艦隊これくしょん〜ブラック提督(笑)の奮闘 作:SKYアイス
春雨を連れた提督は、先ず最初に彼女から情報を聞き出した。
この鎮守府の現在所有している戦力、何故他の感娘がいないのか、大佐は何処で何をしているのかを。
春雨は驚く程簡単に話してくれた。この鎮守府は戦力としては主観的に見ても二流以下、これまでの大規模作戦の何も貢献できず、常に他の鎮守府の手柄を横取りしてきたとの話。
春雨自体も建造で手に入らないと聞いている。運良く確認されている中でもまだ二人や三人程、こうして四人目の春雨を確認できたが、まさかこんな所で会えるとは思えなかった。
春雨曰く、他の鎮守府から珍しい感娘を見つけたから襲撃し、強奪したとのこと。その時の艦隊は大規模作戦の影響で疲弊しており、また一般にはドロップと呼ばれる方法で保護した彼女を強奪するのは難しくなかったとの事。
だが強奪した後に自分が駆逐艦という事を知り落胆。直ぐに彼女を観賞用として鎮守府に置いたのだ。
出撃も遠征も演習もしない、軟禁状態に陥っていた…それが彼女だった。
ならば何故変わりはいるとあの時言っていたのか?それが疑問に思った
観賞用として置いてるならば、捨てる事はしないだろう…そう考えた。それに対して春雨はこう答えた。
「それ程に貴方の鎮守府の戦力が魅力的だったんです。それに私一人ならあの鎮守府にはいるだろうとあの人は考えてました」
「買い被りだな、俺は其方に関しては全くと言って良いほどに運が無い」
そう、提督はドロップによって保護する感娘は決まって現在鎮守府に所属している感娘なのだ。そういった者は大本営に送り、戦力が足りない鎮守府に寄付してはいるが…ドロップ自体の確率も一般的には高くない。建造が彼女達を確実に手に入れる方法なのだから。
もっとも提督は大型艦建造こそはしていないが、建造運はかなり良い。初めて建造したのが雪風だったのでそれはもう驚いたものだ。現在も雪風は誰一人建造、ドロップはしておらず提督の鎮守府に存在するのが唯一の個体との話だ。
まぁその後に他の鎮守府からそれなりの練度を誇る者を保護してはいるが…
「私は今まで演習も遠征も出撃もしていませんし、そういった情報は他の感娘から聞いていたん…です」
確かに軟禁に近い状況だった春雨は練度は低いだろう。現在一番練度が低い朝潮にも確実に劣る存在。だが提督は甘やかさない
「悪いがそう言う言い訳は聞かないぞ、俺は徹底的にお前を演習、遠征に行かせる。出撃もな」
そう言った提督に驚いたような表情をする春雨。それもその筈、彼女は初めて見た人間には観賞用として扱われていた…彼女を戦力として扱おうとはしなかったのだ。
それが初めて徹底的に使うと言われた。初めて自分を必要としてくれた。これほど嬉しい事は無かった
「俺は甘くはない、睡眠時間はきちんと取らせるが休憩時間はほぼ無いものと思え。まぁ初めの内は軽い訓練ですませるが、徐々にキツくなるぞ。泣き言を言う暇も無い、辛くなったら何時でも大本営に行くと良い、紹介先も俺が用意する…ん?」
紹介先を用意する、と言った瞬間に春雨の目の光が消えた
その事に少し驚いた提督だが、まぁ何時もの光景だと考えて放置した。
(嫌、この人と離れたくない。初めて必要としてくれたこの人に失望されたくない、嫌われたくない、初めて私が
そして春雨は、提督の服の裾を掴み、上目遣いで提督を見上げる。
その瞳には光が灯って無かったが、少し潤んでいるように見えた
「大丈夫…です、どんな訓練でも耐えられます。貴方の役に立ちたいから…」
ずっと側にいたい、ずっと一緒にいたい、そんな想い。
そしてそれは彼女の力になる。彼女達は心の有り様で力を飛躍的に上げる。
ケッコンカッコカリ。それは女性の最大の幸せである結婚を彼女達と交わすこと。
カッコカリなので本当の結婚ではないが、それでも結婚は結婚。愛する人と人生を共にする事は彼女達に最高の幸せ…原理は分からないが、その想いが力となり、彼女達を更なる強さへと導くのだ。
ケッコンカッコカリをした者は従来の性能を遥かに超えた力を持つ。愛の力は無限大なのだ。恋する乙女は無敵というが、これは正にそれを明確に表したものだ。
まぁケッコンカッコカリをしても負ける時は負けるが…
しかしそんなケッコンカッコカリは条件が厳しく、練度を最高峰に上げ尚且つ提督と艦娘の絆が無ければ不可能との事。
また、絆が無ければいくら指輪を渡しても効果は無い。彼女達との絆が無ければそれはただの飾りに過ぎないのだ。
逆に言えば口ではケッコンカッコカリを断っても、効果が現れる感娘に関しては内心ではその提督が好きで好きで堪らないと言えるが。
