しかし今回は少し長くなってしまいましたねぇ。ほんと、困っちゃいますよ。まぁ、何も困らないんですけどね!
ブクブクブク
響が目を閉じると同時に、響の体の回りから気泡がブクブクと噴き出してきて、徐々にその小さな体を海底へ引きずり込まんと、呑み込んでいく。
その様子を見て暁は涙を堪えながらも笑っていた。響への見送りは笑っていようと、この短い間に決めたのだろうが、溢れ出てくる涙は隠せず、どこか歪な笑顔だった。
睦月達もまた、涙を堪えきれず次々と大粒の涙を流していた。
「フフフフ、サイゴノコトバガソレトハ、ワラワセテクレルナ!」
その様子を攻撃もせず黙ってみていた深海悽艦は、暁達とは違って笑いを堪えきれなかったのだろう大声で笑っていた。
暁はそんな深海悽艦をキッと睨むと、未だに涙を流し続けている睦月達に指示を出した。
「みんな... 逃げるわよ」
それは響の最後の言葉を聞き、その思いに答えようとする暁の答えだった。
睦月達もその答えに頷き、それぞれ深海悽艦を睨むとトラック伯地へ足を進めた。
「アハハハハッ!!ハヒッハハハハ... ン?」
暁達が逃げ出したのに気付いたのか深海悽艦は笑うのを止め、追いかけ始めた... 笑いながら。
「逃ゲタッテ無駄ダ。私カラハ逃ゲラレナイ」
ドォォォォォンッッッ!!!
「きゃぁっ!?」
深海悽艦がそう言うと、その巨大な砲が口を開き、一撃必殺の砲弾を打ち出した。
その弾は真っ直ぐに如月めがけ飛んでいき、トラック伯地へ向けて全力で滑っているその足に少しだがかすった。
「如月ちゃん!!被害報告!」
「くっ... 舵が壊されました!操舵不能!!」
「なっ!?」
それは今の状況からすると、絶望の報告だった。
かすったとは言ったもののあの巨大な砲弾が飛んできたのだどこか損傷してもおかしくはない。だが、いくらなんでも舵を壊されるとは思ってもみなかった如月は焦りに焦っていた。
暁も驚きを隠せないようで、その可愛い顔を驚きに染めていた。
「フフフフ、狙イ通リ... 」
「え... 」
深海悽艦がボソッと呟いたのを聞いた睦月は、驚愕した。
狙い通り、確かに深海悽艦はそう言った。しかしそれは通常では到底なし得ない、いや出来るはずもない芸当だった。
ただでさえ偏差があるのに、更に動きの早い駆逐艦に、それも回避行動を取っている所に、舵を狙い命中させるなんて、いくら練度の高い艦娘でも絶対に出来ないと言えるほどの、もし当たったとしてもそれはマグレだと言い張れるほどの芸当を、あの深海悽艦は狙い通りと言ったのだ。
いくらなんでも驚愕が隠せなかった。
「スクリューはまだ生きてるわね?じゃあ睦月ちゃん、いくよ!!」
「あっ、うん!」
しかしずっと驚いてはいられず、直ぐに現実に引き戻された睦月は、暁の指示をなんとか思い出して何をするのかを思い出す。
暁は、如月にスクリューは生きているかと尋ねたが、逆に生きていても真っ直ぐにしか進めないため、後ろの深海悽艦にいい的にされるだけだ。
なら、これをどう解決すればいいのか、それは簡単だ。
暁と睦月が、如月を引っ張ってやればいい。
「左!!右!!」
深海悽艦に聞こえない程よいボリュームで指示を出す暁は、睦月とともにすごい連携を取りながら、如月を引っ張り、左右へと揺れ動きながら回避行動を取っていた。
「クッ... チョコマカトウットオシイ!!」
最初に比べ、弾が一発も当たらなくなってきた事に深海悽艦はイライラを募らせていた。
だがそれは余計に弾を乱れさせるだけで、更に悪くなるという、悪循環をもたらしていた。
「み、見えた!!」
「逃ガスカァァァァ!!!」
とうとう、逃げ続けていた暁たちの目にはっきりと鎮守府が映った。
しかし逃がすもんかと、先程よりも砲撃を激しくする深海悽艦は、怒りのあまり我を忘れて撃ちまくっていた。
だが...
「撃てぇぇぇぇ!!!!!!」
ドォォォオンッッ!!!!
撃つのに夢中になっていた深海悽艦に、雷鳴のごとく音をたてて発射された九十一式徹甲弾が降り注いだ。
ズドォォォオンッッ!!!!!
深海悽艦は声をあげることも出来ず、その姿を消したのだった。
そして後に、この深海悽艦は戦艦レ級と呼ばれ、艦娘達から恐れられたのだった。
誤字、脱字等あれば宜しくお願いします。