない気がします。うん、きっと彼がいけない。
「おっ、帰ってきた。やほー弓ちゃん。クエストはどうだったの?」
バルバレへ着くと其処には件の操虫棍使いの彼女がいました。
もしかして、彼に依頼したのは貴女ですか?
「はい、無事クリアできました」
「おおー。そりゃあ良かったよ。ふふっ、これで君もHR2だね。おめでとう!」
はい、ありがとうございます。
それもクエストへ付いてきてくれた彼のおかげです。見た目はアレですが。
「……に、似合ってると思う」
「やめて、無理に気を遣わなくても大丈夫だから……」
そんな彼は操虫棍使いの彼女と一緒にいた笛の彼女と何かを話していました。
少しばかり頭が混乱。
「え、えと、もしかして彼は……」
「うん。私と同じパーティーの人だよ。何時もはあの格好じゃないけど」
ああ、なるほど。漸く話が繋がってきました。
そりゃあ上手いはずです。彼女たちはバルバレの中ではかなり上にいるパーティー。きっと下位クエストくらいなら余裕なんでしょう。
でも――
「じゃあ、どうしてあの装備を?」
「うん? ああ、だってあの装備カワイイじゃん。なんでもお願いを聞くって言うからお願いしたの。可愛いよね。リノプロ装備!」
……カワイイ?
いや、可愛くはないと思う。あと、アレってリノプロ装備だったんだ……初めて見ました。
「……か、かわいいよ?」
「ホントやめてください。そろそろ泣きます」
相変わらず笛使いの女性は彼の心を抉っていた。それもかなり的確に。私も見習わないと。
「それじゃ、打ち上げやろうよ! せっかく弓ちゃんのHRも上がったんだし」
お酒を飲むのが好きな彼女。私もお酒は嫌いじゃないので嬉しいです。
彼も参加してくれるでしょうか? こんな機会なかなかないだろうし、もう少し話をしたい。
「その前に着替えて……ああいえ、なんでもないです……そうですね、今日は1日この格好でいます……」
やはり彼もあの装備は好きではないらしい。
そんな彼からの提案は彼女の一睨みによって打ち消されました。彼ってこのパーティーの中の立場弱いんだ……
その後は、彼女のパーティーの方々と一緒にお酒を飲みました。しかも全部彼のおごりだそうです。
そのことが少し申し訳なかったけれど、今日くらいは良いのかなって思います。
例のごとく燥ぎ過ぎた彼女は酔い潰れ、そんな彼女は彼に背負われていました。
「あ、あの……」
帰り際、彼に挨拶。
「どしたの?」
「今日はありがとうございました」
クエストのことやお酒のこと。言わなきゃいけないお礼は沢山ある。
「ふふっ、別にこれくらいなら良いよ。またいつか一緒にお酒でも飲もう」
たぶん彼は笑っている。けれどもやはり彼の表情は見えません。
こんな時でもその装備は邪魔だった。
「…………いつか」
「うん?」
アルコールが入っているせいでしょうか。
その時の私は普段なら絶対にならないようなテンションでした。ただ、その言葉を言っておいて良かったと少しだけ遠い未来で思うのです。
「いつか私も貴方のパーティーへ加えてくれますか?」
彼方はあの古龍ですら倒してしまうようなハンター。
一方此方は、漸くHRが2となった新米。それも彼の力を借りなければきっとHRは1のまま。
そんな私が言って良いようなセリフではなかったと思います。
けれども彼は――
「うん。じゃあ君が来るのを待ってるよ。大丈夫、ちゃんと枠は空けておくからさ」
そう言ってくれました。
やっぱり表情は見えない。でも、きっと笑ってくれていたと思います。
そして、その後は先ほどのセリフが急に恥ずかしくなり、私は逃げるように彼と別れました。
ただ、その足取りは軽かったんじゃないかって思います。
――――――――
それが私と彼が出会ったお話。
アレから結構な月日が経ちましたが、私は彼と一緒にクエストへは行っていません。更に彼の姿そのものも……
嫌な噂はよく聞きます。
彼はもうこの世にはいないとか、そう言うことを……
ただ、なんとなくまた会えるんじゃないかって気はします。
「弓ちゃ~ん! クエスト行くよー」
彼女の声が聞こえました。
彼女は彼がどうしたのか知っているただ一人の人物。けれども、未だに彼がどうなったのか教えてはくれません。
それに彼の話をすると彼女は一瞬だけ暗い顔をします。直ぐに明るい表情へ戻ってはくれますが……
彼がどうなったかはわからない。
けれども、また会える。そんな漠然とした予感はあるのです。
そしてその予感はきっと――間違ってない。
「はいっ、今行きます!」
だからまた彼と会うことのできるその日まで、私は一生懸命狩りをして上手くなるのです。
今度は私が彼を助けてあげられるように。
さて、それじゃあ、ひと狩り行きましょうか。
女性のリノプロ装備は好きです
男性は終わってますが
と、言うことで第閑話でした
時系列的には遠い遠い先のお話です
現段階の本編とは全く関係がありません
そしてこの話が最終話の伏線に……なるかはわかりません
では、本編でお会いしましょう
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