だがそんなケッコンカッコカリには例外もある。練度を最高まで高めずとも、指輪を渡さなくてもその力を手に入れる術がある。更にその場合は一般的なケッコンカッコカリよりも遥かに超えた力を持つとの事。
だがそれを成している提督は一人しかいない。そう…それは…
海色提督が率いる10強だ。何故彼女達がそのような力を手に入れているのかは、簡単に言えば
愛が重い→結婚まで待てない→好きが爆発しちゃう→でもそれじゃ色々と迷惑かけちゃう、それは嫌だ→なら愛を放出しなきゃいけない→良いこと思いついた、それを力に変えれば良いじゃん←今ここ…である。
だからこれは必然なのかもしれない、彼に救われた彼女が新たに10強に続く存在になる事は…そしてこれは、海色提督が率いる鎮守府の最狂伝説の幕開けでもあった…
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「提督、何をしてるん…です?」
「万が一を考えてな」
現在提督は大佐の執務室に潜入していた。理由は決定的な証拠を抑える為、そして通信施設を使う為に
色々と穴はあるものの、誘拐作戦自体は褒められる出来だ。何せ常に誰かしらが徘徊している自分の鎮守府で穴を見つけ出し、自分をピンポイントで誘拐するとは素直に驚いた。
故に今回の作戦は、必ず念入りに計画されたものだと考えたのだ。そして提督は執務室に置いてある金庫を見る
直感でこの中に見られたらマズイ物が入ってると思った。
「その金庫の番号は誰にも知らされていません。秘書艦である伊勢さんにも伝えられていないんです」
「伊勢か…」
伊勢と聞いて自分の鎮守府にいる伊勢と日向を思い出す提督。
そして知らされていないのも予想が付いてた、感娘を艦娘と呼んでる時点で相容れないと思っていた存在。そんな存在は過去に何度も相対してきた。その度に打ちのめしてきたのだ。
そしてこの手口も提督は知っていた。
「犠牲を良しとする風潮…か」
ブラック鎮守府にも様々な種類がある。提督の場合は感娘強制労働(笑)だが、この鎮守府は感娘犠牲を掲げているらしい。
提督はこれを非効率的だと批判している為に、良い感情を持っていない。それに過去に相対したブラック鎮守府ほぼ全てが雪風や特別な吹雪といった感娘を狙ったものだ。まして自分以外を信用していないとなると、確実に自分の手の届く範囲…そして誰にも知らされない場所にある。
だが、こういう輩には彼女が役に立つ。
「出番だぞ、そろそろ出てきたらどうだ?」
「え?」
提督が急に独り言を言ったのに疑問を持った春雨だが、その疑問は直ぐに解消される事になった。
「ありゃりゃ?気付いてましたか〜」
後ろから急に聞こえた声に驚き、艤装を展開して提督を庇うように立つ春雨。そしてそれを見た第三者は感心した様に表情を変えた後に、提督をジト目で見つめる。
「また誑かしたんですか?しかもその反応…青葉達と一緒ですねぇ」
「人聞きの悪い事を言うな、それと気付いたのはこの鎮守府を歩いてる最中にだ。お前が用意していた抜け道…使用されている痕跡があったぞ、青葉」
「まぁ確かに良く見れば分かりますけどねぇ、提督にしか」
10強の一人である青葉…彼女が新たに登場する。
春雨は大佐から10強の戦力を欲しているのを聞かされていたので、詳しくは知らないが構成されている人物は知っている。
青葉は裏方に徹していて、海域攻略時には表に出ない。だが偵察任務等の裏方の仕事でら唯一無二の存在であるとの事。
「でもレ級との戦いに連れて行かなかったんですがねぇ」
「少しの情報から相手を隅々まで分析する、それがお前と霧島の専売特許だろう?」
「まぁ青葉はそれが一番ですからね!どれどれ」
そして青葉は金庫に駆け寄り、誰にも知らされていない金庫を開ける番号をいとも簡単に解いた。
それに驚く春雨を見て、ドヤ顔をする青葉。
「おや?驚きました?まぁ青葉は情報収集能力は得意ですし、一度見た事は忘れませんからね!」
いとも簡単に自分の能力を話す青葉に提督は少し驚いた。自分の情報は頑なに開示しない彼女にしては珍しい事だったからだ。
「話して良いのか?」
「青葉達の同士ですから!」
その事を聞くと、青葉は笑顔でそう答える。春雨泣きそうな表情で青葉を見つめる、それに対して青葉は春雨に近寄り、優しく頭を撫でながら抱き締める。
それを見た提督はやはり苦労をした者同士、通じあう何かがあるのだろうと提督は思った。
「…まぁいい、それよりこれだ」
そんな彼女達を優しく見守った後に、提督は金庫の中身を確認する。
そこには予想通り、今回の誘拐作戦の念密な計画とその後の事を記した計画書、更には自分が大本営を支配する計画まであった。
