響になった僕は人の温もりを知る   作:緒兎

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 ずどらーすとう"ぃちぇ。やぁ、響だよ。皆病気にかかったりとかしてないかい?

 ん?私かい?私の心配をしてくれるなんて優しいだね。惚れちゃいそうだよ。うーん、少し風邪気味かもしれないね。私だって風邪くらい引くさ、君たちと同じように...ね。

 まぁ、今回響視点がが無いわけだから、マリオンさんに頼んで私が前書きに出ることになったんだ。これからもこの作品をよろしく頼むよ。


学校

 キーンコーンカーンコーン

 

 お決まりのチャイムがなり授業が始まる。生徒は皆すぐさま席へと着き、静かに教師を待つ。やがて教卓方面の扉が開き、先生が入ってくる。その際生徒をチラッと確認するのは教師として当然のこと。例えば居眠りしている生徒や、お喋りしている生徒などを見つけ、罰するために見逃すわけなはいかない。

 

 この教室の担任は重巡洋艦『足柄(あしがら)』。黒い髪を背中まで届くほどに伸ばし、ストレートにしている綺麗な女性である。目付きは少し鋭く、まるで獲物を待ち構えている狼のようだ。

 

 「挨拶を」

 

 「はいっ」

 

 足柄に朝の挨拶兼授業開始の挨拶を頼まれた生徒の中から一人、元気のいい返事をして立ち上がる。こういうのは基本日直制と決まっているので、恐らくこの子が日直なのだろう。

 

 その子は、赤みがかった色の髪をしており、髪型はショート。緩いカールを描いている。駆逐艦にしては背の低い方の子で、回りの暁、雷、電を抜けば一つ年下の年齢にさえ見える。

 

 「起立、足柄先生おはようございます」

 

 「「おはようございます」」

 

 「おはよう」

 

 まずは朝の挨拶から。これは小学校などでよく見る光景だが、ここも鎮守府と言えど学校なのであるから別におかしなところはない。

 

 皆の挨拶に落ち着いた声で返す足柄先生。あの飢えた狼のような、男を求ていた姿は欠片もなく、まるで本物の教師のようだった。いや、本物の教師なのだが。

 

 「これから「あぁ、ちょっと待って」ふぇ?」

 

 授業の挨拶をしようとした日直の子だが、突然足柄に止められた。少し戸惑った顔をする日直の子だが、足柄が皆に座るように指示を出したので、大人しく座る。

 

 「忘れてたわ。今日は皆に新しく入る子を紹介したいと思うの」

 

 そんな大事な事を忘れてしまっている足柄。教師としてどうなのだろうか?

 

 新しい子が入ると知ってざわざわと騒ぐ生徒を黙らせ、その新しい子に入るよう促す。がらがらとゆっくり扉を開け入ってきてのは、銀髪を腰まで伸ばした所々癖っ毛のある子だった。

 

 少女は何処かおどおどとした様子で、足柄に自己紹介をしろと言われる。

 

 「ぼ、僕は...そのぉ...」

 

 しかし人見知りなのかなかなか自己紹介が出来ずにいた。よく見れば少し震えているのも確認できる。顔色が悪く、病気なのでは?と疑ってしまうほどか弱く見えた。

 

 「.........」

 

 「はぁ...仕方ないから私がするわ。提督にも頼まれていることだし」

 

 なかなか言葉を発せずに沈黙してしまっている少女に代わり、足柄が自己紹介をしてあげる。

 

 「この子は響。暁型駆逐艦二番艦の『(ひびき)』ちゃんよ。訳あってこんなんだけど、皆仲良くしてあげてね」

 

 あの足柄にしては結構まともな紹介であるが、訳あってと理由を言わないように紹介してあげるのは良いことだ。そう言うと大抵の人は聞いてはいけないことなのだろうかと思い、聴きにくくなるからだ。

 

 こうやってちょくちょくと生徒の手助けをしてくれる足柄は、何故モテないのかわからないくらい綺麗だった。




誤字、脱字等があればよろしくお願いします。

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