っは!バイトでも痛みを我慢しながら滑舌悪く喋らなければならんのか!?地獄だぁぁぁぁあ!!!
ドボォォンッ
終わった、そう思ったときにはもう僕の体は海へと叩きつけられていた。僕が落ちたからだろうか、僕を中心に大きな波が立ち、まるで重いものでも落としたみたいに広がっていった。
演習用の出撃ドックは、滑らかな坂になっているのだが、僕が落とされたのはちょっとした防波堤のようなところだった。なぜ坂からではないんだろうか。それは僕が坂の方へと向かうのを、絶対に浮かばない!と拒んでいたからだ。
そんな僕を仕方なくその場で暁ちゃんは突き落としたのだろう。
だから暁ちゃんの「あ、ヤバイかも... 」なんて声は聞いてないったら聞こえてない!
「うぼっ!?うぼぼぼぼっ!」
水面に叩きつけられたときに体と水面が平行になっていたため、顔が水に浸かり、息が出来ないことにパニックに陥りぼこぼこと大量の空気を吐いていた。
急いで水から顔を上げると、ゼェゼェと大量の空気を肺に送り込みながら深く深呼吸をする。
「あっぶな!?暁ちゃん、殺す気なの!?」
パニックから復帰した僕は暁ちゃんへと怒鳴りかける。仕方がない、死にかけたのだから。あのままでは恐らく溺死していたことを考えればこれが普通の反応だろう。
「あれ?」
はたと気づく。なぜ、水に浸かって溺れていたはずなのに、顔を上げるだけで助かったのかと。どうして僕は水のなかで安定しているのかと。そしてなぜ、僕の体は全く水に濡れていないのかと。
答えは簡単だった。
「あれ?浮いてる?」
そう、暁ちゃんの言っていた通り浮いていたのだ。それも一部が水に浸かっているとかそういうんじゃなく、体全体がまるで空気のように水に沈まなかったのだ。
こんな重そうな装備を付けているのに、まるで無いかのように。
そんな僕に気づいたのか暁ちゃんが走りよってくる... かと思えば、なんか凄い焦ってあわあわとしている。
「どしたの、暁ちゃん。」
「ど、どどど、どうしたもこうしたもないわぁ!?ヤバイ、司令官に怒られる!?」
「なんで!?」
どうしたのかと聞いてみたらなんか凄い動揺している。しかも司令官に怒られると言っているし、何かしたのかと聞いてみても返事はなくただひたすらあわあわとして焦りに焦っていた。
あれ?と疑問に思う。
水に浸かっていないはずの暁ちゃんの体全身が濡れていたのだ。なぜ?と周囲も確認してみる。すると、暁ちゃんの周囲に留まらず、僕を中心に洪水でも起きたかのようにびしょ濡れになり、付近においてあったいろんなものを水浸しにしていた。
そこであっ!と気づく。そういえばさっき着水したときに、大きな波が出てたけどそういうことか!と。
いやぁ、あれがこんなことになるなんて暁ちゃんも思っていなかっただろうね~。それにしても、いきなり僕を落とした暁ちゃんの
ま、同情はしないけど。だって因果応報だもの。ただ、運よく僕が濡れなかっただけの違いのことだもん。
「あー、やっちゃったのです!?」
すると演習場所で待っていた電ちゃんと雷ちゃんが待ちくたびれたのかこっちへとよってきた。
電ちゃんはこの惨状をみて凄い驚いた声をあげた。
「これは... 暁ねぇ、どうしたらこんなんになるの?」
「ちょっとした好奇心、好奇心なのよぉ!だ、だから決して悪意があった訳じゃなくて!だから、だから怒らないでぇぇえ!!」
「こ、これはどうにも止められそうにないわ... 」
「な、なのです」
雷ちゃんがこうなってしまった原因を尋ねるも、暁ちゃんは司令官に怒られると騒いでしまって、結局何も話さずに雷ちゃんが諦めてしまった。
やっぱり暁ちゃんが可哀想になってきた... 仕方がない、同情してあげよう。
それから僕は雷電ちゃんにこうなった訳を話し、皆で司令官に謝りに行くことになった。
僕のなかで、これは暁ちゃんに対する一つの貸しにしようと心に決めた。
誤字、脱字等があればよろしくお願いしっま~す☆