艦隊これくしょん〜ブラック提督(笑)の奮闘 作:SKYアイス
なんとか構想が出来上がり再び再開する事ができました、自分の小説を読んで下さる皆様にお礼を…そして不甲斐ない作者ですが、これからもよろしくお願いします
横須賀の提督と自分達の鎮守府の提督が同時に食堂を訪れた。それだけで食堂の空気が更に凍った
それもそのはずだ、今まで食堂を訪れた事は数えるほどしか無かった彼が食堂を訪れた。しかも三人の女性と一緒に…それが意味する事は……修羅場
「ねぇ…その女何?」
口調が完全崩壊した時雨が濁った瞳で提督を見つめた。
見つめ続けると思わず泣き出しそうになる程の威圧感…某駆逐艦の戦艦並みの眼光も裸足で逃げ出す程の、威圧感。それを見た横須賀の提督の感娘二人は小さな悲鳴をあける。
だが提督はその時雨の瞳を真っ直ぐに受け止めた上で言った。
「お前達、訓練は進んでいるか?今日のノルマを達成した者には特別なご褒美として、俺が何でも言うことを聞いてやろうと思ったのだが」
「す、ストォップ!その言葉は言うなぁ!!!」
珍しく慌てた様子の日向が止めに入るが
「へぇ…何でもする…か」
既に遅かった。同時に日向は頭の中でこう思った
もう手遅れだ、ここは瑞雲を整備しなければ…と
「まぁそんな事はどうでもい…吹雪、あいつは何処だ?」
「あいつ…ああ、あの子の事ですね、今頃は海辺で散歩してるんじゃないですか?」
「……そうか、なら少しは時間が稼げるな」
少しは時間が稼げる。提督が口にした言葉に呉の10強は全員顔を青くした。いや、10強だけではない…その場にいるほぼ全員の顔が青くなったのだ。
そんな10強の反応に一番驚いたのは着任して比較的日が浅い朝潮だった。彼女は勿論何も分かっていないので顔を青くする事にはならなかった。
「え、え?な、何ですか?皆さんどうしたんですか?」
「…朝潮ちゃんに教えてないの?君の切り札」
「まぁ…いずれは教えるつもりだったが…朝潮、簡単に言えばそいつは俺が初めての建造で迎えた艦娘だ。今は感娘だぞ?」
「そ、それは大先輩…ですよね?」
「まぁ、そうなるな」
提督が日向の口癖を真似したせいか、若干日向の頬が紅く染まる。そんな日向を見て微笑ましい雰囲気になる伊勢だったが…
「伊勢…日向には負けたくないの」
「ひぃ!?」
何処からともなく負のオーラが二人を襲った。日向はともかく伊勢は完全にとばっちりなのだが…
「それで時間稼ぎって事は?何か不味い事態でも起こったのかしら?」
先程から気になっていた事を曙が聞く。彼女は提督に対して強気な態度を取っているので、提督に事情を聴いたり説明したりする役割みたいな事をしている。
彼女にその気があるかと聞かれたら、「べ、別にクソ提督の事なんて気にしてないから!」と否定するだろうが…
とはいえ提督は聞かれた事は答える、というより元々それの説明の為にここへ来たのだから
「レ級のフラグシップ…そいつが近場の鎮守府を壊滅させた…二つもな。そしてそいつは大規模作戦付近の海域に向かおうとしている」
提督が告げると同時に、先程は少しばかりゆとりを持っていた空間に緊張が走る。
(あらら…レ級…しかもフラグシップですか…青葉の情報網にも引っかかりませんでしたねぇ……)
青葉は表情には出さないが、そいつの情報を持って帰れなかった自分に対して落ち度を感じ
(レ級のフラグシップ…エリート級にも手こずる僕が…勝てるのかな)
レ級の恐ろしさを知っている10強最強の時雨もまた、額に嫌な汗を感じた。
「レ、レ級のフラグシップ……」
朝潮はレ級のフラグシップと交戦した事はない。近場とはいえ実戦経験はある彼女にとっては、レ級のフラグシップがどれ程恐ろしいかは想像がつかなかったが…
鎮守府二つの壊滅。それだけでそいつがどれ程の実力を持っているかが嫌でも分かった。分かってしまった
朝潮は恐れた。まだ見ぬレ級を…そしてそれは他の感娘も同じ。勿論10強も例外ではない
レ級のフラグシップは誰も交戦経験がない、未知数の力…だがレ級事態とは交戦した事はある。
圧倒的な火力、速度、耐久、艦載機の数、雷撃…全ての艦の力を揃えた究極の深海棲艦と言われている奴のフラグシップなのだ。これまでの戦いとは…レベルが、次元が違うだろう
「なる程…だからこそ横須賀の提督がいるのだな」
この中では珍しく病んでなく、冷静な日向が提督に言う。それに対して提督は頷く事で返事を返した。
