響になった僕は人の温もりを知る   作:緒兎

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 すみません少し遅れました。

 なにやらボーッとして過ごしていたら気が付いたらだいぶ日にちが経っていて焦りましたよ、ほんとマジに。


引き揚げ

 「そんな... 事が... 」

 

 僕は今の話を聞いて、なぜか共感してしまって涙が溢れるとまでは言わないが、流れていた。

 茶髪の子も、そんな話を今までに聞いたことがなかったのだろう、驚愕の表情をして僕を見ていた。

 司令官は深く帽子を被っていて表情は読み取れないが、悲しみのオーラを漂わせていた。

 

 「司令官... 何で響が居るのか説明して。」

 

 暁は目を涙で濡らし涙声ながらも、はっきりとそう言った。

 

 「... 暁、お前には辛い話になるだろうがそれでも聞きたいか?」

 

 「ええ」

 

 司令官が何やら決意したように暁に問いかける。勿論答えはわかっての質問なのか暁の返事に特に気にした様子はなかった。

 司令官もわかっていたのだ、この事はいずれ話さなければいけなかったことを、聞かれるだろうということを。

 

 「あれは、お前達がこの鎮守府に帰投した後のことだった。」

 

 僕はまたか... と思い司令官をみる。

 大事な事なのだろうけど正直僕にはよくわからないんだ。

 まだこの世界に来て3日も経っていないのだ、それも当然のことだろうが、わからないというよりも少し実感出来ずにいた。

 

 「まず、トラック伯地は鎮守府近海で沈んだ響の場所を特定したんだ。」

 

 「え、なんで?」

 

 茶髪の子が司令官の言葉に疑問を感じたのか頭にはてなを浮かべながら質問する。

 それは僕も気になった。なぜ、わざわざ沈んだ艦の場所を特定する必要があるのかと。

 

 「ああ、それはな... 鎮守府近海で沈んだ響を引き揚げようとしたんだ。」

 

 「!?」

 

 司令官の引き揚げようとしたという言葉に、暁は衝撃を受けた。そしてその顔を怒りに染め上げた。

 

 「なんて... なんてことをしたの!!!?」

 

 まさに鬼の形相といっても過言ではないくらい顔を怒りに染めて司令官に怒鳴っていた。それは、響がレ級にやられたときと同じくらいの怒りようだった。

 だが、僕にはなぜ怒鳴るのかわからなかった。それは茶髪の子も同じようで首を傾げている。

 引き揚げたらまた、一緒に過ごせるのではないか?と...

 

 「一度沈んだら... 二度とこの世に生き返ることは出来ないのよ!!!!この意味がわかる?!いや、わかっててやったんでしょ!!?これじゃ... これじゃあ、あまりにも響が可哀想じゃない!!」

 

 渾身の叫びだったのだろう、その顔からは涙がポロポロと流れていた。

 

 「暁、取り合えず落ち着いてくれ」

 

 司令官がそう言うと少しは落ち着いたのか、取り合えず話を聞こうと司令官を見た。

 

 「暁の言う通り響は引き揚げられたがその体には魂が宿っていなく、目を覚ますことはなかった。だが、それはわかりきっていたことだった。だからトラック伯地の提督は妖精さんに響の体を魂の受け皿にするように命令したんだ。」

 

 「ちょっと待って司令官。暁ねぇの話だとそこまで悪い提督じゃなかったと思うんだけど?」

 

 茶髪の子がトラック伯地の提督について聞く。実は僕も少し気になっていたところなので、司令官に目で催促する。

 これには暁もうんうんと頷いていた。

 

 「ああ、あの作戦の後トラック伯地の提督は疲労で倒れて病院へ運ばれたんだが、その病院で亡くなったようだ。死因は過労死だそうだ。」

 

 「え、じゃあ... 」

 

 「そうだ、トラック伯地の提督は代わっていたんだ。」

 

 それを聞き僕らはそれぞれ納得したように頷いた。

 

 「その提督がまた成績はいいが素行が悪いやつだったんだよ。まぁ、だからこんなことになってしまったんだが... 」

 

 「だからって... こんなことするなんてっ... 」

 

 暁はまだ見たこともないその提督に怒りをぶつけんと拳を握っていた。




 暁怒りすぎぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!

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