恋雨~重装護衛艦『倭』~   作:CFA-44

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更新遅れ申した。CFA-44です。取り敢えず盆休みも何も無い中で書き進めるのキッツイっすね!職場が職場なんで文句言えねぇけどな!

そいじゃ本編逝きましょうかー!


予期せぬ共闘(後編)

坂東side

 

 想像以上だ。こちらの全戦力をぶつけてもアッサリ返り討ちにされるとは。練度、数の差で勝っていてもそれを覆す戦闘力を持った艦。噂に聞く超兵器と同等と言っても過言では無い。

「すみません、司令・・・負けてしまいました・・・・・・」

「いや、質と量で勝るはずの連合艦隊すら軽く捻り潰す超兵器というのと同等の力を備えた戦艦が相手ではどうにもならん。誘引作戦を立ててもすぐに対処されそうだ。」

「・・・・・・それでは航空攻撃ではどうでしょうか?」

 最も有効的であろう大量の航空機による波状攻撃。単独航行する戦艦相手に過剰のような気もするが、それでやられるような事は無いだろう。核攻撃すら無効化しまいそうなのだから。

「それも対策済みだろう。情報通りなら『改三式弾』という対空砲弾を有するそうだ。これを3秒に1発撃たれてみろ、ウチの航空隊なんてあっという間に全滅だ。」

「ではそうなる前に消耗させてみては?」

「ありえない事もないがあの機動力で動かれると捕捉自体が困難だ。・・・・・・考えてもキリが無いな。全員風呂に入ってから昼飯にしよう。択捉、彼等も呼んできておくれ。」

「分かりました。呼びに行くのはお風呂の後で宜しいですか?」

「勿論だ。」

 択捉が執務室から出て行くのを確認してから私はそっと引き出しを開け、そこに仕舞われていた一枚の書類を引っ張り出す。彼の性格を考察しろ、という軍令部からの妙な通達。彼に対してここまで詮索する必要があるのだろうか。持ってきた男は総長の命令と言っていたが総長が本当にそんな事をするとは思えんが書くしかあるまい。取り敢えず、第一印象は悪くなく、面白さを感じた。

 

『対超兵器及び対深海の任務であれば絶大な切り札である。以上。』

 

 と、適当に書いて判を押してやった。『重要な書類はきっちり書いて、どうでも良い書類には必要な事だけ書いて送りつけてやれ』と光部大将(大先輩)が言っていたのでその通りにしておいた。後悔はしていない・・・多分。

 

 

 

 

‐時雨side‐

 

 相変わらずだなぁ・・・・・・相手の艦隊の皆は悔しそうにドック入りしてたけど、倭が楽しそう(ボコボコ)にしてたから良しとしようかな。僕も見てて面白かったし。

 まあ、倭が手を抜いてるのが丸分かり、かな。主砲を使ってない時点で手抜き感が凄まじいし。というよりここの人達(単冠湾泊地)はまだマシ、と思いたい。

僕や夕立の時は駆逐艦(僕達)相手に容赦無く特殊砲弾も混ぜた主砲弾が雨霰と降ってきた上に、命中精度も相俟ってほぼ回避不可能。その上、倭本人が『弾薬節約』と称した|自重と速度を併せたタックルや蹴りといった《何処に当たっても確実に昇天しかねないレベルの即死級》攻撃を繰り出してくるから何としてでも避けなければならない。最初の頃は夕立共々海面を何バウンドさせられた事やら・・・・・・出撃前の演習じゃ阿賀野型(全員)とか山城が蹴っ飛ばされてたなぁ・・・・・・阿賀野さんと能代さんは当たり所が悪過ぎた(上に蹴りの瞬間だけ倭が本気を出した)から3kmくらい吹っ飛んで行ったのを良く覚えてる。危うくトラウマになる所だったみたいだけど。

