響を見てて思ったこと───可愛い。
「よし!皆装備はオッケー?」
「うん」
やっとこさ来れた演習場。あのあと暁ちゃんが拗ねちゃって連れてくるのがすごく大変だった。まるで子供みたいに拗ねるから余計に手間がかかるんだよね~。ま、可愛いからいいけど。これが大人だったらそうとうウザかったと思う。
それより、暁ちゃんが一応僕の装備を見てくれている。僕はこの事に関しては素人だから細かいところの見落としがないかとチェックしてくれているのだ。あっ、因みに点検の仕方は電ちゃんに聞いたよ。しょうがないのですとかいって優しく教えてくれたんだけど、黒い電ちゃんを知ってるからかかなり奇妙な光景に思えた。せっかく教えてくれてるのに失礼だけど、仕方ないよね。
「じゃあこれより射撃訓練を行うわ!」
「「おー!」」
「よし響、まずはあの的を狙って撃ってみて」
そう言う暁ちゃんの指す先には結構大きな的があった。直径は五メートル、距離五十メートルと言ったところか。正直外すとは思えない。
「──撃ち方始めっ!」
暁ちゃんの掛け声と同時にトリガーを引く。ズドンっと腹に響く音がしたかと思うと、その砲身から火と煙が吹き出し、弾を吐き出した。その際物凄い反動が僕の腕にかかってくるが、どういう仕組みなのかこの艤装全体が衝撃を吸収してくれた。使用しているのは12.7cm演習用練習弾。直撃しても破損を与えることはなく、物凄く柔らかい物質で弾を囲っているため直撃した瞬間にそれが壊れ、炭を付けるといった感じだ。
ザパーンッ
「──ふぇ?」
「初弾外れ、左修正急げ!」
「え?えぇ?」
「早く!」
取り敢えず撃った弾はなんと明後日の方向に飛んでいったかと思うと、遠くの方で大きな水中を立ち上げた。それを見た暁ちゃんが素早く指示をだし、僕を誘導する。言われた通り少し左に砲を向ける。
「それ左過ぎ!」
「えぇ!?」
だが、怒られてしまった。近いからこのくらいだろうと思ったのだがどうやら行きすぎてしまったようた。
「もう一度修正、右に6度」
「ろ、6度...?」
6度ってどのくらい?そんな疑問が頭のなかを埋め尽くす。しょうがないじゃん、僕分度器持ってないんだから。そもそもこれって慣れないといけないものでしょ?どうやっても今の僕には当てられそうに無いんだけど...。
そんな風に思っていると、暁ちゃんが側まで来て僕の手を取り、その砲身を修正した。動かしたのはほんの僅か。6度とはそのくらいなのだろうか。そのまま僕の腕を固定するようにがっしり掴み、引き金を引く暁ちゃんの放った弾は──見事的に命中。その中心を黒く染め上げた。
誤字、脱字等があればよろしくお願いします。