ストライク・ザ・ブラッド ー暁の世代ー   作:愚者の憂鬱

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うーん、他の人の作品を見てても思うが、みんなが持ってて私が持ってないものはなんだろうか。何もかもか?

ラクガキが趣味だったりするので、オリ皇女たちはいずれ絵書いたりしようと思います。


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そして描いてみたのがこちらである。
オリキャラかと思ったか?
残念。アラサーママ達である。


異次元の真祖編Ⅰー①

 翌日。

 昨晩、両親の情事を偶然目撃してしまった零菜は、如何ともしがたい胸焼けを覚えて、鳴り出した目覚ましを止めて二度寝を決行した。今は朝の7:00。夏の超大型連休に入って一日目、まだまだ眠れると考えたからだ。

 

「何をしてるんですか、零菜」

 

「うわぁ! ママ‼︎?」

 

 しかしそんな怠慢を、教育ママ 雪菜が許すはずもなく。忍者の如き気配遮断スキルでいつの間にか室内への侵入を許してしまっていた。

 

「だらしないですよ、若い子が」

 

 一応、自分の年齢に関しては割り切っているのか、と見た目は二十代前半のギリアラサー美女に内心で突っ込む。

 

「ママこそ、昨日あんなにシてたのに疲れてないの?」

 

「? なにがですか」

 

「…べつにぃ」

 

 シラを切っているのか、それとも本当にバレてないと思っているのか。これ以上の深入りは互いに得がないことを悟った零菜は、言葉を打ち切った。

 零菜の自室は、古城が生活する本館の二階にある。そもそも、零菜をはじめとする古城の家族は、外での任務が多い妃たちも例外に漏れず皆本館に部屋を持っていた。幾つか存在する離れは、使用人達の部屋、もしくは来客用か倉庫のような役割しか果たしていなかった。

 ベッドから頑なに出ようとしない零菜を無理やり引き摺り出し、手早く着替えるようにと言った雪菜は足早に部屋を後にした。

 

「これから親族会議があるから、あなたも来なさい。今日は紗矢華さんや夏音ちゃんも、皆集まります」

 

「かのねぇも⁉︎」

 

 去り際の言葉に、零菜は思わず声を大きくした。

 叶瀬夏音は、零菜が小さい頃から慕っている、雪菜の元同級生だ。現在は暁の帝国と友好な関係にある北欧のアルティギア王国に在住し、外交大使の役割を果たしていた。

 夏音をはじめとする、久しぶりに会える面々の顔を想像し、つい口元が緩む。

 零菜は早速着替えをはじめた。

 

「そっか、紗矢華さんが来るなら亞矢音(あやね)も来るよね。あの子マザコンだし」

 

 そのあまりの両親への依存心から、無理矢理零菜たち皇女が多く通う学び舎、彩海学園の寮にぶち込まれた同学年の妹のことを思い、げんなりとする。あの娘のファザコン&マザコンぶりはもはやゾッとする度合いのものだ。

 零菜は特に深く考えることはなくいつもの彩海学園中等部の制服に着替え、足早に自室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 暁紗矢華は上機嫌だった。

 早朝の、暁の帝国首都高速を走る黒塗りの車に乗る彼女は、昨夜かかってきた電話のことを思い出す。

 深夜の航空便でこの国に入り空港近くのホテルにチェックインしたのは、午後11時。夜も深まったそんな時間帯に屋敷の使用人を呼び出すのも悪い気がした紗矢華は、任務の長旅で疲れていたこともあって、そのままホテルで一泊することにしたのだ。

 ゆったりとした白い部屋着に着替え、いよいよ寝ようかと思ったその時、件の電話はかかってきた。

 

『久しぶり。元気してるか、紗矢華』

 

「こ、古城?」

 

 思わぬ便りに、つい口角が吊り上がった。

 電話口から聞こえてくる男性的な低音に、愛おしげに目を細める。

 

「な、何よ突然。私の声が聞きたくなったってワケ?」

 

 声のトーンが上がりそうになるのをなんとか自制し、あくまで澄ました態度をとる。周囲の人間から『ベタベタのツンデレ』と賞されていた紗矢華の恋愛スタンスは、暁家に嫁入りして、子供をもうけてもなんら変わることはなかった。

 

『ああ、そうだな。もう数週間声も聞いてなかったし、そろそろと思ってな。しかも聞いたら、お前ついさっきこの国に帰ってきたんだろ?』

 

「悪いわね。本当は直帰したかったんだけど、どうしても疲れてたし、こんな夜中じゃあんたにも悪いと思って」

 

『お前は、変なところで遠慮がちなとこがあるっ…よ…な』

 

「え? なに、どうしたのよ古城」

 

『いや、なんでもっ…なっ……い』

 

 突然、古城の声に呻き声のような淀みが出始めた。

 小声で、『ちょっと待て』などと聞こえてくることから、古城の近くに誰かいるのかと思い至ったところで、決定的な声が聞こえてきた。

 

『先輩…? 誰と電話してるんですか?』

 

 その声の主は、紗矢華が実の妹のように可愛がってきた幼馴染み、今は同じ男を夫に持つ同僚でもある女性だった。

 あの苦しげな声は喘ぎ声だったのか、と気付いた紗矢華は、羞恥と怒りで顔を真っ赤にした。

 

「この変態真祖…女との電話中に他の女とヨロシクやってるんじゃないわよ。しかもよりによって雪菜なんて…!」

 

