響になった僕は人の温もりを知る   作:緒兎

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 こちら天草、状況を報告せよ。
 ─こちら忍者、侵入者二名を拿捕。どちらも駆逐艦響を狙っていた模様─
 なっ、響をだと!?くそっ、なんでそんなことに... !
 ─それが、駆逐艦響は俺の嫁と訳のわからないことをいっていまして、どういたしましょうか?─
 なっ!?響は俺の嫁だと!?それは俺の台詞だぁあ!


 「司令官なにしてるの?」
 なっ!なんでもないでゴザル...


秘書艦やらないか?

 カキカキカキカキ

 

 静かな執務室で、またもや紙にペンを滑らす作業bgmが聞こえる。しかし、以前と違って音の数は倍、執務室にはもう一人提督とは違う人物がいた。

 

 「司令官、ここはこれでいいの?」

 

 「ん?あぁそうだな... まぁ、いいんじゃないか?」

 

 そう言って僕は任務記録の紙を見せる。そこには今日の任務達成と艦娘の成長率がかかれていた。

 

 僕が確認した内容を司令官がいいと判断したのでそれを書き込んでいく。

 

 はてさて、なぜ僕が事務作業をしているのか、皆気になっているよね。実は食事を摂った後に司令官が何やらぶつぶつと言っているのを聞いちゃったんだよね。そしたらその内容が『書類仕事... 今日中に終わるかなぁ』だったので、ここはこの寛大な僕が手伝ってあげようというわけでこうなったのだ。

 

 因みになぜ来たばかりなのに書類がわかるのかと言われれば、実は個の書類、ほぼ同じ内容しかないのだ。それもそのはず、一人の提督に対してそこまで量を強いることはさすがに困難なので、少しにしたのだ。だけどそれを求めるところが多くて、逆にものすごい量になってしまって今、この現状が生まれているのだ。

 1度それに対して文句を言ったそうだが、このご時世そんなに世間は甘くないときっぱり断られたそうだ。理不尽である。

 

 また部屋に静寂が訪れる。

 

 司令官は執務室の立派な机で書類消化を目にも見えない早さでこなし、僕はといえば畳の上にポツンと置いてある卓袱台でのそのそと書類を消化していた。

 早さを表すなら、僕が一枚終わらす間に司令官が10枚終わらしている。やっぱり馴れとは恐ろしいものらしい。

 

 「司令官、終わったよ~」

 

 書類消化を初めてから約3時間。ついに僕に与えられたぶんの書類を書き終えた。

 

 「おっ、響は早いな~。俺なんて後30枚もあるのに」

 

 「そんなの司令官の方が凄いじゃん」

 

 「そんなことはないぞ~?」

 

 僕の十倍は書類があったのに、僕を褒めてくれる余裕のある司令官に、僕が司令官の方が凄いと褒めると、なんでか謙遜してしまって受け入れてくれない。因みにこの間、司令官の手はまったくと言っていいほど止まっていない。

 

 褒められるのが嫌なのかな?

 

 「ん?あぁ、別に褒められるのが嫌とかそういうんじゃないんだ」

 

 ギクリ... と僕の体が跳ねたのがわかった。

 

 「なんで... わかったの?」

 

 「そりゃそんなに不安そうな顔すれば誰だってわかるさ」

 

 司令官はこっちを見向けもせずにそう答えた。どうやら僕は顔に出やすいタイプと言うやつらしい。あれ?それって今まで顔に出てたってこと!?や、ヤバイ... 恥ずかしいかも... !

 

 だんだんと顔が紅くなっていくのがわかった。

 

 「それにな、こんな単調作業どこの提督だって出来るんだぞ?褒められてもあんまりうれしくないんだよな」

 

 え?と言葉にはしないが頭のなかをはてなマークで埋め尽くす。

 

 今の聞いた?何処の提督でもあんな高速書類消化ができるって... ありえないよ。嘘だよ... 嘘... だよね?

 というか僕って邪魔だったような気しかしないんだけど?

 

 「よし!終わったぞ」

 

 そう言ってペンを置く司令官は手を合わせ、天高くへと届かせるかのような伸びをする。それに合わせて僕も真似をするように一緒になってする。

 そうするとさっきまで凝っていた肩が、ポキポキっと解放されるような感じがして、腕を下ろすと一気に疲れが吹っ飛んだ。

 

 「お疲れさま、司令官」

 

 「あぁ、響こそ手伝わせてごめんな?本当は俺一人でやる予定だったんだけど」

 

 「いいよそんなの。それに無理矢理連れていった僕も悪いしね」

 

 そう言って食事に誘いに来ていた自分を思い浮かべる。うん、迷惑しかかけていないね。とくにドアなんてたてつきが悪いし。

 

 そう反省していると、司令官が言った。

 

 「それより響、秘書艦... やらないか?」と───。




 誤字、脱字等があればよろしくお願いします。

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