「連合艦隊を組む、奴を倒す必要は無い…時間稼ぎで充分だ。編隊は第一艦隊に時雨、日向、金剛、瑞鶴、響、大井だ」
「…全力って訳ね?」
横須賀の提督は固唾を飲んでそう呟いた。金剛は10強には及ばないが朝潮を含む10強ではないが力を覚醒した五隻の内の一隻である。それに加えて10強のトップ3である時雨、響、瑞鶴だ。これ以上無い程に全力だと嫌でも分かる。
「それにしても、君がトップ3をローテーションを組まずに同じ編成に入れるなんて…意外だね」
横須賀の提督は珍しげに言う。彼のスタンスを知ってる自分としては言わずにはいられなかった。
「相手が相手だからな、加減してる余裕はない」
とはいえ彼には10強全員を投入する気はない、万が一不在の時に鎮守府が襲われた時の為に10強をある程度は残すつもりだ。故に
「とはいえ第二艦隊にはこれ以上10強は入れない、吹雪…お前もここに残れ」
「なっ…!?」
その言葉に横須賀の提督は思わず驚愕した、鎮守府の最古参であり条件次第ではあの時雨を超える吹雪を置いていく…その決定には大淀も驚きを露わにしていた。
「て、提督!貴方はまた…!」
大淀はそれに対して口を出そうとしたが
「そこまでだ大淀、司令官にはまだ話す事がある…そうだろう?」
「その通りだが響…その手に持ってるのはなんだ?」
響の右手には青色の何かが握られていた、同時に大淀は自分のスカートに手を伸ばし…顔を赤くした。
「い、いつの間に…」
「漣風に言うなら…私が時を止めた」
…………………
「空気をぶち壊すのは漣の専売特許なんですけどねぇ…?」
「肩が凝って仕方ないよ、少なくとも私は耐えられないな」
そう言いつつ響はそれを頭に被り、茶を飲み始めた。
その光景を見た提督は…諦めて話を続ける事にした。
「と、ところで海色提督、理由を聞いていいかい?」
「理由は単純、攻めてる最中の鎮守府の周辺海域の防衛だ、うちの最高戦力を六人も出すんだ、その内の六人にはこっちを守ってもらうのが筋だろ?
多少リスクはあるが…今回は合流させないで撃退するのが主な目的だからな」
「さ、流石司令官です!…あれ?六人?」
朝潮は違和感に気付く、10強を投入してるのは時雨、日向、瑞鶴、響、大井だ。金剛は10強に入ってないので除外されるにしても、残りは漣、168、阿武隈、青葉、霧島…二人多い事に気がつく。
「僕が説明するよ、実は吹雪は条件次第じゃ僕と並ぶ…ううん、それ以上に強いんだ」
10強最強の時雨がそう言った。朝潮は最古参でありいつも自分に良くしてくれている吹雪を見て
「え、えぇぇぇぇぇ!?」
思いっきり叫んだ
「いやぁいつ見ても新人さんが驚く姿は良いものですねえ」
「あ、あはは…隠してるつもりは無かったんだけど…ごめんね?朝潮ちゃん」
困ったような表情でそう言う吹雪だが、むしろ朝潮はそれで彼女に対して更に憧れた。
ーあの時雨さんに並ぶ実力…ー
同じ駆逐艦、時雨の驚異的な強さに憧れを抱くのは当然である。現に他の駆逐艦も彼女に憧れ、ある者は並び立ちたいと、ある者は超えたいと口々に揃えて言うのだ。勿論朝潮もその一人だ
だからこそ彼女は時雨と並ぶ吹雪を…改めて尊敬した。
優しくて強くて…照れ顔が可愛い彼女を……
「朝潮…顔」
「はっ!?」
いつの間にかトリップしていた朝潮を時雨が正気に戻した。
「君の鎮守府って、面白いよね…本当」
「…………」
横須賀提督の軽口に提督は頭を抱えるしかなかった。
◇◇◇◇◇◇
「んー」
その感娘は海辺を散歩していた。今日は良い事が起きそうだと感じたから。
そういう時は決まって海辺に来る。海が自分を歓迎してくれると、そう感じるのだから
「えへへ、楽しいです!」
彼女は散歩してるだけでも幸せな気分になれる。彼女の性格は明るく誰もが良い子だと思う子だから
だからこそ…彼女を怖れる。
彼女は味方にはこれ以上無いくらい優しいが、敵には無慈悲だ。
彼女自身は慈悲の心があるだろう、だがその体質がそれを許さない
彼女に敵対する者は…彼女が愛している男性に敵対する者には、容赦無くあるものが降り注ぐ。
それは、深海棲艦も例外では無い
「ナゼッ!コノカイイキニキテキュウニ!!」
空母ヲ級を旗艦をする深海棲艦六隻は、謎の嵐に襲われていた。波は荒れ、海に渦が巻き、豪雨で前を見る事すら出来ない。
「ギャ!」
深海棲艦である彼女と同じく深海棲艦の駆逐艦イ級が衝突した、その影響で隊列が乱れ、次々と深海棲艦が渦潮に飲み込まれていく。
(マダダ、マダニゲラレル!)
