あ、今度響の絵書くんで許してください。
「ひ、び...き...?」
雷、電に連れてこられてきた場所は、海岸付近にある工厰。なぜ、工厰に連れてきたのかと一瞬疑問に思った私だけど、きっと妖精さんに響を助けてと頼むんだろうと思ったので口を出さないでいると、中に入った私は驚くべきものを見ることになった。
「響!!!」
そこに居たのは大勢の妖精、そして銀髪の美少女、何故か体、服がびしょ濡れになっている司令官。私は急いでその銀髪少女へと近づいていった。
見慣れた制服、見慣れたバッチ。そして銀髪でジト目な瞳。まごうことなき響だと理解した私は響を力強く抱き締め、もう二度と話さないと言わんばかりにその小さな胸に響の頭を抱いた。
「響!響ぃ!!ぐずっ、よがっだぁ~...!」
「暁ねぇ...」
「暁お姉ちゃん...」
だらしなく泣きじゃくる私を、雷と電が微笑ましく見守る。さっきは気付かなかったが二人の目元が若干赤くなっていて、私と同様に泣いていたことが伺える。そして今も、安心して泣いている私を見てか二人も涙を流しており、どれだけ辛かったか、どれだけ怖かったかとか全てを流していった。
響はその間おろおろとその場で慌てたりとこの状況を掴みきれていないようで、司令官に助けてと言う意味合いの目を向けていた。
「響。これは君への罰だ。この三人をしっかりと泣き止ませ、落ち着かせてから執務室へ来ること」
「しれい...かん?」
「いいか?これは命令でもある。ちゃんと遂行するように」
「う、うん...」
何処か棘のある言葉な司令官に響は動揺を隠せないでいた。そして棘のある言葉が苦手で恐怖さえ抱く響はその命令に頷くしかなかった。
これは命令だ。と言外にも断れないようにした司令官はこの場を後にして執務室へと向かった。
一人...いや四人置いていかれた中で、響はあわあわして何をすれば泣き止んでくれるのかわからない様子だ。その様子は端から見たら物凄い可愛いのだが、泣いている暁、電、雷を見れば何があったのかと考えさせられる光景になっている。
「あ、暁ちゃん!ぼ、ぼくは無事だから...ね?泣き止んで?」
取り敢えず慰めようと声をかける響。しかし暁は響を更に強く抱き締めて泣き止む気配を見せない。雷もその様子に自分もと響と暁を包み込むように抱き締める。勿論、電も来たが電は暁に響と一緒に抱かれるかたちで響とも暁とも密着していた。
この四人はれっきとした姉妹。家族が一人失われるかもしれないという事実が恐怖、不安、悲しみを呼び出し、みんなで抱き合って生存を確認するかのようなことになったのである。
家族を失う気持ちをわかっているのは暁のみ。一度響を失ってしまった悲しみを知っている暁は、一番耐えられるように見えて一番辛い立場である。家族を一度失って耐性をもつのではなく、二度目に失ったときに一度目の悲しみが合わさって更に辛くなってしまう。故に暁が一番響がいなくなることに恐怖し、不安を覚えていた。だから一番泣いているのは暁である。家族を失う悲しみに姉、妹など関係のないことなのである。
しかし、こうして強まっていく絆があることもまた事実。特三型駆逐艦。暁型駆逐艦は今日、絶対に切ることのできないほど絆を強めたのであった。時には喧嘩もするかもしれない、しかしそのたびに今日を思いだし、すぐに仲直りすることになるかもしれない。それほどまでに四人の絆は強まっていた。
四人が抱き合ってから落ち着くまで、司令官は工厰の出口で暫く微笑ましそうな顔をしながら眺めてその場をあとにした。司令官も響がとっても心配でならなかったのだ。こんなことが二度と起こらないように、と心に決めて司令官は執務室へと向かうのだった。
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