恋雨~重装護衛艦『倭』~   作:CFA-44

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改変により、春風が居る事を示す文章を追加しました。

後半はかなり酷い書き殴りと他作者様の艦娘をかなりボロクソ言ってます。大変申し訳ありませんがそれが???達の認識であるという事をご理解ください。



規格外な2隻

夜雨side

 

敵艦隊を殲滅した後、辿り着いたのは巨大な環礁(ラグーン)。その内部に存在する大小様々な島々。かつて大日本帝国海軍の一大拠点でありこちらの世界でも日本軍の拠点としてあり続けるトラック諸島。今私の周囲で航行する艦船達もここを拠点としているようね。

『観測班よりCIC。倭より発光信号あり。『我々ハ南水道ヨリ環礁内ヘ進入スル。本艦ニ追従サレタシ。』以上です。』

「CIC了解。針路そのまま。巡航速度を維持して。」

「針路そのままようそろー!巡航速度維持!」

 先導してくれている倭からの発光信号を受け取ったけど何で無線を使わないのかしら。そんな疑問を浮かべて、さっさと揉み消す。彼には彼なりのやり方があるかもしれないしそこまで口出しする気は私には無い。

 先導されるがまま付いて行くと巡航速度のまま南水道を通り抜けていき、左側に金曜島、水曜島、月曜島、右側に秋島を見ながら進む。私達2隻の巡航速度では30分もしないうちに春島と夏島へ到着する。薄暗いCICのモニターには大和型戦艦を筆頭に日本戦艦群が休んでいる『戦艦錨地』なる場所が映されていた。この時、大和型が3隻居る様に見えたが、良く見ると光学兵器のジェネレーターが2つ見える。そして3隻目が『大和型』ではなく『倭型』かも知れないと判断させたのは搭載された巨大な艦砲。砲身がやや短い事を除けば同サイズのものであると分かる。

(口径は違うけど61cm砲を載せているという事は多分だけど倭と名乗る戦艦の同型艦か、準同型艦かな。前級の可能性も否定出来ないけど…。)

「これだけ集まっていると壮観ですね。」

「そうだね~。」

等と言っている内に倭から発光信号が届いたらしく、艦橋から報告が来た。

『観測班よりCIC。倭から発光信号。『本艦ハ定期点検ニ向カウ。貴艦ハ戦艦武蔵ノ側ニテ待機セヨ。尚、上陸ハ夜雨ト随行員1名ノミ許可スル。後デ内火艇ヲ向カワセル。』以上です。』

「副長さん、私は上陸しなくちゃならないから指揮を任せますね。」

「了解。任されました。随伴は?」

「凪紗ちゃんか鈴奈ちゃんに頼みたかったんですけど、2人は多分神電Ⅱ弄ってて手が離せないと思う。あ、龍奈さん来れます?」

「大丈夫だよ。私もあの戦艦に興味出てきたし。」

指定された様に武蔵のすぐ側に艦を停止させる。誘導してくれた本人はというと、既に浮きドックで点検を受ける準備をしていた。

 5分もしないうちに内火艇がこちらへ向かってくるが、乗っているのは数名の妖精さんだけのようだ。甲板に出てラッタルを降ろすと丁度良い位置でピタリと止まり、5名ほどの妖精が甲板へやって来る。4名が米国製の武装をしているものの、真ん中に居る1名は黒に近い濃紺の制服を着込んでおり、この妖精が5名の中で格上の存在である事を意味しているのが分かる。

「出迎えご苦労様です。私が春雨型防空戦艦夜雨です。あ、こちらは整備改良班の龍奈さんです。」

「どうぞ宜しく。」

「艦長は私用でこちらに来れなくなっているので倭副長以下5名、お迎えに参りました。内火艇へ向かいましょう。もうすぐスコールが来ますので。」

艦長なのに私用で来れないって・・・大丈夫かな?