ヲ級は渦潮に飲み込まれはしなかったが、他の艦は手遅れだった。同胞を見捨て…自分が生き残ろうとした時
「エ?」
途端に自分の足が爆発した。理由もなく、偶々
「ナンデ…」
海を走れなくなった彼女は、再び水底に沈む。
「イ、イヤダ!モウウミノソコハ…イヤ!シズムノハ…イヤ!」
必死にもがくが、身体はどんどん沈む。
沈んでいく。
沈んでしまう。
「イやァァァァァァ!!!!!」
そして彼女は、二度と海の底から出る事は無かった。
「あっ…ふふっ…」
海辺を散歩している彼女に風が吹く。優しい風が。彼女を守るように風が吹く
「〜♪」
そして彼女は、鼻歌を歌いながら鎮守府へ帰って行った。
◇◇◇◇◇◇
場面は変わって鎮守府、時間は提督が第二艦隊の編成を口に出した頃から始まる
「わ、私…?」
そこには、真っ青な顔をした朝潮がいた
それもその筈…彼女は第二艦隊に編成されたのだから
「提督!朝潮ちゃんは戦闘経験が他の人と比べて少ないです!幾ら何でも…!」
「悪いが今回は大淀に賛成だ、五十鈴ならまだしもコイツを入れたら俺達の足を引っ張りかねない。置いて行った方がマシだ…足手纏いはいらない」
同じ編成にいる木曾がそう言う。無理も無い…朝潮は新人で、能力は高くとも経験が圧倒的に不足している
だが提督は
「いや、俺が描いてる作戦には朝潮と島風の二人が重要なんだ、万が一の事に備えてお前と神通がいる。それに比叡も入れているんだ…お前らならやれる」
「確かにそうだ、俺や神通に比叡…それにあいつがいれば先ず誰も沈む事は無い…が、この作戦は失敗出来ない。不安要素は取り払うべき…そうじゃないか?」
木曾が言う事は最もだ、彼女が正しい事は誰よりも提督が理解している。普段の自分なら朝潮を戦場に立たせる事は無い…だが彼には理由があった
それは、朝潮の可能性…彼女自身気付いてない成長の兆しを…提督は横須賀の提督との演習でそれに気が付いた。そして…全身が震え上がった
時雨と吹雪…二人に並び立つ才能を垣間見たのだ。
そしてそれは過酷な環境でないと芽生えない可能性だと…それに万が一を考えて彼女達はレ級とは交戦させない。あくまで主役は第一艦隊だ
そして切り札の一つである彼女も編成に入れている。木曾の言う通り彼女がいれば文字通り誰も沈む事はない、沈みようがない。それが彼女の代名詞でもあるのだから
故に提督それを話した。彼女達に…………
「はぁ…やっぱお前は自分勝手だ…だが俺はそんなお前に命を預けた。そしてお前は俺達を信じてこの編成を組んだ…それで良いんだな?」
「ああ、俺が信じるのは一つ…お前達感娘の可能性。それだけだだからこそ俺は全力でお前達をサポートする。俺は一つの言葉を…お前達に送る」
「なら俺はこう答えよう」
「我が部下に、最高の勝利を収めさせる、どんな手を使ってもな」
「お前に最高の勝利を与えてやる、どんなに危険な目にあってもな」
いかがでしょうか?
我がままですみませんが…できれば感想とかくれたら嬉しいです。