振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第27話~癒しにプーギー~

 

 

「ん~、やっぱりバルバレは暖かくていいね!」

 

 馬車から降り、相棒が最初に落としたのはそんな言葉だった。

 アイルーに礼を言ってから、笛の彼女に続いて俺も降りる。いつもありがとう。助かってます。

 

「……寒いのは苦手」

 

 そんな笛の彼女の言葉。

 まぁ、ジンオウガ一式とか見るからに寒そうだもんな。可愛いとは思うけれど、其処は大変そうだ。

 

 寒さ無効が付くと言えば……ウルクシリーズだったかな。ユニクロ装備も確かついたと思う。そして両装備とも何故か回避距離がつく。回避距離はヘビィやスラアクなんかを使うときは便利だけど、あのローリング距離に慣れていないせいか、どうにも感覚がずれる。

 難しいところです。

 

「これからの予定って決まってるの?」

「うん? ああ、ん~……どうすっかなぁ」

 

 普通に進めようと考えるのなら、ガララアジャラかザボアザギルだろう。

 ガララアジャラなら原生林。ザボアザギルならまた氷海だ。ただ、氷海には今しがた行ったばかり。そして俺だってやっぱり寒いのは苦手なんです。暑くも寒くもなく此処から距離も近い遺跡平原が大好き。

 

「ガララアジャラでも良いか?」

「私はいいよー」

「……私も大丈夫」

 

 了解。そんじゃ、次はガララアジャラにしよう。

 ガララアジャラ自体は決して強いモンスターではない。

 

 ただガララアジャラはずる賢いって言う設定のせいか、何としてでもハンターを囲み地中からの突き上げ攻撃をしてこようとするし、鳴甲の破裂に当たると確定でピヨらされるし、ピヨらされたら絶対に囲まれるしとちょっと鬱陶しいモンスター。

 更に頭が高いせいで、ハンマーじゃ頭へ攻撃が届かないことが多い。確定で入れられるのなど、2連噛み付きくらいじゃないだろうか。

 

 そんな鬱陶しいモンスターだ。大きさだって、超巨大モンスターを除けば一番大きいだろう。確か50mとかだった気がする。だからアイツって、あのアカムより大きいんだよね……

 けれども、何よりガララアジャラは体力が少ない。

 そして有り難いことに怯み値もやたらと低く、割とゴリ押しがきくモンスターだと思う。何だか良くわからないけれど、叩いていたら倒しているってことが多いのだ。笛ならアイツの頭にも届くし、スタン耐性も高くない。

 

 とは言うものの、相棒はまだ戦ったことがないだろうし苦労するんだろうなぁ。ガララアジャラに囲まれ、何が起きているのかわからず、わちゃわちゃしているところをブチ抜かれる姿が用意に想像できる。

 いや、まぁ、俺も初見なんだけどさ。

 けれども、今まで戦ってきたモンスターは全てゲームと同じ動きだった。だから俺は別。

 

「そんじゃ、次はガララで。えと、原生林もまた丸々1日かかるんだっけ?」

「うん。それくらいかかる。遠い」

 

 むぅ、そりゃあまた面倒な。

 ガララ装備一式を集めるとかなったらどれくらいかかるのやら……

 ま、しゃーないか。

 

「出発は明日の朝にしよう。それまでは自由行動で」

「了解ー」

「わかった」

 

 時刻はまだ朝の早い時間。氷海から帰ってくる時はほとんど寝ていたせいで、もう眠くもない。

 はてさて、どうすっかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 少しばかり考えてみた。

 止まっているのがどうにも苦手なこの体。せっかくの休みのはずなのに、心がそわそわとしてしまい、どうにも休めない。何かをやらなければいけない焦燥感に駆られる。

 けれども、何をして良いのかがわからなかった。

 

 だから家に帰り、少しばかり考えた。

 答えなぞ出るはずはないと言うのに。

 