そのおかげで、飛んでくる砲弾を目視回避出来る様になるまで訓練していなかったら今頃ここには居ないと言い切れる。

 倭の元居た世界は艦種や戦闘規模の大小など関係無く、至近距離で苛烈な砲雷撃戦を展開していた。こっちじゃまず有り得ない戦闘だけど、どの艦も被弾を覚悟しているのか、どれだけ被弾しても、火災が発生して焼け焦げても、浸水で傾斜しても、それでも沈む瞬間まで針路を変えず、決して退かずに撃ち続けていた。そんな映像を見ているだけで胃が痛くなったのは大分前の事。今はそんなに痛くなくなったけどね・・・・・・

 それで僕は何をしているのかって?倭の膝を専有してるのさ。ここは僕だけの特等席だからね。初めて会った時から大半は僕が専有してきた・・・・・・ああ、懐かしいなぁ・・・・・・専有する度に夕立や弥生から睨まれていた頃が。

「・・・・・・時雨、そろそろ降りてくれ。寝転がれん・・・・・・」

 寝転がる?それなら・・・・・・良い手がある。

「ん~じゃあ僕が転がしてあげるよ。」

「?」

 倭は気付いていない。こういう時はかなり鈍いのが難点なんだけどなぁ・・・・・・まあ、良いか。

 

「えいっ」

「?!」

 

 僕が膝の上に座っているから倭は僕への対応が限られてくる。ならばその隙を突いてあげよう。普段から心配させられる僕にもう少し役得があっても良いじゃないか。

 という事で向かい合った瞬間に倭に飛び付いてあげた。飛び付くと同時に唇を重ねる事も忘れずにやっておく。こうすればちゃんと僕の所に戻ってきてくれるよね?

「時雨?」

「ふふ・・・倭、今夜は楽しくなりそうだね//////」

「・・・・・・昨日もしただろうが・・・」

 二人して惚けている時に限って邪魔は付き物。弥生と矢矧が部屋の戸をノックする音で我に帰る。

『倭さん、時雨、居ますか?』コンコン

『提督から新しい連絡が届いたから持ってきたわ。』

「「・・・・・・」」

「?」コンコン

「・・・・・・どうした。鍵は開いているぞ。」

 余計な事を・・・・・・まあ何か大事な話かも知れないから仕方ないけどもう少し独り占めさせて欲しかったな。最近は演習でしか一緒の艦隊に居られないし、部屋に戻っても倭が哨戒任務に出ていたりでお互いに時間が合わなかったから余計にそう感じるのかもしれない。

「失礼、しま・・・なんで時雨が居るの・・・・・・」

「・・・・・・別に、良いじゃないか。」

「・・・・・・さっき択捉と会って言伝を任されました。『お昼です』だそうです。」

「・・・・・・ふむ。矢矧、新しい連絡事項の内容は?」

「読むわね・・・『艦隊旗艦を春風から倭へ変更。尚、倭は艦隊指揮を執りつつ遊撃配置とし、春風は地上砲撃の指揮を執れ。尚、可能な範囲でダッチハーバーも叩け。最終的な占領は米陸軍が担う。』以上よ。」

 あれ?夜雨さんに関しては何も言われてないような・・・・・・ま、まあ防空戦艦だから航空機を警戒させるんだろうね。

 

 

 

 

矢矧side

 

 あの演習を見ていたら思わず苦笑してしまった。ここへ来る直前、少しだけ似たような内容の演習をやったのだ。結果は時雨と夕立が倭を中破させた代償にこちらが稼動可能戦力の9割が撃沈判定を受けた。

その際に私は倭から蹴られたりしたのを覚えている。あれは痛いで済めば遥かに良い方だと思う。阿賀野姉や能代姉は後ろに回りこまれてから蹴飛ばされて4km先の海面で盛大な水柱を上げていた。回収された時に真っ青になって震えていた二人の姿は記憶に新しいわ。

「電探に感なし。今の所順調ね。」

と、そんな事を思い出しながら私達は曇天の中、アリューシャン列島へ向かっていた。

現在の布陣は、夜雨を中心とした高雄、能代、潮、秋月、照月で第二艦隊を編成。残りの艦で春風を中心とした第一艦隊を編成していた。倭は私達の最前方で先導して警戒してくれている。