「無謀だな、たかだか一鎮守府の提督ができる事じゃない。こんな計画…失敗に終わるのは確実だ」
「でも念入りですねぇ…関係者の家族や友人を人質に取って、更には闇討ちで戦力を減らしてから制圧するみたいですねぇ」
「それでもだ、大本営をこの男は侮りすぎている…この男、確か民間からの募集だったな」
「ええ、生粋の軍人ではなく提督の資格を持った一般人ですね」
彼女達を扱う資格のある人間…それは数が多いとは言えない。軍属の人間である者も数える程しかいないのが現状だ、更には確認されている提督は100もいない。提督とは文字通り選ばれた存在なのだ。
だが鎮守府が壊滅、黒運営が判明して解体される度に新たな提督候補が現れる。提督は妖精が選ぶと言われてちるがそれも定かでは無い。
その中には女性もいたり、子供もいたりと様々だ。
「大本営を運営している人物は生粋の軍人のみで構成されている。それを欠片も理解できなかったのだろうな」
一般人だからこそ、軍の厳しさを知らないのだろう。だからこそこんな真似が出来たのだと考えた。
「少なくともこの男は自分だけではなく家族や友人を犠牲にしたな」
この罪はこの男の首一つでは足りない、この男の恋人、家族、友人…全てに制裁が下されるだろう。
「さて青葉、お前がここにいるという事は」
「ご察しの通りですよ、全員来ました」
予想通りの返答に提督は呆れた表情をして深く溜息を吐いた。
「鎮守府を守る為にお前らを残したんだがな…」
元々彼女達は鎮守府の防衛を任せていたのだが、これでは意味が無いじゃないかと考えてしまった。
「なら早く帰れば問題無い…ですよね」
そんな所に春雨がおどおどしながらもそう言った。それを聞いた青葉はニコニコとした笑顔を見せながら春雨を褒める。
「良いこと言いますねぇ、えっと…」
「あ、私は白露型5番艦の春雨です」
「うぇぇ!?春雨ってあの!?」
青葉も情報としては知っていたが容姿までは知らなかったのだろう。かなりの驚きぶりだった
同時にこいつの情報収集能力落ちてるんじゃないか?と提督は考えたりもしたが…それは帰ってから指摘すれば良いと考えた。
「ああ…どうにもこういった珍しい感娘とは縁があるらしい」
「この間プリンツさんと鹿島さんを保護したばっかじゃないですか!?謝って!全ての司令官に謝って!!」
「………………」
確かにプリンツ、鹿島共に提督の鎮守府にしかいない存在だ。青葉の指摘に対して何とも言えない表情で頭を抱える提督。そんな提督の仕草に思わず笑ってしまう春雨、和やかな雰囲気がその場に流れる。
「まぁ鹿島もいるし彼女の訓練に問題は無いだろう、朝潮の才能を開花させたのも彼女だしな」
「まぁ…確かに期待の新人ではありますけど…駆逐艦ばっかり強く無いですねぇ?」
「この間プリンツに負けたお前がか?10強の名が泣くぞ」
「青葉は情報戦主体ですから!」
「ふん、まぁ良い…他の艦娘は?」
提督は、他の感娘の現在の状況を聞き出した。
「大佐の感娘を無双してますねぇ、主に阿武隈さんが」
「純粋な戦闘力なら時雨に唯一付いていけるからな、あいつは」
「それと漣さんが暴走してますね」
「やりやがったかあの野郎…今度は何だ」
「夕張さんがクラインフィー○ドの再現をしてますからね、流石に霧の艦隊のアレはできないらしいですけど」
「当たり前だ、霧のアレは本物の兵器だ…というかクラインフィー○ドだと!?」
「ええ、青葉も驚いちゃいました」
クラインフィー○ドとは簡単に言えば攻撃を防ぐバリアである。
それを作り出した夕張の技術力と変態性に益々頭を抱えたくなつまてしまった、
「それに加えて重量オーバー必須の装備で出撃してますから、撃っては捨てを繰り返してますね」
「となると殆どの艦隊は全滅してるのか?」
「阿武隈さんは誰も沈めてませんがね」
阿武隈は誰も鎮めてない、という事は他のメンバーは誰かしら沈めてるということになる。
極力同じ艦娘を沈めるのは避けたかったが、これに関しては止むを得ないと判断した。
「よし、行くぞお前達…大佐を追い詰める時が来た」
そしてこれからは、提督の反撃の時間だ
10強全員が圧倒的戦闘力を持ってる訳ではありません。瑞鶴や青葉や霧島や日向は特にそうです。
違っているのは誰にも真似できない特別な力を持っているか、持っていないか。霧島は敵を陥れる頭脳、青葉は他には無い記憶能力と情報収集、日向は正規空母顔負けの瑞雲の搭載数、他には無い強みを持っています。
瑞鶴の強みはまだ先です。楽しみにしてくださいね〜
一般人からの募集で来た人間は、一通りの軍のあり方とかは訓練で勉強しますが、どうしても意識の低い奴というのは存在します。それらがブラック鎮守府となったりするのです。