「大丈夫ですよ。どうせ時雨ちゃんから御説教されているだけでしょうし。」

『ゑ?』

倭副長さんは私の心を読み取ったみたいに返してきたのでかなり驚いた。

「何時もの事ですよ。大抵は他の艦娘と雑談をしていたり共同作業をして部屋に戻ると時雨ちゃんが待ち構えてるみたいでその都度御説教されてるんです。時々部屋に入れてもらえなくなって朝になっても入れないみたいですよ。」

用意された内火艇に乗り込んで春島へ向かい、岸壁に横付けした駆逐艦や輸送船を眺めていくと、3隻だけ明からに異様な武装を纏った駆逐艦が居た。

空中投影型ディスプレイから艦のデータベースを漁ってみると【白露型駆逐艦】に辿り着いたが、2基の魚雷発射管が大型化し、12.7cm連装砲が57mmバルカン砲へ変更されている。

「あれって・・・こっちの世界の駆逐艦じゃないですよね。」

「あぁあれはこちらの世界の時雨ちゃんと夕立ちゃんですよ。武装だけ載せ変えたんで違って見えますけど。多分今頃明石さんと夕張さんがあの魚雷搭載用に新型船体を開発が終わった頃でしょうね。それに併せて主砲やら補助兵装やらも開発出来れば良いんですけどね。正直57mmバルカン砲じゃ雀の涙も良い所です。せめて88mm連装バルカン砲(アハトアハト)か127mmガトリング砲・・・最悪プラズマ砲かパルスレーザー砲が載せられたら良かったんですけどね。」

 

夜雨(アッサリダメ出しですか・・・・・・)

 

龍奈(ですよね~・・・・・・)

 

もう1隻は【こんごう型イージス護衛艦】をベースにしたものだとすぐに分かったけど、武装が127mm単装速射砲1基ではなくて15.5cm砲3連装砲4基、5連装の魚雷発射管2基、多数のCIWSと既にイージス艦の定義から逸脱している。極め付けはミサイルVLSが全て後方に集中している事だ。

「一番後ろに居るのが春風ですね。倭型専属護衛艦計画で建造された旗風型イージス艦の3番艦で、我々と同じ世界から転位してきた艦です。」

 

夜雨(専属護衛艦・・・・・・これも聞いた事無い・・・・・・)

 

「もうすぐ着きますので降りる準備をお願いします。」

少し話している間に桟橋が近付きつつあり、少し離れた場所では輸送船から荷物を積み降ろしたり積み込んだりしている。

 その桟橋の近くで釣り糸を垂れている紺色の軍服を纏った男性が居た。もしかするとこの人が“倭”かもしれない。内火艇から降りると近付いて声を掛けてみる。

「あの、少し宜しいですか?」

「はい?何でしょうか?」

振り返った男性の顔は端整な顔立ちで穏やかそうな蒼い瞳を持ち、胸元に少将の階級章が輝いていた。この人が・・・・・・と思ったが何となく無線で会話した時と妙な違和感を感じる。“倭”はもう少し低い声だった筈。と言う事はこの人は別の人物だという事。

「貴方が“倭”ですか?」

「いえ、私は倭型重装護衛艦2番艦“雨月(あまづき)”と申します。」

何と言うか・・・人違いだった・・・しかも弟さんだった・・・とはいえ弟という存在に辿り着けたのはまあまあの収穫だ。そんな事を考えていた私に雨月さんは、

「兄上でしたら貴女の後ろに立っていらっしゃいますよ。」

と言い放ち、振り返れば私より大きな男性が立っていた。雨月さんと同じ蒼い瞳だが穏やかでありながら全てを捻じ伏せんばかりの力を秘めた眼光が特徴だ。胸元には大将の階級章。何より驚いた事は2人とも瓜二つだという事。見分けるには帽子の被り方くらいしかないだろう。

「倭型重装護衛艦1番艦“(やまと)”だ。貴官の名は?」

「ごめんなさい、名乗り遅れましたね。私は春雨型防空戦艦2番艦“夜雨(よるさめ)”です。」

「春雨型の夜雨、か。了解した。もう分かってると思うがそこで釣り糸を垂れてるのは弟の雨月だ。」

この時、無線で聞いた声と全く違和感が無かった事で間違いなく私達と共に敵艦隊を殲滅した戦艦の主であると判断できた。そんな彼の後ろに隠れてもう1人誰かが立っている。こちらをジッと見た後引っ込んで行ったがチラッと見えた服の生地で白露型の誰かだとすぐに察した。

