それよりも聞いてください。カラオケに行ったんですけど、マリオンさん音痴なものですから、80点代をさ迷っているのです。何とかして高得点取れないものですか?あっ、でもロシア民謡のカチューシャは92点くらいです。なぜかこれだけは歌える。
「なるほどな...そんなことがあったのか」
「なのです」
司令官と電ちゃんが僕に起こったことを話してる。司令官が納得顔で頷き、電ちゃんは僕の方へと笑顔を浮かべている。そう、黒い笑顔である。
「言わないでって...いってたのにぃ...」
「約束はしてないのです」
「うわぁぁぁぁんっ!電ちゃんの鬼畜ぅ...!」
電ちゃんが僕が迷っていたことを話してしまって、僕が恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして電ちゃんを責め立てるが、電ちゃんはどこふく風といった感じに流していく。
うぅ、電ちゃんの嘘つき。もう、信じないもん...電ちゃんのことなんて信じないもん!!
「響ちゃん、司令官さん笑ってないのですよ?」
「信じ...えっ、ほんと?」
「あぁ...ふふ、笑って...ないからな、ブフォッ」
「笑ってるじゃん!!」
司令官に渾身の突っ込みをいれる僕。ふと気づく。また電ちゃんの話を信じてしまったと。
司令官は笑いすぎて床をゴロゴロと転がっている。...笑いすぎじゃない...?そんなに、そんなに面白い...?僕を、僕を笑って...そんなに楽しい!!?
「っうぅ!」
バンっと扉を開けて執務室を飛び出る。最後に二人の顔がちらっと見えたが、どちらとも呆けた顔をしていて、まるでこんな反応なんて予想していなかったみたいだった。でも、僕は昔から蹴られ殴られ侮辱され蔑まれ嘲笑われていたんだ。笑われることに、いい思いなど抱かない。
溢れる涙を拭いつつ、ぼやける視界をなんとか確保する。自分でもわからない。どこを通って何処へ向かっているのか、このまま逃げて何がしたいのか。
「っ!はぁ...はぁ...」
角を曲がると突然目の前に壁が現れて、ぶつからないようになんとか止まる。もう息も絶え絶えで、足もふらふら。僕はその場に腰をおろした。
「うっく...えぐっ、うぇぇ...」
出てくるのは嗚咽ばかり。怖くて悲しくて恥ずかしくて涙が出てくる。僕自身、もう何をしているのかわからない。ただ、司令官が自分を嘲笑っているのを思うと、胸がいたい。
やっぱり僕なんて生涯虐められて、傷つけられて生きるしか出来ないんだ...。もう、死んじゃおっかな...。この体の子、響ちゃんには悪いけどもう...耐えられそうにないよっ!なんで僕だけがこんな目に!司令官...助けてよ司令官!!
僕をこの暗闇から救ってよ!!
「響!」
「っ!...しれい、かん...?」
僕の思いが爆発しているとき、後ろから声がかかった。その声は、いつも優しく僕を撫でてくれる、僕を何とかして人とはなせるようにしてくれる司令官だった。
誤字、脱字等があればよろしくお願いします。