『モンスターよりサクラ。攻撃隊発艦用意。』

『サクラ、了解。直ちに準備に移ります。』

『ラビリンスよりモンスター。ナイトメアは整備中ですので変わりに桜花改を発進させます。』

『・・・・・・こんな時まで?出撃まで時間はあった筈だが、昨日の内に済ませていなかったのか?』

『・・・・・・アレ整備に一週間掛かるんですが・・・今回は妙に長いみたいです。』

『・・・う~ん(― ―;)・・・航空迎撃は中止。ミサイル以外での対空戦闘の用意をしておけ。以上。』

 新しく搭載された電探を見れば、私達の前方から多数の航空機が接近している事が分かる。

『・・・・・・ウィンド、アローは改三式で対空射撃用意。こちらも改三式で対応する』

『久し振り、じゃないけど・・・やってみますか・・・アロー、準備は?』

「出来ているわ。初めて撃つから何処まで出来るか分からないけどね。」

 さっきの『アロー』とは作戦遂行中の私の呼称だそうだ。『矢』矧だから、らしい。『ウィンド』は春風の事。『ラビリンス』は夜雨。そして『モンスター』は倭。

 既に改三式を装填し終え、照準を合わせている倭の姿を視界に捉えた瞬間、

 

『撃ぇ!』

 

倭が発砲した。この曇天で視認すらしていないのに良く見えるものね。いや、あの主砲だから出来る芸当なんだ。倭との距離は約2km程度。それなのに私が少し揺れた。

 大和の46cm砲の発射音が可愛く思えるほどの轟音を発して6発の改三式弾が敵航空隊目掛けて飛翔していく。が、改三式弾が炸裂する直前に敵機は大きく散開する事で改三式弾の効果範囲から離脱しようとした―――それすら読まれているとも知らずに。

 散開して被害を最小限に止めた敵機は目下の脅威である倭と、航空隊を有する龍鳳に狙いを定めて―――空で塵となった。

 

『改三式、第二射の炸裂確認。敵航空隊の損亡率90%以上。各艦個別に応戦せよ。後始末を頼む。』

 

 本当に先を読んで攻撃するのが上手い。と、そうこうしている間に残存機が隊列を組み直しながら龍鳳に突っ込んでくる。

 春風、対空射撃開始。私もそれに併せて対空射撃を開始。前部主砲が改三式弾を矢継ぎ早に吐き出し、敵機を業火で包み、空から叩き落す。

中口径砲用にサイズが縮小されたとはいえ、連続投射すれば強力な対空砲火を張る事が出来る。何しろ、近くで炸裂しただけでも航空機に致命傷を与えるほどの衝撃波と爆風を発生させるのだから。

『ほ~れほれ、さっさと墜ちちゃいなさ~い。』

「ここを抜けられると思っているのかしら?(春風ってこんな性格だったかしら?)」

 龍鳳へ向かう敵機は100%撃墜。撃ち漏らしは皆無。龍鳳自身も改良された機関を積んでいるのでそれなりに速くなっているのが幸いね。

 この作戦が終了した後、複数の艦娘改装に伴い、龍鳳が軽空母から日本海軍空母の中で最大級の空母になる等、矢矧は露ほども思っていなかった。

 

 

 

 

倭side

 

 早々にアッツ島を下した後、敵基地(若しくは敵空母)から発進したと思われる航空隊を排除した後、いまだ晴れ間の見えない曇天に包まれつつキスカ島へ接近していた。(本来はやらなくても分かるのだが最悪の事態は避けなければならないので)電探と音探と海図を何度も照らし合わせながらワザと迂回したり広域に妨害電波を撒いたりして敵艦隊との交戦を避け続けた。止むを得ず交戦した際は特殊弾頭搭載の巡航ミサイル(おはようとさようならの挨拶)をして改三式弾で塵も残さず(程々に)蹴散らし、夜雨と春風の助力を得て可能な限りでキスカ島への最短ルートを通っていた。