『…え‼︎? ちょっ…先輩‼︎? もしかして今喋ってるの…』

 

『まぁ、そういうわけだな……』

 

 それ以降、雪菜の声が電話口から一切聞こえなくなった。

 逃げたか、それとも恥ずかしさのあまり気絶したわね、と予想して、紗矢華は本題に戻った。

 

「で? あんたのことだから、本当に私の声が聞きたくなっただけ、なんてことはないんでしょう? 何の用よ」

 

『そんなに拗ねないでくれよ紗矢華。そ、そうだな。まぁ今日はアレだし、明日皆集めるからその時に話すよ』

 

「何がアレよ、何が!この後も雪菜とアレをアレしたりするの‼︎?」

 

 震える手で通話を切ろうとした時、古城もそれを電話越しに察したのか『待て待て!』と遮ってきた。

 

『お前、そろそろ誕生日だろ。明日から数日空けてくれたら、絶対に祝うよ。なんでも言うこと聞いてやるから』

 

 …本当に、この男は。

 出会ってからの二十年で、随分な手腕を身につけたものだ、と内心で毒付いた。

 そんな手に引っかかるものかと吐き捨ててやりたい気持ちと、誕生日を覚えてくれていたことに飛び跳ねて喜びそうになっている気持ちがせめぎあっている。

 自分でももう何が何だか分からなくなり、ついしばらく黙りこくってしまっていたらしい。

 

『……紗矢華さん?』

 

 そっと様子を窺うような古城の声が聞こえた。

 

「うるさいバカ!最低!」

 

 うっ、と言葉に詰まった古城の反応を見て、ざまあみろと意地悪く笑う。

 

「言ったからには凄いことしてもらうわよ! おやすみなさいっ… あなた」

 

 相手の反応を確認しないうちに通話をこちらから切る。頰がほんのりと熱い。気持ちとは裏腹に、体の方はもう満足してしまっているらしい。

 安い女だ、と自分でも思った。

 だがこれで、これからの睡眠は仕事の疲れも全部吹き飛ばして、自分を完全なコンディションに整えてくれることを確信した。しばらく携帯を眺めてにやけてから、紗矢華はベッドに深く潜り込んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 紗矢華が玄関門に到着した時、それを真っ先に出迎えたのは紗矢華の一人娘 暁亞矢音だった。

 

「お母様ぁ〜〜〜〜〜‼︎」

 

「うわっちょっと亞矢音!」

 

 出会い頭に正面から腰にタックルをかましてきた愛娘をなんとか受け止めて、ゆっくりと地面に下ろしてやる。

 

「会いたかったっ。寂しかったぁぁ〜〜‼︎」

 

「もう、全然親離れできてないじゃない」

 

 呆れながらも優しく頭を撫でてやると、えんえんと涙を流していた亞矢音も、その感触をじっくり堪能するために目を閉じた。

 我が子とは、いつになっても可愛いものだ。少し記憶を遡れば、まだ産まれたばかりの無垢な赤子の頃を思い出す。

 

「ほら、泣かないの」

 

 茶色の長髪を毛先できっちりきりそろえた髪を撫でて、父親譲りの碧眼の端にためた雫を拭ってやると、亞矢音はやっと泣き止んだ。

 

「お帰りなさい、お母様」

 

「ただいま、亞矢音」

 

 そんな微笑ましい母娘のやり取りを、少し離れたところからじっと見つめている少女がいた。亞矢音と同じタイミングで寮を出て、同じタイミングで暁邸にやってきたその娘もまた、暁の帝国の皇女であった。

 

「お久しぶりです。紗矢華さん」

 

奏麻(そうま)ちゃん?新学期が始まって以来かしら!」

 

 父親と同じく、青みがかった白髪を短く切ったボーイッシュな少女が挨拶をした。

 彩海学園中等部の制服をキッチリと着た亞矢音に対して、下を同じく彩海学園指定のスカート、上にTシャツの上から半袖のパーカーを着ている 暁奏麻は、男性モデルにも負けじと劣らない爽やかな顔に、困ったような笑顔を浮かべた。

 

「すいません。この夏でなんとか親離れさせようと思っていたんですけど……」

 

「気にしなくていいわ。この子のソレはもう半端なことでは揺るがないだろうし。私も最近は若干諦めかけてて……」

 

「そうよ奏麻! 私のことは私が決めるのっ」

 

 奏麻はそうですか、とため息をついた。そんなに強い意志があるなら、確かにもう無理かもしれないと思ったからだ。

 亞矢音は、学校でも何かにつけて「古城君が…」「お母様の…」となんでもないような日常の話をクラスメイトにするのだ。最初のうちは、家内の自慢なんてしたらイジメに遭うのではと同じクラスの奏麻は心配していたが、我が国の国王が誇る圧倒的な支持率と、盲目的な女性ファンたちにとって亞矢音の話はむしろ歓迎すべきものだったこともあり、それも杞憂に終わった。

 紗矢華の腕に自分の腕を絡ませて、鼻歌交じりに屋敷に向かう亞矢音を、数歩後ろから追いかける。だが、どうしてもお節介焼きの本質がある奏麻には、心に僅かにつっかえている不安が拭えていなかった。

 

「…やっぱり、大丈夫かなぁ。空から見てる? 母さん、僕に力を貸して」

 

 未だ存命の実の母に縁起でもない願い事をして、奏麻と二人は古城の書斎に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、緊急ダヨ!暁家全員集合!
何気に浅葱が一番好き。

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