「あ~……クエスト行くか」

 

 それが正解かはわからない。

 けれども、間違ってはいないんじゃないかって思うんだ。

 

 何をすれば良いのかなんてわからないけれど、とりあえず動くことにします。そっちの方が自分に合っていると思うから。

 

 以前一人でクエストへ行こうとして、相棒から滅茶苦茶怒られた。そしてまた同じことをしようだなんて流石に思わない。ちゃんと声をかけねば。

 

 特に行くクエストが決まったわけでもないのに、家を出る。

 そして家を出て直ぐ、いつも俺の暇つぶしに付き合ってくれているプーギーが目に付いた。更に其処には何故か笛の彼女の姿。その彼女はゴロリと横になっているプーギーの前に座っていた。

 

 何をやっているんだろうか。

 

「……お腹柔らかいね。ぷにぷに。へへっ、ぷにぷに」

 

 ……何を、やっているんだろうか。

 微妙に半笑いっぽい顔がちょっと怖い。こんな時、何て声をかければ良いのかわからない。

 

 たぶん、見なかったことにするのが一番なんだろうけれど、声をかけずにクエストへ行くわけにいかず、声をかけることに。

 

「あ~……あの? ちょいと良いですか?」

 

 近づいた俺に気づくこともなく、一心不乱にプーギーの腹をつつき続ける彼女。その気持ちはわからないでもない。

 俺も1日中プーギーで遊んでいたことがあったけれど、こんな感じだったのだろうか。

 

 そんな彼女に声をかけると、座っていた彼女は上を見上げるようにゆっくりと此方を向いた。

 

 

「…………違う」

 

 

 何がだよ。

 

「ど、どうして貴方が此処に?」

「いや、だって、直ぐ其処が俺の家だし……」

 

 むしろ、どうして君が此処にいるのか聞きたい。

 やはりアレだろうか? 彼女も日々の疲れをプーギーの腹をつつくことで癒そうとでもしていたのだろうか?

 それならプーギーの腹をつつく会でも作る? 今なら名誉会長の座を君にあげられるよ。

 

「そんなこと聞いてない」

 

 いや、だって言ってないし……

 因みにだけど、相棒も近くに居るよ。家、隣だし。

 

 なんだろう。もしかして俺が悪いのだろうか。別段悪いことをした覚えはないけれど、妙な罪悪感がる。

 

「え、えと、ですね。これから遺跡平原のクエストにでも行こうと思っていたんだけど、君も行く?」

「…………今日は遠慮します」

 

 滅茶苦茶落ち込んでいた。

 あの姿を見られたのがよほどショックだったのだろう。

 

 ああ、うん。今日はゆっくり休んでください。

 肩を落とし、トボトボと去って行く彼女の背中を見送りながらそんな言葉を呟いた。

 俺の家の周りは比較的人通りも多い。だから彼女の行動は色々な人に見られていたんだと思うけれど……まぁ、それは言わないであげた方が良さそうだ。人生、知らない方が良いことだってあるはずなのだし。

 

 寝ているプーギーの頭を一度撫でてあげてから、相棒の家へ。

 

 遺跡平原なら今から出発しても暗くなる前に帰ってくることができる。しかし、何のクエストへ行こうか。特に欲しい素材があるわけでもないし……

 そんなことを考えながら、相棒の家のドアをノック。

 

「あっ、はい。今出ます!」

 

 いつも通りの騒がしい声。元気だね。

 

「およ、どうしたの? もしかして朝食のお誘い?」

「いや、そうじゃなくてさ。暇だから遺跡平原へ行こうと思ったんだよ。だから一緒に行くか聞きに来た」

 

 そう言えばまだ朝食も食べていなかったね。

 まぁ、クエスト前に食べるしちょうど良いか。

 

「ん~……別にいいけど、何のクエストへ行くの?」

「なんも決めてない。採取ツアーでも行こうかなって考えてる」

 