「さて、初月。お前の気持ちは分からなくもないが超兵器(バケモノ共)相手に第二次大戦時代(旧式)装備の駆逐艦でどう戦うつもりだ?まさか理想だけ、というわけではあるまい?」

「ああ。だから旧式装備でも奴等に勝てる様に僕を鍛えて欲しい。出来るだろう?」

 ただの阿呆かと思っていたが、コイツは想像以上に阿呆だった。勿論良い意味と悪い意味の両方でだ。今の初月で超兵器の攻撃に30~60秒耐えられたら10点(うめぇ棒1本)をあげようかな。

「・・・・・・既存艦娘を可能な限り配置して浅瀬へ誘引したところで空爆と艦砲射撃と一斉雷撃(皆で囲んでフルボッコ作戦)を実施するとして、成功率はどれくらいだとお前は思う。」

「・・・・・・遠浅の海域に仮組みの燃料基地でも作って誘き寄せた所を押し潰す方法か。」

「・・・・・・そもそも誘引する為に何を餌にするのかは何でも良いとして。可能性は0では無いが押し潰し作戦はほとんど不可能に等しい。奴等は自分の艦内で無尽蔵に弾薬と燃料を生み出しているだろうし、生半可(大和砲)な砲撃では傷1つ付かん装甲と多量の迎撃兵装、厄介な防御システム(超高速自己再生能力)を有する。仮に構造の弱点を突いたとして、アイツ等が何の対策も施さないとでも?」

「・・・・・・」

 もし夜雨達がここに居たら電子戦とか言い出すだろうが、まあそれすら対抗策を備えているだろう。超兵器達も油断こそしては居ないが夜雨は然したる(倭ほどの)脅威とは認識されていないかも知れないが。

「・・・・・・それ等をこちらが見抜いていても奴等にとって質で量を磨り潰す(一対多)事は朝飯前、というかそれが大前提であり当たり前だ。“絶えず攻めさせてもらえた”としても、こちらが僅かな隙でも見せれば次の瞬間にはこちらに死が降り注ぐ。それに、奴等は最近単独行動を止めて最低でも二隻一組(ツーマンセル)で行動するらしい。元々単艦行動を前提にした連中が二隻一組を取ったとなればお前等の生存率は激減・・・・・・いやほぼ0%に近い。」

もし話を聞かずに勝手に突っ走った上で死んだとしても俺は知らぬ存ぜぬを通させてもらう。寧ろそんな奴は、戦場には不要。と、いっても独断専行を度々やらかす俺が言えた義理ではないが、それなりに話を聞いてから行動している(と思う)から微々たる問題だ。

「・・・・・・まあ、奴等の情報収集能力は俺以上に優れているからな。奴等の解析能力の前じゃ俺達の暗号文の解読なんて絵本を読むくらい簡単だろう。作戦内容を即座に解読されてまず近付いて来ない。」

「それなら高高度絨毯爆撃は?」

「さっきも言ったはずだ。奴等は質で量を磨り潰せる存在だと。この世界に存在する全ての航空機を掻き集めても出来るかは怪しい。とはいえ、撃沈出来る可能性は0ではないがな。」

そう言ったものの、神電Ⅱの搭載武装一覧にあった10t爆弾こと『ガイアクエイク』の直撃を喰らっても平然としていられる一部の超兵器達が居る事を想像すると何とも恐ろしい。

そういう意味でも特に要注意なのは全体が高レベルで完成されている播磨(ロマンのわかる超兵器その1)と膨大な数のハウニヴーⅣを保有するムスペルヘイム(皆勤賞)、鈍重だが重装甲なら播磨以上なハボクック(ブリテンのHE☆N☆TA☆I☆空母)、そして究極超兵器であるヴォルケンクラッツァー(傍迷惑な四国分断野郎)ルフトシュピーゲルング(分断野郎の影武者)だろう。

 更に言うなら潜航型超兵器も色んな意味で脅威でしかない。俺を中破させ、旗風が沈む切欠を作った新型超音速酸素魚雷(ゲイボルグ)特殊弾頭誘導魚雷(デスランス)が標準搭載されていたら。それ等を艦娘達が気付きにくい深度、更に言うなら遥か遠方から海面を埋め尽くす規模で無限に雷撃してくるとなれば何の対応も出来ず、海の藻屑になるのは想像に難くない。