「時雨、隠れている必要は無いだろう。彼女は出て来ても危害は加えたりしないぞ。同じ艦娘同士仲良くしてくれ。」

「・・・・・・・・・」ジー

何かめっちゃ見られてる。そりゃ白露型の制服と似てるから仕方ないんだけど・・・・・・

「あ、私は夜雨の整備改良班の龍奈と言います。以後宜しくお願いします!」

「倭だ。宜しく。早速だが執務室へ案内しよう。俺の艦内よりは広くて通り易いから迷う事もないだろう。」

何か奇妙な言葉が聞こえた気が・・・・・・ともあれ、彼の後ろを付いていくと、突然彼の歩みが止まった次の瞬間、彼に影が差した。

 何事かと上を見上げようとした瞬間、黒い物体が彼目掛けて急降下を掛けた。すわ敵機かとも思ったが全く違う。それは金剛型高速戦艦1番艦金剛だった。

「ヘーイ倭ー!バーニングLove!」

「・・・・・・はぁ」

溜息をつくと同時に抱き付こうとした金剛を彼はーーー

 

「普段からTPOTPOと抜かしてるのは何処の誰だ。」グシャァ

「ソ、Sorryネ・・・・・・」メキメキ

 

ーーー勢いを殺さずに遠慮無く顔面から地面にめり込ませた。いや、重力と腕力を使って加速させてフェイスクラッシャーというオマケまでついて来た。が、この騒動はこれで終わりではなかった。

 駆逐艦ならではの高速性を以て猛ダッシュで迫ってくる艦娘が1人。白露型駆逐艦4番艦夕立だった。

「倭さーん!お帰りなさいっぽいー!」ダッシュ

「・・・・・・」パチン

「ん。」シュッ

「へぶっ?!」ミシミシ

「あれほど体当たりをしちゃダメって注意した筈なのに全く分かっていないようだね夕立?」メキメキ

「ご、ごめん・・・なさい・・・・・・っぽい・・・・・・」パタリ

今度は時雨が綺麗にアイアンクローを決めていた。何と言うか一糸乱れぬ動きで2名を瞬殺していた。

「どうしてこうなった・・・・・・」アタマカカエ

「・・・・・・」ポカーン

「取り敢えず時雨はこのバカ2人を衣笠にひk「衣笠さん参上~」コイツ等をお仕置き部屋へ連れて行け。客人の邪魔になる。」

「分かりました~」クスクス

お仕置き部屋?何か凄く不穏な言葉でしかないんですけど・・・気絶したままリヤカーに乗せられて衣笠に連れて行かれた2人に心の中で両手を合わせて冥福を祈りつつ執務室へ向かう。その道中で倭さんが駆逐艦達に群がられたけど、全て時雨が追い払っていた。ただ笑っただけだというのに大抵の駆逐艦は蜘蛛の子を散らすが如く逃げ出していった。怯まない子も何人か居たけどこの際敢えて語るまい。それほどキリが無いくらい彼は艦娘達から好意を寄せられている。

「ここが執務室になる。道順は忘れないでくれ。」

「分かりました。」

「倭だ。報告に来た。ついでに補給明細も持ってきた。」コンコン

『鍵開いてるから入って良いわよ~って言うかその明細はもう見たくない!今直ぐ破り捨てて!』

「失礼する。」

「失礼します。」

執務室の中は綺麗で隅々まで手入れされているのが分かる。それくらい綺麗だ。中に入ってすぐの場所に小さな応接机と対面する形でソファーが2つある。その奥に大きな執務机が置かれ、達筆な字で『四季七曜』と書かれた掛軸が執務机の後ろに飾られている。

「ようこそトラック泊地へ。私がここで提督を務めている笹川よ。階級は大佐だけど気兼ねなく話しかけて頂戴。どうせ階級なんて有事の際以外は紙屑同然だし。」

「春雨型防空戦艦2番艦の夜雨です。暫らくの間ご厄介になります。」

「春雨型防空戦艦2番艦、夜雨の整備改良班の龍奈です。宜しくお願いします。」

こうして元の世界に戻るまで彼等の拠点で過ごす事になった私達は御互いの情報を交換していく。少しでも協力出来る様にしないと生き残れそうに無い気がしなくもない。

「で、夜雨は

 