 俺がそう言うと、相棒は首を傾げた。

 まぁ、そりゃあそうか。俺だって暇だから行こうと思っただけなんだ。其処に深い理由なんて何もない。

 

「う~ん。よくわからないけど、わかった。ちょっと待ってね。直ぐ準備するから。ああ、笛ちゃんも誘わないとだ」

「彼女は行かないってさ。あ~……どうも疲れたらしい」

「あらぁ……そうなんだ。うん、了解」

 

 深くは聞かないでください。俺も何て答えれば良いのかわかんないし。

 そしてどうやら一緒に来てくれるらしい。別に一人でも良かったけれど、どうせなら二人の方が良いかもしれない。

 

 相変わらずバタバタと騒がしく準備をする相棒を少し待ってから、一緒に集会所へ向かう。

 まだ時間的には朝と言うこともあってか、集会所は其処まで騒がしくはなかった。

 

 遺跡平原の採取ツアーを受注してから料理を注文。

 

「あれ? 今日はいつもと違う料理なんだ」

 

 いつも通り肉・魚の煮込み料理でも良かったけれど、釣りもしようかと思い魚・乳製品の揚げ料理にした。

 

「たまにはね」

 

 一方相棒は肉・肉の炒め料理。随分と男らしい料理ですね……固定で発動するスキルはないけど、日替わりスキルが2つ発動するはず。何が発動したんだろうか。

 

 

 

 

 ピッケルと回復薬・砥石くらいで、後は必要な道具なんてほとんどないから、料理を食べた後は直ぐに出発。

 

「ふふっ、つい最近までそうだったのに、二人でクエストへ行くのって何だか久しぶりな気がするね」

 

 何処か楽しそうに笑う相棒。

 そう言えば、何だか久しぶりに感じる。笛の彼女が入ってくれてから3人となったパーティー。そんな彼女が俺たちのパーティーへ入ってくれたことは本当に有難い。

 こちとら、まだまだ駆け出しのハンターなんです。けれども、まぁ……初めてクエストへ行った日のことが懐かしいと思えるくらいには成長したんじゃないかな。

 

「それで、今回は何をするの?」

「あ~……ホントに何も決めてないんだ。釣りとか採掘とかかなぁ」

 

 乱入で現れたモンスターくらいは倒そうと思っている。乱入してくるのも、ケチャかジャギィかアルセルタスと強い相手ではないし。

 あとは、時間いっぱいのんびりと採取。

 

「ん~……何だか珍しいね。君が何も決めていないなんて。いつもはコレをやろうって決めてるじゃん」

 

 ガタゴトと揺れ始めた馬車の上。

 最近はどんな時間よりもこの馬車の上にいる時間の方が長い気がする。

 

「そう言う日もあるさ。まぁ、今日くらいはのんびりと採取ツアーをすれば良いんじゃないか?」

「そだね。たまにはそう言う日も良いかも」

 

 そう言って相棒はまた笑った。

 ホント、良く笑う女の子だ。

 フルフルに対するアレはどうかと思ったけれど、どうかそのままの君でいてくれると俺は嬉しいです。

 

 そんじゃ、のんびり行かせてもらいますか。

 

 

 






クエストへ行かそうとしましたが、ネタがなかったです


と、言うことで第27話でした
何も進みませんでした
平常運転です

次話は、きっとガララと戦ってくれているはず
では、次話でお会いしましょう

感想・質問なんでもお待ちしております


~お知らせ~

活動報告で書いた狩りのお誘いですが、私の予想を遥かに上回る方から返事をいただけました
びびりました
一応、返事をくれた方には全員連絡を取ったつもりではありますが、もしかしたら連絡を取れていない方がいるかもしれません
その場合面倒だとは思いますが、もう一度声をかけていただけると嬉しいです
また、声をかけるときは活動報告へ書いていただけると嬉しいです
感想欄に書くのはあまりよろしくないそうなので……

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