 如何にこちらが情報面で、戦力面で有利になったとしても、決して油断してはならない。それを覆し、全てを葬るのが超兵器なのだから。更に付け加えるならば、奴等の量産体制が整っている恐れがあった。それ等を横に並べて撃たれた日には、世界地図など最早不要と化すだろう。

「ま、その為に俺が居る。単艦で超兵器を相手にする際の殿には向いているだろうよ。取り敢えず、今後のお前の処理は笹川提督に委ねる。事前に通達があれば対応も可能だったがな。」

「仕方ないだろう。そんな事を知らせて傍受でもされていたらここに僕は居ない。今頃、独房か・・・・・・最悪慰安艦隊に編成されているさ。」

「・・・・・・(慰安艦隊を組む奴は根こそぎ殺っても問題は良いな。)」

「まあ、僕を野放しにするつもりは無かったんだろう?」

「・・・・・・一応防空駆逐艦だからな。対空戦力としては申し分無い。っと、そろそろ射程に入るな。電探、もうそろそろか。」

『はい。あと10分もすればキスカ島が射程に入ります・・・が、周辺に敵艦隊複数を捕捉。それと・・・ダッチハーバー方面へ向かう多数の艦隊を捕捉。戦力の増強でしょうか?』

 ふむ、事前資料通りの艦隊が展開しているか・・・・・・ザっと捕捉したのは全部で6個艦隊と、そこから分離した幾つかのピケット艦だ。

 副長や砲術長を見ると向こうもこちらを見てーーー

 

(殺ってしまいましょう。)

 

ーーーと、殺る気満々であった。勿論俺も容赦はしない。まずは・・・一番遠い艦隊から始末だ。

「主砲、通常榴弾装填。」

 前部主砲2基が目標に向けて再照準を開始。発砲・再装填と繰り返して最遠方の3個艦隊を早々に排除。

「モンスターよりラビリンス。こちらがマークした艦隊をミサイルで潰せ。発射ポイントを探られないようにな。」

『ラビリンス了解。繚乱2型、発射!』

 夜雨から複数の白煙が吹き上がり、海面に沿って敵艦隊に飛翔していく。撃ちっ放し(ファイア・アンド・フォーゲット)機能があるはずだから問題は無いだろう。これで残り2つ。

 目標のキスカ島へ接近する前に龍鳳に攻撃隊の準備状況を確認し、再び夜雨にミサイル攻撃指示。残った艦隊も、何の抵抗も無く始末出来た。これほど数が少ないという事はダッチハーバー島に戦力を集めているのは正しかったのだろう。

 

 

 

 

???side

 

 寒い。暖房器具があるとはいえ、北極海を通る際に故障されたのでは堪ったものではなかった。更に言うなら今の季節、とやらは『夏』なんだそうだ。暑い季節だというのに極点を通る為だけに暖房器具を出しているという奇天烈なこの状況をどうにかしたい。俺は面倒が嫌いなんだ!

『・・・早く帰りたい・・・・・・』

「・・・・・・ぼやくな・・・・・・俺とて同じ気持ちなんだからな・・・・・・」

『うるせぇ。そっちはHITANI製のエアコン完備だろうが。こっちはそれよか低スペックなんだぞ。』

「HITANIはいいぞ。」

『・・・・・・頭痛くなってきた・・・・・・』

 はっはっはっ。ヤツにはHITANI製エアコンが配備されていない。調達部門が数を揃えるのに手間取っているらしく、旧型のエアコンを搭載している。

「良いではないか。貴様は“量産され始めている”のだからな。」

『へっ、それ言われちゃレムレース達の方が増殖してんだろうが。出発直前の時点で700隻は揃ってたらしいぜ。』

「ほお・・・それはまた・・・」

『計画上じゃ、あと1300隻も造るそうだ。』

「シーレーン寸断か。ま、常套手段だろうな。」

 超兵器量産計画によって現状はレムレース級とヴィントシュトース級は2000隻と1000隻という形で量産化が始まっている。問題は学習させたAIが何処までの働きを見せてくれるかで摩天楼が采配を下すだろう。