・実弾兵器と光学兵器の混載

・ライフル砲ではなく滑腔榴弾砲

・誘導砲弾を撃ち出すAGSと呼ばれる速射砲を持つ

・核融合原子炉搭載で理論上航続距離は無制限

・防空戦艦の性質上、長射程の対空・対艦誘導兵器を多数搭載

・対潜攻撃可能

・高角砲と速射砲を足して2で割ったような無人砲塔を持つ

・対空火力の効率は倭より上

・90kt以上発揮可能

・超重力電磁防壁という防御兵装あり

・装甲は対46cm装甲だがこちらの世界基準で行けば対51~56cm装甲に相当

・大型の弾薬倉庫を持つ

 

・・・・・・はぁ・・・倭、アンタまた資材を盛大に消し飛ばしてくれそうな娘を連れて来たわねぇ・・・・・・夜雨さん、貴女は取り敢えず『防戦』って艦種に突っ込んどくわ。あ、倭は一応『重装護(※1)』って言うのに分けてあるから後で渡す書類を確認しといて頂戴。」

「・・・わ、分かりました。この後私達はどうすれば良いですか?(何だかあまり歓迎されてない気もしますね・・・)」

「そうね・・・(ヤヴァイ・・・なーんも考えとらんだ・・・・・・)」

特徴について大まかに言われた後、どうするか問い掛けたのだが、笹川の顔には冷や汗が少し浮かんでいた。

 

夜雨(何も考えてなかったパターンですね……。)

 

龍奈(絶対に何も考えて無いですね…)

 

「せめて泊地の皆に自己紹介とかさせるか考えてくれ。また霧島や大淀にどやされるぞ。」

「ぐぬぬ・・・と、取り敢えず夕食まで適当に案内してあげて。急過ぎて空き部屋が無いから暫らくは自分の艦で過ごしてね。何か足りなくなったら倭か時雨に伝えて。」

「・・・分かった。付いて来てくれ。」ガチャ

『し、失礼しま~す・・・』パタン

 変な会話だったなぁ、と思いつつも倭に付いて廊下を歩いていき、最初に案内された場所が食堂だった。

「取り敢えずここが食堂。奥に見えるカウンターで札のやつを注文すれば間宮とか鳳翔が作ってくれる。腕に自身があるなら自炊しても良い。」

見た所、元は古い大衆食堂だったものをかなり大きく改修したらしく、壁の天井際には古びた値札みたいなのが掛けられて当時の面影を残していた。

「まあここはこれで良いだろう。後は大浴場へ行こう。」

 食堂の次に案内された場所は艦娘達御用達の大浴場。御丁寧に『艦娘(夜間は艦息)専用』と書かれた看板が掛かっている。

 

夜雨(・・・・・・あれ?)

 

龍奈(どゆこと?これ?)

 

この看板をそのまま読むと夜は倭と雨月のみが使う風呂となる。ここまでは良いが、遠征等から帰投した艦娘が入って来る事は想定しているのだろうか。多分その辺りの情報は持っていて然るべきだろうけど。

「・・・看板の言葉はそのままの意味だ。遠征艦隊の為に開けておかなければならないからあまり使わない。普段は艦で済ませる事が多い。」

「まあ普通はそうですよね。」

「ここを使わないからといって特段困るわけでもないしな。偶に鉢合わせる事もあるけどな。」

「ですよね~・・・・・・」

 

(これは艦のを使うのが無難ですね・・・・・・)

 

その後この鎮守府の見取り図を渡され、そのまま浮きドックへ移動し、点検作業中の倭の船体を見学していた。

 

 

 

 

龍奈side

 

改めて『倭』を見ると、兵装配置は改大和型か超大和型に似ている。

 

(多分夜雨みたいに中~遠距離の戦闘を主体にしてますよね・・・)

 

それにこんな超大口径砲を近距離で撃つ事は無いだろう。撃てば爆風で自分も損傷を受ける可能性だってあるし、破片による自爆も考えられる。

浮きドックは完全に浮上している為、多数の妖精と整備兵達が倭の艦底後部に群がって作業を行っている姿が目に映る。少しだけなら単独行動を許されていたのでドック内に降りて艦底部分の様子を見ていく。

艦首と艦尾に左右2つずつバウスラスターとテールスラスターが設けられており、これで凄まじい急旋回も可能としているらしい。3番主砲の真下に当たる部分から4軸あるスクリューシャフトの手前まで巨大な水流推進器が6基も取り付けられている。間違いなくこの装置から生み出されるウォータージェットこそ倭の脚の要だ。