 と、俺達と同じ場所へ向かう艦隊をレーダーで捕捉した。尤も、こちらとの距離は200kmと互いに砲撃戦に持ち込んでも当たる道理が見当たらないが。

 大型戦艦1、軽空母1、巡洋艦4、駆逐艦6で構成された2個艦隊分の戦力。軽く捻る事は可能。そう判断していたが、レーダー画面に映るその艦隊の前方に一瞬だけ極薄い点が表示された。直感的に噂の倭だと推測をつけて通信で呼びかけてみる。吉と出るか、凶と出るか・・・・・・

 

「こちら、拠点攻撃艦隊旗艦“テオドリクス”。倭、聞こえているならば応答しろ。」

 

 出来るなら出て欲しい。ダッチハーバーを楽に攻略できるのならそれに越したことは無いからな。

 

『・・・・・・何の用だ。』

 

 僅かな間を置いて通信機から明らかに不機嫌な男の声が聞こえてきた。向こうの戦力的に占領は出来なさそうだが、こちらには上陸舟艇も拠点制圧に必要な装備が揃っている。故に呉越同舟となっても利害が一致しているならば向こうも妥協は考える。尤も、余程の頑固者でなければ、という前提が必要なのだが。

「お前達、ダッチハーバーを叩くのか?」

『・・・・・・それがどうした。』

「いや・・・・・・ニホンのコトワザに『呉越同舟・・・』そう、それだ!我々もダッチハーバー攻略が目的でな。どうだ?こちらには上陸して直接叩く手段も備えているが。」

『・・・・・・仲間内で決める。それまで待て。』

「仲間内で決める必要は無い。お前だけが賛同してくれればそれで済むのだ。お前以外の火力は一切不要、という事だ。」

『・・・・・・』

『ふざけるのも大概にしない!ダメよ倭。コイツ等の本当の目的は・・・『分かった。癪に障るが“今だけ”協力させてもらう。』っ?!』

「感謝する。先陣を切るのはヴィントシュトースとお前で良いな?」

『問題無い。こちらは強襲装備に換装すれば良いからな。』

「了解した。ノイズをばら撒くがそっちの奴等(雑魚共)は大丈夫なのか?」

『・・・・・・ノイズ中和装置は持たせている。問題は無い。』

「そうか・・・・・・じゃ、行こうか。」

速力60ktで固定。俺の両側をアラスカ級をベースとしたヴィントシュトース6隻が駆け抜けて倭と合流する。

こう言ってはなんだが、ヴィントシュトース達は本体の1隻以外は無人艦だ。自律戦闘型AIを搭載している上に安上がりかつ簡単に建造できるのでレムレースと共に大量生産が始められていた。搭載しているAIも学習装置と戦闘で破壊されても学習し蓄積したデータを次のAIに転送するシステムを有する為、それなりに高価だが問題なく量産されている。

全ては我々の本拠地の周辺から回収できる資源が世間一般で言われている量の何十倍もあるからだ。勿論それを狙った国が交渉を持ちかけてきたり『これは我々のものだ!』と言い張って盗もうとする東洋人に似たバカ共がいたが、キッパリと断ったり、その場でCIWSの実弾射撃の的になってもらっているので不用意に資源をくすねられる事もない。

 ま、それはさて置き、まずは艦砲射撃とロケット弾雨で抵抗力をさっさと奪いますか。もう既に射程に入っているしな。

 兵装に意識を集中させると、6基の複合噴進砲が動き出す。この複合噴進砲は45cm、60cm、80cmの対地ロケット弾を発射する大型ロケット砲である。他にも45.7cm75口径三連装電磁投射砲(51cm50口径に匹敵)8基と対空砲、対潜兵装を備えているが、まあ精々自衛程度が限界なんだけど。

 倭を見れば、艦を格納して本人が直接海上に出てきていた。なんか背中にクソデカイ箱が幾つかあるんだが・・・・・・アレはなんだろう・・・・・・ロケットポッドにしてはデカ過ぎるような・・・・・・右腕に連装ガトリング砲、左腕には・・・・・・また8連装のロケットランチャー・・・・・・というか左脛に付いているその鉄板はなんだ。蹴りか?蹴りに行くのか?蹴るとしても何を蹴るんだ?

 と、考えを巡らせているうちに目的地が目の前に迫っていた。警備の艦隊が続々とこちらに向かってくるが、それより先に動いたのはAI達。持ち味の高機動を活かして被弾する事なく敵艦隊を葬っている。その間を俺が抜けていき、その後ろに倭を隠しながらウェルドックを開放。新型超音速魚雷搭載艇とレーザー砲搭載艇を『黒きG』の如く大量に放出する。上陸用舟艇は今しばらく待機だが・・・・・・今俺の事を『変態雷撃艇母艦』とか『GK搭載母艦』とか言った奴、表に出ろ。特殊榴弾装填済みの80cm噴進砲に詰めて某国の38度線に叩き込んでやる。

 

 

 

 

春風side

 

 信じられなかった。今まで利害の一致・不一致に関係なく超兵器を沈めてきた倭が手の平を返すように共闘を承諾した事が理解できない。けど夜雨にも頼れない(頼る気は毛頭無いが)今は倭を信じるしかない・・・・・・やる事やった後に起こる事が想像できてしまうから物凄ーーーーーく不安しか出てこない。

「・・・時雨、変じゃありません?」

『・・・・・・』

「時雨?」

『・・・あ、あぁごめんごめん!つい倭に見惚r…ゲフンゲフン…つい惚けていたよ。で、何かな?』

 このやろ・・・・・・言うに事欠いて惚気るか。負けてられないわね。流石に倭が無意識に引き寄せられるだけある・・・・・・帰りに倭へ夜襲でも仕掛けたろか・・・・・・ってそんな事言ってる場合じゃない!

「何時もは頑固な倭が妙に相手の言う事を聞いているなぁって。まあ何が起こるかは考えたくは無いというのが本音かしら。」

『・・・・・・ねぇ、春風。倭と超兵器が揃っていて、尚且つ共通の敵・・・・・・と言うよりは粗大ゴミくらいにしか認識して無いだろうけどそんなのが居るならどうなるか想像し易くないかな。』

「呉越同舟、ねぇ・・・・・・私からしたら反吐が出るくらいお断りなんだけどなー・・・・・・」

『それは倭も同じだと思うよ。でも使えるならーーー』

「ーーー利用する、ね。少々リスクは高い気もするわ。」

『まあ倭だから・・・・・・ねぇ?』

「そうね・・・・・・」

 

この後、深海棲艦達に起こった悲劇(?)は私ですら目を背けて現実逃避したくなるモノーーー

 

ーーー言い換えるなら『全てを焼き尽くす暴力(OverdWeapon)』による徹底的な蹂躙でしかなかったから。

 

 

 

 

 

 




誤字脱字等ありましたら報告の程願います。


次話:テオドリクス(支配者)


あくまでタイトル通りになるとは限りませんのでご了承ください(ヲイ)

今回のNG


 あの演習を見ていたら思わず苦笑してしまった。ここへ来る直前、少しだけ似たような内容の演習をやったのだ。結果は時雨と夕立が倭を中破させた代償にこちらが稼動可能戦力の9割が撃沈判定を受けた。
その際に私は倭から蹴られたりしたのを覚えている。あれは痛いで済めば遥かに良い方だと思う。阿賀野姉や能代姉は倭が装備していた沢山の推進器の付いた柱で殴り飛ばされて4km先の海面で盛大な水柱を上げていた。回収された時に真っ青になって震えていた二人の姿は記憶に新しいわ。


阿賀野型姉妹にはブーストチャージをやってもらわねばならぬ。何の為の飛行甲板d(ガゴォン!! ピロリン♪ チャージマスター1/1)

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