この浮きドックが船体底部に盤木を敷かなければ水流推進器そのものが倭本体の自重で潰されていた事だろう。6基あるうち外側の2基は動作確認の為か、噴射ノズルが左右に動いている。

舵も非常に大きく、主舵、副舵共に1枚ずつ取り付けられているが、応急舵が見当たらない。何処にあるのだろうか・・・・・・

 さっき渡された倭の大まかな概要を見ていく。と、倭を覆う装甲は最低でも46cm砲弾を弾ける様になっているようだった。

「・・・・・・61cm60口径三連装砲4基、20.3cm65口径三連装2基、15.5cm65口径連装両用砲12基、35mmCIWS10基、40mm四連装機銃34基、対空ミサイルVLS4基、対潜ミサイルVLS4基・・・・・・主砲以外は割と普通ね・・・・・・」

 

 早速断られるだろうと思い中へ入る許可を出してみたが、二つ返事で許可されたのには凄く驚いた。

「良いんですか?」

「重要区画に入るのは禁止だ。それ以外の場所であっても無闇に立ち入らないで欲しい。何処から対戦車ロケット弾やガトリング砲が撃ち込まれるか分からないし所々にウチの陸戦隊が仕掛けた光学迷彩のクレイモアやトラバサミ等のトラップが作動する危険性もあるからな。兎に角歩き回るなら目に見える物全てを警戒してくれ。」

 

(何でロケット弾やガトリング砲が撃ち込まれるんだろう・・・)

 

「ああ言い忘れていた。」

「何ですか?」

「偶に侵入者対策で艦内を巡回しているT‐1には気を付けてくれ。まだ君達の事をプログラミングしていないから見つかるとM61A1やM203で掃射を受けるぞ。」

「え゛」

何でそんな物騒なのがうろついているんだろう・・・1機くらい解体して・・・・・・

「・・・俺にとってT-1達は家族同然だ。もし1機でも解体等しようものなら夜雨全乗組員の乗艦は一切禁止すると覚えておけ。」

まさか私だけじゃなくて全員禁止・・・・・・どれだけ愛着があるのかしら・・・・・・取り敢えず散策は諦めた方が良さそうね・・・・・・

 

 

 

 

夜雨side

 

(本当に大きいわね・・・・・・でも開示された情報だけでは倭の詳細スペックが分からない・・・・・・この主砲の装甲は700mm以上かしら?)

龍奈さんと離れて行動して甲板上の主砲を見に来たけど、大きい。無駄に大きいわけではなく、必要に応じて大型化した、という感じだ。これだけ巨大だと旋回速度も遅いと思っていたが、素早く旋回していた辺り、大和型の水圧モーターとは違うようだ。

 でもどんな技術を使っているかは一切開示されなかった。それにしても・・・・・・何で頭痛がするのかしら?倭の艦橋に近付けば近付くほど頭痛が酷くなっている気がする。まるで私が近付く事を拒絶しているかのようだ。それ依然に浮きドックへ向かう途中から耳鳴りがするけど・・・・・・何か関係があるのかしら?

 ふと見上げると空は曇り出した事もあって、周囲が暗くなり始めていた。艦橋のすぐ傍まで来たら今度は立ち眩みしそうになった。一体何なの?そう思いながら見上げた視線の先には倭の防空艦橋がある・・・・・・だがそこから視線を離せなかった。頬杖を付いてこちらを見下ろしている人が居たのだが、まるでこの世の者ではない雰囲気を漂わせていた。何より驚いたのは“倭に似ている”事だった。

 倭と似ている男の焦点の定まらぬ黒や紅の混じった瞳が私を捉えた途端、裂けた様に口角が上がり、不気味な笑みを見せた。その瞬間、私は途轍もない悪寒に襲われた。その男はスーッと溶ける様に消えて行き、悪寒と今までの頭痛から解放された私は甲板にへたり込んでしまった。だけどあの目は人間の目ではない。あの男は人間の狂気と憎悪を集めた存在だ。でもどうして倭に?今だに続く頭痛と何か関係があるのだろうか。無駄だと思いながら丁度良く甲板に上がって来た倭に聞いてみた。

「・・・という事で何か心当たりはありませんか?」

「そんな報告は初めて聞いたな・・・そんな奴が居るのなら是非顔を拝みたい。さて、演習の準備をしなければならん。先に執務室に行っていてくれ。」

そう言って倭は苦笑していたけど、彼の蒼い瞳の奥に揺れる紅い狂気の炎に私が気付く事は無かった。

 

 

 

 

???side

 

 窓の無い四角い部屋で???????????は?を待っていた。今までずっと沈黙してきたが、具現化して外を見に行ったから確認しに来るんだろうと推測していた。態々具現化したりノイズをばら撒いたのは?の奴が連れてきた女が気に食わなかったから。気に喰わねぇ・・・世代差ってのもあるだろうが遠距離からチマチマ撃つクソ虫共と同じ匂いがするのが気に食わん。

?「おい。」

???「ヒヒヒッ。やっぱ来たか。」

圧縮空気が抜ける音と共に開いた扉の向こうからこの艦の主が現れた。何だかんだで住み着かせて貰ってる身だからあんまり調子に乗るとこっちが消されちまうがな。

?「当たり前だ。何を考えてんだテメェ。客が腰抜かして俺が疑われちまったじゃねぇか。」

???「ギャヒャヒャヒャ!そいつぁご愁傷様ってやつだ!だがテメェが連れて来た女が気に入らねぇ!あぁ気に入らねぇ!気に入らねぇ!気に入らねぇぇぇぇぇ!!」

?「そんな事俺が知るか。取り敢えず、かなり警戒されたみたいだから近付く事は無いだろう・・・・・・もうすぐ演習だが暴れんなよ。」

良い事を聞いた。演習でズタボロにしてやれば俺様の鬱憤もちったぁ晴れそうだ。

???「ケケケ・・・良い事聞いたぜ・・・・・・ギャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

?(言わなきゃ良かったかな・・・ってかコイツいっぺん冷凍メーサーか何かで凍らしたろか・・・・・・)

???「お~?・・・?よぉ・・・俺様は寛大だからなぁ・・・あの女の何処が気に入らねぇのか教えてやるよ・・・・・・」

?「物凄くどうでも良いんだが・・・まぁ聞いてやるよ・・・」ハァ

???「あの女・・・多分お前が一番嫌いなタイプだ。遠距離からチマチマ鬱陶しい攻撃でこっちをイライラさせて向こうはそれを見て嬉々として楽しむクソ連中と同じだ。ああいう手合いはテメェ嫌いっつてたろ。」

?「F‐βで画面外波動砲ぶっぱ散々やらかしてた奴が言う台詞じゃねぇな。某動画でも新型カニ光線とカニ光線だけで撃沈されてたしな。」

???(あ、今メタい事をサラッと言いやがった。気楽に出られるって良いわぁ~そんなに出番無いしなwww)

?「つまり、世代差で生まれた防空戦艦は超兵器を知らない上に遠距離脳で接近戦では役立たずの無能かつカス以下の存在。と言いたいわけだな?」

???「ちょwww俺より酷ぇ事言ってるしwwwwwwマジありえん(笑)wwwwww」

?「お前の心を代弁してやった結果だが。」

???「強ち間違っちゃいないしお前もそれを否定しない。つまり?だって俺様と同じ答えって事じゃねぇかwwwクッソウケるwwwwww」

?「(ダメだこりゃ・・・・・・)取り敢えず暫らくは大人しくしてろ。次変な事しでかしたら結晶体(テメェ)を叩き割るからな。」

???「おーおー怖い怖いwww自重なんて誰がするかよwwwwww」

?「ったく・・・・・・じゃあな。」

盛大に溜息を吐いて?が出て行った後、自動で扉が閉まり、電子ロックが掛かる音が聞こえた。?にバレねぇ様にあの電子ロック解除するのめんどくせぇんだよなぁ・・・・・・船体(からだ)さえ元に戻ればあんな防空戦艦なんざ塵も残さずぶっ殺してやれるんだがな。あ~あ・・・早く演習始まらねぇかなぁ・・・・・・『13日の金曜日(ジェイソンちゃん)』見飽きてんだよな・・・・・・こうなったら船体元に戻ったらTU○YAでも行くかな・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字等ありましたら報告の程願います。


次話:演習開始。敵戦艦を撃破せよ



あくまでタイトル通りになるとは限りませんのでご了承ください。

※1重武装装甲護衛艦の事

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